表国勢概要
国名 | マレーシアMalaysia |
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国土面積 | 約33万km² (日本の約0.9倍) |
人口 | 2,995万人 (2013年:マレーシア統計局) |
人口密度 | 91人/km² |
都市人口比率 | 74.7% (2015年) |
GDP(名目) (単位:億リンギット) |
4,740(2004年)、5,436(2005年) 5,968(2006年)、6,653(2007年) 7,699(2008年)、7,129(2009年) 7,973(2010年)、8,853(2011年) 9,419(2012年)、9,867(2013年) (マレーシア統計局) |
一人当たりGDP(名目) (単位:ドル) |
4,816(2004年)、5,421(2005年) 6,066(2006年)、7,144(2007年) 8,372(2008年)、7,203(2009年) 8,659(2010年)、9,979(2011年) 10,387(2012年)、10,548(2013年) (IMF) |
産業別 就業人口比率 |
第一次産業8.2% 第二次産業37.8% 第三次産業54% (2016年推計) |
経済成長率 | 6.8%(2004年)、5.3%(2005年) 5.8%(2006年)、6.3%(2007年) 4.6%(2008年)、▲1.7%(2009年) 7.2%(2010年)、5.1%(2011年) 5.6%(2012年)、4.7%(2013年) (マレーシア投資開発庁) |
(情報更新:2017年3月)
マレーシアは東南アジアに位置し、クアラルンプールが首都である。連邦国家であり、連邦政府と州政府で統治を分担している。その構成は、半島マレーシアに11州(ジョホール、ケダ、クランタン、マラッカ、ヌグリスンビラン、パハン、ペラ、プルリス、ペナン、セランゴール、トレンガヌ)、ボルネオ島に2州(サバ、サラワク)、3連邦直轄領(クアラルンプール、半島マレーシアにあるプトラジャヤ、ラブアン(サバ州沖合)となっている。
マレーシアはイスラム教国だが、マレー系、中国系、インド系などが共存する多民族・多文化国である。その他で多いのはサバ、サラワクの先住民(カダザン、ドゥスン、バジャウ、ムルット、イバン、ビダユ、ムラナウを含む)である。主な産業はゴムとパーム油の加工・製造、軽工業、電子機器、スズ採掘・製錬、木材の伐採・加工、観光、石油となっている。
マラヤ(マレーシアの旧名称)は18世紀後半よりイギリス植民地であった。1957年8月31日に独立を勝ち取り、1963年9月16日にシンガポール、サラワク、英領北ボルネオ、マラヤ連邦による統一国家マレーシアが成立した。その初期には、1965年にインドネシアとの紛争とシンガポールの独立が起こった。
連邦立憲君主制国家であり、行政は連邦政府、州政府(13州。なお広域圏(region)は二つ以上の州からなる地域である)、地方自治体(149地方自治体:12特別市、39 市、98町)の三層に分かれている。
1976年地方自治法(法第171号)および1976年都市農村計画法(法第172号)が地方自治制度改革の法的土台となった。マレーシアの行政体系は、分散と権限委譲という二つの視点から分散化の構想をとっている(表参照)。
表マレーシアの分散化構想
分散 | 権限委譲 |
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機能の分散 連邦政府は責任と機能を下位レベル、すなわち省庁や州の職員(現場職員)に移転する。例:健康、教育、農業を担当する部局 |
上位レベルの政府が意思決定、資金、運営の権限を地方自治体に委譲する。地方自治体は単体では行動できず連邦政府や州と良好な関係を築かなければならない。 |
首長の分散 連邦政府は現地で地位の高い長官や職員を中央政府の業務実施の補助役に任命する。例:町の担当職員(District Officer) |
義務的な権限:ごみ収集、公衆衛生、疫病の発生、建築規制などに設備やサービスを適応させる。 裁量権のある権限:土地、不動産、投資の開発または所有。 |
Adapted From: Abd. Rahim Md. Yunus (2001)
図国家開発計画の枠組み
資料:Federal Department of Town and Country Planning, Malaysia (2005) "National Physical Plan"
法第172号で規定される開発計画体系に従い、国家空間計画(NPP)として知られる国家戦略的空間計画は連邦によって管轄される。その議長は首相が務め、副首相が副議長を務めることとされる。一方で、複数の州にまたがるプロジェクトを伴う地域計画(regional plans)は重要な戦略的課題に対して策定される。
政策および計画は、国家空間開発の枠組みに沿って具体的な地図や図を伴う州ストラクチャープランに落とし込まれていく。これらの計画は当該州における開発および土地利用に関する政策を示すものである。
なお、ローカルプランは地区レベルで策定され、詳細かつその土地に即した開発の円滑化と運営について、概要が示される。また、地区レベルにはもう一つ、特別区域計画という計画があり、特別な措置が必要な地区に対して詳細な計画を提供するものとなっている。
計画名又は行政分野 | 担当機関 | ホームページ |
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第十次マレーシア計画 | 連邦政府首相府経済企画院 | http://www.epu.gov.my/home |
国家空間計画(2010年改定) | 連邦都市農村計画局 | http://www.townplan.gov.my/ |
クアラルンプール・ストラクチャー・ プラン |
クアラルンプール市 | http://www.dbkl.gov.my/index.php?lang=en |
マレーシアでは経済・社会の開発政策やプログラムに係る策定、調整、意思決定はビジョン2020とマレーシア計画に従って行われる。ビジョン2020は、マレーシア人が目指すべきミッションとして1991年、第六次マレーシア計画の策定中にマハティール前大統領が導入したものである。ビジョン2020は、マレーシアが2020年までに自立、工業化を実現し、充分に発展した国家になるために乗り越えなければならない九つの戦略的課題を示したものである。同時に経済、社会、政治、行政、文化、精神面における環境・制度の改善の必要性についても強調されている。
マレーシア計画は総合的な経済発展の青写真を描いた五ヶ年計画であり、首相府の経済計画ユニットがその策定を担っている。現在は第十次マレーシア計画(2011-2015)が終盤に差し掛かっている。その一方で第十一次マレーシア計画(2016-2020)が策定中であり、2015年6月に議会に提出される予定である。この計画が重視するのは、社会的包摂の促進、福祉の拡大、持続可能な発展の実現、新たな成長源の特定である。
第十次マレーシア計画はビジョン2020に向けた経済的転換における重要なステージにあたっており、政府変革プログラム(Government Transformation Programme)および新経済モデルの両方の意図が織り込まれている。新たな政策の方向性と戦略、プログラムは、一体性と持続可能性を前提に所得増加と発展を実現するための大きな構造的変革の土台を築くものである。掲げられた理念は「ワン・マレーシア:国民第一、今こそ実行(1Malaysia: People First, Performance Now)」である。
この計画の中心的テーマは以下の10項目にまとめられる。
図NPP-2の開発戦略「集中的分散」
資料:Federal Department of Town and Country Planning, Malaysia, 2013 "National Physical Plan 2"
国家空間計画(National Physical Plan:NPP)は国の戦略的空間計画政策および施策であり、連邦都市農村計画局が法第172号第6B節に基づいて立案する。国家空間計画が初めて内閣に承認されたのは2005年のことで、2006年から2020年にかけての半島マレーシアにおける土地利用と空間開発の方向性と手法が盛り込まれた。国家空間計画の見直しは、国家五ヶ年開発計画の見直しと並行して五年ごとに、また、国家空間計画評議会(National Physical Planning Council:NPPC)の指示に応じて行うことが義務付けられている。
国家空間計画に示されたビジョン、政策、施策、土地の配分は、基本的には州ストラクチャープランを活用しながら連邦政府と州政府の協働で行われる。現状では法第172号を受けた国家空間計画の空間政策は、サバとサラワクにおける開発コントロールが個別の計画システムによって行われているため、半島マレーシアに対してのみ実施されている。
2010年8月に承認された国家空間計画の改正では(NPP-2)、その目標は「2020年までに先進国・高所得国となるため国全体の開発を導くための効率的、公平、そして持続可能な国家空間フレームワークの確立」とされていた。また、目標設定の方向性としては、気候変動、持続可能な都市構造、生物多様性、食品安全、並びにグリーンテクノロジーに関連した課題を解決していくこと、更に犯罪抑制、教育、低所得家庭に代表されるようなあらゆる課題を克服することにより国家重点達成分野(National Key Results Areas:NKRAs)を下支えする一方で、都市と農村の物理的な交流を通じて一体的な開発を促進することが示されている。
第二次国家空間計画(NPP-2)は半島マレーシアに対して「集中的分散(Concentrated Decentralisation)」として知られる開発戦略を示すとともに、2020年までに半島マレーシアの都市化率が75%に達し都市人口の70%が四つの都市圏(クアラルンプール都市圏、ジョージタウン都市圏、クアンタン都市圏、ジョホールバル都市圏)に集中すると予測している。重点戦略は、雇用創出の可能性を有する主要経済コリドー沿いのいくつかの都市地域に国のわずかな資源を優先して集中させる(その一方で農村と自然環境を保護する)こと、指定した都市圏と主要都市地域について将来の新たな都市開発と再生を重点化すること(間接的に波及効果を生み周辺地区・地域の開発を誘発する)、ゆくゆくは影響力の大きい重要事業の実施または中核的インフラ設備を通じた成長を後押しすることである。
クアラルンプールの急速な都市化は、トップダウン型の計画システムとゴールデントライアングルと呼ばれる経済活動の集中エリアに国外から投資を呼び込む市場志向型政策の成果として、必然的に起こったものである。トップダウン型の戦略は (1)ビジョン2020、 (2)五ヶ年国家開発計画、 (3)連邦政府の全国空間フレームワーク(nationwide spatial framework:NPP)、並びにそれらを補う形での (4)対象都市の持続可能な都市開発を促す国家都市化政策(National Urbanisation Policy:NUP)に導かれた地域政策によって進められた。ストラクチャープランやローカルプランの策定にあたっての下位レベルの法律や計画との一貫性という意味では、国家空間計画(NPP)および国家都市化政策(NUP)の目標、戦略、政策を2020年クアラルンプール・ストラクチャープラン(Kuala Lumpur Structure Plan 2020)と2020年クアラルンプール市計画案(Draft Kuala Lumpur City Plan 2020)に盛り込むため、クアラルンプール市は連邦都市農村計画局と協力してきた。クアラルンプール・ストラクチャープランは1982年連邦直轄地 (計画)法に基づいて策定される法定計画である。計画を立案するのはクアラルンプール市役所である。現行計画の計画期間は2000年から2020年の20年間で、ビジョン、目的、政策、市への提案が盛り込まれている。
法第172号第16B節は、地区計画機関(local planning authority)が特別区域計画を立案することを定めている。特別区域計画は全体としてはローカルプランと同様の効力を持つが、違うのは開発、再開発、改善、保全または運営による特別かつ詳細な対策の提案がなされることと、提案された対策の特徴が示される点である。
情報通信技術の急速な近代化によって経済成長を分散化してクアラルンプール中心部から開発をたやすく遠ざけることもできたかもしれないが、開発指針の柱である2020年クアラルンプール市計画案におけるゾーニングでは、都市の居住性を高めようと都市計画家が複合的な開発の余地が多い都心での経済活動に注目する傾向があるということが指摘されている。同時に、日常的な移動による交通渋滞を緩和する施策としてクアラルンプール中心部への移住を推進することも目指している。
図既存の土地利用地図(2005年)
資料:Draft Kuala Lumpur City Plan 2020
図土地利用提案図(2020年)
資料:Draft Kuala Lumpur City Plan 2020
急速な工業化はクランバレー(クアラルンプール首都圏)としても知られる首都クアラルンプールの都市膨張につながった。クアラルンプール=プトラジャヤコリドーの大規模な発展に伴い、連邦政府の行政機能が次第にプトラジャヤに移管されつつあり、これによってクアラルンプールの中心的機能が商業の中心地、消費、金融に定義し直された。都市の基幹機能は引き続き都心部に集中している。
「大クアラルンプール(Greater Kuala Lumpur)」(図参照)とは、国家重点経済分野(National Key Economic Areas:NKEA)においてクアラルンプール首都圏またはクランバレーを説明するために用いられている表現であり、個別の地方自治体が統治する10自治体(下記参照)を包含するエリアを指す。
図大クアラルンプールを構成する10の地方自治体
資料:Economic Transformation Programme, 2010
大クアラルンプールの面積は2,793.27km²と、国家空間計画の最新の見直しで定義されたクアラルンプール都市圏(Kuala Lumpur National Conurbation)よりも狭い。大クアラルンプールはクアラルンプール国際空港などの重要拠点を含む最も密度の高い経済集積地に焦点を当てたものである。2010年、大クアラルンプールの人口は約600万人に達し、国民総所得において約2,630億マレーシアリンギットを占めている。これは全国の人口の20%、国民総所得の30%を占め、大クアラルンプールはまさに国の経済成長の動力源であり、ゆえに国家重点経済分野(NKEA)に指定されている。
マレーシアを概観すると、1976年都市農村計画法(法第172号)第6A 節(Part IIA)の定めに基づき、二つ以上の州から成る広域圏に対して地域計画委員会(Regional Planning Committee:RPC)を設立する必要性が出てきている。同法の小区分(Sub-Section)第6A号 (5b)に定められているとおり、地域計画委員会は、対象とする広域圏(region)の開発に向けて規制や運営を行うなかで総合的な地域計画(Regional Plan)を取りまとめる役割と義務を担っている。一般的な「広域圏(region)」の定義は、複数の行政区画をまたがるエリアである。他方、地域計画(regional plan)というのは、成長の均衡化・公平化や開発の分散化、並びに一体的かつ効率的なインフラの枠組みを実現するための空間開発戦略文書を指す。また、都市地域や都市圏の成長を管理するためのツールでもある。第九次マレーシア計画の第17章の第三の目的(3rd Thrust)によれば、地域計画の主目的は、更にバランスのとれた越境地域開発を実現することである。半島マレーシアでは現在、三つの広域圏が計画中となっている:東海岸経済地域(ECER)、北部コリドー経済地域(NCER)、南ジョホールのイスカンダル・マレーシア(IM)。
経済地域は第九次マレーシア計画のもと、官民パートナーシップ(PPP)を通じた経済成長に焦点を当てることによって国内の開発の不均衡をバランスさせる目的で導入された。
表E半島マレーシアにおける経済地域
地域計画 | 関連する州 | 開発計画 | 立地 |
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東海岸 経済地域 |
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北部コリドー 経済地域 |
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イスカンダル・ マレーシア |
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経済地域に関連する指示、政策、戦略は以下の三つの法律を通じて設定された:2007年イスカンダル地域開発機構法(法第664号)、2008年北部コリドー実施機構法(法第687号)、並びに東海岸経済地域開発評議会法(法第688号))。地域経済開発を担う法定組織はイスカンダル地域開発機構(IRDA)、北部コリドー実施機構(NCIA)、そして東海岸経済開発評議会(ECERDC)である。
(情報更新:2015年3月)