国際

APEC交通大臣会合

1.概要

 APEC(アジア太平洋経済協力)は、成長著しいアジア太平洋地域において経済関係の緊密な協力を図り、地域の一層の発展に資するための国際的な枠組みとして、1989年に発足した。APECには、首脳会議、閣僚会議のほか、分野別に大臣会合が設けられているが、交通分野については交通大臣会合が設置され、1995年以降、これまで8回にわたって大臣会合が開催されてきたところである。
 大臣会合においては、通常、APEC各エコノミーの交通担当大臣が一同に会してAPEC域内における運輸分野に関わる様々な問題について議論を行い、大臣共同声明を発出して閉幕する。交通大臣特別会合は、2012年8月、ロシア・サンクトペテルブルクにてロシアの主催により行われた。

※APECでは、国や地域のことを「エコノミー」と称します。

2.加盟国・地域:21カ国・地域

オーストラリア,ブルネイ,カナダ,チリ,中国,中国香港,インドネシア,日本,韓国,マレーシア,メキシコ,ニュージーランド,パプアニューギニア,ペルー,フィリピン,ロシア,シンガポール,チャイニーズ・タイペイ,タイ,アメリカ,ベトナム

3.開催実績

○第1回(1995年6月:アメリカ・ワシントンD.C)亀井運輸大臣が出席  

<主な議題>
・安全で環境にやさしい交通システム
・交通インフラの整備
・競争環境の促進
・人材協力及び技術移転

<我が国の成果> 
 共同声明に、我が国の意見として打ち出した「域内各国の交通産業の共存発展には相互協力・協調が必要である」との基本的考え方が反映された「21世紀へ向けたガイドライン」や「協力と行動の優先事項」が盛り込まれました。


○第2回(1997年6月:カナダ・ビクトリア)古賀運輸大臣が出席

<主な議題>
・交通インフラの整備
・交通分野における安全や地球環境問題
・新たな交通技術
・貿易促進

<我が国の成果>
 今後の活動に際しての優先順位について合意がなされた結果、共同声明の中に我が国が積極的に主張してきた、海運問題への積極的取組みや港湾専門家会議への支持等が盛り込まれました。


○第3回(2002年5月:ペルー・リマ)谷野技術総括審議官が代理で出席

<主な議題>
・ボゴール目標に向けた取組み(交通の自由化・円滑化)
・人材育成
・テロへの非難とセキュリティ対策

<我が国の成果>
 運輸にとって自由化と円滑化は不可欠であり、安価な輸送の実現と海賊・セキュリティ対策を、各エコノミーが協力しつつ進めていく必要があるとの合意がなされました。


○第4回(2004年7月:インドネシア・バリ)洞国土交通審議官が代理で出席。

<主な議題>
・ボゴール目標の実行
・安全・セキュリティ
・人材養成

<我が国発言の概要>
*安全・セキュリティ 
我が国より、安全・セキュリティ対策について、各分野における我が国の取り組みを紹介した。また、安全・セキュリティ対策に関する国際連携・協調の重要性について強調し、我が国にて実施している人材育成等に係わる支援の取り組みを説明した。さらに安全・セキュリティの確保について、APEC各エコノミーの積極的な取り組みへの期待を表明した。

<我が国の成果> 
 本会合の結果として、APECの運輸分野における将来の優先事項をとりまとめた大臣共同声明を採択。
(主たる合意事項)
・全輸送モードの自由化というボゴール目標達成のためのロードマップ作成
・航空・海上保安措置の継続的実施の支援、今後2年間におけるサプライチェーン・セキュリティ・イニシアティヴの実施

プレスリリース(添付)
・大臣共同声明(英語原文(PDF)日本語仮訳(PDF)


○第5回(2007:オーストラリア・アデレード)山本国土交通審議官が代理で出席。

大臣会合と同時に、官民シンポジウム及び道路交通安全サミットが行われました。

<主な議題>
・交通安全
・交通保安
・交通の自由化と円滑化

<我が国発言の概要>
*交通保安 
我が国より、東京で開催された国際交通セキュリティ大臣会合の概要及び成果、また、それを受けて陸上交通セキュリティ国際ワーキンググループ(IWGLTS)が創設されることを紹介し、我が国としては、[1]同大臣会合の成果である大臣宣言を実現するためのあらゆる努力をおこなうこと、[2]APEC交通ワーキンググループを含む適切なフォーラムを通じて国際交通セキュリティの強化のためにAPEC各エコノミーと協力を続けること、[3]APEC各エコノミーとIWGLTSで作成された結果を共有することを説明した。 

<我が国の成果> 
 本会合の結果として、APECの運輸分野における将来の優先事項をとりまとめた大臣共同声明を採択。
(主たる合意事項)
・陸上交通セキュリティ国際ワーキンググループにおける成果を踏まえた鉄道・大量公共交通セキュリティに関するベストプラクティスの共有
・海事セキュリティの改善のためのISPSコードの遵守に関するモデルビジットプログラムの推進
・サプライチェーンセキュリティにおける運輸分野の取り組みの推進

プレスリリース(添付)
・大臣共同声明(英語原文(PDF)日本語仮訳(PDF)


○ 第6回(2009年4月:フィリピン・マニラ)宿利国土交通審議官が代理で出席。

<主な議題>
・交通安全と保安
・昨今の経済状況における交通インフラへの資金手当て
・シームレスかつ持続可能で開かれた交通システム

<我が国発言の概要>
*交通安全と保安 
海賊対策について、日本も自衛艦によるエスコートを実施しており、更に海賊対処新法の整備を進めていること、本年7月のAPEC 交通作業部会においてソマリア沖の海賊対策に関するセミナーを開催することを発言するとともに、豚インフルエンザについて、わが国の対応状況を説明した。
*昨今の経済状況における交通インフラへの資金手当て 
4月10日に我が国において決定された「経済危機対策」及びこれに盛り込まれた交通関係施策について説明した。
*シームレスかつ持続可能で開かれた交通システム 
我が国が1 月に開催した「交通分野における地球環境・エネルギーに関する大臣会合(MEET)」の結果及び今後の方向性を説明するとともに、世界の交通関係CO2排出の53%を占めるAPECにおける取り組みの重要性を指摘した。 

<我が国の成果> 
 本会合の結果として、APECの運輸分野における将来の優先事項をとりまとめた大臣共同声明を採択。
(主たる合意事項)
・交通インフラへの相当程度な投資が各国・地域を通じて行われていることを歓迎し、経済成長・雇用の確保のみならず、環境へも配慮した戦略的投資を支持
・豚インフルエンザに関する懸念を共有し、適切な対応を要請
・ソマリア沖海賊対策について、APEC にとっても重要な海上輸送ルートであり、多くのAPEC諸国の船員が従事している外航船舶への海賊行為を強く非難し、これに対応するための国連や関係機関の行動を支持し、海賊対策のための更なる取り組みを促すことで合意。
・MEETの成果を認識し、EUのETS(排出量取引制度)に対する懸念を表明し、IMO(国際海事機関),ICAO(国際民間航空機関)の活動を認識。

プレスリリース(添付)
・大臣共同声明(英語原文(PDF)日本語仮訳(PDF)


○ 第7回(2011年9月:アメリカ・サンフランシスコ)松原仁国土交通副大臣が代理で出席。

<主な議題>
・交通に関する自然災害への準備・対応・復旧
・環境に優しい成長と運輸の革新の促進
・女性と運輸
・セキュリティ等の規制に関する協力の促進 等

<我が国発言の概要>
*特別セッション:交通に関する自然災害への準備・対応・復旧 
我が国より、東日本大震災について、震災後の各国からの支援・お見舞に対し謝意を表明し、我が国の復興状況を説明したうえで、過去の災害の経験に学んで対策を講じておくことの重要性、大規模災害の場合は、被害は完全に防ぐのではなく極力小さく留めようという「減災」の考えに立つことの必要性、災害後速やかに交通を復旧できる手立てを講じておくことの有効性について述べ、震災からの教訓を各国・地域と共有した。
*セキュリティ等の規制に関する協力の促進 
我が国より、日本における航空セキュリティに係る取組について、現代技術の活用、航空貨物サプライチェーン、及び人材育成の観点から、紹介した。また、日本におけるビジネスジェットの推進に向けた取組み及びオープンスカイ政策について説明した。

<我が国の成果> 
 本会合の結果として、APECの運輸分野における将来の優先事項をとりまとめた大臣共同声明を採択。
(主たる合意事項)
・自然災害により良く対応するため、過去の経験から学ぶこと、継続的な改善へ関与すること等の重要性を強調し、災害へのよい備えと復旧を可能とさせるような重要な取組を支援することに合意。
・2010 年のAPEC 首脳宣言(横浜ビジョン)に応じ、エネルギー効率の良い輸送を促進するため、代替燃料の使用や交通インフラの開発を含めた、エネルギー効率のよい交通政策に優先的に促進させることに合意。
・各加盟国・地域に対し、適切に機能しているPPP市場を効果的に利用することも含め、交通インフラへの投資を増やすための手法を評価することを促すことで合意。

プレスリリース(添付)
・大臣共同声明(英語原文(PDF)日本語仮訳(PDF)


○特別(2012:ロシア・サンクトペテルブルク)北村国土交通審議官が代理で出席。

※定期的に開催される通常の「APEC大臣会合」とは別に、「サプライチェーンの構築」にテーマを絞った「特別会合」がロシアの提案により開催

<主な議題>
・地域経済統合の強化の主要素としての信頼性が高く効率的なサプライチェーンの構築
・革新から強みへ-交通連結性の強化に資するインテリジェントテクノロジーの役割
・安定性と経済成長を確保する安心なサプライチェーン

<我が国発言の概要> 
 我が国から「信頼性が高く効率的なサプライチェーンの構築」をテーマとするセッションにスピーカーとして参加しました。APEC域内のサプライチェーンの改善のためには、規制の透明性の確保、輸送インフラの不足解消、マルチモーダルな輸送能力不足への対応等交通大臣に大きな役割が期待されている旨を述べるとともに、サプライチェーン利用者の声に耳を傾けつつ、[1]サプライチェーンの可視化、[2]物理的なボトルネックの適切な管理、[3]新興国における輸送インフラの整備を推進することが必要であり、サプライチェーンの改善に向けてAPEC加盟メンバーと協力して取り組んでいきたい旨を述べました。

<我が国の成果> 
 本会合の結果として、サプライチェーン・コネクティビティ(連結性)の改善や物流情報サービスネットワークの構築について共同で取り組むことにより、サプライチェーンの効率性、安全性を向上させ、域内の貿易を支えていくこと等を内容とする「サンクトペテルブルク大臣宣言」が採択されました。

プレスリリース(添付)
・大臣共同声明(英語原文(PDF)日本語仮訳(PDF)

ページの先頭に戻る