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スマートフォンなどが発する電波(Wi-Fiと4G/LTE)を活用した混雑状況モニタリング

実施事業者国立大学法人 九州工業大学 大学院工学研究院/IoTシステム基盤研究センタ―
実施場所福岡県北九州市 小倉駅周辺及びスペースワールド駅周辺
実施期間データ計測:2021年2月 / 解析:2021年2月~3月
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スマートフォンの発する電波を用いて測定エリアの人数を推定。電波を活用した人流モニタリング技術を検証する。

実証実験の概要

都市活動モニタリング手法の一つに、スマートフォンなどの通信端末が発する電波を活用した人流解析技術がある。通信端末の発する電波をキャッチするセンサーの設置には、カメラやレーダー機器のように大規模な設置工事を伴わないため、簡便な都市活動モニタリング手法として期待されている。

今回の実証実験では、異なる2種類の電波(Wi-Fiと4G/LTE)を用いて測定エリアの人数を推定し、推定結果を比較分析することで、電波を活用した人流モニタリング技術の確立に向けた技術検証を行う。

実現したい価値・目指す世界

新型コロナウイルスの影響により、「3密を避けた行動」が求められている中で、エリアの混雑状況を低コストかつ効率的に把握することは重要である。今回の実証実験ではスマートフォンなどの無線通信端末が発する電波から対象エリアの人数を評価し、その時間変化を比較することで公共空間の混雑状況を推定する。

対象エリアは北九州市の小倉駅周辺・スペースワールド駅周辺の2か所とし、スマートフォン等の通信端末が発する異なる2種類の電波(Wi-Fiと4G/LTE)を解析する。このため、Wi-Fi機能に関係する電波を解析する機器(Wi-Fiパケットセンサ)と、4G/LTE機能に関係する電波を解析する新たに開発した機器を用いる。また、解析結果を3D都市モデル上で重ね合わせ、混雑状況の可視化を検証する。

この実証実験により、異なる2つの技術のメリット・デメリットを検証するとともに、3D都市モデルと組み合わせた都市活動モニタリング手法の確立を目指す。

小倉駅周辺の建物モデル
スペースワールド駅周辺の建物モデル

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

異なる2種類の電波(Wi-Fiと4G/LTE)を活用した人流モニタリング技術の確立に向けた検証を行うため、Wi-Fi機能に関係する電波を解析する機器(Wi-Fiパケットセンサー)と、4G/LTE機能に関係する電波を解析する新たに開発した機器(4G/LTEセンサー)を用いた。

Wi-Fiパケットセンサーでは、観測エリア内の携帯端末が発する識別符号(MACアドレス)を検知し、端末台数の計数結果を人数カウントデータとして取得した。4G/LTEセンサーでは、観測エリア内の携帯端末が発する4G/LTE機能利用時の電波強度を補足・分解し、強度と周波数帯域のパターン等から発信を行った端末数を推定することで、人数カウントデータを取得した。

2種類のセンサーから取得した人数カウントデータと各センサの位置情報を用いて、解析結果を3D都市モデル上で重ね合わせることで、駅周辺の群衆度(混雑状況)を可視化した。

Wi-Fiパケットセンサー機器
4G/LTEセンサー機器による計測

検証で得られたデータ・結果・課題

Wi-Fiパケットセンサーによる人流モニタリングでは、床や天井による電波減衰を考慮した閾値を設定することで、人流計測を実施するフロアとは別のフロアのデータを除去することができる。この技術を用いることで、フロア別の滞留人数を推定することができた。また、3D都市モデル上へ計測結果を重畳することで、フロア別の滞留人数を立体的にわかりやすく可視化することを試みた。

新たに開発した4G/LTEセンサーによる人流モニタリングについては、同時間帯に同一フロアで計測したWi-Fiパケットセンサーの人数カウントと同程度の精度で人数カウントが可能であることが明らかになった。一方で、測定装置を設置する場所のノイズ(環境電磁雑音レベル)による影響を受けることも把握された。

Wi-Fiパケットセンサーと4G/LTEセンサーのどちらの人流モニタリング技術にも共通する課題としては、測定した電波強度に対するフィルタリング閾値設定など、測定結果を人数カウントに変換する処理に作業工数がかかることが挙げられる。今後、これらの技術を他のエリアに横展開する際には、類似する計測環境で用いたパラメータ設定を援用するなど、計測後の処理を効率化することが考えられる。

3D都市モデルへの重畳結果:小倉駅前ペデストリアンデッキ
3D都市モデルへの重畳結果
3D都市モデルへの重畳結果
3D都市モデルへの重畳結果

今後の展望

実証エリアの一つである北九州市東田地区は、今後、スペースワールドの跡地など大規模再開発が予定される地域である。今回の実証を契機に継続的に人流モニタリングを実施することで、開発前後での時間帯別の人の増減などを把握し、大規模開発がもたらす地区への影響について検証することが期待できる。

また、今回技術検証を行った4G/LTEセンサーによる人流モニタリング技術は、電波強度の測定という匿名性の担保された計測手法である。今後、Wi-Fiパケットセンサーと同じく、大規模な設置工事を伴わない簡易な人流モニタリングを実施可能な技術としての活用が期待できる。