英国(United Kingdom)

概況

英国の人口は欧州連合で3番目、12.3%を占める。その国土は、イングランド、スコットランド及びウェールズのあるグレートブリテン島と北アイルランドから成る。イングランドのほか、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドには、各々異なる権限委譲を受けた政府がある。ロンドンの議会で可決された法律はこれら三地域にも、ある程度影響を及ぼすものの、一定の範囲内で、三つの地域は独自の議会において独自の法律を導入することができる。

本ページでは、主にイングランドについて記述する。

国勢概要

国名 英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)
United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland
国土面積 24.3万km²(日本の約3分の2)
人口 6,511万人(2015年)
人口密度 268人/km²
都市人口比率 82.6%(2015年)
GDP(実績)
(単位:十億ポンド)
1,659(2008年)、1,589(2009年)
1,614(2010年)、1,646(2011年)
1,665(2012年)、1,701(2013年)
1,750(2014年)、1,789(2015年)
(IMF、英国統計局)
GDP(名目)
(単位:十億ポンド)
1,519(2008年)、1,486(2009年)
1,556(2010年)、1,619(2011年)
1,655(2012年)、1,735(2013年)
1,817(2014年)、1,864(2015年)
(IMF、英国統計局)
一人当たりGDP
(単位:ポンド)
24,750(2008年)、24,044(2009年)
24,989(2010年)、25,596(2011年)
26,139(2012年)、27,072(2013年)
28,132(2014年)、28,634(2015年)
(IMF、英国統計局)
産業別就業人口比率 第一次産業0.6%
第二次産業19.2%
第三次産業80.2%(2016年推計)
経済成長率(実質) ▲0.5%(2008年)、▲4.2%(2009年)
1.95%(2010年)、2.0%(2011年)
1.2%(2012年)、2.2%(2013年)
2.9%(2014年)、2.2%(2015年)
(IMF、英国統計局)

(情報更新:2017年3月)

英国の地図

英国地図

資料:http://europa.eu/abc/maps/members/uk_en.htm

英国の地方制度

イングランドの地方自治制度は頻繁に見直されてきており、複数類型の自治体の並存状況にある。

首都ロンドン 1層制(ロンドン市及び自治区)が基本。
2000年に大ロンドン行政庁(GLA)が設立されたが、権限は一部の広域政策立案に限られる。直接選挙により選ばれる市長と別途選挙されるロンドン議会がある。
6大都市圏 1層制(大都市圏ディストリクト)
その他の地域 1層制(ユニタリー)、2層制(カウンティ及びディストリクト)の地域が並存。

空間計画の体系の見直し

空間計画の体系の見直し

国土政策関係の主要な機関

行政分野 担当機関 ホームページ
空間計画 コミュニティ・地方自治省
Department for Communities and Local Government
http://www.communities.gov.uk
cf. Planning Portal: http://www.planningportal.gov.uk/
地域政策、産業政策 ビジネス・エネルギー・産業戦略省
Department for Business, Energy & Industrial Strategy
http://www.bis.gov.uk/
大ロンドン都市圏の計画 大ロンドン行政庁
Greater London Authority
http://www.london.gov.uk

国土政策に関わる主要な施策

英国においては、空間計画の面では、1947年都市農村計画法(Town and Country Planning Act)により、制度の骨格が作られた。今日の制度は1990年都市農村計画法及び関連法令に立ち戻るが、イングランド及びウェールズについては、2004年、2011年に重要な改正が行われた。

地域政策の面では、大恐慌以降、雇用対策の色合いの濃い地域政策が展開され、特に1960年代以降、特定地域に対する様々な支援施策が展開されてきたが、サッチャー政権時代以降、地域政策の優先度は必ずしも高いものではなかった。1990年代になると、EUの地域政策も意識しつつ、特定の地域に限らず、競争力を強化していく方向の施策が展開され、1999年にはイングランドにおいては8つの地域開発庁RDAが発足した。その後、2010年5月の政権交代によりRDAは廃止され、地方自治体と民間企業のパートナーシップに基づくLocal Enterprise Partnerships(LEPs)が推進されている。

イングランドの空間計画

2010年政権交代以前の計画体系
中央政府はテーマ毎に空間計画の政策方針を記述したPPS(Planning Policy Statements、計画方針声明書)及び地域の全般的な空間開発の方針をイングランドの9の地方毎に記述したRSS(Regional Spatial Strategy、地域空間戦略)を示してきた。
一方、地方自治体はRSSを具体化するように、Local Development Framework(地方開発フレームワーク、LDF)を策定していた。RSSとLDFは法定ディベロップメント・プランとして位置づけられ、地方計画庁はこれらを判断根拠(の一部)として、個別開発行為の許可等を行う「計画許可」制度を運用してきた。
しかし、2010年5月に誕生した保守党・自由民主党連立政権は地域主義(Localism)を掲げ、従来の地域空間戦略を含む計画制度がトップダウンで官僚的であり、かつ住宅供給に十分な役割を果たせなかったという反省を踏まえて、リージョンレベルの組織及び計画を廃止するとともに、よりコミュニティを重視した計画制度へと改革する方針を打ち出し、2011年11月には地域主義法(Localism Act)が成立した。
現行の都市農村計画体系
<中央政府によるフレームワークの提示>
中央政府は、2012年3月に、イングランドの計画の方針を示すNational Planning Policy Framework(NPPF)を公表した。NPPFは、ローカル・プランおよび近隣地区計画を策定する上で考慮されなければならないとされており、経済の競争力向上、中心市街地の活性化、農村経済の活性化、持続可能な交通、質の高い通信インフラ、質の高い住宅の選択肢の拡大、優れたデザイン、福祉、グリーンベルト、気候変動・洪水対策、自然環境の保全、歴史的環境の保全、鉱物の持続可能な利用を支援することが記述されている。しかし、PPGが合計1,000ページを超える文書であったのに対して、60ページに満たない簡潔な文書とされた。また、特定のインフラ事業などは記述されていない。
<協力義務>
Localism Act 2011において、Local Planの策定主体(基礎自治体など)は、ディベロップメント・プランの策定にあたり、広域戦略課題に関して、近隣の策定主体や関連組織と協力しなければならない義務(Duty to Cooperate)が定められた。NPPFでは、協力すべき課題として、住宅・雇用、商業、インフラ、福祉・安全・文化、気候変動対応が例示されている。

イングランドの地域政策

<Local Enterprise Partnerships>

RDAの廃止にともなって、地域経済開発を進めるため、Budget2010においてLocal Enterprise Partnership(LEP)の設置方針が示された。LEPは、機能的経済地域を勘案して、委員会メンバーの半数以上は民間セクターとするビジネス主導の官民学連携とされている。2014年現在、39のLEPが承認されており、イングランド全域をカバーする形となっている。また、一部のLEPは圏域が重複している。

LEPは地域成長基金(Regional Growth Fund)などの競争的資金の獲得や、基礎自治体がLocal Planを策定するにあたっての協力も行っている。また、2014-2020年EU構造基金の管理主体ともなる。

<エンタープライズ・ゾーン(Enterprise Zones)>

サッチャー政権時代にもあったが、連立政権によって2011年に新たに創設された。企業に対して、税制の優遇、都市計画手続きの簡素化、ブロードバンド整備の支援などのインセンティブを提供することで、企業の経済活動の開始・拡大を支援するものである。LEPの圏域内の特定の地域が指定され、2014年現在、24のEZが指定されている。

<地域成長基金(Regional Growth Fund)>

経済成長と継続的な雇用の確保のための民間部門の投資を支援することを目的とした基金。2011~2017年の間で32億ポンドの基金が予定されている。基金の利用申請が可能な事業の最低予算は100万ポンド以上となっており、申請は公共部門単独ではできず、民間あるいはLEPのような官民協働による事業主体でなくてはならない(LEPも申請できるが優先権はない)。成果として、これまでに160億ポンドの民間部門による投資と10万人以上の雇用が創出されたとされている。

<都市協定(City Deals)>

イングランドの長期的な成長に重要な役割を持つ都市(圏)の経済成長を促進するため、政府と都市(圏)が協定を締結し、必要な権限・財源を移譲する。協定の内容は都市(圏)によって異なる。第1陣として、ロンドン以外の8大都市(バーミンガム、ブリストル、マンチェスター、リーズ、リバプール、ノッティンガム、ニューキャッスル、シェフィールド)との間で協定が結ばれた(いずれも都市地域圏が対象となっており、多くの都市ではLEPが主体となっている)。第2陣として、さらに20の都市との間で交渉が行われている。

<成長協定(Growth Deals)>

地方経済の活性化のための政府とLEPとの間の協定であり、政府とLEPの連携を図ることを意図している。政府はLEPに対して地方成長基金(Local Growth Fund)による支援を行ってLEPの活動の自由度と裁量性を高める。LEPは政府との交渉に際して戦略的経済計画を策定し、実行する。協定の内容として、若者の職業訓練、新規の雇用創出、新規の住宅供給、交通・情報インフラ整備などが対象となる。第1期として、60億ポンド分のプロジェクトが合意されており、このうち2015-2016年のLGFによる支援は20億ポンドである。2015年1月には10億ポンドのLGFによる追加支援も表明されている。

大都市圏レベルの空間計画:ロンドン

資料:Mayor of London (2011) "THE LONDON PLAN: Spatial Development Strategy for Greater London".

大都市圏レベルの空間計画:ロンドン

大ロンドン行政庁法はロンドンにおける空間開発戦略の策定を市長に義務づけており、これに基づき、従来の戦略ガイダンスに代わるThe London Planが2004年2月に策定された。各boroughのLocal Planは、一般的にこれに沿ったものとし、市長の作成する他の戦略もこれと一貫したものとすることとされている。

2011年7月には、2008年に当選したジョンソン市長のもとで、新しいロンドン・プランが策定された。2031年を目標年次とし、経済成長・人口増加への対応(生活の質の向上など)、国際競争力の強化(強く多様な経済など)、多様で安全でアクセス性の高い近隣地区の形成、感覚を刺激する都市づくり(景観など)、環境対策で世界を主導すること(気候変動など)、仕事や機会への利便性・安全性向上(交通システムの改善など)などの戦略に基づく政策を示している。

イングランド以外の地域の空間計画

イングランドと異なり、他の3地域においては、各々固有の制度に基づき、地域全体としての空間計画が策定されている。土地利用計画に留まらず、地域の戦略を示すものとして空間計画をとらえる動きもみられる。

ウェールズ 根拠法 The Planning and Compulsory Purchase Act 2004は、ウェールズ議会に空間計画 (Wales Spatial Plan)策定を義務づけており、また、The Government of Wales Act,2006もこれを政策として位置づけ、経済開発等も広範に含むフレームワークとしている。2014年10月には、計画主導型アプローチの強化、広域的課題への対応などを目的とした新たな計画法案(Planning (Wales) Bill 2014)がウェールズ議会に提出された。
計画 "People, Places, Future-The Wales Spatial Plan 2004" (2008年に改訂)
新計画法案ではウェールズ空間計画に替わる国家開発フレームワーク(National Development Framework)、複数の地方自治体に跨る戦略的開発地域の指定および計画に関する規定が盛り込まれている。
北アイルランド 根拠法 空間計画の基本的な事項は、The Planning(Northern Ireland) Order,1991に定められている。
計画 "Regional Development Strategy for Northern Ireland(RDS)"
2001年9月に "Shaping Our Future—Regional Development Strategy for Northern Ireland 2025" が策定された。RDS2025は2008年に改訂され、2012年3月には、新たな戦略である "Regional Development Strategy 2035-Building a Better Future" が策定された。RDSは、北アイルランド政府の政策を空間的観点から補完し、公共・民間部門に対する長期の空間戦略を提示するものである。
アイルランドの国土空間戦略との連携も考慮されており、2013年7月には、北アイルランドとアイルランドの空間戦略の連携枠組みも作成されている。
スコットランド 根拠法 The Town and Country Planning (Scotland)Act,1997が基本となる。
計画 "NATIONAL PLANNING FRAMEWORK FOR SCOTLAND"
スコットランドの空間開発の枠組みを示した長期戦略である。1999年の地方分権化やESDPを背景に、2004年に第1次、2009年に第2次、2014年6月に第3次のNPFが策定された(第2次NPFから法的に位置づけられている)。同時に、都市計画の運用と土地利用・開発に関してスコットランド政府の方針を示したScottish Planning Policyも策定されている。
NPF3では交通インフラ整備や主要な都市開発、グリーン・ネットワークなど14の開発プロジェクト (national developments)が示されている。
法定の開発計画(Development Plan)として、地方自治体(一層制)はLocal Development Planを策定する。また、4大都市地域圏(アバディーン、ダンディー、エジンバラ、グラスゴー)においては、広域計画であるStrategic Development Planを策定することになっている。

(情報更新:2015年3月)