上下水道

下水汚泥資源の肥料利用の拡大

1.背景と現状

 我が国においては、主な化学肥料の原料である尿素、りん安(りん酸アンモニウム)、塩化加里(塩化カリウム)は、ほぼ輸入に依存しており、世界的に資源が偏在しているため、輸入相手も偏在しています。特に、りん安については、約62%を中国からの輸入が占めています(財務省「貿易統計」(令和4年7月~令和5年8月))。
 また、2021年半ば以降、穀物需要の増加や原油・天然ガス価格の上昇や、中国による肥料原料の輸出検査の厳格化等に伴い、肥料原料の国際価格が不安定化しています。






 こうした状況の中、下⽔汚泥はリンや窒素等の資源を含有しており、特にリンについては、年間汚泥発⽣量 約230万t中に、約5万tを含有するなど、下⽔汚泥ポテンシャルを活かした肥料利⽤の拡⼤は、農林⽔産業の持続性に貢献するものとして期待されています。
 下水汚泥資源の肥料利用は、大きくコンポスト化とリン回収の2種類の方法で行われており、現状、民間企業等への汚泥の処理委託を含め、約1,000処理場が実施していますが、複数の利⽤・処分の⼀つとして肥料利⽤を実施する処理場が多く、全汚泥発⽣量に対する肥料利⽤の割合は1割にとどまっています。
 コンポスト化の課題としては、下水汚泥における重金属の含有リスクや、重金属等も含めた下水道へのネガティブイメージ及び散布・施肥方法に関するノウハウ不足による流通経路の確保等があり、リン回収については、消化汚泥から回収する方法や、焼却灰から回収する方法等が行われていますが、リン回収施設のコストが高い等の課題により、現状、5自治体(6処理場)での実施にとどまっています。

【参考】

2.今後の取組の方向性

 令和4年9月9日に開催された食料安定供給・農林水産業基盤強化本部では今後の検討課題の一つに、下水汚泥等の未利用資源の利用拡大が掲げられました。
 これを受け、農林水産省及び国土交通省では「下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた官民検討会」を開催し、自治体からの取組事例紹介や、関係団体からの意見を踏まえながら、下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた課題や取組の方向性を取りまとめました。
 具体的な目標については、「食料安全保障強化政策大綱」(令和4年12月27日 食料安定供給・農林水産業基盤強化本部決定)において、2030年までに、下水汚泥資源・堆肥の肥料利用量を倍増し、肥料の使用量(リンベース)に占める国内資源の利用割合を40%まで拡大する旨が示されました。

【参考】


 今後、下水汚泥資源の肥料利用の更なる拡大に向けた取組の加速が求めるところ、国土交通省においても、下水道事業を通じた循環型社会の実現への貢献を更に拡大するべく、今後の発生汚泥等の処理に関する基本的考え方を定めました。

発生汚泥等の処理に関する基本的考え方について(令和 5.3.17 国水下企第99 号)
  • 下水道管理者は今後、発生汚泥等の処理を行うに当たっては、肥料としての利用を最優先し、最大限の利用を行うこととする。
  • 焼却処理は汚泥の減量化の手段として有効であるが、コンポスト化や乾燥による肥料利用が困難な場合に限り選択することとし、焼却処理を行う場合も、焼却灰の肥料利用、汚泥処理過程でのリン回収等を検討する。
  • 燃料化は汚泥の再生利用として有効であるが、コンポスト化や乾燥による肥料利用が困難な場合に限り選択することとし、燃料化を行う場合も、炭化汚泥の肥料利用、汚泥処理過程でのリン回収等を検討する。
  • 肥料利用の拡大に当たっては、以下の点に留意する。
  ・下水道管理者と関係地方公共団体の農政部局・農業関係者が緊密に連携する。
  ・民間企業の施設、ノウハウ等も積極的に活用する。
  ・肥料利用と脱炭素に向けた取組は両立しうるものであり、肥料利用を行う場合においても、バイオガス等のエネルギー利用を積極的に進める。
  ・現在の施設の状況、適切な下水道経営等の観点や温暖化対策関連計画、広域化・共同化計画等の既存関連計画も総合的に勘案しつつ、速やかな肥料利用の拡大に努める。


 また、各地方公共団体におかれても、地域特性に応じてコンポスト化、リン回収等、下水汚泥資源を肥料として最大限に利用するよう、農政部局、下水道部局の緊密な連携体制を確保するとともに、安全性・品質の確保、農業者・消費者の理解促進等の取組を実施していただくよう、通知を発出しています。
下水汚泥資源の肥料利用に向けた活動推進について【R5.3.24 (4環バ第462号、4消安第7171号、4農産第5216号、4農振第3425号、4農会第836号、国水下企第100号)】


 下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた検討の進め方や肥料利用検討フロー(案)については、事務連絡として周知しています。
下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた検討について(依頼)【R5.4.20 事務連絡 国土交通省 水管理・国土保全局下水道部 下水道企画課 下水道国際・技術室 室長】
 

3.具体取組/参考情報等

 官民検討会での論点整理も踏まえ、国土交通省と農林水産省では、下水汚泥資源の肥料利用拡大に向けた取組を進めています。
 具体取組の詳細や参考情報は下記を参照ください。

下水汚泥資源の肥料利用関連 支援概要一覧(令和6年4月18日時点版)

【国土交通省】
<全般>

   【検討手順書(案)について(概要)】 <技術開発>
【農林水産省】
【農林水産省(農政局)】
【その他】

 

BISTRO下水道の推進 ~「じゅんかん育ち」の普及拡大~

<取り組み概要>
 下水処理場には水、窒素・リンを含む下水汚泥の他、下水汚泥処理時等に発生するCO2、熱エネルギーなども豊富に存在します。これらの資源を有効に活用し、循環型システムを構築することが重要であり、再生水の農業用水利用や、下水汚泥のコンポスト化等、下水道資源の活用により農業等に貢献している好事例が各地域で存在します。
 国土交通省では平成25年8月より、下水道資源(再生水、汚泥肥料、熱・二酸化炭素等)を農作物の栽培等に有効利用し、農業等の生産性向上に貢献する取組を「BISTROビストロ下水道」と称して推進しています。




<下水道発食材の愛称を「じゅんかん育ち」に決定!
~愛称の浸透により下水道発で農業における生産性の向上を促進します~>H29.4記者発表
BISTRO下水道の広報活動の一環として、下水道資源を有効利用して作られた食材について「イメージ向上とともに、国民に親しまれやすい」愛称を公募し、平成29年4月に「じゅんかん育ち」と決定しました。
http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo13_hh_000334.html

<下水道資源の農業利用促進にむけたBISTRO下水道 事例集の策定>
BISTRO下水道の取組みのさらなる展開を図り、地域活性化や資源循環、農業の生産性向上の促進にむけて、全国における下水汚泥の肥料利用の現状を示すとともに、肥料利用の取組を進める上で直面する課題の類型化と解決に向けた取組の好事例を紹介し、今後、各地方公共団体が下水汚泥の肥料利用を進める上で参考としていただくことを目的とし、事例集を平成30年4月に策定しました。
なお、農業分野で役に立つ下水道資源は様々ありますが、下水汚泥の肥料利用の事例が多いことから、本事例集では下水汚泥由来肥料を重点的に取り上げています。
 
下水道資源の農業利用促進にむけたBISTRO下水道 事例集PDF形式
事例集の概要PDF形式

<パンフレット類>
 ・地域が元気になる!BISTRO下水道~じゅんかん育ちでSDGsを推進~ 
 ・地域が元気になる!BISTRO下水道~じゅんかん育ちで豊かな食生活を~
 ・地域が元気になる「BISTRO下水道」~微生物が創るうま味と笑顔のストーリー~
 ・BISTRO下水道 ~レシピブックVer2.0~
 ・BISTRO下水道 ~レシピブックVer1.0~

<会合・セミナー等>
BISTRO下水道戦略チーム会合 ~下水道と農業の連携に向けて~
下水道展 '22東京 BISTRO下水道シンポジウム~下水道×農業の新ビジョンを考える~

 

★下水汚泥資源の利用等に関する参考情報

各種ガイドライン
パンフレット
関連法令・基本計画等
関連データ

お問い合わせ先

国土交通省 水管理・国土保全局 上下水道企画課(上下水道審議官グループ)企画専門官 末久 正樹、資源利用係長 吉松 竜宏
電話 :03-5253-8111(内線34164)
直通 :03-5253-8691

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