現場で活用・実証されている
DX事例について紹介します

堤防除草機械の遠隔化・自動化

施策概要

堤防除草は、堤防の状態を把握するとともに堤体を保全するため毎年実施しています。除草は肩掛け式機械や大型機械の導入より、作業効率を大幅に上げましたが、現在も機械操作を含め人力への依存が高く、河川維持管理予算に占めるウェイトも大きい状況です。

堤防管理延長や除草面積が河川整備の進捗があり増加する一方で、温暖化による現場作業の過酷化、作業員の高齢化等で担い手不足が発生、さらに、労働環境の改善や人件費等労働条件の向上が求められ、除草作業費用の更なる増加が課題となります。適正な堤防管理を今後も維持していくため、除草機械の遠隔化・自動化により作業の効率化・高度化を図るものです。

堤防除草は、堤防の高さ・勾配等の形態や周辺環境などの状況により、その作業現場は多様であります。そのため、現在は各現場で除草機械の遠隔化・自動化による技術公募や実証試験を行い、運用に向けた検討を進めているところです。また、堤防除草は堤防の生えている草を刈った後、面積や刈草高の施工管理が必要となります。これらの情報を自動的に計測することによって、現地作業の省力化や、除草後の巡視・点検を効率的に行うための高度化を図っていくための技術開発の検討も進めているところです。

具体事例

北海道開発局管内における
堤防除草自動化検討

全国で国が管理する河川堤防の20%にあたる約1,850kmにおよぶ堤防を管理し、堤防法面の除草面積が10,000haを超える北海道開発局では、先駆的に大型の機械による法面の除草作業の自動化を進めるため、令和2年度から「堤防除草の自動化検討ワーキング(SMART-Grass)」を設立し、自動除草機の技術開発を進めています。

北海道 石狩川の丘陵堤
北海道 石狩川の丘陵堤

従来、河川堤防除草は、現地の状況に応じてトラクターモア、ハンドガイド式草刈機、大型遠隔操縦式草刈機、肩掛け式草刈機を用いて施工して、各除草機械1台に付き1人以上の作業員が必要ですが、SMART-Grassでは大型自動除草機を用いて一人で複数台を運用することで除草作業を効率化が可能になります。令和5年度には、自動除草機2台の協調運転の技術開発および現場実証試験を行い、走行精度が設定基準値内であること、協調運転接触防止機能やエンスト防止機能について問題なく作動することを確認しました。これにより、一人で2台を管理できる大型自動除草機が概成しました。

SMART-Grassにおける自動化イメージ SMART-Grassにおける自動化イメージ
SMART-Grassにおける自動化イメージ

この大型自動除草機のベースマシンは遠隔式の大型除草機として開発局や他の地方整備局でもすでに導入されており、SMART-Grassで開発した自動制御システムを後付けで搭載して自動化することが可能であるため、全国的な導入拡大が期待されます。(注;ベースマシンの型式により搭載できないものもあります)

SMART-Grassにおける自動化目標レベル
SMART-Grassにおける自動化目標レベル
SMART-Grassにおける除草面積の自動計測と自動帳票作成>
SMART-Grassにおける除草面積の自動計測と自動帳票作成

さらに、走行履歴から除草面積を自動計測し、積算や作業報告に必要な帳票を自動で作成する、施工管理の省力化・効率化も可能な技術となっています。

今後は、様々な施工条件(勾配、施工規模)で実証試験を行い導入可能な現場環境を精査するとともに、導入に向けた施工者への支援体制の構築を図ります。令和6~7年度には、大規模実証試験として、実際に施工者が数日にわたって自動除草機を運用し、運用する上での課題の抽出と対策の検討を行い、現場への導入を拡大していきます。

【検証項目】
  • 操作性の確認(課題抽出と対策検討)
  • 自動除草の効果検証(従来工法との比較)
  • 施工者支援体制検討(操作指導・故障サポートなど)
※SMART-Grass (Self-Moving And Remote-sensing Technique for Grass-cutting)
SMART-Grass