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レーザーセンサーによる高精度でリアルタイムな人流計測

実施事業者株式会社日立製作所 / 株式会社日立情報通信エンジニアリング
実施場所愛媛県松山市 駅前広場 / 東京都江東区 豊洲エリア(駅周辺)
実施期間データ計測:2020年11月(松山市駅前広場)、 2020年12月(江東区豊洲エリア) / 解析:2021年1~3月
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レーザーセンサーにより取得された人々の移動軌跡を蓄積し、可視化。滞留状況の推測・分析を通じた空間設計への活用を検証する。

実証実験の概要

レーザーセンサー(3D LiDAR)を用いた⼈流解析技術は、レーザー光を用いて対象となる人との距離を計測し、人の動き、流れ、滞留状況などを把握する技術である。また写真や映像を取得せず正確な人の位置情報を計測可能な3D LiDARを用いることで、プライバシーを考慮しつつ高精度かつリアルタイムに都市活動を把握することが可能となっている。今回の実証実験では、市街地で面的に人流計測を行うため、地方都市の中心エリア(愛媛県松山市駅前広場)と23区内の複合市街地(東京都江東区豊洲エリア)の2か所で技術検証を実施した。

実現したい価値・目指す世界

レーザーセンサーにより取得されたポイントデータを3D都市モデルに重ね合わせ、高精度でリアルタイムに人流を可視化することで、市民や観光客が安心・快適に利用し、回遊/滞留できる交通結節点・広場のレイアウトや、歩いて暮らせるまちづくり、交通機関混雑の平準化、地域商業活性化などの各種施策に活用することを目指す。

松山市駅前広場の実証実験では、松山市や松山アーバンデザインセンター(UDCM)と連携し、計測データを駅前広場整備の合意形成・計画策定のための検討材料とするほか、市民およびまちづくり関係者を対象とするワークショップにも活用する予定である。また、広場内施設の利用状況などを把握することで、植栽やベンチの設置箇所など広場の細部の空間設計に活用することも目指している。

江東区豊洲エリアの実証実験では、江東区や豊洲スマートシティ推進協議会と連携し、「適度なにぎわい創生」をテーマに計測した人流データと3D都市モデルを豊洲のまちづくりに活用することを試みる。3D都市モデルとともに計測データを分析することで、回遊/滞留行動促進のためのキッチンカーの配置や案内サイン設置など、広場のエリアマネジメントに活用が見込まれるほか、豊洲スマートシティ推進協議会が推進するスマートシティの取組みのひとつである「バーチャル豊洲」の実現にも寄与することが期待される。

計測箇所(松山市)
ロケーション(豊洲)

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

松山市駅前広場および江東区豊洲エリアにおいて、レーザーセンサー(3D LiDAR)を用いて人の動きを定点観測することにより、移動軌跡として人流を取得した。3D LiDARを用いた人流解析技術は、レーザー光を用いて対象となる人との距離を計測するため、通過人数のほかに移動経路などを把握することができる。また、写真や映像を取得せずに人の位置情報の正確な把握が可能であるため、プライバシーを考慮しつつ高精度に人流データを取得することができる。

今回の実証実験では、取得したデータを用いて移動軌跡を3D都市モデル上で可視化することで、人の移動状況をアニメーションとして時系列順に表示することを試みた。また、軌跡を構成する各点の間隔から移動する点の速度や滞留状況を推測・分析することが可能であり、今回の実証実験でも市民に向けた情報発信等において活用した。

計測機器(3D LiDAR)設置イメージ
計測の様子(松山市):現地PC上で人流可視化を実施している様子

検証で得られたデータ・結果・課題

今回の実証実験では、実証場所として松山市、江東区ともに駅前広場を選定した。駅前広場は、歩行者交通量も多く、時間帯によってさまざまな人の流れが交錯するため、精密な人流計測の難易度が高い。レーザーセンサーによる人流の取得・解析技術を活用することで、データの欠落が少ない形で人の移動軌跡を把握することができた。
 取得した移動軌跡は、3D都市モデル上に重畳して可視化した。これにより、駅周辺の建物と人の流れの関係性を時間帯別に把握することができた。

松山市駅前広場の実証実験では、松山市や松山アーバンデザインセンター(UDCM)と連携し、駅前広場整備の合意形成・計画策定のための検討材料とするため、市民およびまちづくり関係者を対象とするワークショップにおいて計測データの説明を行い、ヒアリングを行った。歩行者数のピーク時間帯の可視化や時間帯別の歩行速度などデータの分析例を提示したところ、「データを見る前よりも紹介後のほうが駅前広場整備の必要性に関する参加者の意見が具体的になり、よい議論ができた」との意見が出るなど、データに基づく議論により、より精緻なまちづくりのプランニングの実現を期待できる結果が得られた。

江東区豊洲エリアの実証実験では、江東区や豊洲スマートシティ推進協議会と連携し、「適度なにぎわい創生」をテーマに、計測データから人流軌跡や滞留状況の可視化を実施した。この結果を用いて、今後、回遊/滞留行動促進のためのキッチンカーの配置や案内サイン設置など広場のエリアマネジメントに活用していくことや、豊洲スマートシティ推進協議会が推進するスマートシティの取組のひとつである「バーチャル豊洲」の実現に寄与していくことを目指す。

人流可視化イメージ(松山市)
人流可視化イメージ(豊洲)
計測結果の例(松山市):11月27日(金)の松山市駅前広場の利用者数
人流可視化映像のスクリーンショット(豊洲):移動速度の色別表示

今後の展望

レーザーセンサーを用いて取得した人の軌跡を3D都市モデル上に表示し、人の動きが交錯する場所や軌跡の密度が高い箇所などを把握することで、混雑度や滞留状況をわかりやすく可視化できることが明らかになった。レーザーセンサーで取得した人流の軌跡データは、滞留状況や移動速度なども取得しているため、回遊・滞留状況の把握や混雑平準化などのより高度な分析も可能である。

今後の展望としては、滞留状況や速度等の推計・加工データなど、今回は可視化の対象としなかったデータも3D都市モデル上で可視化することで、まちづくり施策の合意形成・計画策定等を加速させるツールとして3D都市モデルを引き続き活用することを目指す。また、センシング機器を利用して取得した実際の人流のみならず、たとえば検討中の施設等の整備完了後の人流シミュレーション結果など、仮想状況下での人流を表現するツールとして3D都市モデルを活用することも期待される。