uc20-017

センサー配置シミュレーション

実施事業者株式会社三菱総合研究所 / 一般社団法人大手町・ 丸の内・有楽町地区まちづくり協議会
実施場所東京都千代田区 大丸有エリア(丸の内仲通り)
実施期間-
Share

3D都市モデルをプラットフォームとしたセンシング機器の設置シミュレーションを実施。大丸有スマートシティの推進に不可欠なデジタルツインの基盤提供を目指す。

実証実験の概要

大丸有のスマートシティでは、デジタルとリアルの融合による「エリアマネジメントのDXモデル」の構築の実現を目指している。今回の実証実験では、大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会(以下、大丸有まちづくり協議会)と連携し、その実現に必要となるセンサーの設置場所を3D都市モデル上でシミュレーションする技術検証を行う。

実現したい価値・目指す世界

大丸有まちづくり協議会では、大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティプロジェクトとして、デジタルとリアルの都市を高度に融合させ、都市のリアルタイムデータを収集することで、データに基づいた意思決定を行う「エリアマネジメントのデジタルトランスフォーメーション(DX)モデル」の構築を目指している。建物内外を通じてスマートシティ推進に必要なツールであるセンサーについては、特にパブリックスペースにおける設置方針が未確定の状況にあるほか、民間設置のセンサー等の情報連携の仕組みがないため、エリア全体としてのスマートシティインフラとして必要なセンサー等の計画的な構築が進められない状況である。そこで、スマートシティへ寄与する各種センサーの全体最適化した設置方針等を整理すべく「センサーマスタープラン」の検討を進めている。

センサー配置は、ユースケースとセンサースペックの双方からの検討を行ったうえで、大丸有エリア全体の観点で計画する必要がある。3D都市モデル上でのセンサースペックに応じた配置シミュレーションにより、設置エリア、具体設置箇所、センサーで取得可能となる範囲・精度などを踏まえたエリア全体での最適なセンサー設置計画の策定に寄与することが期待される。

丸の内仲通り(実証対象)
大丸有エリア

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

今回の実証実験では、大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会と連携し、人流を計測するためのセンサーの設置場所を3D都市モデル上でシミュレーションする技術検証を行った。大丸有エリアでは2020年に3Dレーザーセンサーを用いて人の動きを計測する実証事業「Marunouchi Street Park 2020 人流データ計測」を実施しており、その際に用いられた3D-LiDARセンサーの仕様を想定して、エリアを訪れた人の動きを漏れなく計測するためのセンサーの個数や設置場所、設置高さに応じた設置角度を検討した。さらに、それらを3D都市モデル上に重畳し、センサーの計測距離や照射範囲を確認した。

検証で得られたデータ・結果・課題

020年の人流実証実験では、街路樹にセンサーを設置して人流計測を行ったが、街路樹への設置は電源確保のための配線が必要でありメンテナンスに手間がかかることに加えて、景観の観点からも問題があるなどの課題が明らかになった。

今回の実証実験では、建物壁面や歩道上のフラッグポール(街路灯)などの工作物にセンサーを設置する場合を想定し、3D都市モデルを用いて最適な配置計画のシミュレーションを行った。シミュレーションの結果、建物とフラッグポールの両方にセンサーを設置することで、街路樹のみに設置する場合と比べて少ない個数で空間全体を計測できることが確かめられた。

従来はこうした作業には実際にセンサーを設置して計測範囲を確認したり、新たに図面を作成したりする必要があったが、3D都市モデル上にシミュレーション結果を可視化する環境を開発することにより、センサーの仕様や設置角度による計測範囲の確認を簡易に行えるようになった。

今後の課題として、今回は別のシミュレーターで検討した配置パターンを3D都市モデル上に再現しており、センサーの仕様や設置箇所を変化させた場合に計測範囲がどう変化するのかなど、細かな設置条件の調整を行うことはできなかった。より効率的に実空間の状況に即したセンサー設置計画を検討するためには、シミュレーション機能を備えたアプリケーションとの連携が求められる。

計測対象(歩行者)の計測可否の確認
シミュレーションしたセンサー配置パターンでの エリアの計測範囲の確認
樹木に高さ1.5m・設置角度0°・歩道向きに設置した場合
樹木に高さ2.0m・設置角度-21°・歩道向きに設置した場合

今後の展望

人流センシングは「エリアマネジメントのDXモデル」を実現するための重要な要素技術だが、現状、センシング機器をまちなかに恒常的に設置する事例は少ない。24時間365日、環境が変化する屋外空間では、センサーの仕様、設置場所の特性や周囲の状況に合わせて綿密かつ柔軟な設置計画を策定しなければならない。特に不特定多数の人が往来するパブリックスペースにおけるセンサーの設置には、電源の有無や安全性、障害物による影響などを考慮する必要がある。

パブリックスペースにおけるセンシング機器の設置には、地権者や来街者、行政、警察などの多数のステークホルダに対して、センシングの必要性や安全性など、「どこに、なぜ設置しなければならないか」を合理的にわかりやすく説明することが求められる。3D都市モデルは多岐にわたる情報を一覧的に可視化することができるため、多様なステークホルダとの合意形成やセンサーの最適な設置・運用計画を検討する上で有効に機能すると考えられる。

また、機器の施工・運用段階においても、例えば、設置場所周辺における電源の有無、通信環境などの情報を組み合わせることでセンサー設置にかかる施工容易性を検証したり、センサーの保守・点検等の運用状況を可視化したりすることが可能になる。3D都市モデル上でのセンサースペックシミュレーションと実測値との差分比較・分析・シミュレーション条件の見直し・実測を繰り返すことで、パブリックスペースの類型に応じた、より精度の高い配置パターンや設置方針の検討ができ、これらをもとにエリア全体での最適なセンサー設置計画の策定に寄与することが期待される。