大臣会見

石井大臣会見要旨

2017年12月1日(金) 10:01 ~ 10:26
国土交通省会見室
石井啓一 大臣

閣議・閣僚懇

本日の閣議案件で、特に私の方から御報告するものはございません。
このほか、私の方から2点御報告があります。
1点目は、「低金利を活用した高速道路整備の加速について」です。
本日、財務省に対し、来年度の財投計画について、日本高速道路保有・債務返済機構に対する1.5兆円の財政融資の追加要求をいたしました。
これは、先般11月16日の経済財政諮問会議において、生産性を大きく押し上げる物流ネットワークの整備が重要との安倍総理の御発言も踏まえ、現下の低金利状況を活かし、大都市圏環状道路等への重点投資を加速するためのものです。
圏央道や東海環状の開通区間においては、輸送効率が向上し、新たに企業立地が進むなど、生産性向上のストック効果が確実に発揮されています。
こうした全国物流ネットワークの核となる高速道路などの整備を加速することで、わが国の生産性を大きく押し上げることが可能になると考えています。
今後、財務省と調整を進めてまいりたいと思います。
詳細につきましては、後ほど事務方から説明させていただきます。
2点目は、「平成29年7月九州北部豪雨等の豪雨を踏まえた緊急対策について」です。
この度、九州北部の復旧を緊急的に進めるプロジェクトと全国の中小河川の対策を緊急的に進めるプロジェクトの2つのプロジェクトをとりまとめました。
1つ目のプロジェクトは、九州北部豪雨で甚大な被害を受けた河川において、ハード・ソフト一体となった対策を緊急的に進める「九州北部緊急治水対策プロジェクト」です。
主なポイントとしては、河川事業・砂防事業が連携しながら、概ね5年間で緊急的・集中的に治水機能を強化する改良復旧工事等を実施します。
その実施に当たってはあらゆる事業・制度を活用して復旧を迅速化します。
また、洪水に特化した低コストな水位計の設置や今回の浸水実績や地形情報等を活用したまちづくりの検討を支援します。2つ目のプロジェクトは、9月末より林野庁と連携をして実施してきた全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ、概ね3年間で実施すべき対策をとりまとめた「中小河川緊急治水対策プロジェクト」です。
具体的には、大量の土砂や流木を伴う洪水による被害が発生しやすく、要配慮者利用施設など重要な施設の被害が想定される渓流、約700渓流で透過型砂防堰堤等の整備を推進します。
2つ目には近年、洪水により被災した履歴があり、要配慮者利用施設など重要な施設や多くの家屋の被害が想定される区間、約300kmで河川の掘削等を推進します。
3点目に、人家や要配慮者利用施設等の浸水の危険性が高く、的確な避難判断のための水位観測が必要な箇所、約5800箇所で洪水に特化した低コストな水位計の設置を推進します。
詳細は事務方にお問い合わせ下さい。
私からは以上であります。

質疑応答

(問)財政投融資を使った高速道路整備について、2点お伺いします。
1点目は、要求することになった経緯・背景、あるいは狙いとか期待されている経済効果についてお伺いします。
(答)先日の経済財政諮問会議において、私から生産性向上等のストック効果が最大限発揮されるよう、三大都市圏環状道路等について、重点投資の加速の重要性を御説明しました。
これを受けまして麻生財務大臣からは、「財務省としてもしっかり検討したい」と応じられ、安倍総理からも、「生産性を大きく押し上げる物流ネットワークの整備については極めて重要と考えており、社会資本の質を高める取組を強化していただきたい」との御発言もありました。
こうした経緯を踏まえ、財務省とも調整の上、現下の低金利状況を活かし、大都市圏環状道路等への重点投資を加速するため、今般、財政融資の追加要求をすることとしたものです。
圏央道や東海環状の開通区間においては、輸送効率が向上し、新たに企業立地が進むなど、生産性向上のストック効果が確実に発揮されています。
こうした全国物流ネットワークの核となる高速道路などの整備を加速することで、わが国の生産性を大きく押し上げることが可能になると考えています。
(問)2点目は、その要求の内容について詳しく伺いたいのですが、具体的なスキームですとか、あるいは具体的な箇所ですとか、金額、今後のスケジュールについてお伺いします。
(答)今般の財政融資の追加要求1.5兆円は、現下の低金利状況を活かし、高速道路機構が今後発行を予定している、政府保証債等をあらかじめ超長期・固定の財政融資に置き換え、将来にわたる金利負担を大幅に軽減するものであります。
これによりまして、高速道路機構の債務引受余力が増大し、ひいては道路会社の投資余力が増大することとなります。
この投資余力の増大を活用し、大都市圏環状道路等の整備加速による生産性の向上、更に橋梁の耐震対策の加速による安全・安心確保を行います。
具体的には、大型物流施設・国際空港等が立地する圏央道や東海環状等について、供用目標が明示できていない区間のうち、工事の実施環境が整っている区間において、有料道路事業を活用して整備を加速し、生産性向上などを図ることを想定しています。
また、大規模地震の発生確率の高い対策重点地域において橋梁の耐震対策を推進し、高速道路の安全・安心の確保を図ることを想定しています。
具体的な事業につきましては、圏央道や東海環状などを想定していますが、いずれにいたしましても、今後、事業を実施する高速道路会社とともに精査してまいりたいと考えています。

(問)先ほど発表いただきました、九州北部豪雨に関連した、全国の中小河川の緊急対策に関してですが、今後の予算対応とか、ハードとともにソフト対策について、国土交通省で今後の対応をお考えであれば教えていただきたいと思います。
(答)中小河川緊急治水対策プロジェクトは、近年、九州北部豪雨をはじめとする豪雨災害が頻発していることを踏まえまして、全国の中小河川において緊急点検を実施し、緊急的に実施すべきハード・ソフト対策をとりまとめたものであります。
早急に対策を実施するために、補正予算等の予算面での支援、また土砂・流木対策や低コストの水位計に関するガイドライン等による技術的な支援、更には必要に応じて、今回は中小河川ですから上流部の県管理河川が多くなると思いますが、その下流の直轄管理区間で川底の掘削を実施するなどの現場での支援等々、国土交通省としてもあらゆる手段を検討してまいりたいと考えております。
全国各地で水害が頻発、激甚化する中で、水害に対する安全性を高めるため、社会全体で洪水に備える「水防災意識社会」を再構築するための取組を、中小河川において加速化させていきたいと考えています。

(問)九州北部関連で1点お尋ねします。豪雨の対策のあり方を検討していた国土交通省と福岡県の有識者会議が先日、50年に1度の豪雨対応を想定したハード整備を提言した一方で、今回の九州北部豪雨のような200年に1度の雨が降れば再び氾濫するという前提で、避難態勢の構築や宅地移転の検討を進めるように踏み込んで提言しています。
この点は先ほど発表されたプロジェクトにはどう反映されているのでしょうか。
また、再度災害の防止や被害の最小化の観点から、ソフト対策も含めて国土交通省として今後どう対策を進めていくお考えかお聞かせください。
(答)九州北部豪雨では、山地部の河川におきまして、河川の氾濫に加えて、土砂や流木の流出によって甚大な被害が発生したことから、学識経験者、福岡県、九州地方整備局等で構成される「筑後川右岸流域河川・砂防復旧技術検討委員会」を設置し、技術的な検討を行ってまいりました。
技術検討委員会の検討結果を踏まえ、今回のプロジェクトにおいて、国・県・市が協力し、被災地の早期の復旧に全力で取り組んでまいります。
具体的には、今御指摘がありました、50分の1の降雨に対して、山地部において土砂・流木の流出を防止するための砂防堰堤等の整備、それから河道に流入した土砂・流木を河川上流において捕捉するための貯留施設、河道台の貯木施設のようなイメージかと思いますが、そういった貯留施設の整備、更に洪水・土砂を下流まで円滑に流すための河道の改修、河道形状の工夫により、土砂・流木を伴う洪水氾濫を防止します。
また、施設能力を超える降雨に対して、今回の洪水の浸水の実績や地形等を踏まえた住まい方・まちづくりを工夫していくこと、洪水時の河川の水位情報の提供など、避難行動に結びつく情報の提供・共有等により、人的被害の防止や家屋被害の最小化を図ってまいりたいと考えております。

(問)先程の高速道路の件ですけれども、今日の一部報道で、財政投融資の枠組みを使うことで、圏央道が2024年に全通するという報道が流れておりますが、これについては事実でしょうか。
それと、先程大臣は、圏央道と東海環状道の名前を挙げられましたけれども、他の地域での建設などは検討されていらっしゃいますでしょうか。
(答)まず、開通時期については、今後事業を実施いたします高速道路会社とともに精査をしてまいりたいと考えております。
また、今回の措置は、低金利の財政融資を投入することで、整備加速が確実に見込まれる事業を対象として考えております。
このため、事業化して間もない箇所、用地取得に課題が有って工事実施環境が整っていない箇所、高度な技術を必要として、直ちに整備加速が見込みがたい箇所などについては、対象にならないと考えております。

(問)笹子トンネルの事故から明日で5年になり、昨日、中日本高速道路の前の社長らが書類送検されましたけれども、大臣の受け止めと、また、改めてこれまでの道路や橋などの老朽化インフラの対策、今後の取組についてお聞かせください。
(答)中央自動車道笹子トンネルの事故から、明日で5年を迎えます。
亡くなられた9名の方々に対し、改めてお悔やみを申し上げたいと存じます。
笹子トンネル事故に関しまして、昨日、山梨県警が中日本高速会社等の関係者を書類送検したとの報道は承知をしておりますけれども、捜査中の事案でございますので、これに関するコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
これまでも、中日本高速会社は、笹子トンネル事故を受けて、再発防止の徹底と安全・安心に向けた取組を進めておりますが、引き続き、こうした取組を通じて国民の信頼回復に努めていただきたいと思っております。
また、この事故を受けまして、国土交通省では、平成25年をメンテナンス元年と位置付けまして、平成26年には、各省に先駆けてインフラ長寿命化計画の行動計画を策定し、具体的な取組を見える化するなど、老朽化対策に重点的に取り組んでまいりました。
特に道路分野におきましては、平成25年の道路法改正によりまして、橋梁やトンネルなどの5年に一度の近接目視点検を義務化し、平成26年度より各道路管理者が計画的に実施をしております。
また、高速道路の老朽化対策といたしまして、平成26年の法改正で位置付けました、大規模更新事業を高速道路会社が順次実施するなど、老朽化対策を進めているところであります。
尊い命を失った事故の教訓を重く受け止め、引き続き、全国のインフラの老朽化対策や長寿命化を重点的・計画的に進め、安全・安心な社会の構築にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

(問)道路関連で2つ質問をお願いします。1つは圏央道の整備等々、私もやらなければいけないものだという前提なんですが、それから今もお話があったように、安全・安心で古い道路、橋、トンネル等々更新を控えているというところで、政府は、2065年までは高速道路の無料化を先送るということが出ているわけですが、今回の件も含めていくと、もはや2065年すら危ないのではないか、事実上高速道路無料化というような話は反故にしていると宣言すべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
これが1点です。
もう1つは、道路関連で、やはりETC2.0の普及が進まないこと、それからこれにからんで、ETC利用率が、昨日のNEXCO東日本さんあたりの話で、9割くらい、残り1割はまだETCを使っていないということなのですけれども、社会資本整備審議会でもETCを100%普及させる方向で頑張ろうという主旨の話が出ています。
これについてどう考えているのか。あともう1点、ナンバリングについて、もう半年以上経っているのですが、まだ標識が付いているのはこれからというところですが、やる以上は普及させなければいけないということでしょうから、ナンバリングについての取組をお願いいたします。
(答)まず、高速道路の無料化の撤回を宣言すべきだという大胆な御指摘でありますが、これは私ども法律に基づいてやっておりますので、淡々と現行法に基づいてやっていくということであります。
それから、ETCの普及によりまして、特に有料道路の料金所の渋滞は、ほぼ解消されたという非常に大きな効果があったと思います。
今度、ETC2.0を普及させることになりまして、車と道路と双方向の情報のやりとりができるということで、これについても、今後のICT社会の進展等を考えると重要な施策であると思いますので、引き続き普及、促進を図っていきたいと思っております。
それから高速道路のナンバリング、実はいろいろなところで開通式に行きましてナンバリングをしますと、「この数字は何ですか」と聞かれまして、まだまだ知名度が高くないなと実感いたします。
ナンバリングの標識自体を替えることもコストがかかることでありますので、一変にはできませんけれども、順次ナンバリングの表示も進めていきたいと考えております。
(問)2020年のオリンピック・パラリンピックまでに、オリンピック・パラリンピックの周りは整備するという方針は堅持されているという理解でよろしいでしょうか。
(答)ナンバリングの目標はありましたかね。
(事務方)2020年までに高速道路全てです。
(問)昨日、道路会社は首都圏、関東圏は頑張るという以上のことは言わなかったが、全国という理解でよろしいですか。
(事務方)はい。

(問)民泊に関してお伺いしたいのですが、来年6月に新法が施行されますが、自治体独自の条例の制定の動きが出始めております。
新宿区ですとか大田区ですとか、かなり住居専用区域での営業を規制する内容になっておりますが、国土交通省としては2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、受け皿としても考えていらっしゃると思いますが、これに関して、推進する側として大臣の御見解をお伺いできればと思います。
(答)住宅宿泊事業法は、適切な規制の下で健全な民泊の普及・振興を図るための制度でございます。
このため、この法律の第18条においては、合理的に必要と認められる限度で、生活環境の悪化を防止することが特に必要である区域・期間に限って、住宅宿泊事業を条例で制限できる旨規定されております。
現在、東京23区におきましても、住宅宿泊事業を制限する条例が検討されているものと承知しておりますが、この法律の趣旨を踏まえて、条例が検討されることが必要でありまして、国としても、その状況を注視していきたいと考えております。

(問)24日に札幌航空交通管制部でのトラブルが発生しましたけれども、それについての大臣の見解と、再発防止策を検討していますが、具体的な中身があれば教えてください。
(答)札幌航空交通管制部におきまして、平成29年11月24日19時47分に、管制部の管制官と航空機との間で音声通信を行う対空通信施設に障害が発生しました。
この障害の原因は、対空通信施設の電源供給装置の不具合であったため、当該装置を迂回する電源経路に切り替えて、同日21時20分に復旧しました。
この間、札幌管制部の管制官と北海道及び東北北部周辺の空域を利用する航空機との間で音声通信ができなくなったため、航空機に欠航等の影響が生じました。
これにより、航空利用者に多大な御迷惑をお掛けしたことは誠に遺憾であります。
障害の原因となりました電源供給装置は、既に交換を終えております。
また、同様の障害がないよう電源供給方法の見直し、電源供給装置の増設、また電源系統の見直しを実施しました。
国土交通省といたしましては、このような障害が再び発生することがないよう、施設の運用に万全を期してまいりたいと考えております。
(問)もう1点、10月22日に福岡空港でもトラブルがあり、一部民間機に影響が出ていますが、これと今回の札幌の件とは何か関係はあるのでしょうか。
(答)10月22日に発生しました福岡空港における障害は、商用電力が台風により停電となった際に、本来、非常用電源設備が稼働するところでありますが、航空管制システム全体に電力を供給する非常用電源設備の不具合により、システム全体に電力の供給が行われなくなったものであります。
この障害は、非常用電源設備を構成する多数のバッテリの一部が急激に劣化していたことが原因でありまして、この劣化したバッテリを交換することにより復旧しております。
その際、直ちに全ての空港の非常用電源設備を総点検しまして、バッテリの点検強化、早期の交換、また予備バッテリの確保等の対策を行うとともに、引き続き電源対策を進めているところであります。
一方、札幌管制部の障害については先程申し上げたとおりでありまして、両者では電源の役割や構造が異なりますので、福岡空港の対策が札幌管制部での障害には当てはまらないものでありますが、同様の不具合が発生することがないよう、電源対策を徹底したいと考えております。

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