第10回国土交通技術行政の基本政策懇談会 議事要旨

第10回国土交通技術行政の基本政策懇談会 議事要旨

1.日時
  令和元年12月13日(金) 14:00~16:00
 
2.場所
  九段第2合同庁舎8階地震予知連大会議室


3.出席者(五十音順、敬称略)
  <委員>
  石田東生、金山洋一、木下剛、小池俊雄、高木健、谷口守、中川聡子、羽藤英二、福和伸夫、堀宗朗、山田正
  <ゲストスピーカー>
  藤井聡

4.議事
(1) 国土交通省の台風15号、19号対応について
(2)今回のテーマについての議論
  <テーマ>
  「防災・減災、国土強靭化」
(3)その他
  今後のスケジュールについて                
 
 
5.議事概要
<国土強靱化、データサイエンス>
  • 河川整備による治水効果を計るために、費用便益分析の公表を行っているのか。コストの算出方法、シミュレーション、建物の被害計算について、
    [1]現状はどうなのか?
    [2]現状をどのようにして周知を行っているのか?
    [3]本来どのくらいのコストを掛ければよかったのかの遡っての計算・評価をしているのか?
    を国土交通省へ質問したい。
  • 費用対効果においては、河川整備計画で決めた二、三十年の目標を進めるときのチェック、事業再評価での進捗状況のチェックで算出している。マニュアルは作成しているが、経済の波及、精神的な影響などは含まれておらず、全て十分な項目を網羅できてはいないので、不断の改善をしないといけない。維持・更新の工事費用においては、実績をベースに評価することになっている。浸水における被害の評価は、一定の浸水深での被害率を算出しており、定期的な見直し、実情に見合うようチェックを行っているが、十分ではない箇所は個別の委員会等で対応を行っていく。
  • 本日、データサイエンスの話もあったので、見える形での改善を是非ともお願いしたい。
  • 海洋の分野においてもデータサイエンスは進んでいる。データドリブンな社会を目指す活動により、データが一杯入ってくる仕組みは出来てきているが、それをどう活かしていくかを議論していく必要がある。
  • データサイエンスをもっと広く使い込み、被害が起きた際の規模や費用を算出しないと行けない。
  • 温暖化により気候が変わってきている中、今まで取ってきたデータについてどの様にデータサイエンスしていくか。
  • 地球温暖化の計算について、100年先位までを初期条件を変え5000通りの計算を行っている。計算のチェックは過去の雨のデータを100年先位を凡そ5400通り計算して、それに基づいて治水計画を実施すると聞いている。
  • 広域防災のように空間スケールの確率についてどの様な発想で考えていくのか。
  • 100年先の確率を考えるとばらつきが生じる。そのため、物を作るときは数値(期待値)を決めて、期待値分布の周りのばらつきをどこまで考慮して、ハードで守るかを検討する必要がある。これについて議論する時期ではないか。
 
 
<防災・減災への課題及び対応>
  • 鬼怒川が決壊し逃げ遅れた人が多く出たことを背景に水防法を改定したが2週間後に九州で災害を受けた。ソフトだけでは乗り切れない時代になっている。
  • 大都市では横浜の帷子川のように、カミソリ堤防で川が見えない。高潮の時だけ堤防が起き上がる技術があるが、法的な仕組みがないため導入することができない。
  • 台風19号では横浜駅周辺の浸水が心配であった。台風通過時に干潮だったので被害がなかった。計算では大潮時の際は被害が出る。コンクリートの防潮提のウォーターフロントでよいのか、抜本的な考え方を変えるべき時期ではないか。
  • 台風等のメディアの対応は堤防を高くすればよいとの偏重がある。今まで培われてきた流域の視点、総合的な治水対策の取り組みを改めて強調しないといけない。
  • 貯留だけじゃなくて雨水浸透、地下浸透、グリーンインフラという言葉も入れ、流域管理の視点、総合的治水の観点を強調していくべきである。
  • 東京では都心3区への鉄道通勤者のうち62%の人が60分以上かけて通勤している。夜間などに地震が発生した際に広域的に住んでいる自治体又は国の職員が通勤不可となり、事業所等にいけなくなると、どんな対応方法を作っていたとしても立ち行かなくなる。土日、夜に発災した時に、例えば「最寄りの自治体に、どこの自治体の職員かは問わずとにかく行って何かを行う」といったことが既に行われるようになっているのか、その辺りを知りたい。
  • 台風15号での計画運休では、民間企業はほとんど人が参集できなかった。NEXCOやインフラの企業は、一番近いところの営業所に行って支援することができていたが、自治体の方でも出来ていなかったと思う。医療においても、医師やメディカルの人達が参集できても、薬品会社が機能しなかったら全く動けないので、医療は破綻していたと思う。
  • 発災時における医療系、福祉系を考えると、民間では限界がある。もっと幅広い観点で社会経済効果・便益というものを定量化できるようなデータサイエンスが必要である。
  • 台風15号、19号で問題になったのはメディアの問題で、東京のローカルが余りにも広域を担い過ぎていて、それぞれの河川についての情報提供ができない体質になっていた。地方のローカル放送だと1県1放送局なので、きちんと中小河川についても出せる。東京は東京ローカル全体を担うから相当難しいと思われるが、これらを考えいかないと人の命が救えなくなる。
  • 台風15,19号において、自治体の人手で不足があったことから、建設分野における災害時の生産性についてICTを使用し向上させる必要がある。
  • 技術には、制度技術や社会技術の概念も含まれている。財源、パブリックアクセスタンスを含んで議論する必要がある。連携、連動をどうしていくか組織が大きくなると難しくなる。ICTはファインチューニングしすぎである。いざというとき役に立たないのではないか。
  • ICTの使用にてトップダウンだけではダメであり、分散化が必要である。
 
<計画・まちづくり>
  • 水防改正の時、法定の大規模氾濫減災協議会を地域で作ったが、どれだけ本当に機能しているのだろうか。西三河防災減災連携研究会やホンネの会のような取り組みを広める方策はあるのか。
  • 現在、モデルとして実施しているので、それを一般化し、提言書に落とし込んで行くやり方がある。同じような取組みは、東京や大阪では地元愛がないため実施するのは無理ではないか。大都市では密度が大きいので個人の力が過小評価されやすい。反対に、地方は密度が小さいだけに俯瞰的に見る人が多いのではないか。地方都市には地域社会が好きな人がおり、その人が実施するのが良いのではないか。さらに、今後の展開についても期待ができる。地方から発信、展開することにより東京依存を減らして、大都市と地方が相互に補完し合うようなシステムを作るのが好ましい。
  • 社会的使命、指導者をどう探すのかが重要である。地元愛を持った、幅広の科学と社会をつなぐようなファシリテーターが必要だが、サイエンス系より土木・建築系の先生方の方が比較的得手だと思うので、土木・建築系で社会性のある先生がつなぎ役になるのが一つの方策のように感じる。
  • 防災投資をすることによって税収が見込めるので、税収の一部を投資家に還元するような枠組みを国が作れば、民間投資がどんどん入るのではないか。
  • 保険概念とは、企業が自分の利益になるから投資するのであって、同様に政府が自分の利益になる投資である。利益が得られるなら民間にと言う話とはちょっと筋が違う。その事業自体が民営化できるものであるならば、民間は投資をするようになるだろうと言える。政府に利益があるのになぜ防災投資を民営化するのか。政府の利益を最大限にするのは、政府でやれば良いのではないか。「政府は小さくあるべきである」と言う前提に立てば、民営化できるところはすることになるかもしれないけど、「公共の利益を最大化する」と言う点で考えるのならば、民営化するのは必ずしも得策ではない。
  • 民間に防災投資してもらい、税収増を投資家に返すという考え方は可能か。
  • 防災国債とかを発行して、特別の資金調達を行って、利払い費を返していくということは当然ある。
  • 途上国援助の中では、海外資金調達のオフバジェット型の復興の比重が非常に高くなっている。復興が不平等にならないよう、財政支援を如何に確保していくかが重要である。
  • 広域避難は今の交通サービスでは無理であり、ソフトの限界である。地球温暖化も含めて、2度上昇から4度上昇、L1からL2といったような形での、2050年ぐらいに向けて特に水災害系のニューディール政策的なビジョンを新たに打ち出していくということが必要だが、河川ごとに個性があるため、一律した政策を行うのは難しいのが現状。
  • 立地適正化計画に津波、洪水を連動させるべき。弱者移設の移転を都市計画の制度と連動させる形で推進させることが考えられる。都市計画側との連動がない限りは、原状復旧、原状復興をやったところで、問題は何ら根本的に解決しない。事前復興、将来の地域、都市の空間像、堤防等の施設のビジョンなどをあらかじめ立てておいた上で対応しなくてはならない。
  • 東北に被害箇所が多いのは、お金が足りないだけで防災対策が不十分であり、被害が発生している。まちづくりとの連携以前に、まずは防災対策をやらないといけない。
  • 税収を増やすためには、投資が必要である。町作りと防災は、国家として100年、1000年の計画で動いていかないといけない。例として、富山市は立山砂防を実施していなかったら繁栄はなかった。鉄道、道路、港湾、都市の投資を行わないと、災害で都市や町がゼロに戻る。町作りには防災を意識していかないといけない。まちづくりを志す人間は、防災を徹底的にやるという思いがなければ、まちづくりを担う資質はない。税収を守るためには防砂をやらないといけないし、税収を上げるためにもまちづくりをやっていかないといけない。
  • 国が目指す国土のイメージを国民が分からないため、防災事業は効率が悪いと世間から批判されるのが現状である。オランダはノーベル物理学賞を受賞したローレンツ(ローレンツ変換)がヘッドになって町作りを行ったので、国民が誰も文句を言わなかった。これは1つの参考になる。
  • 防災計画を立案する時点でも生産性向上を考えないと行けないし、生産性を変えるための技術革新を、災害前の防災対応、まちづくりの段階で考えておかないと、なかなか実効のあるものができない。
 
<その他>
  • 河川の幅を広げようとしても、食料難の貧しい時代に河川敷も畑にした経緯もあり、河川敷の木を切るにも所有者の許可が必要なため進まないケースがあり、防災上問題になっている。地権者が多い土地も多数あることから、法律改正の検討も必要ではないか。
  • 地方分権、国の権限を見直して、防災に国がリーダーシップを取れるよう制度的な洗い出しを行ってほしい。
  • 気候変動適用法が環境省で出来るのか。国土交通省で実施すべきでは。
  • 環境適応策を政治的に決めているため、国で実施してほしい。
  • フランスパリ協定の2度上昇未満については、中国、インドがCO2の約束を守った場合である。
以上

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