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適正化のための措置
(規制の内容・標準契約書等)

趣旨

少子高齢化や単身世帯の増加などの社会情勢の変化によって、年々国民の生活基盤としての賃貸住宅の重要性は増しています。一方で、相続をきっかけに事業を始める等、事業経験の浅い賃貸人(オーナー)が増加しており、受託管理やサブリースを利用する比率も高まってきています。

このような中、サブリース業者がオーナーになろうとする方に対して、家賃の見直しやマスターリース契約の解除の条件など、サブリース方式での賃貸経営に係る潜在的なリスク・デメリットの説明を十分に行っていないケースが多く、契約内容を誤認したままマスターリース契約を締結してしまうことによるトラブルが多発しています。こうしたサブリース業者とオーナーとのトラブルを防止するため、賃貸住宅管理業法が施行され、罰則規定も含めて法第28条~法第36条において、サブリース業に対する規制が設けられています。

  1. 誇大広告の禁止(法第28条)
  2. 不当な勧誘の禁止(法第29条)
  3. 契約締結前における契約内容の説明及び書面交付(法第30条)
  4. 契約締結時における書面交付(法第31条)
  5. 書類の閲覧(法第32条)

サブリースの仕組み解説

賃貸経営の専門家であるサブリース会社・管理会社が、マスターリース契約を結びオーナーの物件を借り上げ、借り上げた物件を入居者に転貸することを言います。サブリース契約とマスターリース契約はしばしば同じような意味合いで使われることがありますが、実際は契約対象も内容も異なります。

サブリースの仕組み イメージ

※1)サブリース物件の取得(購入・建設)のために、ローン設定をする場合があります

※2)賃貸住宅管理業法第2条4項の法律用語

※3)土地の購入等により当該土地に建築するアパート等や、投資用マンション等の一室を購入する場合もあります

※4)賃貸住宅の建築請負や土地等の売買の際にマスターリース契約の締結を勧める建設業者や不動産業者等

マスターリース契約(特定賃貸借契約)

賃貸住宅の賃貸借契約(賃借人が人的関係、資本関係その他の関係において賃貸人と密接な関係を有する者として国土交通省令で定める者であるものを除く。)であって、賃借人が当該賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営むことを目的として締結されるもの。

サブリース契約(転貸借契約)

貸主(サブリース業者)が建物の所有者(オーナー) から借りた物件を入居者に貸すこと。

誇大広告の禁止

特定賃貸借契約の締結について広告を打ち出す際には、下記のような事項について、実際の契約条件よりも良い条件だと一般消費者に誤認させるおそれのあること、著しく事実に相違する表示をすること、ある事項を表示しないことにより結果として誤認させることを禁止しております。

誇大広告の禁止 イメージ

新聞の折り込みチラシ、配布用のチラシ、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、インターネットのホームページ 等

具体例

サブリース業者がオーナーに支払う家賃の額、支払期日及び支払方法等の賃貸の条件並びにその変更に関する事項

賃貸住宅の維持保全の実施方法

賃貸住宅の維持保全の費用の分担に関する事項

マスターリース契約の解除に関する事項

不当な勧誘等の禁止

サブリース業者又は勧誘者(以下「サブリース業者等」という。)が、誤った情報や不正確な情報による勧誘や強引な勧誘等、相手方の意思決定を歪めるような勧誘や、同様の方法により契約の解除を妨げる行為を行うことにより、オーナーとなろうとする者は、契約について正しい情報が得られず、また、契約について正しい判断ができない環境下に置かれることになり、甚大な損害を被ることになります。

このため、賃貸住宅管理業法においては、以下のことを禁止しております。

  • サブリース業者等が、マスターリース契約の締結の勧誘をするに際し、又はその解除を妨げるため、マスターリース契約の相手方又は相手方となろうとする者(以下「オーナー等」という。)の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
  • サブリース業者等によるマスターリース契約に関する行為であって、オーナー等の保護に欠ける行為

具体例

故意に事実を告げない行為(事実不告知)

・将来の家賃減額リスクがあること、契約期間中であってもサブリース業者から契約解除の可能性があることや借地借家法の規定によりオーナーからの解約には正当事由が必要であること、オーナーの維持保全、原状回復、大規模修繕等の費用負担があること等について、あえて伝えず、サブリース事業のメリットのみ伝えるような勧誘行為

・サブリース契約における新築当初の数ヶ月間の借り上げ賃料の支払い免責期間があることについてオーナーとなろうとする者に説明しない行為

故意に不実のことを告げる行為(不実告知)

・原状回復費用をオーナーが負担する場合もあるにもかかわらず、「原状回復費用はサブリース会社が全て負担するので、入退去で大家さんが負担することはない」といったことを伝える行為

・大規模な修繕費用はオーナー負担であるにもかかわらず、「維持修繕費用は全て事業者負担である」といったことを伝える行為

保護に欠けるもの

①マスターリース契約を締結若しくは更新させ、又はマスターリース契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、オーナー等を威迫する行為

・威迫する行為とは、脅迫とは異なり、相手方に恐怖心を生じさせるまでは要しないが、相手方に不安の念を抱かせる行為が該当する。例えば、相手方に対して、「なぜ会わないのか」、「契約しないと帰さない」などと声を荒げ、面会を強要したり、拘束するなどして相手方を動揺させるような行為が該当する。

②マスターリース契約の締結又は更新についてオーナー等に迷惑を覚えさせるような時間に電話又は訪問により勧誘する行為

・「迷惑を覚えさせるような時間」については、オーナー等の職業や生活習慣等に応じ、個別に判断されるものであるが、一般的には、オーナー等に承諾を得ている場合を除き、特段の理由が無く、午後9時から午前8時までの時間帯に電話勧誘又は訪問勧誘を行うことは、「迷惑を覚えさせるような時間」の勧誘に該当する。

・電話勧誘又は訪問勧誘を禁止しているものであることから、例えば、オーナー等が事務所に訪問した場合など、これら以外の勧誘を「迷惑を覚えさせるような時間」に行ったとしても本規定の禁止行為の対象とはならない。

③マスターリース契約の締結又は更新について深夜又は長時間の勧誘その他の私生活又は業 務の平穏を害するような方法によりオーナー等を困惑させる行為

・「オーナー等を困惑させる行為」については、個別の事例ごとに判断がなされるもので あるが、深夜勧誘や長時間勧誘のほか、例えば、オーナー等が勤務時間中であることを 知りながら執ような勧誘を行ってオーナー等を困惑させることや面会を強要してオーナ ー等を困惑させることなどが該当する。

④マスターリース契約の締結又は更新をしない旨の意思(当該契約の締結又は更新の勧誘を 受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したオーナー等に対して執ように勧誘する行為

・電話勧誘又は訪問勧誘などの勧誘方法、自宅又は会社などの勧誘場所の如何にかかわら ず、オーナー等が「契約を締結しない旨の意思」を表示した場合には、意思表示後に再 度勧誘する行為は禁止され、1度でも再勧誘行為を行えば本規定に違反することとな る。

契約締結前の重要事項説明及び書面の交付

サブリース事業において、オーナーとなろうとする者は、賃貸住宅を賃貸する事業の経験・専門知識に乏しい者が多く、サブリース業者との間では、経験・専門知識等に大きな格差があります。
オーナーとなろうとする者が契約内容を正しく理解した上で、適切なリスク判断のもと、マスターリース契約を締結することができる環境を整えるため、本法では、サブリース業者に対し、契約締結前に、オーナーとなろうとする者に書面を交付し、説明することを義務付けています。

① 重要事項の説明者

法律上の定めはありませんが、賃貸不動産経営管理士資格制度運営規程に基づく登録を受けている者など専門的な知識及び経験を有する者によって説明が行われることが望ましいです。

② 重要事項の説明のタイミング

マスターリース契約を締結するための重要な判断材料となる重要事項の説明から契約締結までに1週間程度の十分な期間をおくことが理想的です。重要事項の説明から契約締結までの期間を短くせざるを得ない場合には、事前に重要事項説明書等を送付し、重要事項説明書等の送付から一定期間後に、説明を実施するなどして、オーナーとなろうとする者が契約締結の判断を行うまでに十分な時間をとることが望ましいです。

③ 説明の相手方の知識、経験、財産の状況等に応じた説明

説明の相手方の知識、経験、財産の状況、賃貸住宅経営の目的やリスク管理判断能力等に応じた説明を行うことが望ましいことから、説明の相手方の属性やこれまでの賃貸住宅経営の実態を踏まえて、以下の点に留意して、説明を行うようにしましょう。

  1. 説明の相手方の賃貸住宅経営の目的・意向を十分確認すること。
  2. 説明の相手方の属性や賃貸住宅経営の目的等に照らして、マスターリース契約のリスクを十分に説明すること。
  3. 説明の相手方が高齢の場合は、過去に賃貸住宅経営の経験が十分にあったとしても、身体的な衰えに加え、短期的に判断能力が変化する場合もあることから、説明の相手方の状況を踏まえて、慎重な説明を行うこと。

④ 重要事項の説明事項

サブリース業者は、契約締結前に次頁の【記載事項チェックリスト】①~⑭を書面に記載し、説明をしなければなりません。重要事項説明書の作成にあたっては、以下の点に留意しましょう。

  • 書面の内容を十分に読むべき旨を太枠の中に太字波下線で、日本産業規格Z8305に規定する12ポイント以上の大きさで記載すること。
  • 書面には日本産業規格Z8305に規定する8ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いること。

具体例

記載事項チェックリスト1

記載事項チェックリスト2

記載事項チェックリスト3

記載事項チェックリスト4

重要事項の説明をオンラインで実施する場合

賃貸住宅管理業者は、オーナーの承諾を得て、重要事項説明書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができます。その場合は、以下の①及び②に留意する必要があります。

 

また、重要事項の説明をテレビ会議等のオンラインで実施するに当たっては、③に掲げるすべての事項を満たしている場合に限り、対面による重要事項の説明と同様に取り扱うこととします。

 

なお、オーナーに事前に重要事項説明書等を読んでおくことを推奨するとともに、重要事項説明書等の送付から一定期間後に、IT重説を行うなどして、オーナーとなろうとする者が契約締結の判断を行うまでに十分な期間とることが望ましい。

重要

①電磁的方法により提供する際の相手方の承諾

電磁的方法により重要事項説明書を提供しようとする場合は、相手方がこれを確実に受け取れるように、用いる方法(電子メール、WEBからのダウンロード、CD-ROM等)やファイルへの記録方法(使用ソフトウェアの形式やバージョン等)を示した上で、電子メール、WEBによる方法、CD-ROM等相手方が承諾したことが記録に残る方法で承諾を得ること。

②重要事項説明書を電磁的方法で提供する場合の留意事項

重要事項説明書を電磁的方法で提供する場合、出力して書面を作成でき、改変が行われていないか確認できることが必要です。例えば、電子署名等の活用も考えられます。

③重要事項の説明をオンラインで実施する場合の取扱いについて

重要事項の説明にテレビ会議等のオンラインで実施するに当たっては、次に掲げるすべての事項を満たしている場合に限り、対面による重要事項の説明と同様に取り扱うこととします。
  • 説明者及び重要事項の説明を受けようとする者が、図面等の書類及び説明の内容について十分に理解できる程度に映像を視認でき、かつ、双方が発する音声を十分に聞き取ることができるとともに、双方向でやりとりできる環境において実施していること。
  • 重要事項の説明を受けようとする者が承諾した場合を除き、重要事項説明書及び添付書類をあらかじめ送付していること。
  • 重要事項の説明を受けようとする者が、重要事項説明書及び添付書類を確認しながら説明を受けることができる状態にあること並びに映像及び音声の状況について、説明者が説明を開始する前に確認していること。

契約締結時における書面記載事項

サブリース業者は、契約締結時に以下の事項を書面に記載し、交付しなければなりません。これらの事項が記載された契約書であれば、当該契約書をもってこの書面とすることができます。なお、国土交通省が別途定める特定賃貸借標準契約書には、これらの事項が記載されているので参考にしましょう。

重要

記載事項

  1. マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、名称又は氏名及び住所
  2. マスターリース契約の対象となる賃貸住宅
  3. 契約期間に関する事項
  4. マスターリース契約の相手方に支払う家賃その他賃貸の条件に関する事項
  5. サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
  6. サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項
  7. マスターリース契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項
  8. 損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容
  9. 責任及び免責に関する定めがあるときは、その内容
  10. 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
  11. 転借人に対するサブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法の周知に関する事項
  12. 契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容
  13. マスターリース契約が終了した場合におけるサブリース業者の権利義務の承継に関する事項

書類の閲覧

特定転貸借事業者は、「特定転貸事業者の業務及び財産の状況を記載した書類」を事業年度ごとに当該事業年度経過後3月以内に作成し、遅滞なく営業所又は事務所ごとに備え置く必要があります。備え置かれた日から起算して3年を経過するまでの間は、営業所又は事務所に備え置き、当該営業所又は事務所の営業時間中に閲覧の希望があった場合は閲覧させる必要があります。

備え置きが必要な「特定転貸事業者の業務及び財産の状況を記載した書類」

  1. 業務状況調書(省令別記様式はこちら
  2. 貸借対照表及び損益計算書
  3. またはこれらに代わる書面
  4. (上記書類は出力できる形であれば電子データとして保管しておくことも可能です。)

オンライン説明会

サブリース業者、オーナーの皆様や一般の方向け

サブリース業者とオーナーとのトラブルを防止するためには、法で求められる事項や法違反となり得る具体的事例といった、業務を適正に行うために求められる水準を示しながら、これらの規制の内容を関係者にわかりやすく示すことが重要であることから、この度、WEBによる説明会を開催いたしました。

第4回賃貸住宅管理業法の施行に向けたオンライン説明会(サブリース関係)

ガイドライン

サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン(令和5年3月31日改正)

ガイドラインのポイント

特定賃貸借重要事項説明書・標準契約書

特定賃貸借契約 重要事項説明書

特定賃貸借標準契約書

サブリース住宅標準契約書

サブリース住宅標準契約書(家賃債務保証業者型)

サブリース住宅標準契約書(連帯保証人型)契約書本体

サブリース住宅定期建物賃貸借標準契約書(家賃債務保証業者型)契約書本体

サブリース住宅定期建物賃貸借標準契約書(連帯保証人型)契約書本体

罰則・監督処分

サブリース業者(特定転貸事業者)又は勧誘者に対する罰則一覧表

6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金、又はこれを併科(法第42条)

・法第29条第1号(不当な勧誘等の禁止:事実不告知・不実告知)に違反したとき

・法第34条第1項(特定転貸事業者に対する業務停止命令等)又は第2項(勧誘者に対する勧誘停止命令)に違反したとき

50万円以下の罰金(法第43条)

・法第30条(契約諦結前の書面の交付)、法第31条(契約諦結時の書面の交付)に違反したとき

30万円以下の罰金(法第44条)

・法第28条(誇大広告等の禁止)に違反したとき

・法第32条(書類の閲覧)に違反したとき

・国士交通大臣の指示(法第33条)に違反したとき

・国士交通大臣による報告徴収、立入検査(法第36条第1項)に対応しないとき等

サブリース業者(特定転貸事業者)又は勧誘者に対する監督処分一覧表

指示処分(特定転貸事業者)

・特定転貸事業者又は勧誘者が法第28条(誇大広告の禁止)に違反したとき

・特定転貸事業者又は勧誘者が法第29条(不当な勧誘等の禁止)に違反したとき

・特定転貸事業者が法第30条(契約締結前の書面の交付)に違反したとき

・特定転貸事業者が法第31条(契約締結時の書面の交付)に違反したとき

・特定転貸事業者が法第32条(書類の閲覧)に違反したとき

指示処分(勧誘者)

・勧誘者が法第28条(誇大広告等の禁止)に違反したとき

・勧誘者が法第29条(不当な勧誘等の禁止)に違反したとき

業務停止命令等(特定転貸事業者)

・特定転貸事業者又は勧誘者が法第28条(誇大広告等の禁止)に違反したとき

・特定転貸事業者又は勧誘者が法第29条(不当な勧誘等の禁止)に違反したとき

・特定転貸事業者が法第30条(契約諦結前の書面の交付)に違反したとき

・特定転貸事業者が法第31条(契約諦結時の書面の交付)に違反したとき

・特定転貸事業者が法第32条(書類の閲覧)に違反したとき

・特定転貸事業者が指示処分に従わないとき

勧誘停止命令(勧誘者)

・勧誘者が法第28条(誇大広告等の禁止)に違反したとき

・勧誘者が法第29条(不当な勧誘等の禁止)に違反したとき

・勧誘者が指示処分に従わないとき