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ソーシャルディスタンシング判定技術

実施事業者日本電気株式会社
実施場所栃木県宇都宮市 オリオン通り商店街
実施期間データ計測:2021年1月 / 解析:2021年2月~3月
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カメラ映像を解析することで、ソーシャルディスタンシングの確保状況を可視化。「密」を回避しつつ街中の回遊性向上や地域経済活性化に繋げる新たなモニタリング技術を検証する。

実証実験の概要

宇都宮市では目指す都市空間の姿として「ネットワーク型コンパクトシティ」の実現を掲げている。2019年度には官民連携による「Uスマート推進協議会」を設立。2019年度には国土交通省スマートシティモデル事業先行モデルプロジェクトにも採択され、「宇都宮スマートシティモデル推進計画」を策定し宇都宮スマートシティ構想の実現を推進している。また、地域共生型のまち実現のためLRTを軸とした施策推進が計画されており、来街者の安全や地域経済活性化の実現を目指している。

実現したい価値・目指す世界

今回の実証実験では、施設に設置したカメラの映像を個人情報保護に配慮した形で利用。映像内の場所と大きさの関係を計算することで人と人の距離を高精度に求めることのできるソーシャルディスタンシング判定技術の活用検証を行う。

繁忙期(2021年1月)においてソーシャルディスタンシング(例えば2メートル)の確保状況の可視化や混雑度を統計データ化し、イベント開催や都市内回遊性、感染拡大防止等の推進に活かす。将来的には、人流と顧客ニーズの活用によるおもてなしの向上、中心市街地等の活性化,災害時の迅速な避難誘導など、複数分野の取組みを推進することを目指す。

※画像はイメージ

オリオン通り周辺の建物モデル
カメラ設置位置とカメラ向きを示した図

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

モービルアイ製 Mobileye 8 Connect は、最先端のビジュアルコンピューティングと AI を搭載した後付け型の安全運転支援システムであり、事故防止とドライバーのパフォーマンス向上に役立つ機能を備えている。また、このシステムが持つデータ収集機能により、通常通りの車両を運行するだけで、各種道路インフラの状況や他の車両・歩行者のデータをリアルタイムで収集することができる。これらのデータをGISデータとして、既存システムと連動させることでインフラ整備や保守点検作業などを効果的かつ分かりやすくサポートすることができる。

実証システム構成図
ソーシャルディスタンシング判定技術の処理手順

検証で得られたデータ・結果・課題

カメラ画像の解析により、対象エリア内の歩行者数とソーシャルディスタンシング判定結果を把握することができた。判定結果のデータを一定期間収集することで、各日の時系列の推移から、各日の人数カウントだけでなく、平日と土日の比較などの観察評価や、日毎の推移から、週内の定期的な変動、イベントの検知、実証期間を通しての推移変化など評価期間における観察評価も可能である。

一方で、解析対象の画像には撮影対象と画像品質における一定条件が求められる為、これを満たさない既設カメラ画像の場合は正確な解析結果が得られないことも明らかになった。今回の実証実験では既設カメラの代替としてオリオン通り周辺の建物内に設置した仮設のカメラを用いることで、道路使用許可申請等が不要な形で実証を継続することができた。

人流モニタリング結果の可視化イメージ(人数カウント・ソーシャルディスタンシング判定)
人流モニタリング結果の可視化イメージ(人数カウント・ソーシャルディスタンシング判定)
収集できたデータの例(カメラ画像解析による人流カウントを平日別に平均値集計したグラフ)
収集できたデータの例(カメラ画像解析による人流カウントを土日別に平均値集計したグラフ)

今後の展望

人流モニタリング結果は、街中の回遊性向上や地域経済活性化への施策検討に活用可能である。例えば、街中におけるオープンカフェ等の施策実施と併せて人流モニタリングを導入することで、什器配置による通路への滞留や部分的な密の発生等の評価検証を実施するなど、施策前後による効果を的確に把握することが考えられる。

また、将来的にリアルタイムでのカメラ画像解析が実現した場合は、イベント会場等への人流モニタリングによって現場の状況を踏まえた適切な現場対応が実現することが期待される。