オランダ(Netherlands)

概況

オランダの国土は、欧州の本土のほか、オランダ領アンティル諸島及びアルバ島の3つの領域から成る。

本土は九州と同程度の広さであり、北海に面しドイツ及びベルギーに接する。国土の4分の1は海面より低い。国土の東部や南部には丘陵地も見られるが、他は概して平坦で47%は農用地である。人口密度約400人/km²と、わが国(約342人/km²、2012年)よりも高い。国土の26%、人口の46%を占めるランドスタット地域は、首都アムステルダム、ロッテルダム、デン・ハーグ、ユトレヒトを含む大都市圏を形成する。

国勢概要

国名 オランダ王国Kingdom of the Netherlands
国土面積 約41,864km²(九州とほぼ同じ)
人口 1,704.8万人(2016年8月:オランダ中央統計局)
人口密度 407人/km²(2017年)
都市人口比率 90.5%(2015年)
GDP 7,384億ドル(2015年)
(2016年4月公表:IMF数値)
一人当たりGDP 43,603ドル(2015年)
(2016年4月公表:IMF数値)
産業別
就業人口比率
第一次産業1.6%
第二次産業17.8%
第三次産業70.4%(2016年推計)
経済成長率 1.1(2010年)、1.7(2011年)
▲1.6(2012年)、▲0.7(2013年)
0.9(2014年)、1.9(2015年)
1.8(2016年見通し)
(2016年4月公表:IMF数値)

(情報更新:2017年3月)

オランダの地図

オランダ地図

資料:http://europa.eu/abc/maps/members/neth_en.htm

オランダの地方制度

オランダは、分権的統一国家(Decentralized Unitary state)と呼ばれ、州及び基礎自治体は自治権に基づき固有事務を行なう一方、国から委任される共同事務も行なう義務があり、また、これらの長は国王の勅命により任命される。州は日本の都道府県に比べると所管業務は少ない。

12の州及び418の基礎自治体(2010年)からなる。基礎自治体の数は、合併により、2009年の431から減少した。

この2層のほか、多様な形態の複数自治体による広域行政組織(都市地域圏等)も設けられているが、2010年10月に成立した連立内閣は、「小さな政府」をかかげ、都市地域圏の廃止を打ち出していた。

地方政府と空間計画

オランダの空間計画

国土政策関係の主要な機関

政策分野 機関名 ホームページ
空間計画
水資源管理
インフラストラクチャー・環境省
Ministry of Infrastructure and the Environment
http://www.government.nl/ministries/ienm
住宅政策 国務・王室関係省
Ministry of the Interior and Kingdom Relations
http://www.government.nl/ministries/bzk
地域政策 経済省
Ministry of Economic Affairs
http://www.government.nl/ministries/ez
アムステルダム
大都市圏
アムステルダム大都市圏
Metropoolregio Amsterdam
http://www.metropoolregioamsterdam.nl/

国土政策に関わる主要な施策

国土が水に囲まれた低地帯からなるオランダでは、1916年の洪水後のポルダー整備の取組、1953年の洪水後のデルタ計画など、古くから総合的な国土政策の取組が見られた。

空間計画面の取組は、1901年住宅法に遡る。戦後は、当初、復興と住宅不足解消が重視されたが、1960年からは国レベルの国土政策文書が策定され、その主要な課題は大都市圏以外の地域の成長拠点整備、市場重視の都市政策等時々に異なる。

地域政策面では、国内の地域格差は、欧州諸国の中では限られていたが、従来は、北部の農村地域等への支援が行なわれてきた。しかしながら、2006年に政府は従来型の地域政策に終止符をうち、競争力強化とイノベーションのため、国の経済発展に貢献する地域への支援を重視していくこととした。

空間計画の権限

1965年に住宅とは別に、国土計画及び都市計画について定める空間計画法(Spatial Planning Act/Wet op de Ruimtelijke Ordening, WRO)が制定された。

従来の空間計画体系
中央政府は主要計画決定(Key planning decisions)、州は広域的な州地域計画を、基礎自治体は土地利用等に係る構造計画を策定し、下位政府は、国の主要計画決定及び州地域計画に従うこととされていた。
基礎自治体は土地利用ゾーニング計画を策定し、これには州の承認が必要であった。
国レベルの指針(2012年「インフラ及び空間に関する構造ヴィジョン」)
1960年以来、過去に4回、空間計画に関する国土政策文書が策定された。(2001年第5次文書はまとまらなかった。)
2006年には「国土空間戦略-開発のための空間の創出(Nota Ruimte/National Spatial Strategy)」が策定された。同戦略は、従来の国土政策文書と異なり、中央政府による規制を減らし、地方の裁量を重視するものであり、社会経済開発的な内容も含めた多様な記述がみられ、国の投資の優先事項等にも関わる実行アジェンダを含んでいた。
2010年の政権交代に伴って国土空間戦略の見直しが進められた。2012年3月に「インフラ及び空間に関する構造ヴィジョン」(Structuurvisie Infrastructuur en Ruimte (SVIR))が策定され、国土空間戦略は、同構造ヴィジョンによって置き換えられることとなった。
「インフラ及び空間に関する構造ヴィジョン」では、2040年の長期展望として、副題でもある「競争力が高く、アクセスしやすく、住みやすく安全なオランダ」を目指し、中期目標(2028年)として①空間経済構造の強化による競争力の向上、②利用者を第一に考えたアクセス性の高い空間の改善・保証、③優れた自然及び文化的歴史的価値が保全された持続的で安全な環境の保証、を掲げている。
空間計画の権限

資料: Ministerie van Infrastructuur en Milieu (2013) "Structuurvisie Infrastructuur en Ruimte"

空間計画法の抜本改正
趣旨 空間計画法は度重なる改正で複雑化していたが、意志決定手続きの簡素化、実効性の担保等を目的に抜本改正され、2008年7月1日から施行された。
「国土空間戦略」においても示された地方への権限委譲等が進められ、基礎自治体の計画の強化、空間計画の意志決定手続の迅速化が図られた。新法と同時に、土地開発の費用分担に関わる土地開発法も施行された。
空間計画体系 国、州、基礎自治体の計画は、全て各政府による構造ヴィジョンStructure vision (Structuurvisie)に置き換えられた。構造ヴィジョンは戦略的政策に関わり、空間政策の基本原則、政策をいかに実行するかを記載する。国及び州の構造ヴィジョンは、従来と異なり策定主体の内部指針に留まり、下位政府を拘束しない。
土地利用ゾーニング
(Bestemmingsplan)
基礎自治体は従来、既成市街地以外の地域において、土地利用ゾーニング計画を策定してきたが、新法においては、全ての土地について策定・更新が義務づけられた。基礎自治体は、州の承認なく計画を策定することができ、州及び国は、各々の利益に関わる場合、土地利用ゾーニングについて、統合計画(Inpassingsplan)を策定することができることとなった。

なお、空間計画法は、環境管理法などの法令とともに、環境法(Omgevingswet)の体系に統合される予定であり、2014年6月に26の環境関連法を一本化した環境法案が下院に提出された。その目的は、空間計画と環境、自然に関するプロジェクト・活動との一貫性を担保し、地域の実情に応じた運用とするため、より手続きを簡素化して意思決定の迅速化を図るものとされており、空間計画の法体系も改定される見込みである。環境法は2018年の施行が目指されている。

首都圏と空間計画

首都に関わる地域については、複数のレベルで計画が策定されている。

ランドスタット地域
アムステルダム、ハーグ、ロッテルダム、ユトレヒトを含む大都市圏である。「国土空間戦略」はこの地域のインフラ投資等について詳述してはいないため、国はこの地域の重要性から、2040年に向けた地域の将来について、2008年9月に「Randstad towards 2040」と題する構造ヴィジョンを公表した。
なお、Randstad2040は、「インフラ及び空間に関する構造ヴィジョン」により置き換えられることになった。
アムステルダム大都市圏
首都アムステルダム及びスキポール空港含むアムステルダム大都市圏では、国際競争力向上や気候変動などの課題に対処するため、2007年に「Amsterdam Metropolitan Area Development Scenario 2040」が策定された。36の基礎自治体、ふたつの州、ひとつの都市地域圏のインフォーマルな広域連携によるものであり、新空間計画法に基づく基礎自治体の構造ヴィジョン策定の基本方針となる。また、Randstad towards 2040策定の際のインプットともなった。
アムステルダム市
新空間計画法に基づく構造ヴィジョンが、2011年2月に策定された。「強い経済と持続可能性」を副題とし、周辺の基礎自治体との協力により、市域を超えたヴィジョンを描いているのが特徴である。

その他:新デルタ法に向けた取組

2008年9月、洪水対策を検討するデルタ委員会は、温暖化を背景とする近年の海面上昇と河川増水に対応し、交通・公共事業・水管理大臣に、今後100年の安全のための戦略を勧告し、オランダは短期的には安全であるが、長期的には対策の強化が必要とした。この勧告は、最初の国家水計画The First National Water Planの一部となるほか、2009年には、政府は新デルタ法のコンセプトを提出する予定とされた。国家水計画は2009年12月に公表され、新デルタ法案は2010年に議会に提出されて2012年1月に施行された。

(情報更新:2015年3月)