1. 調査結果
(1)全国的な実態調査
河川におけるダイオキシン類の濃度の実態を把握するため、全国の一級河川(5湖沼を含む※1)直轄管理区間において、平成12年冬期(平成12年1〜2月、172地点)及び同年秋期(平成12年9〜12月、245地点)に、水質及び底質の調査を実施した。
※1網走湖、小川原湖、霞ケ浦、宍道湖、中海
 |
水質調査
冬期、秋期調査結果を表-1に示す。冬期、秋期調査とも過半の地点で0.2pg-TEQ/l 未満であった。(参考資料1 11頁図-5.1.2参照)水質の環境基準の値(1pg-TEQ/l)を超えた地点は、冬期調査では
4河川6地点、秋期調査では 2河川4地点であった。
|
表-1 水質調査結果(単位:pg-TEQ/l)
|
測定数 |
平均値 |
最大値 |
中央値 |
最小値 |
平成12年冬期調査 (平成12年1〜2月) |
172 |
0.28 |
5.0 |
0.15 |
0.021 |
平成12年秋期調査 (平成12年9〜12月) |
245 |
0.19 |
1.7 |
0.11 |
0.069 |
(参考)環境省平成12年度ダイオキシン類に係る環境測定結果 |
2,116 |
0.31 |
48 |
- |
0.012 |
参考 ダイオキシン類の水質環境基準は1pg-TEQ/l
同一地点で冬期と秋期の変動を見た場合、2倍以上変動した地点が、河川において4割程度見られ、同一地点であっても採水日の流況や気象等の状況によって水質のダイオキシン類濃度が変動する可能性が示唆された。(参考資料1 14、15頁 図-5.1.6(1)〜(4)参照)
 |
底質調査
冬期、秋期調査の結果を表-2に示す。冬期と秋期の間で平均値及び中央値に大きな変化はなかった。 |
表-2 底質調査結果(単位:pg-TEQ/g(dry))
|
測定数 |
平均値 |
最高値 |
中央値 |
最低値 |
平成12年冬期調査 (平成12年1〜2月) |
172 |
4.4 |
48 |
0.86 |
0.038 |
平成12年秋期調査 (平成12年9〜12月) |
244 |
3.4 |
48 |
0.85 |
0.23 |
(参考)環境省平成12年度ダイオキシン類に係る環境測定結果 |
1,836 |
9.6 |
1,400 |
- |
0.0011 |
(参考 ダイオキシン類の底質環境基準は未設定)
同一地点で冬期と秋期の変動を見た場合、2倍以上変動が見られる地点が、河川において5割程度みられ、同一地点であっても出水に伴う底質の移動等により底質ダイオキシン濃度が変動する可能性が示唆された。(参考資料1 28、29頁 図-5.2.6(1)〜(4)参照)
(2)存在形態把握調査
ダイオキシン類対策検討の基礎資料とするため、水質及び底質中のダイオキシン類の存在分布及び形態について調査を行った。水質のダイオキシン類については、溶存性ダイオキシン類と非溶存性ダイオキシン類に分けて分析を行った。また、底質のダイオキシン類については、レキ・砂(粒子径75μm以上に分類されたもの)とシルト・粘土(粒子径75μm未満に分類されたもの)に分けて分析を行った。
(3)水質時間変動調査結果
綾瀬川及び利根川において水質の時間変動を把握するため、それぞれ2地点において調査を実施した。
綾瀬川の内匠橋(範囲0.45〜1.6pg-TEQ/l)、槐戸橋(範囲0.32〜2.5pg-TEQ/l)とも懸濁物質(SS)と同様の変動をしており、ダイオキシン類を含む底質の舞いあがりの影響を受けていると考えられる。(図-1参照)
利根川においては、堰上流の順流区間、堰部とも、SS、ダイオキシン類ともに低濃度で、大きな時間変動は見られなかった。(図-2参照)

図-1 綾瀬川水質調査地点におけるダイオキシン類濃度及びSSの経時変化
(AM9:00〜翌AM6:00(3時間ごと))

図-2 利根川水質調査地点におけるダイオキシン類濃度及びSSの経時変化
(AM9:00〜翌AM6:00(3時間ごと))
底質の水平・鉛直分布調査結果
(イ)水平分布調査結果(底質表層のダイオキシン類濃度分布調査)
綾瀬川における調査結果では、地点による差が大きく、明確な分布傾向は見られなかった。なお綾瀬川八条大橋左岸地点において、240pg-TEQ/g(dry)という比較的高い濃度のダイオキシン類が観測された。(図-3参照)
利根川利根大堰上流部及び淀川河口部における調査結果では、ダイオキシン類濃度は粘土・シルト分が多い地点で高い傾向にあった。霞ケ浦における調査結果では、流入河川近傍の数地点を除き、ダイオキシン類濃度はほぼ一様な分布状況を示していた。(参考資料1 56〜59頁参照)
図-3 水平分布調査結果(綾瀬川)
(ロ)鉛直分布調査結果(底質の深さ方向のダイオキシン類濃度分布調査)
綾瀬川における調査結果では、一部の地点を除き上下層のダイオキシン類濃度の差に明確な傾向は見られなかった。
利根川及び淀川における調査結果では、上下層のダイオキシン類濃度の差に明確な傾向は見られなかった。
霞ケ浦における調査では、ダイオキシン類濃度は比較的上層が高い傾向にあった。
(参考資料1 62〜63頁参照)
2.平成13年度の調査計画
平成12年度に引き続き、水質、底質に関する全国的な実態調査及び代表地点における存在形態把握調査、詳細調査を実施する。以上の結果を踏まえ、河川のダイオキシン類監視計画のあり方及び汚染除去対策の基礎的な検討を行なうものとする。
参考資料
|