欧州連合(EU)は、設立条約に基づき欧州の28ケ国で構成される新しい形の国家連合体であり、その起源は、1952年創設の、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)に遡る。その後、五次にわたる拡大によって、加盟国数は当初の6ヵ国から28カ国となり、人口5億人の地域となり、関税同盟、経済分野での共通政策、市場統合、共通通貨ユーロ導入等の面での統合が実現している。
表EU28ヶ国の概要
面積 | 429万km²(日本の約11倍) |
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人口 | 5億820万人(Eurostat、暫定値) (日本の約4倍) |
人口密度 | 118人/km²(2016年) |
都市人口比率 | 74%は人口5千人以上の都市に居住 (2009年7月:Eurostat) |
GDP | 16兆2,204億ドル (2015年:IMF World Economic Outlook) |
一人当たりGDP | 37,852ドル (2015年:IMF World Economic Outlook) |
GDP成長率(実質) | 0.2%(2013年)、1.4%(2014年) 2.0%(2015年)、1.8%(2016年見通し) 1.9%(2017年見通し) (2016年5月、欧州委員会2016年春の経済見通し) |
(情報更新:2017年3月)
EUはその目的を達成するために、独特な立法、司法、行政機構を有する(下表参照)。
表EUの機構の概要
欧州理事会(EU首脳会議) | EUの最高政治的機関。EUを政治的に推進し、政策の方向性を設定。リスボン条約により常任議長が創設された。 |
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EU理事会 | 加盟国代表より更正され、欧州会議と共にEU立法を行う。また、共通外交・安全保障政策と警察・司法協会において、EUの唯一の意思決定機関としての役割を果たす。 |
欧州会議 | 直接選挙によって選ばれた785名の議員で構成。欧州市民を代表してEU理事会と共に立法手続きに参加。同時に、EUの諸活動の民主的コントロールを行なう。 |
欧州委員会 | EUの行政執行機関としてEU政策を実施。唯一の法案提出権を持つEU機関としてEU立法に関与。 |
欧州司法裁判所 | EUの基本条約の正しい解釈、適用を確実にする役割を果たす。 |
EUは、経済・社会・規制・金融など、EUとして行動することが加盟国の利益になる政策分野に関与する。行政執行機関である欧州委員会には、EUの権限に属する政策部門の担当部局がおかれ、地域政策については地域・都市政策総局が所管している。
行政分野 | 担当機関 | ホームページ |
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全体 | 欧州委員会 | http://ec.europa.eu/index_en.htm |
在日欧州委員会代表部 | http://www.euinjapan.jp/ | |
統計 | EUROSTAT | http://epp.eurostat.ec.europa.eu/portal/page/ portal/eurostat/home |
地域政策 | 地域・都市政策総局 Directorate General for Regional and Urban Policy |
http://ec.europa.eu/regional_policy/index_en.htm |
空間政策に係る 連携・調査等 |
ESPON, European Spatial Planning Observation Network | http://www.espon.eu/ |
EUにおいては、その中心に位置するノースヨークシャー、フランシュ・コンテ、ハンブルグ、ミラノに囲まれる地域に、人口の41%、GDPの48%が集中しており、既に1957年のローマ条約前文においても、地域間格差是正による均衡ある開発が唱われている。2004年にはGDPの約1割を占める上位地域の一人当たりGDPは、人口の1割を占める下位地域の5倍に上る。
今日のEUの地域(結束)政策Cohesion Policyの枠組みは、1986年の単一欧州条約に立ち返る。この考えはマーストリヒト条約(1993年)にも受け継がれ、地域政策は加盟国の拡大を背景に拡充されて、今日ではEU予算全体の約3分の1の規模となっている。2004年の旧東欧への拡大に伴い、域内の地域間格差は拡大し、これらの地域に重点を移しつつ施策を展開している。
一方、空間計画は、欧州連合の権限の範囲ではないが、非公式の政府間協力により「欧州空間開発パースペクティブ(ESDP)」が策定されるなどの動きがあった。2009年に発効したリスボン条約においては、Territorial Cohesionが加わったことにより空間開発がEUの主管事項となり、様々な空間政策の調整や土地利用・開発計画の権限を有する関係者の連携を推進することが目指されている。
近年では、バルト海沿岸地域やドナウ川流域など多国間に渡る地域での戦略の検討も進められている。
EUの地域政策は経済的・社会的・地域的結束を目指すとともに、欧州2020(Europe2020)の目的である成長と雇用の創出、気候変動とエネルギー対策、貧困と社会的排除の削減に係る施策を積極的に展開している。
目標(Goals) | 地域区分 | 予算配分 | 基金 | 趣旨 |
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成長と雇用への投資 | 後進地域(一人当たりGDPがEU27カ国平均の75%未満) | 1821.7億ユーロ | ERDF ESF |
最も開発が遅れている地域がキャッチアップできるように支援する |
移行地域(一人当たりGDPがEU27カ国平均の75-90%未満) | 353.8億ユーロ | 近年競争力を高めているものの、依然として目標を定めて支援が必要な地域の開発を支援する | ||
中進地域(一人当たりGDPがEU27カ国平均の90%以上) | 543.5億ユーロ | 知識経済における国際的な競争力の向上や低炭素経済への移行を推進する | ||
欧州地域連携 | 962.3億ユーロ | ERDF | 国境を越えた多国間・地域間協力を推進する |
2009年12月に発効したリスボン条約の中で、経済的・社会的結束と並んで「地域的結束(Territorial Cohesion)」が条文に位置づけられた。
「地域的結束に関する緑書」(2008年)では、地域的結束とは、多様性のあるEUの地域(territory)の調和した発展を保証し、市民がこれらの地域の特性を最大限に活用できるようにすることであり、多様性を、EU全域の持続的発展に寄与する財産へと転換していく手段であると述べられている。しかし、その定義、EUの果たすべき役割、地域間協力のあり方、部門別政策や各国の政策との調整のあり方、政策立案や実施における参加のあり方、指標の開発は今後討議すべきテーマとされており、現在でも議論が続けられている。
(情報更新:2015年3月)