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防災教育コラム

第5回


現在と未来の防災教育に必要な資質・能力

ベネッセ教育総合研究所 顧問 後藤良秀

Column


1 21世紀の防災教育に必要な資質・能力「感じ、考え、行動する力」

 近年日本では、風水害や地震などの自然災害により人々の生命を脅かす事態が頻発している。このような中、学校で自然災害から児童・生徒の命を守るための教育がますます重要となっている。
 現在でも学校では、火災、地震、風水害等に対する避難訓練(特別活動)を実施している。また、社会科や理科等の教科で自然災害や防災について学習している。しかしながら、教科学習と避難訓練が別々に実施されているため、知識と行動力が関連付いていないことが多く、子供自らが自然災害にかかわる問題を見出し、知識に基づいて危機を予測し、回避できる行動力(感じ、考え、行動する力)の育成が十分とは言えない。


2 どのような学びをすれば防災教育に必要な「感じ、考え、行動する力」は育つのか

 「感じ、考え、行動する力」を育成する防災教育となるには、現在学習している教科内容と避難訓練を関連付けて実践する方法がある。新型コロナウイルス感染症への対応で教育活動が制限される中、新たな教育活動に取り組むことは難しいと考える。したがって、実施すべき教科内容と避難訓練を相互に関連付けた実践を紹介する。(「水災害からの避難訓練ガイドブック」(国土交通省防災教育ポータルからダウンロードできる)に掲載)

(1)教科内容と避難訓練を関連付けた展開プラン

 本ガイドブックには、各学年の防災教育に関係する教科内容を整理し、水害の避難訓練と関連付けた展開プラン(低学年、中学年、5年生、6年生版)が掲載されている。これらは教科で学んだ知識に基づいて避難訓練で危機を予測し、回避できる行動力を育成する事例として参考になると思われる。

(2)「防災集会」を取り入れた避難訓練

 「防災集会」(コロナ禍では教室内)を行い、大雨の時に注意することや避難の仕方について理解させ、自宅・学校周辺の通学路の危険箇所で起こるであろう危険を予測し、学校内に待機することで水害を回避する能力を育成する。その後、学級毎に学年の実態に応じて(防災カードゲームの活用など)「防災集会」の実施内容を振り返る。
 このことを通して、「感じ、考え、行動する力」を育成することができると考える。



水害の避難訓練に関連した教科内容の展開プラン
水害の避難訓練に関連した教科内容の展開プラン(「水災害からの避難訓練ガイドブック」に掲載)



「防災集会」でDVD「洪水から身を守るには~命を守るための3つのポイント」を視聴する児童

「防災集会」でDVD「洪水から身を守るには~命を守るための3つのポイント」を視聴する児童



8:15 臨時職員打ち合わせ

・学年主任を招集し、校長より天候状況を知らせ、学校内に待機することを伝達する。
また、保護者に一斉メールで知らせる。


8:20 児童への伝達

・学年主任より各学級担任に知らせ、児童へ伝達する。


8:25 学校待機に関する学級指導

・学年毎に学校内での安全確保について指導する。
・食料配布や寝床作りなどの役割分担や天候等の確認方法等について話し合う。


8:30 体育館に集合(or教室内TV放送)

・全校児童が体育館に集合する(or教室内)。
・「防災集会」を行うことについて知る。


8:35 「防災集会」の実施

・防災担当教員より「大雨による『さいがい』から『いのち』をまもる」等の講話をする。
DVD「洪水から身を守るには~命を守るための3つのポイント(国土交通省)」等を視聴する。
・台風などで大雨が降ったときの河川の様子や河川の氾濫の様子を紹介する。
・ポイント1「ひなんする」及びポイント2「きけんなばしょをしる」を解説する。
・まとめをする。


8:50 各教室に戻り、振り返りをする。

・担任の指示で、各教室に戻る。 
防災カードゲーム等を活用し、各教室で学年の実態に即して振り返りを行う。


9:05 訓練終了

・訓練を終了する。



【令和3年6月9日掲載】