uc20-028

エリアマネジメントのデジタルツイン化

実施事業者東急不動産株式会社 / ソフトバンク株式会社
実施場所東京都港区 東京ポートシティ竹芝及び周辺エリア
実施期間2021年3月
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ファシリティマネジメントを街区全体に拡張するプラットフォームを開発。エリア単位の安全・安心や利便性向上を可能とするデジタル・エリアマネジメントの実現を目指す。

実証実験の概要

従来3Dモデルを活用したファシリティマネジメントはビル単位で行われてきたが、これを3D都市モデルと組み合わせることで、街区単位でのエリアマネジメントに拡張し、エリア全体の価値向上につながることが期待されている。

今回の実証実験では、東京ポートシティ竹芝を中心とする3D都市モデルと、そこに設置されている1,000以上のセンサーから取得されるデータを活用し、3D都市モデルをベースとしたビル管理の業務効率化の検証や、エリア来訪者の利便性向上を検証する。

実現したい価値・目指す世界

竹芝エリアでは、2020年9月に東京ポートシティ竹芝が開業し、この他、ウォーターズ竹芝等の再開発事業が進められているが、これらの再開発事業により地区内の人口(就労・居住)が急速に増加し、エリアとして環境の変化への対応が求められる。東急不動産は、東京ポートシティ竹芝の事業期間である今後70年間、竹芝地区(約28ha)でのエリアマネジメント活動を行うこととなっており、この活動を通じて、まちの課題を解決し、より良い環境を提供することで、まちの持続的な発展を実現できるものと考える。さらに、まちの様々なデータを活用し、まちの状況を的確に把握したうえで活動を行うデジタルなエリアマネジメント活動を実施することで、これまでの活動とは異なる、高付加価値のまちづくりが可能となる。

今回の実証実験では、ビル単位で行われていたデジタル・ファシリティマネジメントを拡張し、3D都市モデルを活用した東京ポートシティ竹芝及び周辺エリアのマネジメントに拡張することで、竹芝エリアでの70年のまちづくりシミュレーションの検討ツールとしての活用を見据えた、将来の高度なエリアマネジメントの実施準備を行うことを目指す。このデジタル・エリアマネジメントを用いて管理業務効率化の検証を行うとともに、エリア来訪者向けの建物内施設へのルート表示サービスを提供することで、エリアの利便性が向上するかを検証する。

対象エリアの地図(2D)
対象エリアの地図(3D)

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

3D都市モデルを活用したデジタル・エリアマネジメントの実効性検証のため、ファシリティマネジメントシステムを東京ポートシティ竹芝及び周辺エリアに拡張するWEBアプリケーションを開発した。

システムの中核として東京ポートシティ竹芝のBIMデータをベースとしたLOD4の3D都市モデルを作成。周辺エリアの3D都市モデルと統合した『バーチャル竹芝』を構築し、デジタル・エリアマネジメントの基盤とする。システム上ではエリア来訪者向けのルート案内表示サービスや、ビル管理者向けの混雑状況監視・要注意者検知・警備員オペレーション支援等のファシリティマネジメントサービスを提供し、エリアマネジメントの高度化とファシリティマネジメントの効率化を検証した。

これらのサービスを計14人の被験者に体験してもらい、その効果を検証した。

調査の様子
ビル管理ツールの実証調査の様子

検証で得られたデータ・結果・課題

今回の実証実験により、3D都市モデルを活用したデジタル・エリアマネジメントシステムの提供によって、来街者の利便性向上・ビル管理者の業務効率化が実現し、エリアマネジメント活動の高度化やファシリティマネジメントの効率化に繋がる可能性が導き出された。

エリアマネジメントの観点からは、バーチャル竹芝に各種のセンシングデータ等を重畳して表示することで、まちの状況を的確に把握し得ることが明確になった。これにより、まちの課題発見や、より良い環境提供のためのデータ分析等を実現することが期待される。

また、バーチャル竹芝をベースとするファシリティマネジメントサービスがビル管理業務の効率化に貢献することや、このシステムを街区単位へ拡張することで、エリア単位の安全・安心や利便性向上に資するマネジメントサービスを提供し得ることも確認できた。

一方で、今後の事業化検討に向けては、エリアマネジメント高度化のための様々なシミュレーションを可能とするため、バーチャル竹芝のモデル精度の向上、取り込みデータ・機能の拡張、他事業者の巻き込みの必要性等も明らかになった。

ルート表示の画面(屋外)
ビル管理ツール画面
混雑度ヒートマップとアラート
警備員位置情報の表示

参加ユーザーからのコメント

・2D表示と比較して、3D表示は複数フロアを一画面で確認できるため、大規模複合施設ならではの複雑な動線を簡単に理解できた
・リアルタイムで変化する混雑状況等といった複数の情報を3Dで一度に表示することで、エリアの状況を短時間でより適切に理解することが可能となり、トラブル発生時に発生箇所と他フロアにいる警備員に対して駆け付けの指示出しを円滑に実施することができた

今後の展望

本実証実験の結果を踏まえ、デジタル・エリアマネジメントの実現に向けたバーチャル竹芝の更なるエリア拡張・街区情報の取り込みを行い、先端のテクノロジーを街全体で活用してエリアの発展や課題解決を実現するスマートシティのモデルケースの構築を加速させていく。

今後の検証ポイントとして、バーチャル竹芝を活用したエリアマネジメント活動効果のわかりやすい可視化がある。大規模開発事業において必須であるエリアマネジメント活動に関しては、活動の経済効果を視覚的・定量的に示すことが難しく、エリアの住民や事業者からのコミットメントの引き出しに課題がある。バーチャル竹芝を通じてエリアマネジメント活動の成果を視覚的に表現していくことで、まちの課題解決や新たな価値の創造というエリアマネジメント活動の役割をより一層果たしていきたい。

さらに、バーチャル竹芝を活用したファシリティマネジメントやまちづくりシミュレーションを実装していくことで、エリアマネジメント活動の効率化に加え、その活動領域を拡大させ、まちの持続的な発展に貢献することが可能である。

今後、竹芝エリアをデジタル・エリアマネジメントのリーディング・ケースとしていくとともに、その知見を横展開することで、全国のエリアマネジメント活動の活性化とこれによる高付加価値なまちづくりの実現を目指していく。