欧州連合(European Union)

概況

欧州連合(EU)は、設立条約に基づき欧州の28ケ国で構成される新しい形の国家連合体であり、その起源は、1952年創設の、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)に遡る。その後、五次にわたる拡大によって、加盟国数は当初の6ヵ国から28カ国となり、人口5億人の地域となり、関税同盟、経済分野での共通政策、市場統合、共通通貨ユーロ導入等の面での統合が実現している。

EU拡大の経緯
  • 1958年(EC) 原加盟国:独、仏、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク
  • 1973年(EC) 第一次拡大:英国、アイルランド、デンマーク
  • 1981年(EC) 第二次拡大:ギリシャ
  • 1986年(EC) 第三次拡大:スペイン、ポルトガル
  • 1995年(EU) 第四次拡大:オーストリア、スウェーデン、フィンランド
  • 2004年(EU) 第五次拡大:ポーランド、チェコ、ハンガリー、エストニア、ラトビア、リトアニア、マルタ、キプロス、スロバキア、スロベニア
  • 2007年(EU) 第五次拡大:ブルガリア、ルーマニア
  • 2013年(EU) 第六次拡大:クロアチア

EU28ヶ国の概要

面積 429万km²(日本の約11倍)
人口 5億820万人(Eurostat、暫定値)
(日本の約4倍)
人口密度 118人/km²(2016年)
都市人口比率 74%は人口5千人以上の都市に居住
(2009年7月:Eurostat)
GDP 16兆2,204億ドル
(2015年:IMF World Economic Outlook)
一人当たりGDP 37,852ドル
(2015年:IMF World Economic Outlook)
GDP成長率(実質) 0.2%(2013年)、1.4%(2014年)
2.0%(2015年)、1.8%(2016年見通し)
1.9%(2017年見通し)
(2016年5月、欧州委員会2016年春の経済見通し)

(情報更新:2017年3月)

欧州連合

EU加盟国と加盟候補国

資料:駐日欧州委員会代表部ホームページより

EUの機構

EUはその目的を達成するために、独特な立法、司法、行政機構を有する(下表参照)。

EUの機構の概要

欧州理事会(EU首脳会議) EUの最高政治的機関。EUを政治的に推進し、政策の方向性を設定。リスボン条約により常任議長が創設された。
EU理事会 加盟国代表より更正され、欧州会議と共にEU立法を行う。また、共通外交・安全保障政策と警察・司法協会において、EUの唯一の意思決定機関としての役割を果たす。
欧州会議 直接選挙によって選ばれた785名の議員で構成。欧州市民を代表してEU理事会と共に立法手続きに参加。同時に、EUの諸活動の民主的コントロールを行なう。
欧州委員会 EUの行政執行機関としてEU政策を実施。唯一の法案提出権を持つEU機関としてEU立法に関与。
欧州司法裁判所 EUの基本条約の正しい解釈、適用を確実にする役割を果たす。

欧州連合の主要施策と欧州委員会の構成

EUは、経済・社会・規制・金融など、EUとして行動することが加盟国の利益になる政策分野に関与する。行政執行機関である欧州委員会には、EUの権限に属する政策部門の担当部局がおかれ、地域政策については地域・都市政策総局が所管している。

地域政策関連の主要機関

行政分野 担当機関 ホームページ
全体 欧州委員会 http://ec.europa.eu/index_en.htm
在日欧州委員会代表部 http://www.euinjapan.jp/
統計 EUROSTAT http://epp.eurostat.ec.europa.eu/portal/page/
portal/eurostat/home
地域政策 地域・都市政策総局
Directorate General for Regional and Urban Policy
http://ec.europa.eu/regional_policy/index_en.htm
空間政策に係る
連携・調査等
ESPON, European Spatial Planning Observation Network http://www.espon.eu/

欧州連合の地域政策等

EUにおいては、その中心に位置するノースヨークシャー、フランシュ・コンテ、ハンブルグ、ミラノに囲まれる地域に、人口の41%、GDPの48%が集中しており、既に1957年のローマ条約前文においても、地域間格差是正による均衡ある開発が唱われている。2004年にはGDPの約1割を占める上位地域の一人当たりGDPは、人口の1割を占める下位地域の5倍に上る。

今日のEUの地域(結束)政策Cohesion Policyの枠組みは、1986年の単一欧州条約に立ち返る。この考えはマーストリヒト条約(1993年)にも受け継がれ、地域政策は加盟国の拡大を背景に拡充されて、今日ではEU予算全体の約3分の1の規模となっている。2004年の旧東欧への拡大に伴い、域内の地域間格差は拡大し、これらの地域に重点を移しつつ施策を展開している。

一方、空間計画は、欧州連合の権限の範囲ではないが、非公式の政府間協力により「欧州空間開発パースペクティブ(ESDP)」が策定されるなどの動きがあった。2009年に発効したリスボン条約においては、Territorial Cohesionが加わったことにより空間開発がEUの主管事項となり、様々な空間政策の調整や土地利用・開発計画の権限を有する関係者の連携を推進することが目指されている。

近年では、バルト海沿岸地域やドナウ川流域など多国間に渡る地域での戦略の検討も進められている。

EUの地域政策の現状

EUの地域政策は経済的・社会的・地域的結束を目指すとともに、欧州2020(Europe2020)の目的である成長と雇用の創出、気候変動とエネルギー対策、貧困と社会的排除の削減に係る施策を積極的に展開している。

特色、考え方
今日の地域政策は、単に富裕国から貧困国への所得移転に留まらず、地域の課題を解決するプログラムを支援するものとされる。その執行・運用においては、加盟国、地域、欧州連合、その他多様な主体のパートナーシップを重視するとともに、政策評価・モニタリング等政策の効果を高める工夫がなされている。
支援の仕組み
274地域(州や広域的な地域の単位)を基本に、支援対象地域を定め、構造基金等の基金を通じて、複数年単位で中期的視野から資金を提供し、各国、地方、民間の投資を補い促進する(予算額は2014~2020年で3,518億ユーロ、EU総予算の32.5%)。
2014-2020年結束政策の枠組み
<新たな結束政策の特徴>
2014-2020年の結束政策では、「成長と雇用への投資」と「欧州地域連携」を目標(Goals)とし、特定のテーマへの集中支援、成果重視、事前条件設定、適切な財政手段の活用などの見直しが行われている。
  • ・対象地域の区分
    一人当たりGDPがEU27か国平均の75%未満(後進地域(less developed regions))、75-90%未満(移行地域(transition regions))、90%以上(中進地域(more developed regions))の3地域に区分することとし、EU基金と加盟国の資金分担の割合を地域区分に応じて設定。
  • ・重点テーマへの支援
    約1000億ユーロを、11の重点テーマに支援する。(1)研究・技術開発・イノベーション、(2)ICTへのアクセス・利用・質の向上、(3)中小企業の競争力強化、(4)低炭素経済への移行、(5)気候変動対策・リスクの軽減とマネジメント、(6)環境保全・保護・資源の有効活用、(7)持続可能な交通・主要ネットワークインフラにおけるボトルネックの解消、(8)持続可能かつ質の高い雇用と労働力移動性の向上、(9)社会的包摂・貧困や差別の撲滅、(10)教育・訓練・生涯教育への投資、(11)公共機関や利害関係者の組織的な能力の向上、である。
    欧州地域開発基金(ERDF)は(1)~(4)に重点的に配分する。また、少なくとも260億ユーロは低炭素経済の支援に配分するなどのルールがある。
  • ・基金の種類
    欧州地域開発基金(ERDF)、欧州社会基金(ESF)、結束基金(Cohesion Fund)のほか、農業・漁業関係の基金も活用する。
    そのほか、基金を配分するための前提条件の設定、手続きの簡素化、都市政策、越境連携の拡充などの改善点がある。
<手続き>
加盟国は、規則発効後4ヶ月以内に、欧州委員会に対して、欧州2020の実現に向けた開発のプライオリティを示したパートナーシップ合意(Partnership Agreement)を提出する。欧州委員会は提出から3ヶ月以内に見解を示し、加盟国からの回答を踏まえて提出から4ヶ月以内に承認する。2014年11月までに全28カ国との間でPAが承認された。
加盟国はパートナーシップ合意の提出から少なくとも3ヶ月経過したところで、オペレーショナル・プログラム(Operational Program)を提出する。欧州委員会は3ヶ月以内に見解を示し、加盟国からの回答を踏まえて6ヶ月以内に承認する。約535のプログラムについて、2015年夏を目標に交渉・承認の手続きが進められている。
なお、欧州委員会は、パートナーシップ合意の提出に先立ち、各加盟国における基金活用のプライオリティに関する立場を示した文書を公表している。
目標(Goals) 地域区分 予算配分 基金 趣旨
成長と雇用への投資 後進地域(一人当たりGDPがEU27カ国平均の75%未満) 1821.7億ユーロ ERDF
ESF
最も開発が遅れている地域がキャッチアップできるように支援する
移行地域(一人当たりGDPがEU27カ国平均の75-90%未満) 353.8億ユーロ 近年競争力を高めているものの、依然として目標を定めて支援が必要な地域の開発を支援する
中進地域(一人当たりGDPがEU27カ国平均の90%以上) 543.5億ユーロ 知識経済における国際的な競争力の向上や低炭素経済への移行を推進する
欧州地域連携   962.3億ユーロ ERDF 国境を越えた多国間・地域間協力を推進する

2014-2020年結束政策の適用地域(赤は収斂地域)

2014-2020年結束政策の適用地域

資料:欧州連合

地域的結束(Territorial Cohesion) - EUと空間開発

2009年12月に発効したリスボン条約の中で、経済的・社会的結束と並んで「地域的結束(Territorial Cohesion)」が条文に位置づけられた。

「地域的結束に関する緑書」(2008年)では、地域的結束とは、多様性のあるEUの地域(territory)の調和した発展を保証し、市民がこれらの地域の特性を最大限に活用できるようにすることであり、多様性を、EU全域の持続的発展に寄与する財産へと転換していく手段であると述べられている。しかし、その定義、EUの果たすべき役割、地域間協力のあり方、部門別政策や各国の政策との調整のあり方、政策立案や実施における参加のあり方、指標の開発は今後討議すべきテーマとされており、現在でも議論が続けられている。

(情報更新:2015年3月)