道路が被災し通行止め等が発生した場合でも、発災後おおむね1日以内に緊急車両の通行を確保し、おおむね1週間以内に一般車両の通行を確保できるよう、国土交通省では、高規格道路のミッシングリンクの解消や暫定2車線区間の4車線化、ダブルネットワーク化など、災害に強い国土幹線道路ネットワークの機能確保を図っている。
四国地域では南海トラフ巨大地震や豪雨災害のリスクが指摘されており、災害時に主要な道路がどこまで機能を維持できるかが、救援活動や物資輸送を支えるうえで大きな課題となっている。
こうした防災・減災や地域の持続性を支える基盤整備の必要性を踏まえ、国土交通省 四国地方整備局等は、四国4県を結ぶ総延長約800kmの高規格道路網「四国8の字ネットワーク」の整備を推進。
災害時の道路寸断防止と緊急輸送路確保、平時の地域活性化を両立させる「命の道」としての機能が期待されており、本事業は国土強靱化に向けた道路ネットワーク強化の重要な取り組みと位置づけられている。
本記事では、四国8の字ネットワークの中でも高知県内の取り組みを中心に、整備状況とその効果、具体的な取り組みを紹介する。
事業の目的と整備の概要――高規格道路が形づくる四国の骨格
四国8の字ネットワークは、「四国ブロックにおける社会資本整備重点計画」の中で、四国の将来像を支える基盤として位置づけられている。
とりわけ、重点目標である「防災・減災が主流となる社会の実現」に向け、災害時にも確実に機能する道路ネットワークの構築が求められてきた。
こうした背景のもと、国土交通省 四国地方整備局 土佐国道事務所では、南海トラフ巨大地震を想定し、「道路として何ができるのか」という視点からネットワーク強化に取り組んでいる。
防災面だけでなく、地域間の移動を支える“生活の基盤”として、道路が果たす役割を総合的に高めていく考え方だ。
現在整備が進む四国8の字ネットワークは、四国縦貫自動車道や四国横断自動車道、高知東部自動車道、阿南安芸自動車道などの高規格道路で構成される。これらが四国を大きな「8の字」で結ぶことで、県境を越えた移動や物流の流れが強化され、四国全体の連結性が高まる仕組みとなっている。
令和7年3月末時点では、開通延長が約610km、整備率は約76%に達し、四国全体の骨格となる道路網が着実に形づくられつつあり、残る未整備区間についても、地域の状況を踏まえながら整備が進められている。
国土交通省 四国地方整備局 企画部の田中 裕氏は、四国では人口減少が全国より早く進行している現状を踏まえ、人口減少下において将来にわたり持続可能で活力ある地域を実現するためにも、四国8の字ネットワークで得られた知見を今後の整備や活用に生かしていくことが重要だと話す。
災害時に機能する「命の道」の実現――災害対応力を高める仕組みづくり
南海トラフ巨大地震発生時や豪雨災害時に備え、リダンダンシー(代替路)を確保する取り組みが進められている。
四国の沿岸部では広範囲の津波浸水が想定されており、既存の国道55号などの幹線道路には浸水想定域を通過する区間もあることから、災害時の通行確保が課題として挙げられてきた。
この課題に対応するため、四国8の字ネットワークでは津波浸水想定を避けたルートが設定されている。
例えば、高知東部自動車道の南国安芸道路(芸西西~安芸西)は、沿岸部では津波浸水高さを回避する高架や盛土構造を採用し、高台を通過するルートとして整備が進められている。
災害時には緊急輸送や救援活動を支え、平時には経済活動や地域活動を活性化させる「命の道」としての役割を担う。
国土交通省 四国地方整備局 土佐国道事務所 副所長の雑賀 光氏は、四国の東南部を災害時に守る観点から、高知中心部と東部を結ぶ道路整備を進めていると説明する。あわせて、ネットワークとして機能させるため、既存道路との接続を重視しているという。
また、災害発生直後の道路啓開を迅速化するため、「四国扇作戦」と呼ばれる計画も策定。
これは四国の扇状の地形を活かし、複数の緊急輸送ルートを確保する構想であり、四国8の字ネットワークも主要ルートとして位置づけられている。
高知県 土木部 道路課 課長補佐・宗光 広展氏も、南海トラフ巨大地震のリスクを踏まえ、四国8の字ネットワークを防災対策の中でも重要な施策として位置づけていると話す。沿線市町村と連携しながら、緊急輸送路としての機能を確保するため、道路整備の促進に取り組んでいる。
地域との連携とストック効果――地域とともに活かす道路ネットワーク
四国8の字ネットワークは、防災面だけでなく、地域産業や生活サービスを支える「地域の持続性」に寄与する社会基盤でもあり、高知県では、このネットワークの整備を産業振興・観光振興・防災対策の基盤となる最重要施策として位置づけ、行政・地域・民間が一体となった取り組みが進められている。
高知県 土木部 道路課の宗光氏は、県の役割について次のように語る。
「基本的には国やNEXCOを中心に整備していただいているが、県内の整備状況を踏まえ、県としても自ら整備を進めるとともに、国の事業を支援・サポートする両輪で取り組んでいます」
県では、沿線市町村と連携しながら国への予算要望を行うほか、民間会社との連携として、バス会社やトラック業界など道路利用者の声を集約する「道路利用者会議」を通じ、地域からの意見を整備に反映させる取り組みを実施。現場レベルでも、用地買収や周辺整備を県と市町村が協力して進め、国の事業を円滑に進める体制を整えている。
道路整備の効果は産業面にも及び、四国各県では道路整備を契機に地域産業の振興、観光交流の拡大、物流効率化などのストック効果が表れている。特に高知県では大都市圏との距離が大きく輸送面で不利な条件があるため、高速道路の整備は輸送時間短縮や物流効率化に直結する重要な施策である。基幹産業である水産業では、鮮度を保ったまま市場へ出荷できるなど、具体的な効果が期待されている。
また、沿線自治体では高規格道路を見据えたまちづくりが進み、庁舎や病院などの基幹施設を道路沿いに配置する動きも見られる。人口減少に伴い医療アクセスが課題となる中、宗光氏は「病院等の施設が整っている場所へ円滑に移動できる道路整備の重要度は、より一層増しています」と述べており、こうした整備により、病院への移動時間の短縮や救急医療体制の充実に資することが期待されている。
教育面でも効果が広がりつつある。道路が整い高等教育機関への通学圏が広がることで、地域に住み続けながら進学の選択肢を確保できる環境が整ってきている。
さらに、四国4県の地方自治体や経済団体が参画する「四国8の字ネットワーク整備・利用促進を考える会」では、ネットワークの利活用促進や整備促進に向けて、道路を「通す」だけでなく「活かす」ための提言活動がおこなわれている。官民一体となった推進体制が構築され、宗光氏は「県としては、建設業界だけでなく道路利用者の声も合わせて、整備の必要性を訴えています」と述べ、多様な主体が参画することで整備の意義が共有され、地域全体で事業を支える機運が高まっている。
