縦横無尽に飛んでいるように見える飛行機ですが、実は空には目に見えないたくさんの道があって、整然と飛んでいます。ここにもツバサノシゴトが大きく関わっています。

エンルート
※訓練用シミュレータの画面です

エンルート

 空の世界では空港と空港を結ぶ航空路を「空の道(エンルート)」と呼んでいます。航空路の交通整理が「航空路管制業務」です。空港周辺以外の広大な空域において、レーダーと無線通信を駆使して航空機間の間隔を確保し、安全な運航を支えるシゴトです。日本の空港間を行き来する航空機だけでなく、日本上空を通過する国際便も扱うため、全国4か所の航空交通管制部にいる航空管制官が24時間業務しています。

INTERVIEW

吉⽥ ⼤地

福岡航空交通管制部

吉⽥ ⼤地

冷静に⾃信を持って
裏⽅に徹する

杉山 知一

神戸航空交通管制部

杉山 知一

将来における航空管制
の発展はあなた次第!

運航監視、SAR、RCC

運航監視、SAR、RCC

 航空機が離陸してから着陸するまでの運航を監視し、万一、航空機が異常状態にある場合や到着予定時刻を過ぎても到着しない場合は、直ちにSAR(Search and Rescue:捜索救難)をはじめます。羽田空港に置かれた東京RCC(Resue Co-ordination Center:東京救難調整本部)が、緊急状態にある航空機の情報を入手し、警察庁等の関係機関と協力しながら捜索計画を調整します。

国際対空通信

国際対空通信

 日本から遠く離れた洋上を飛行する航空機とHF(High Frequency:短波)を使用した通信を行います。
 国際対空通信業務を行う航空管制通信官は、航空機の位置情報や飛行中の気象状況(上空の風速・気温等)を管制機関、気象機関や航空会社に中継し、航空機には飛行高度や経路変更などの管制承認や乱気流情報などを伝えます。

AEIS

AEIS

 飛行中の航空機に、気象・航空保安施設の運用状態などの情報を提供し、パイロットからの位置報告や、タービュランスや火山情報などのPIREP(Pilot Report:操縦士報告)を管制機関、空港関係者や運航者などに中継する通信に関する業務をAEIS(Aeronautical En-route Information Services:広域対空援助業務)といいます。対空センターまたはフライトサービスセンターにいる航空管制運航情報官が24時間体制でサービスを提供しています。

飛行検査

飛行検査

 月曜日朝、中部国際空港の滑走路から「チェックスター〇〇、クリアードフォーテイクオフ」の航空管制官の声を受け、白い小さなビジネスジェット機が大空に向かって飛び立ちます。向かうは北海道から沖縄まで日本全国の空港。乗り組むのは操縦士、整備士、無線技術士のフライトインスペクター(飛行検査官)。彼らの仕事はフライトインスペクション(飛行検査)。電波や光で航空機の安全運航を支える航空保安施設が正しく動作しているかを、特別な装備を施した飛行検査機を使って検査します。

VOR/DME

VOR/DME

 VOR/DME(VHF Omnidirectional Radio Range:超短波全方向式無線標識施設、Distance Measuring Equipment:距離測定装置)は、飛行中の航空機に方位情報と距離情報を提供する装置です。航空機はVOR/DMEからの情報をもとに自身の飛行位置を確認しながら正確なルートを飛行できます。

ARSR

ARSR

 ARSR(Air Route Surveillance Radar: 航空路監視レーダー)は、半径約460km以内の航空機の位置などを探知する装置であり、航空路を飛行する航空機の誘導や航空機間の間隔設定などを行うために使用されます。

電源設備

電源設備

 電力会社から供給される電力が、台風などの自然災害や設備故障などで停電した場合でも、航空機が安全に運航できるように、空港や関連施設には非常用発電設備や、UPS(無停電電源装置)といった電源設備が設置されています。施設運用管理官は、レーダー、通信施設、管制施設や航空灯火など航空保安施設の安定した運用を確保するため、こうした電源設備を管理・運用することで、航空機の安全運航の一翼を担っています。

冷静に⾃信を持って
裏⽅に徹する

吉⽥ ⼤地

平成21年採⽤
福岡航空交通管制部

吉⽥ ⼤地

どのようなきっかけで航空管制官になろうと思ったのですか?

⾼校の修学旅⾏の時に初めて⾶⾏機に乗ったのですが、到着直前に「管制塔からの連絡で滑⾛路上に⿃がいるとのことで着陸を中断して上昇しています」とアナウンスがあり、管制官ってそんな事も⾔うのかと驚き、興味を持ったのがきっかけでした。もし何事もなく着陸していたらこの仕事をしていなかったかもしれません。

若⼿からベテランまでいるチームの中で、仕事をする上で⼤切だと思うことは何ですか?

「最低限の礼儀は忘れず、必要なことは申し出る」。指摘したくてもできないのではベテランの⽅に何も⾔えなくなってしまいます。私の職場は⽿を傾けてくださる⽅ばかりですので⾔いやすいですが、最低限の礼儀を忘れないことは⼤事だと考えています。後輩にも積極的に話してほしいと思うので、私も先輩⽅のような姿勢を⼤切にしています。

未来の航空管制官へメッセージをお願いします。

この仕事は積極性が最も大事です。受け身ではできません。自分で考え、仲間と共に冷静に処理していくことの連続です。そして先走ってもいけません。感情的にならないよう日頃から気をつけています。もし自分に積極性や冷静さが足りないと感じる方は日常生活で少し気を付けるところから始めてみるのも、一つの対策かもしれません。 (※職員の所属、写真は取材当時のものです。)

INTERVIEW #01

空の安全は人との
繋がりから

勝俣 芽久美

平成10年採用
北九州空港事務所

勝俣 芽久美

主幹として、チームではどのような役割を担っていますか?

主幹といえば、上司である先任管制官と若手管制官の間に立つ中堅的な立場になります。先任管制官と連携しながら、また指示を仰ぎながら、時には他の部署と調整を行い、チームが円滑に業務を行えるようにしています。また、管制官一人一人のことを気にかけ、風通しの良い職場環境づくりを心掛けています。

最初に赴任されたときと、現在とでどんなことに変化を感じますか?

新人の時は一人前の管制官になることで精一杯でしたが、様々な経験を得るうちに、管制以外の方々との連携があるからこそ、空の安全が守られていることを知りました。更に、現在は子育て真最中ですが、ワークライフバランスの取り組みのもと、周りの協力もあってこの仕事を続けることができ、入省当時より周囲に対して感謝の気持ちを持って業務を実施するようになりました。

未来の航空管制官へメッセージをお願いします。

管制官は多くの人の命を預かり航空機に許可や指示を出すわけですから、訓練は厳しいですが、その分達成感も大きいので、困難なことがあっても諦めない熱意が必要だと思います。また、航空機を安全に飛行させるには、他の管制官との協力が不可欠であり、人と人との繋がりを大切にすることが重要です。皆さんと一緒に業務できる日を楽しみにしています。 (※職員の所属、写真は取材当時のものです。)

INTERVIEW #02

チームワークで質の
高い管制業務を

須賀 美由紀

平成7年採用
成田空港事務所

須賀 美由紀

子育てと仕事の両立について教えてください。

管制官、そして2児の母として、同じ管制官の夫とともに子育てと仕事の両立に励んでいます。子どもが小さいうちは急な発熱などにより突発的に休みが必要となり、職場の皆さんのご理解なくしては両立できなかったと感じており、感謝しています。今後は子育てと仕事の両立を目指すお母さん管制官もさらに増えていくと思いますので、今度は私もそんな方々の支えになれたらと思っています。

成田空港の管制業務の特徴、醍醐味について教えてください。

成田空港では2本の滑走路を使用して国際線を中心に1日700便を超える航空機が離着陸しており、国際色豊かで様々な国のパイロットとの英語でのコミュニケーションには神経を使います。また、国際線が多いため、出発、到着の混雑が特定の時間に集中し、交通量に合わせて複雑な管制処理が求められます。それらが難しいところであるとともに醍醐味でもあると思っています。

未来の航空管制官へメッセージをお願いします。

 空の安全は管制官だけでなく、いろいろな職種の人々によって守られています。その中の一つである管制業務は管制塔内で働く管制官のチームワークで成り立っている仕事であり、日頃から周囲の人たちと円滑なコミュニケーションをとり、信頼関係を築くことが何より大事だと思っています。近い将来に皆さんと一緒にチームワークを発揮してより良い管制業務に臨める日を楽しみにしています。 (※職員の所属、写真は取材当時のものです。)

INTERVIEW #03

将来における航空管制の発展はあなた次第!

杉山 知一

平成4年採用
神戸航空交通管制部

杉山 知一

どのようなきっかけで航空管制官になろうと思ったのですか?

子供の頃から乗り物が好きだったこともあり、百科事典に載っていた飛行機に興味を持ち始めました。そして、航空業界にはどのような仕事があるのかと調査しているうちに、管制官は飛行機に指示を与え、その通りに飛行する等、専門的だということを知り、特殊な仕事に就きたいという自分の希望に合っていたため受験してみようと思った次第です。

現在の業務の苦労する点とやりがいについて教えてください。

現在は、今後長期間に渡って計画されている空域再編に関する企画・立案等の取り纏めをしていますが、業務内容が多岐に渡るため、同時並行で複数の事柄を検討する日々です。それでも、様々な課題を一つ一つ乗り越えることに大きな達成感を得ており、これぞやりがい!と思いながらやっています。

未来の航空管制官へメッセージをお願いします。

『チームワーク』と『コミュニケーション』。他の職員と協力して業務を進めていくためにはお互いの意思疎通が大切です。管制官という仕事では特にそれが重要視され、先輩・後輩関係なく一人の管制官として肩を並べて業務を行います。信頼できる仲間と共に、困難に立ち向かい、空の安全を守る航空管制という仕事を是非一緒にしてみませんか? (※職員の所属、写真は取材当時のものです。)

INTERVIEW #04

空の安全を守る「義務」と「自負」

沖 琴葉

平成31年採用
仙台空港事務所

沖 琴葉

どのようなきっかけで航空管制官になろうと思ったのですか?

大学生最後の年に、自分の得意分野を活かせる職業を真剣に考え始め、調べていく中で管制官という職業に出会いました。自分自身が留学中に多くの人に支えられた経験から、かつての自分と同様に慣れ親しんだ土地を離れ新たな挑戦をしようとする人を含め、航空機に乗る多くの人々を支えたいという思いから採用試験を受けることに決めました。

仙台空港での訓練はどのようなものですか?

訓練監督者を始め、チーム全体が訓練生の意思を尊重してくれます。そのような恵まれた環境の下、自身の課題と向き合い、段階を追った目標を設定しながら訓練を進めることができます。日々航空機に指示することの重責を痛感し、マイクを握る間は常に緊張しますが、訓練が進み技量が上がっていくにつれ、安全でより効率的に航空機の流れを形成する面白さを感じることができます。

未来の航空管制官へメッセージをお願いします。

訓練中はもちろんですが、資格を取得した後も管制官として働く限り、常に学ぶ姿勢を持つことが求められます。今の生活の中でも自分の好奇心を大切にして、幅広く知識と経験を増やすことを楽しんでください。その探究心が学ぶ姿勢に繋がります。皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしております。 (※職員の所属、写真は取材当時のものです。)

INTERVIEW #05

同じ目標に向かって、チームで仕事する

細萱 彦太郎

平成11年採用
東京空港事務所

細萱 彦太郎

若手からベテランまでいるチームの中で、仕事の上で大切なことは何ですか?

年齢や性別はもちろん、性格も経験値も異なるメンバーでチームを形成して管制業務を行っています。そのメンバーが同じ方向へと前進するために、全員が共通の目標を設定して業務に臨むことが重要です。共通の目標に向かって、チーム全体で訓練生を育てたり、安全と効率を追求して業務を遂行しています。

羽田空港の管制業務の特徴、醍醐味について教えてください。

とにかく交通量が多く、無線通信の量も多いというのが特徴で、役割を細かく分担して仕事をしています。安全で確実な業務を実施するには各管制官との情報交換や助け合いが必要不可欠です。阿吽の呼吸で意思疎通ができたと感じる場面も多く、繁忙であってもチームワークで仕事を進めていると実感できることが醍醐味です。

未来の航空管制官へメッセージをお願いします。

管制官はやりがいと面白さがある仕事だと思います。毎日、毎回異なる状況がやってきますし、持ち場についたら経験年数や年齢に関係なく先輩と後輩が肩を並べて仕事をします。そこで必要とされるのは、チームで仕事をするための協調性や、パイロットや他の管制官との意思疎通です。「チームワーク」と「コミュニケーション」を大切にしてください。 (※職員の所属、写真は取材当時のものです。)

INTERVIEW #06

航空管制官には、想像力という最先端技術がある。

伊藤 優

航空交通管理センター

伊藤 優

シゴトの難しさについて教えてください。

飛行中の航空機の交通量をコントロールするのは難しいため、離陸する前に手を打つ必要があります。そのため、数時間先の空の混雑状況を予測します。予測される交通量と、航空管制官の処理能力とのバランスをとりながら、情報を分析し決断する力を求められるのが難しいところです。

職場の環境について教えてください。

全国の空港などで勤務経験がある航空管制官が働いており、個々のスキルや知識、経験値は様々ですが、みんなプライドを持ってシゴトをしています。空港の管制官、システム担当、本省経験者など、様々な経歴を持った人たちが働いているので、情報の交換が盛んに行われ、それらが自分の血となり肉となっています。

未来の航空管制官へメッセージをお願いします。

航空管制官は、それぞれ多様な能力・個性を持っています。一つの固定した管制官像にとらわれず、多くのフィールドに目を向けて、自身の能力の活かし方を探してほしいと思います。努力を怠ることなく、シゴトを楽しみ、たくさんのことにチャレンジし、オセロゲームのように「ピンチ」を「チャンス」に反転できるような航空管制官になってください。 (※職員の所属、写真は取材当時のものです。)

INTERVIEW #07

地球上の人々の幸せに貢献するシゴトです

原田 隆幸

航空交通管理センター

原田 隆幸

官署の航空管制官を束ねる管理職として、心掛けていることはなんですか。

元気に声かけすることで話しやすい雰囲気を作るようにしています。職員がシゴトに自発的に取り組み、やりがいを感じてもらえるような企画を提案し支援することによって、職員の成長を促すようにしています。また、不測の事態が発生しても悔いなく最良の判断や対応をするために心身ともに良いコンディションで業務にあたることができるよう、勤務前の時間も意識して過ごしています。

航空交通管理センターのシゴトを教えてください。

日本が管制サービスを提供している空全体の気象や飛行中の航空機の情報とともに空港の状況をリアルタイムで監視し、航空機が安全で効率よく運航できるように国内外の管制機関や航空会社など多くの関係者とともに対策を検討し課題解決にあたっています。いわば日本の空を一元管理する司令所です。太平洋上空においては衛星通信も使った管制サービスも提供しています。

未来の航空管制官へメッセージをお願いします。

何事にも興味を持って周囲と協調しつつ前向きにシゴトをすれば、航空管制官という仕事を軸に航空のいろんな世界で活躍でき、さまざまな人と交流できるチャンスもあります。航空への貢献は、日本の各地を結び、そして世界へのかけ橋を作ることと同義です。人や物を運ぶことにより地球上の幸せを作ることにも貢献できるシゴトです。是非一緒にやりましょう! (※職員の所属、写真は取材当時のものです。)

INTERVIEW #08