災害等による大規模かつ長期的な断水リスクを軽減し、早期に復旧させることができるよう、国土交通省では、水道施設の耐災害性強化対策に加え、水道事業者におけるアセットマネジメント(資産管理)の取り組みを推進している。
令和6年能登半島地震では被災地域の各地で断水が発生する中、新潟市では、あらかじめ耐震化を進めていた基幹管路には被害がなく、大規模かつ長期的な断水を回避することができた。こうした結果は、平時から進めてきた計画的な整備が、災害時に確かな力を発揮し得ることを示している。
本記事では、「水道管路緊急改善事業」を中心に、基幹管路の優先的な耐震化の背景や技術的な工夫、関係機関との連携、市民への情報提供の取り組みを紹介していく。
災害に「備えが機能する」社会をめざして
令和6年能登半島地震では、石川県で震度7が観測され、全国で約14万戸が断水するなど、上水道施設の被害が深刻化した。
被災地では、管路や施設の損傷により断水などの影響が長期化するケースもあり、地震発生後の応急対応や復旧体制の重要性と同時に、発災前からどこまで備えが講じられていたかが、被害の規模や復旧までの時間を大きく左右することを示している。
令和6年能登半島地震では、自然災害に対する備えの重要性を改めて浮き彫りにした。
新潟市が令和元年度から令和5年度にかけて実施した「水道管路緊急改善事業」は、基幹管路の優先的な耐震化を進めることで、断水リスクの低減と給水継続性の確保、水道施設の長寿命化・計画的更新を図ってきた取り組みである。
この事業は、国が進める「3か年緊急対策」「5か年加速化対策」に基づき実施されたものであり、国土強靱化の理念を現場レベルで具体化した好事例の一つといえる。
水道の基幹を守る
日本海側唯一の政令指定都市である新潟市の水道は、75万人余の市民の生活と産業活動を支えている。そうした中で「水道管路緊急改善事業」は、災害対応上重要な基幹管路を対象に、更新と耐震化を一体で進める取り組みとして位置づけられた。
事業の対象は、新潟市内の基幹管路であり、3か年緊急対策で約5.7km、5か年加速化対策で約3.3kmの区間について耐震化を進めた。地震や事故発生時に水道事業への被害を最小限に抑えることを目的に、給水の“骨格”となる管路から優先的に耐震化が進められた。
新潟市水道局では、老朽化更新と耐震化を同時に進めるため、独自の更新周期を定めている。「適切な更新周期を設定し、布設年から一定のサイクルを迎えた管路から順に更新しています」と、新潟市水道局 技術部 計画整備課 主査 加藤氏は説明する。
維持管理のデータや管材料メーカーの資料を踏まえて更新の優先順位を整理し、その更新の機会を捉えて耐震化を進める。限られた予算と工期の中で「どの管を、いつ、どのように更新するか」を計画的に整理していくことが、基幹機能を守るうえでの重要なポイントとなっている。
新潟市水道局では、管路の更新や耐震化を“特別なこと”ではなく、標準的な枠組みの中で進めているものと捉えている。令和6年能登半島地震で基幹管路の被害が生じなかった事実は、そうした地道な取り組みの成果を示している。
「止まらない水道」をつくる
技術面での中心となったのが、ダクタイル鋳鉄管のうち、耐震性能を有する管種と継手の採用である。新潟市では、既設の基幹管路を更新する際に、耐震性のあるダクタイル鋳鉄管を用いることで、地震動や液状化に対する耐性を高めている。
「ダクタイル鋳鉄管にも耐震性のあるものとないものがあります。既に一般的に使われていますが、今回の事業でも、耐震性能のある管を使って、被災しても漏水しにくいようにしています」と新潟市水道局 技術部 計画整備課 課長補佐 杉山氏は説明する。
中心市街地は液状化のリスクが高く、地盤条件だけを優先すると「管の埋設に適したところはほとんどない」という課題もある。新潟市では、既に地域の“骨格”として機能している基幹管路のルートを維持しながら更新を行うため、必要に応じて隣接する道路などの別ルートも検討しつつ、更新と耐震化を進めてきた。
「今ある基幹管路の役割を維持しながら、更新と耐震化を行っています。ルートを大きく変えるというより、現在のネットワークを保ちつつ、より壊れにくくするイメージです」と、杉山氏は話す。
施工にあたっては、安全な施工と将来にわたる維持管理のしやすさを重視している。耐震管への更新により、地震時の漏水リスクが低減されるだけでなく、長期的には漏水調査や修繕の負担軽減にもつながることが期待されている。
新潟市水道局 技術部 計画整備課 課長補佐の羽田氏によれば、まず安全で強靱な管路の確保を最優先に位置付け、その結果として維持管理の省力化につなげていくことが、同局における管路更新の基本的な考え方となっている。
こうした地道な更新・耐震化の積み重ねが、災害時でも「水を止めない」水道インフラを支えている。
国土交通省 水管理・国土保全局 水道事業課 課長補佐 濱田氏は、「上下水道システムの要となる浄水場やポンプ場などの施設、そして避難所や病院など重要施設につながる上下水道管を一体的に耐震化していくことが重要です」と強調する。
能登半島地震を踏まえ、国は上下水道を一体として捉えた耐震化計画の策定と、その計画に基づく対策の実施を各自治体に呼びかけている。
