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工事車両の交通シミュレーションVer2

実施事業者株式会社竹中工務店 / 株式会社アクセンチュア
実施場所大阪府大阪市
実施期間2021年6月~7月
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3D都市モデルに道路空間を構成する詳細なオブジェクトモデルを追加し、工事車両の交通シミュレーターの機能拡張を実施。都心部の大規模開発における地域住民の安心と円滑な施工の両立を目指す。

実証実験の概要

都市開発における大規模な建設工事では、地域住民の安全・安心を確保しながら施工業者の円滑な資材搬入を実現することが課題となる。

今回の実証実験では、3D都市モデルを用いた工事車両の搬入経路シミュレータをさらに進化させ、地域住民の安全・安心や施工業者の円滑な資材搬入を実現する建設物流プラットフォームの構築を実証する。

実現したい価値・目指す世界

大規模な建設工事においては、様々な地域から工事現場に向かって多数の工事車両や工事関係者の通勤車両が押し寄せる。そのため、工事現場付近の交通渋滞の発生や、地域住民が抱く安全や騒音に対する不安とそれらに起因するトラブルが課題となる。一方で、建設工事のスケジュール遅延防止のため、人員や資材を工事現場へ計画通りに搬入することも重要である。

2020年度の実証実験では、2025年大阪・関西万博の開催に伴い、再開発が活発化している大阪市において、3D都市モデルを活用して道路幅員や騒音影響、スクールゾーン等を考慮した工事車両が通行ルートをシミュレートするプロトタイプを開発した。今回の実証実験では、さらにこのシステムをブラッシュアップし、対象エリアの拡大、ユーザーインターフェースの改善、道路幅・電線・信号機・標識・樹木等の道路空間における詳細なオブジェクトを3D都市モデルの取り込んだ緻密な干渉チェック機能の実装等を目指す。これにより、地域住民の安心と円滑な工事を両立させる「最適」な工事車両ルートの計画策定ソリューションを提供する「建設物流プラットフォーム」の実装を推進する。

ルートシミュレーション
3D都市モデルと工事車両スイープモデルを用いた干渉チェックによる通行可否シミュレーション

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

前年度に開発した工事車両の搬入経路シミュレータのバージョンアップとして、今年度はユーザーインターフェースの改善、対象エリアの拡大、干渉チェック機能を実装した。

具体的には大阪市内の2つの工事現場を対象として、工事現場までのラストワンマイルにおける工事車両と道路周辺地物(樹木・電線等、道路上の構造物)との物理的接触の有無についてチェックする干渉チェック機能を追加した。

本サービスの効果検証として、大規模な建設工事を想定した業務シミュレーションを実施した。本サービスを活用することで業務改善・効率化が図られるかの検証を行うとともに、施工業者、運送業者等へのヒアリング・アンケートも実施した。延べ20名程度の被験者の協力を得て様々な観点でサービスの価値・効果を検証した。

点群データを基に道路及び道路設備の3D都市モデルを構築し、活用
点群データを基に道路及び道路設備の3D都市モデルを構築し、活用

検証で得られたデータ・結果・課題

今回の実証実験により、3D都市モデルを活用した工事車両のルートシミュレーションサービスは、工事業者にとっては主に環境アセスメントや工事計画における車両アクセス経路の決定に、運送業者にとっては現地調査や事前の大型車両通行シミュレーションに活用することで業務を効率化・高度化に有効であることが確認された。

工事車両のアクセス経路に関して、周辺道路の高架(高さ制限)や幅、道路設備・構造物の影響調査は、工事現場の大小や場所に関わらず必要な業務であることから、工事現場周辺の3D都市モデルデータを活用した干渉チェック機能を活用することで、道路設備・構造物と車両が衝突することなく走行できるかを事前検証するなどのシミュレーションサービスは汎用的なサービスとしてあらゆる工事現場で利用可能であると確認できた。また、特車申請業務の支援にも繋がる特殊車両の通行ルート上への交差点番号表示機能などを始め、大型車両・特殊車両をオペレーションするユーザに必要な運行計画立案や走行ルート評価を提供するサービスとしたことで、運送会社の業務効率化が大きく進むことも確認できた。

一方で、今後の課題としては、本サービスをより汎用化するためのデータ収集・更新スキームの確立、ルートシミュレーションのアルゴリズムの強化・精緻化、工事計画との連携機能の実装等が挙げられる。

工事車両通行道路周辺の騒音シミュレーション結果
点群データを取得し、より詳細な工事現場周辺状況を確認

参加ユーザーからのコメント

・信号、標識、路面標示等の道路設備・構造物に関する情報は、現状整備・提供されているものはない。どの工事現場においてもスクールゾーンの確認などの現地確認は必要なため、サービス上で確認ができれば業務の効率化に繋がる。

・狭い工事現場においては、仮囲い直近に建設建物が迫るケースもあり、施工時のクレーン旋回等で電線と接触が発生しないよう特に留意が必要な場面で干渉チェック機能が活用できる。

・交差点番号などのユニークな情報との組み合わせは、これまで複数かつ独自のシステムを使って行われていた業務をシンプルにし、効率的に遂行することができる。

今後の展望

本実証実験の結果を踏まえ、本サービスの実用化に向けた検討をさらに進めていく。特に、大阪府市のスーパーシティ構想ロードマップを念頭に大阪市の大規模建設工事での活用を想定した検証を行う。

将来的には3D都市モデルを活用することで、大規模建設工事において地域住民の安心と円滑な工事の両立を可能とする「建設物流プラットフォーム」を構築し、各所の建設工事へ展開していくことを目指したい。