概況
オーストラリア大陸の東南2,250kmに位置するニュージーランドは、北島と南島のふたつの大きな島と、周辺の島々から成る。環太平洋造山帯の一部に属し、国土の約4分の3が海抜200m以上の「山国」である。
ニュージーランドは、ポリネシア文化を受け継いだマオリ人が10世紀後半に発見した、1642年オランダ人タスマンによるヨーロッパ人の初渡来、1769年イギリス人クックによる探検を経て、1840年イギリスの直轄植民地となった。その後、1907年にイギリス連邦自治領となった後、1947年、イギリス連邦の1国として独立した。
人口は、2012年現在約444万人であり、その地域別内訳は、北島が約339万人、南島が約104万人となっている(2012年ニュージーランド統計局推計)。ニュージーランド国民の民族構成は、ヨーロッパ系56.8%、アジア系8%、先住民族マオリ7.4%、南太平洋諸島系4.6%、混血9.7%、その他13.7%となっている(2006年国勢調査)。
表国勢概要
国名 |
ニュージーランド New Zealand |
国土面積 |
270,534 km²(日本の約4分の3) |
人口 |
約424万人(2013年国勢調査) |
人口密度 |
16人/km² |
都市人口比率 |
86.3%(2015年) |
GDP |
1,723億米ドル (2016年:IMF、2015年6月末統計) |
一人当たりGDP |
3万7,066米ドル (2016年:IMF、2015年6月末統計) |
産業別 就業人口比率 |
第一次産業4.2% 第二次産業26.5% 第三次産業69.2% (2016年推計) |
実質GDP成長率 |
1.4%(2010-2011年度) 2.5%(2011-2012年度) 2.3%(2012-2013年度) 2.8%(2013-2014年度) 3.6%(2014-2015年度) 2.4%(2015-2016年度) |
(情報更新:2017年3月)
ニュージーランドの地方制度
国の政治制度は、イギリス女王を国家元首とする立憲君主制であり、議院内閣制を採用している。地方制度は、1つの広域自治体(regional council)と61の地域自治体(territorial authority)、6つの統合自治体(unitary authority)から構成される。
広域自治体の権限は必ずしも大きくない。規制機関的性格が強く、水、大気、土壌保全、沿岸環境、汚染、自然災害対応などの役割が主である。広域自治体議員(Regional Councilor)は公選され、互選で議長が選ばれる。一方、地域自治体の権限は広く、土地利用、宅地開発、都市施設、公衆衛生・治安規制などが含まれる。地域自治体の首長(Mayor)と自治体議会の議員は、直接選挙で選ばれる。
国土・地域の整備に係る計画・政策
<空間計画(physical /spatial planning)>
ニュージーランドの都市計画制度は、1991年資源管理法、2002年地方自治法、2003年陸上交通管理法に規定された、以下の様々な計画文書で構成されている。
<地域政策>
各広域自治体には、「地域経済開発戦略」(Regional Economic Development Strategy)を作成することが奨励されている。
国土政策及び空間計画に関する近年の動向
<国土政策>
- 国全域を対象にした総合的な国土計画はない。
- 財務省内に2009年に設置された国家インフラ室(National Infrastructure Unit)が、交通、通信、エネルギー、水供給、上水道、社会インフラを含む国家インフラ計画(National Infrastructure Plan)を策定し始めている。2011年には、2030年までの20年間の長期ビジョンをつくり、インフラの整備方針を定めている。国家インフラ計画により、長期的で計画的な資金の使い方を目指している。2015年に2010年からの活動を元に、信頼性の高い計画を策定することとしている。
<空間計画(physical /spatial planning)>
- 新しい「空間計画」の概念に基づく文書として「オークランド計画」(Auckland Plan)が作成されたことに伴い、オークランド以外の地域での空間計画策定の有用性(特に、国にかかわるインフラ整備財源と関連して)が見直されている。また、「空間計画」の国家的な計画の中での位置づけ(「国家空間計画」(National Spatial Plan)というアイデアを含む)についての議論もなされている。
大都市圏の動向(オークランド)
<最初の空間計画であり、財政計画と連動したオークランド計画の策定>
- オークランド市は、2010年11月1日、一つの広域自治体と七つの地域自治体の合併により、統合自治体となった。
- オークランド計画は、2009年地方自治(オークランド市)法において、包括的、効率的なオークランドの成長と発展に寄与する長期戦略(20~30年計画)を通じて、オークランドの社会的、経済的、環境的、文化的福利に貢献することとされている。
- オークランド計画は、計画を実施するための政策やルールを定めたユニタリー・プラン(Unitary Plan)、空間計画(Place-based Plans)、核戦略(Core strategies)、 長期計画(Long Term Plan)から構成されている。
- 最初のワークショップ、自由議論結果文書、オークランド計画(草案)(Draft Auckland Plan)、最終オークランド計画(Final Auckland Plan)の4段階を経て、2012年3月の最終計画公表に漕ぎ着けた(策定に17ヶ月を要している)。
- このオークランド計画は、ニュージーランドにおける最初の空間計画であり、財政計画と連動した計画であるため、他の自治体も大いに注目している。
<目指すべき目標Outcomeと開発戦略>
- 現市長の「オークランドを世界でもっとも住みやすい都市にする」というビジョンを元に、オークランド計画を組み立てている。
- 30年間に100万人の増加を見込み、40万戸の住宅を建設する。(現在人口約150万人)
- 100万人の増加の内訳は、60%が自然増と国内各地からの移入であり、40%が海外からの流入を見込んでいる。
- 開発は、2010年の大都市境界内(Metropolitan Urban Limit)で70、大都市境界外で40(新開発)の考え方に基づき、質の高いコンパクトな開発を目指す。
地域経済開発
<ビジネス・イノベーション・雇用省の設置>
- 2012年7月にビジネス・イノベーション・雇用省(The Ministry of Business, Innovation and Employment ―MBIE)が2つの省と2つの部門を統合して形成されている。経済開発省(Ministry of Economic Development)と科学未来省(Ministry of Science and Innovation)を軸に、雇用労働省所管の労働部門(Department of Labour)と環境省所管の建築・住宅部門(Department of Building and Housing)を統合して形成した。
- MBIEの主たる関心は、地域群・都市群(特にオークランドとクライストチャーチ)による国の発展・繁栄への貢献を最大化するための、政策的助言づくりにある。
- MBIEは、2005年に設けられていた中央政府関係各省連携によるオークランドの国際競争力強化に取り組むオークランド政策室(Auckland Policy Office)の運営にあたるとともに、6大都市(オークランド、クライストチャーチ等)の「中核都市調査」を実施した。
- また、MBIEはオークランド政策室と連携し、全国を16地域に区分した地域経済分析を元に、大都市以外の地域開発政策、地域がその特色を活かして成長していけることを目指した政策に取り組み始めている。従来の補助金行政から脱却し、OECDやEUで行われている地域のスマートな特殊化政策を目指し、地域の特性に応じた技術開発、技能育成に取り組んでいる。
条件不利地域に対する政策(1次産業地域及びマオリ族に対する政策)
- ニュージーランドには、条件不利地域を特定した明示的な政策は存在しない。
- 但し、農林漁業等の1次産業を主体にした地域は、都市部に比べて所得水準が低く、人口が希薄な過疎的な地域が多い。また、先住民族のマオリ族は農林地、漁業に対して大きな権益を有し、その担い手でもあるところから、その居住地は、農林漁業地域と同様の課題を抱えている。
- 1次産業は、ニュージーランドの経済を支える重要な産業で、現在輸出の3分の2が農産品となっている。1973年のイギリスのEC加盟に伴い、ニュージーランドの農産品に対する販路の補償が全く無くなってしまった状況下で、農家所得に対する補償、多様な補助政策が取られてきたが、それらも1984年からの行財政改革の中で廃止された。但し、効率的な農業経営のためのR&D、研究開発に対する補助は継続され、国際競争力のある農林漁業が形成されている。現在は、特別な支援や税制上の優遇は無い。
- 継続可能な農業経営基金(SSF)や水産養殖改革基金、灌漑促進基金、それに、1次産業のイノベーションのための基金(PGP(Primary Growth Partnership))等、官民連携型の基金による経営革新・研究開発等を中心にした施策が実施されている。
- マオリ族に対する施策としては、部族内に、土地資産等の活用に関する知識、技能が少なく、運営のノウハウが無いところから、国で経営モデル試算等を行いそれを提示することやモデル農場をつくり、その広報普及を図ること等により、土地の有効活用、生産性の向上を促すなどの施策を講じている。
(情報更新:2014年3月)