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防災教育コラム

第6回


学習指導要領で重視される
防災教育を通じた生きる力の育成

秀明大学 教授 清原洋一

Column


「災害から身を守る」、これは人が生きていくうえで重要なテーマである。

 災害が起こったときには、「今、どういう状況にあるのか?」限られた情報をもとに判断し、行動せねばならない。危険な状況に陥ったとき、とっさに身を守る行動がとれるようになっていることが重要である。それだけでなく、災害は様々な形で発生し、限られた情報の中で、これまでに身に付けた知識や技能をもとに瞬時に思考・判断し行動に移さねばならない。そのための事前の備え、事後の対応も重要である。他者と協働的にコミュニケーションを図りながら、困難に備える。また、困難を乗り越え次代の社会を形成していくための資質・能力を育成していくことも重要である。

 新学習指導要領においては、育成すべき資質・能力について、三つの柱で整理している。この三つの柱とは、①生きて働く「知識・技能」の習得、②未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成、③学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養である。各教科等の目標や内容についても、この三つの柱に基づく再整理を図っている。そして各学校においては、地域や児童生徒の実態等に即して学校としての目標をより明確にし、各教科等で育成する資質・能力を関連付け、教科等横断的に学校一丸となって教育を展開するカリキュラム・マネジメントを強調している。そればかりでなく、地域の教育的な力を結集すべく「地域に開かれた教育課程」を目指している。


学習指導要領改訂の考え方

文部科学省「平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)」学習指導要領改訂の考え方より



 特に、防災教育に関する事項としては、小学校学習指導要領の第1章「総則」の第2の2(2) には、「各学校においては、児童や学校、地域の実態及び児童の発達の段階を考慮し、豊かな人生の実現や災害等を乗り越えて次代の社会を形成することに向けた諸課題に対応して求められる資質・能力を、教科等横断的な視点で育成していくことができるよう、各学校の特色を生かした教育課程の編成を図るものとする。」(中学校、高等学校も同様の記載)と示している。そればかりではなく、小学校と中学校の学習指導要領解説総則編には、教科等横断的な教育内容についての参考資料が掲載され、その中に「防災を含む安全に関する教育」が示されている。これは、防災等に関する教育において育成を目指す資質・能力に関連する各教科等の内容のうち、主要なものを抜粋し、各学校において、それぞれの教育目標や児童生徒の実態等を踏まえた上で、カリキュラム・マネジメントの参考として活用できるように示されたものである。

 学校そして地域社会が、教育目標を共有し、災害から身を守り、災害を乗り越えていくなどの「生きる力」をいかに育てていくか。そうした教育が、今求められている。



【令和3年10月8日掲載】