韓国(Korea)

概況

韓国は朝鮮半島のほぼ南半分を占め、面積は日本の約4分の1である。地形は日本に似て山地が多く、国土の約70%を占める。

第二次大戦の終了とともに38度線を境界とする米ソ両軍の進駐により南北分断が始まり、48年8月に南に韓国政府が、9月には北に北朝鮮政府がそれぞれ成立した。

経済成長期においては、国土総合開発計画及び首都圏集中抑制政策の適応にもかかわらず、首都圏への集中が継続し、交通問題、土地及び住宅価格の急騰、環境問題等の首都圏の過密問題が生じ、地域間・都市階層間の格差が持続し、主要開発指標の地域別偏差が存在することが課題となっていた。

2000年代には、国外では気候変動の問題が深刻し、国内では少子高齢化や経済構造の変化により、環境・経済面も考慮した総合的な国土・都市戦略が必要となっている。

国勢概要

国名 大韓民国 Republic of Korea
国土面積 約10万km²
(朝鮮半島全体の45%、日本の約4分の1)
人口 約5,150万人(2015年12月現在)
人口密度 515人/km²
都市人口比率 82.5% (2015年)
GDP(名目) 1兆4,170億ドル (2014年)
一人当たりGNI
(単位:米ドル)
22,460(2007年)、22,850(2008年)
21,090(2009年)、21,320(2010年)
22,620(2012年)、22,640(2013年)
27,090(2014年) (企画財政部)
産業別
就業人口比率
第一次産業2.3%
第二次産業37.6%
第三次産業60.2% (2016年推計)
GDP成長率 5.5%(2007年)、2.8%(2008年)
0.7%(2009年)、6.5%(2010年)
3.7%(2011年)、2.3%(2012年)
2.4%(2013年)、3.7%(2014年)
2.6%(2015年) (世界銀行)

(情報更新:2017年3月)

地方ブロック図

地方ブロック図

資料:(財)日本開発構想研究所作成

国及び地方の関係と計画体系

自治体は広域自治団体、基礎自治団体、下部行政単位で構成されている。

国土政策にかかる計画システムとしては、社会経済開発計画に相当する「地域発展五ヵ年計画」および「グリーン成長五ヵ年計画」と空間計画に相当する「国土総合計画」がある。

国土・都市計画の体系は、国土基本法と国土計画法(国土の計画及び利用に関する計画)によって一元化されている。国土基本法に基づいて国土総合計画を作成し、国土計画法によって広域都市計画及び都市計画を立てることとなり、「国土総合計画→広域都市計画→都市計画」で、各計画は、上位計画の内容に従うようになっている。

この計画体系は2002年の国土基本法の制定により整えられた国土総合計画は、道総合計画、市・郡総合計画と重層関係をなす。また、国家基幹交通網計画、住宅計画などの部門計画と、広域権開発計画・首都圏整備計画等の地域計画がこの計画と調和するようになっている。広域都市計画は、隣接した2ヶ所以上の市・郡が連携した計画方向性を提示する上位計画である。2014年現在、首都圏、釜山圏、 馬昌鎭圏 (旧 馬山市・昌原市・鎭海市)の他、12広域市圏が計画を立案している。

韓国の地方自治 韓国の地方自治

資料:韓国国土海洋部「2008年国土の計画及び利用に関する年次報告書」

国土政策に関わる政府機関等

計画名又は行政分野 担当機関 ホームページ
国土総合計画首都圏整備計画 国土交通部 http://www.molit.go.kr/portal.do
企業都市政策の推進 国土交通部 http://www.molit.go.kr/portal.do
地域開発5ヵ年計画 産業通商資源部 http://www.motie.go.kr/

国土政策に関わる主要な施策

国家均衡発展に関する計画制度概要

韓国では、国家全体の経済社会発展のための上位計画として、1962年以降、七次にわたり「経済開発五ヵ年計画」が策定されてきた。

その後、蘆武鉉政権は、これに代えて2004年に「国家均衡発展特別法」を制定し、「国家均衡発展五ヵ年計画」(2004~2008年)を策定した。

李明博政権(2009~2013年)は、地域の特性に適合した発展と地域間の連携及び協力増進を通じ、地域競争力を高めて、生活の質を向上させることにより、地域間の均衡ある発展に資することを目的とする同法の改正を行い、基礎生活圏、広域経済圏、超広域生活圏の圏域を設定し、「地域均衡発展5ヵ年計画」を策定した。

朴槿惠政権(2014年~現在)が策定した「地域発展5ヵ年計画」は、地域住民の生活の質の向上及び雇用創出を大きな2つの目標として設定している。過去の地域計画は中央政府の主導で政策が提案・実行されたことに対し、朴政府の地域計画は、 "地域カスタム" という概念に注目し、自治体および地域住民が自ら地域開発を主導するようにしている。そのため、 以前とは違い、中央政府と自治体がともに計画を立案したのも特徴である。同計画の大筋は下記の5つである。

  • 1. 地域生活圏の活性化
  • 2. 地域雇用創出
  • 3. 教育環境改善
  • 4. 地域文化隆盛
  • 5. 死角のない福祉医療

この計画によって、全国の56地域が幸福生活圏として設定され、農魚村の上下水道拡大、生活公園拡大のようなインフラの拡充とともに、まち企業の造成、創造産業による地域雇用の推進など、経済的開発への財政投入を行う予定である。

国土総合計画の制度概要

韓国では、「国土建設総合計画法」に基づき「国土総合開発計画」が第一次計画(1972~1981年)以降、概ね10年毎に第三次計画まで策定されてきた。

2002年に同法が「国土基本法」に改められ、計画名称も「国土総合計画」に変更され第四次計画(2000~2020年)が策定された。

計画体系の特徴は、「国土総合計画」-「道総合計画」-「市・郡総合計画」の地域階層構造と、特定の地域を対象とする「地域計画」、特定部門を対象とする「部門別計画」により構成されていることと、「市・郡総合計画」は「国土の計画及び利用に関する計画」に基づき策定される各市・郡の都市計画(日本と異なり行政区域全体を対象とする)をもって当てることとしている点である。

国土総合計画は5年毎に見直されており、現在は、「第四次国土総合計画修正計画」(2011~2020年)が運用されている。同計画は、「韓国の新たな跳躍のための『グローバル・グリーン国土』をビジョンとし、「競争力のある総合国土」、「持続可能なグリーン国土」、「品格のある魅力国土」、「世界に向けて開かれた国土」の四つの目標を掲げ、推進戦略として「国土競争力向上のための地域特化及び広域的協力の強化」、「自然に優しく安全な国土空間づくり」、「快適で文化的な都市・住居環境づくり」、「グリーン交通・国土情報の統合ネットワークの構築」、「世界に開かれた新成長海洋国土基盤の構築」、「超国境的国土経営基盤の構築」を設定している。

同計画の特徴は、①算術的均衡から地域競争力を重視する地域発展戦略に転換したこと、②グリーン成長戦略を採択したこと、③地域間の連携発展の強化、国土の品格及び開放性の強化を打ち出したことである。

首都圏の空間構造

資料:The fourth comprehensive national plan

大都市圏計画の制度概要(首都圏の空間構造)

首都圏整備計画は、1982年制定の首都圏整備計画法第4条に基づき、首都圏整備の基本方向、人口及び産業の配置、圏域の区分及び整備方向、広域施設の整備等に関する基本的な事項を定める長期総合計画である。現行計画は、第三次首都圏整備計画(2006-2020)である。

首都圏整備計画は、首都圏内での他の法令による土地利用計画、各種開発計画に優先し、それらの計画の基本となる。国土海洋部が案を作成し首都圏整備委員会(委員長:国務総理)の議を経て決定する。

首都圏整備法には、大学・工場・公共庁舎・大型建設物等の新増設規制、工業用地及び宅地造成事業の規制、首都圏内の圏域別(過密抑制圏域、成長管理圏域、自然保護圏域)の立地規制等が規定されている。

その他空間開発上、影響が大きい施策の例

その他空間開発上影響の大きい施策の例:現行国土総合計画に見る国際的な視点

「第四次国土総合計画修正計画」(2011~2020年)では、朝鮮半島の地政学的なメリットを活かし、東海岸圏、西海岸圏、南海岸圏を超広域開発圏としてベルト化し、大陸と海洋に進出する戦略的な成長軸として集中育成することとしている。

また、広域経済圏毎の拠点港湾の特化、北東アジア・ポート・アライアンス(Port Alliance)の強化、航空自由化の拡大、仁川国際空港のハブ機能の強化等、港湾・空港のグローバル・ゲートウェイ機能を強化することとしている。

超長期的には、朝鮮半島鉄道網とシベリア横断鉄道(TSR)、中国横断鉄道(TCR)との連結を通じて、アジア・ヨーロッパに進出可能な鉄道輸送・物流体系の構築とアジア・ハイウェイのミッシングリンクの連結のための国際協力を進めることとしている。

さらに、共同事業の発掘・推進、当事国間の協力機関の拡大等を通じて、北東アジア+アセアン地域の超国境的地域開発の協力を進めることとしている。

革新都市
「国家均衡発展特別法」第18条では、国は公共機関の地方移転施策を講じるよう規定しており、これに基づき157の公共機関が選定された。このうち世宗市に移転する機関を除く機関の受け皿を造るため、「公共機関の地方移転に伴う革新都市の建設及び支援に関する特別法」が2007年1月に制定された。
革新都市は、首都圏に所在する公共機関を集団で移転して、公共機関、大学、研究所、企業のための革新環境を造成し、優秀な人材が地方に定着できるよう、良質の定住環境を整備することにより、地域革新の求心体の役割を遂行することを目的とし、首都圏と世宗市を除く各広域自治体に一つずつ計10都市を建設するものである。
同法は、移転する公共機関及び職員に対する支援、従前の敷地の処理・活用方策、特別会計の設置、都市開発の手続等を規定している。
計画期間は、2007~2030年であり、第1期(2007~12)は、移転公共機関の定着段階、第2期(2013~20)は、産・学・研の定着段階、第3期(2021~30)は、革新の拡散段階とされている。各都市の移転公共機関と関連企業の職員数は2,500~4,000人、誘発人口は15,000~25,000人が計画されている。
なお、韓国の広域自治体は、ソウル特別市、6つの広域市、9の道であり、基礎自治体は163の市と郡である。
世宗(セジョン)特別自治市
世宗特別自治市は、2004年、「新行政首都建設のための特別措置法」に対する憲法裁判所の違憲決定以後、2010年に制定された「世宗特別自治市設置などに関する特別法」に設置根拠を置いている。これによって、2012年7月1日、韓国最初の特別自治市である世宗市が生まれた。世宗市は都市の自足性を確保し、住民の最適な居住環境を作るため、先端産業及び大学誘致と共に世界的な水準の教育、文化、福祉インフラの構築、先端情報都市の造成などを積極的に推進している。公共機関は国務総理室を始め、2012年、12個の中央行政機関が移転完了し、2013年に18機関、2014年には6機関が移転を完了した。
企業都市
企業都市は、産業立地と経済活動のため、民間企業の主導で開発される都市として企業自らが必要な用地を開発し、生産・研究開発など関連産業との連携及び効率を最大化させるとともに、居住に必要な住宅・教育・医療などの自足的な複合機能を持つ都市である。2004年「企業都市開発特別法」が制定され、2005年8月、6個の地域がモデル事業地区で選定されたが、2014年現在、泰安(テアン)、忠州(チュンジュ)、原州(ウォンジュ)、務安(ムアン)、靈巖・海南(ヨンアム、ヘナム)の5都市が確定されている。企業都市に関する特別法は2011年、2012年にその詳細が改定されている。

(情報更新:2015年3月)