2020年(令和2年)1月1日以降、硫黄分の含有率が0.5%以下である舶用燃料油を使用することが義務づけられていますが、万が一、基準適合燃料油が入手できない状況が発生した場合、船舶を航海の用に供することが出来なくなり、経済活動を阻害される恐れがあります。
そのような事態を回避するために、国際海事機関(IMO)はMARPOL条約附属書VI第18.2規則において、基準適合燃料油が入手できなかった場合、MARPOL条約附属書VIの締約国は、当該燃料油の代替の購入先を発見しようとしたこと、及び当該燃料油を利用するための最善の努力にもかかわらず当該燃料油を購入することができなかったことに関して証拠を提供することを要求できる旨規定されています。その場合、同附属書第18.2.4規則及び18.2.5規則において、船舶は、自国の主管庁及び関係する港の所管当局に対し、基準適合燃料油が入手不可能であることを通報すること、及び、締約国はIMOに基準適合燃料油の入手が不可能であることを通報することが要求されております。本制度は当該条約規定に基づいて定められるものです。
本制度は、外的要因により入手できない事態が発生し、基準適合燃料油を入手するため最善を尽くしたにも関わらず入手できなかった場合の緊急避難的措置であり、基準適合燃料油の使用免除を目的として定めるものではありません。制度の趣旨を理解し、適切な基準適合燃料油を入手してください。
基準適合燃料油を入手できなかった場合、基準不適合油の使用が認められるのは、必要な措置をとり最善の努力を行い、かつ地方運輸局に通報を行った場合のみとなります。
以下に掲げる事項に注意して必要な措置をとり、通報を行うようにしてください。
(1)基準適合燃料油を入手できなかった場合とみなされる例/みなされない例
「基準適合燃料油を入手できなかった場合」とは、入手先として予定していた場所で複数の事業者からの入手の試み、または寄港を予定している航路上での複数の
事業者からの入手の試みを行ってもなお、入手ができない場合を指します。
一方、例えば以下の場合においては基準適合燃料油を入手できなかった場合とはみなされず、本制度は適用されません。
● 複数の供給業者への入手の試みが行われた記録がない
● 本船が通常使用しているものとは異なる基準適合燃料油であれば入手可能(例えば、基準適合燃料油である低硫黄C重油は入手できないが、低硫黄A重油や軽油など、
自船において使用できる他の種類の基準 適合燃料油は入手できる場合)
● 購入を希望する全量販売はされないが、基準適合燃料油を入手できる次の停泊地までの量であれば販売される場合
● 基準に適合しない舶用燃料油(以下「基準不適合燃料油」という。)のほうが安価である等の経済的理由により基準適合燃料油を入手しない場合
(2)とるべき措置及び通報を行うまでの流れ(「図1」参照)
基準適合燃料油を入手できなかった場合にとるべき措置及び通報を行うまでの流れにおける留意点は以下のとおりです。
1)入手を予定していた場所で基準適合燃料油を入手できなかった場合にとるべき措置(図1➀関連)
運航の遅延や航路の変更を生じない範囲において、以下に掲げる試みを実施することが求められます。
〇 燃料入手を予定していた港、航路上の別の港等での基準適合燃料油の入手の試み
入手を予定していた港で別の燃料油供給者から入手しようと試みることだけでなく、航路上の別の港等での入手を試みることが必要です。
〇 基準適合燃料油を使用するための措置の試み
入手可能な基準適合燃料油を使用すると機関等に故障その他の異常が生じるおそれがある場合、当該燃料油を使用できるような 工夫を施すこと、またはそういった工夫を
施すことが可能か検討することが必要です。
例えば、燃料油の動粘度が低く、機関への使用に適さない場合、燃料油の加熱調整や清浄機の調節板の変更、運航に支障をきたさない範囲での部品の交換等が
該当します。なお、ほとんどの船舶は、部品交換を行うことなく、重油、MGO等を使用した運航が可能です。
2)基準不適合燃料油を購入する場合の手続き(図1➂関連)
上記のとるべき措置を講じてもなお基準適合燃料油を入手できないため、やむを得ず基準不適合燃料油を購入する場合には、以下の手続きが必要となります。
国内の重油販売事業者から基準不適合燃料油を購入する場合は、揮発油等の品質の確保等に関する法律(昭和51年法律第88号)(以下 「品確法」という。)の規定に基づき、海
防法において地方運輸局長宛てに提出する書類(入手不可時の通報の様式もしくは海防法施行規則に規定されている通報事項を記載した書類及び証拠書類:下記(3)を参照)を
提示する必要があります。
基準適合燃料油を入手できなかった場合にとるべき措置を講じていない場合や、適切な通報を行っていない場合は、違反となりますので、ご注意ください。
※外国で基準不適合燃料油を搭載する場合、燃料の搭載に関する手続きは当該港を管轄する国の法令に基づき行ってください。
図1の燃料の搭載に関する手続きは、日本で基準不適合燃料油を搭載する場合の品確法に基づく手続きを示したものです。
通報を行うことにより搭載が認められる基準不適合燃料油の量は、次の港までの航行に必要な燃料油に、気象・海象等を考慮した必要最小限の予備の燃料油を加えた量に限ら
れます(次の港で基準適合燃料油を搭載できない場合、搭載が可能となる直近の港までの基準不適合燃料油の量)。
基準不適合燃料油を搭載した後は、通報に記載した計画等に従い、速やかに基準適合燃料油を入手してください。
(3)通報の実施方法(図1➃関連)
1)通報様式
ページ下部の様式を参考にし、メールもしくはFAX(可能な限りメール)にて通報を行ってください。
2)記載言語
国際航海に従事する船舶にあっては英語、国際航海に従事しない船舶にあっては日本語又は英語で記載してください。
3)基準適合燃料油を入手できないことを証する書類
入手の試み等とるべき措置として実施した内容や相手先、日時がわかる書類(燃料油供給者とのやりとりした記録等(電子メール・FAXの写し等))を準備してください
4)通報先
〇 日本籍船の場合
・国内で搭載した日本籍船は、搭載した場所を管轄する以下の地方運輸局の窓口に通報を行ってください。
・外国で搭載した日本籍船は、関東運輸局に通報を行ってください。
地方運輸局 | 担当部局 | メールアドレス・FAX番号 |
北海道運輸局 | 海上安全環境部 船舶安全環境課 (北陸信越運輸局においては 海事部船舶安全環境課) |
hqt-fonar-japan-hokkaido★gxb.mlit.go.jp |
011-290-1031 | ||
東北運輸局 | hqt-fonar-japan-tohoku★gxb.mlit.go.jp | |
022-299-8884 | ||
関東運輸局 | hqt-fonar-japan-kanto★gxb.mlit.go.jp | |
045-201-8794 | ||
北陸信越運輸局 | hqt-fonar-japan-hokushin★gxb.mlit.go.jp | |
025-285-9176 | ||
中部運輸局 | hqt-fonar-japan-chubu★gxb.mlit.go.jp | |
052-952-8083 | ||
近畿運輸局 | hqt-fonar-japan-kinki★gxb.mlit.go.jp | |
06-6949-5203 | ||
神戸運輸監理部 | hqt-fonar-japan-kobe★gxb.mlit.go.jp | |
078-321-0966 | ||
中国運輸局 | hqt-fonar-japan-chugoku★gxb.mlit.go.jp | |
082-228-3468 | ||
四国運輸局 | hqt-fonar-japan-shikoku★gxb.mlit.go.jp | |
087-811-9099 | ||
九州運輸局 | hqt-fonar-japan-kyusyu★gxb.mlit.go.jp | |
092-472-3305 | ||
沖縄総合事務局 | 運輸部 船舶船員課 | hqt-fonar-japan-okinawa★gxb.mlit.go.jp |
098-860-2236 |
地方運輸局 | 担当部局 | メールアドレス・FAX番号 |
北海道運輸局 | 外国船舶監督官 (PSC官) |
psc_hokkaido★docomo.ne.jp
|
011-290-1031 | ||
東北運輸局 | sendaishiogama★mopera.net | |
022-299-8884 | ||
関東運輸局 | pscykhm★maple.ocn.ne.jp | |
045-201-8794 | ||
北陸信越運輸局 | hokushin-psc★mopera.net | |
025-285-9177 | ||
中部運輸局 | pscngy★aqua.ocn.ne.jp | |
052-952-8054 | ||
近畿運輸局 | kkt-psc-kantoku★gxb.mlit.go.jp | |
06-6949-5203 | ||
神戸運輸監理部 | psckb★pearl.ocn.ne.jp | |
078-321-0966 | ||
中国運輸局 | pschrsm★lime.ocn.ne.jp | |
082-228-3468 | ||
四国運輸局 | psctkmt★lime.ocn.ne.jp | |
087-802-6835 | ||
九州運輸局 | hkt-psc★sage.ocn.ne.jp | |
092-472-3305 | ||
沖縄総合事務局 | pscokinawa.d1z★ogb.cao.go.jp | |
098-860-2236 |
2020年(令和2年)1月1日以降、下記(1)~(4)に該当する場合を除き、含有硫黄分が0.5%を超える高硫黄燃料油を燃料タンクに搭載し使用することがないよう、適切な燃料油を搭載・使用してください。
(1) 基準適合燃料油を利用するための最善の努力をしたにも関わらず当該燃料を購入・使用できない場合(本制度が適用される場合)
(2) 硫黄酸化物放出低減装置(いわゆるスクラバー)を搭載し、検査に合格し適切に使用している場合
(3) 硫黄酸化物の放出による大気の汚染の防止に関する試験、研究又は調査のためにする船舶における燃料油の使用であって、あらかじめ国土交通大臣の承認を受けて行う場合
(4)以下のいずれかに該当する場合
―船舶の安全を確保し、又は人命を救助するために必要な場合
―船舶の損傷その他やむを得ない原因(※)により基準適合燃料油以外の燃料油を使用した場合において、
引き続く当該燃料油の使用による硫黄酸化物の放出を防止するための可能な一切の措置をとったとき
※「船舶の損傷その他やむを得ない原因」にはスクラバー等の機器の故障も含まれます。
なお、本制度は国内の法令に従って定められるものであり、外国の港で同様な事態が発生し、基準不適合燃料油を搭載しようとする場合は、当該港を管轄する国の法令に従い、適切に対応してください。