現場で活用・実証されている
DX事例について紹介します

ドローン活用

施策概要

ドローンによる空撮は、周囲の三次元点群データを入手することや侵入が困難な場所の状況を素早く確認出来ることから、現場作業の迅速化・効率性向上に繋がっています。

水管理・国土保全局では、河道の三次元測量や河川の巡視、インフラ施設の点検や災害時の現地調査、災害査定への利用など様々な場面でドローンが活用されています。
現在、ドローンや画像解析技術を活用した河川巡視ツールの構築や、目視外自立飛行による砂防施設点検の試行を進ており、現場作業のさらなる効率化・高度化を目指しています。
さらに、河川空間はドローン物流の航路としての利用が期待されており、河川空間活用のルールを定めていく必要があります。河川巡視ドローンと民間物流ドローンとの機器・システム等の規格・仕様の統一化や、ドローン航路の整備主体・運用主体の役割分担について、デジタルライフライン全国総合整備実現会議で現在議論を行っています。

具体事例

無人航空機による長距離河川巡視

令和5年3月に、九州の山国川でVTOL(垂直離着陸)無人航空機による長距離河川巡視の実証実験を行いました。実証実験ではあらかじめ設定した巡視航路を自動航行し、管理区間25kmをバッテリーの入れ替え等を行わず一気に巡視を行いました。

VTOL機の離陸の様子>
VTOL機の離陸の様子

映像伝送や機体制御のための無線回線には、既設の河川管理用光ファイバを活用した自営通信網(K-PASS)を用いており、これにより遠隔からの安定的な制御を可能としています。
管理区間25kmの飛行に要した時間は25分であり、これまでの4時間と比べ10分の1に時間が短縮されました。

K-PASSの概要>
K-PASSの概要

また、巡視の際には3次元点群データおよびオルソ画像の取得を行っており、着陸2時間後には3Dモデルを出力することが出来ました。
本取り組みついては、平常時の河川管理の効率化や災害直後の迅速な異常箇所の把握への効果が期待され、引き続き検証を行っています。

取得した3次元点群データ
取得した3次元点群データ

UAVによる砂防施設の点検

砂防分野の施設は山間部で急峻で狭隘な箇所が多く、アクセスも悪いため、点検する際は時間を要し危険も伴います。安全性確保、効率性向上のためにUAVを活用した点検の利用拡大に努めているところです。令和4年3月には、UAVによる点検を推奨するため、砂防関係施設点検要領(案)を改訂しました。
令和3年度以降各地方整備局において、UAVによる施設点検等の実証試験を行っています。

  • 近畿地方整備局 紀伊山系砂防事務所では、携帯電話通信圏外箇所において、無線中継用UAVや公共ブロードンバンドを使用し、施設点検の実証試験を実施しました。
  • 東北地方整備局 福島河川国道事務所では、長距離飛行可能な固定翼機型UAVを用いて施設点検の実証試験を実施しました。
  • 中部地方整備局 越美山系砂防事務所では、令和5年10月に長時間飛行可能なUAV及び携帯電話通信圏外箇所でのリアルタイム映像通信技術の実証実験を実施しました。
    また、山間部の樹木等に囲まれている施設をUAVが近距離で飛行し、作業従事者による目視点検と同様な点検が行えるかVisual SLAM機能を搭載した機体を用いて実証試験を実施しました。
北陸地方整備局職員によるUAV調査
北陸地方整備局職員によるUAV調査
国土交通省 砂防部内
国土交通省 砂防部内
共有された画像を用いて本省内会議へ被害状況を報告
共有された画像を用いて本省内会議へ被害状況を報告
越美山系事務所による長距離飛行実証試験
越美山系事務所による長距離飛行実証試験

ドローンとVR技術を活用した
河川水位予測の3次元表示技術の開発

国総研では、河川水位予測において、数字やグラフよりも分かりやすく災害の切迫感・臨場感を伝えるため、VR(仮想現実)技術を活用した河川水位予測の3次元表示技術を開発しています。この技術では、背景画像に3次元地形データと風景写真を用い、これに河川水位予測データを組み合わせ、さらにゲームエンジンで河川の濁りやしぶきを加えることで、数時間先の河川水位の状況を現場やカメラで見ているかのように確認できます(図1)。

図1 河川水位予測の3次元表示(山国川)(左:平常時) 図1 河川水位予測の3次元表示(山国川)(右:洪水時)
図1 河川水位予測の3次元表示(山国川)(左:平常時,右:洪水時)

ここで風景写真には、航空写真によるオルソ写真画像を用いることも可能ですが、図2のように、オルソ写真画像と3次元地形データの高低を重ね合わせた際に画像の伸び縮みが生じ、防災上特に重要な堤防付近などにおいて、リアリティが低くなることがあります。

図2 オルソ写真画像で3次元の背景画像を作成した場合(荒川)
図2 オルソ写真画像で3次元の背景画像を作成した場合(荒川)

そこで、国総研では、複数の位置・画角で撮影ができるドローンによる写真画像と、フォトグラメトリ技術(複数の位置・画角の写真画像を用いて3次元モデルを活用する技術)を用いて背景画像の処理方法を検討しました。フォトグラメトリでは、ラップ率(被写体の同一部分が画像中に含まれている割合)が高いほど3次元モデルの精度が向上しますが、河川においてどの程度のラップ率が実用的であるか不明でした。そこで国総研では、オーバーラップ率(ドローンの進行方向での画像の重なりの割合)とサイドラップ率(ドローンの進行方向から見て横方向の画像の重なりの割合)がそれぞれ異なる画像を比較分析し、オーバーラップ率、サイドラップ率がそれぞれ80%以上で、図3のようにリアリティのある背景画像を作成できることを確認しました(図3)。国総研では、今後も、ドローンを活用した流域デジタルツインに関する研究開発を行っていく予定です。

図3 ドローン撮影とフォトグラメトリ技術を活用した3次元の背景画像(山国川)
図3 ドローン撮影とフォトグラメトリ技術を活用した3次元の背景画像(山国川)