中国(China)

国勢概要

国名 中華人民共和国
People's Republic of China
国土面積 約960万km²(日本の約26倍)
人口 約13.76億人
人口密度 143人/km²
都市人口比率 55.6%(2015年)
GDP(名目) 約67兆6,708億元(2015年:中国国家統計局)
約10兆9,828億ドル(2015年:IMF)
一人当たりGDP 約49,351元(2015年:中国国家統計局)
約7,990ドル(2015年:IMF)
産業別
就業人口比率
第一次産業33.6%
第二次産業30.3%
第三次産業36.1% (2012年推計)
経済成長率(実質) 6.9%(2015年:中国国家統計局)

(情報更新:2017年3月)

概況

東西5,000km、南北5,500kmにわたる世界第4位の広大な国土を持ち、14ヵ国と国境を接している。世界第1位の膨大な人口を抱えつつ、経済の自由化、開放化が急速に進行しており、特に都市部における市場経済化が著しい。

経済のめざましい発展の一方で、都市部と農村部、都市化と経済発展で先んじた東部沿海地域と西部内陸地域の経済格差、貧富の差が問題化している。

また、農業からの移転人口(農民工)は都市戸籍を有することが出来ず、都市戸籍の住民と同様の社会福祉サービスを享受できないことが社会問題化している。農業戸籍と都市戸籍の2つの戸籍を統一することによって、農業からの移転人口(農民工)の市民化を図る必要性に迫られている。

中国の省級行政区画

中国の省級行政区画

資料:(一財)日本開発構想研究所において、中華人民共和国民生部編「行政区画簡冊」を元に作成

国及び地方の関係

地方行政は、省級、地級、県級、郷級の4つの階層で構成される。

中国の地方行政階層図

中国の地方行政階層図
(注1)
特別行政区、民族自治地方は省略している。
(注2)
本図は典型的なものを記載した基本図であり、県級市や市管轄区の下には、街道弁事処のほか、郷や鎮が存在する場合がある。
(注3)
居民委員会、村民委員会は、県級政府の指導の下、必要な行政サービス等を行う住民自治組織である。

資料:(一財)自治体国際化協会「中国の地方行財政制度」平成19年7月

国土政策の体系

中国の国土政策には、経済社会発展計画、国土計画(土地利用計画)、都市農村計画の3つの計画体系が関係する。

社会経済発展計画は国家、省級、地級、県級の4つの行政レベルに分けて作成される。

国土計画(土地利用計画)は、全国、省級、地級、県級、郷級の5つのレベルで作成される。

都市農村計画は、都市システム計画、都市計画、鎮計画、郷計画、村計画に分けられる。都市システム計画は、全国、省級、地級、県級、郷級、村級の6つのレベルに分けて策定される。

中国の国土政策体系

中国の国土政策体系
(注)
重点区域はまだ定められておらず、資源や鉱産物の有効利用促進等の観点を重視して決められる
直轄市・地級市・県級市・鎮等の都市計画には、マスタープランとコントロール型詳細計画、建設型詳細計画が含まれる

資料:「諸外国の国土政策に関する研究会」において、現地調査等を元に作成

国土政策に関わる政府機関等

計画名又は行政分野 担当機関 ホームページ
国民経済・社会発展五ヵ年計画 国家発展改革委員会 http://www.sdpc.gov.cn/
国土計画、土地利用総合計画 国土資源部 http://www.mlr.gov.cn/
都市システム計画、都市農村計画 住宅・都市農村建設部 http://www.mohurd.gov.cn/

国土政策に関わる主要な施策

国民経済・社会発展五ヵ年計画の制度概要

中国の基本的な国家発展開発政策は国民経済・社会発展五ヵ年計画である。これは主に全国における重大な建設、生産力の配置及び国民経済における重要な戦略や社会の姿について計画し、国民経済発展の目標及び方向を定める。

1949年の中華人民共和国建国以来(第一次五ヵ年計画の策定は1953年)、地域発展政策は、主に効率と公平の2点を中心に展開してきており、大きく次の3段階に分けられる。建国初期から改革開放までの段階では均衡発展を中心に戦略を立てており、改革開放から20世紀、90年代の半ばまでの第2段階では非均衡的な発展が中心戦略となり、発展の第3段階、90年代半ば以降の方針は均衡発展、地域経済の協調発展に変わっている。

2016年から2020年までを計画期間とする第十三次国民経済・社会発展五ヵ年計画(略称「十三五」)が、2016年3月に開催された第12期全国人民代表大会(全人代)(中国の国会に当たる)で決定された。

第十三次五ヵ年計画は、中国共産党が掲げる「2つの100年」(中国共産党建党100年と中華人民共和国建国100年)という長期執政目標のうち「小康社会の全面的完成」を目標とする第1の100年の終了時期(~2021年)とほぼ重なるため、第十三次五ヵ年計画の期間は「小康社会の全面的完成の勝敗を決める段階」と位置づけられており、目標達成に向けた切迫感が強く滲み出ている。

第Ⅰ編主要目標と発展理念においては、創新発展(イノベーション)、協調発展、緑色発展(グリーン・低炭素社会)、開放発展、共有発展(分かち合い)の五大発展理念を掲げ、国民の全面的な発展を目指している。

国土政策に関わるものとしては、「農業の近代化の推進」、「近代的なインフラネットワークの構築」を図るとともに、「新型都市化の推進」、「協調的地域開発の推進」、「生態環境改善の加速」を行うとしている。この内、「新型都市化の推進」では、戸籍制度改革の推進を含む「農業移転人口の都市市民化の加速」、両横三縦都市化戦略を含む「都市の空間的配置や形態の最適化」、「調和のとれた住みやすい都市の構築」、「住宅供給システムの改善」、「都市と農村の協調的発展の促進」等を進めるとしている。また、「生態環境改善の加速」の一貫で、「主体機能区設定の推進」が謳われている。

都市群空間分布図(第十三次五ヵ年計画)

都市群空間分布図(第十三次五ヵ年計画)

資料:第十三次国民経済・社会発展五ヵ年計画 第八編第33章第1節

「ランドブリッジ(ユーラシア大陸横断鉄道)ルート」、「長江沿いルート」を2本の横軸に、「沿海ルート」、「京哈(北京-ハルビン)と京広(北京-広州)ルート」、「包昆(包頭-昆明)ルート」を3本の縦軸にし、軸線上の都市群を発展の中心とする「両横三縦」の都市化戦略を実施する。さらに、特大都市への経済機能などの過度な集中を改めるため、中小都市の経済力、人口吸収能力を向上させる。

国・広域地方レベルの空間計画の制度概要

中国の空間計画は、国土計画(土地利用計画)と都市農村計画のふたつの体系で構成される。

空間計画の根幹となる計画としては、国土資源部が所掌する「国土計画」がある。この計画では、国土の生態系の安全な建設、国土資源の最適配分、国土空間の合理的組織、エネルギー資源の保障能力の向上、国土の総合保全の推進、国土計画の実施保障等の内容を有するものである。2010年9月、全国国土計画要綱作成作業指導グループ第一回会議が開かれ、『全国国土計画要綱作成作業方案』、『全国国土計画要綱(2011~2030年)前期研究』を可決した。 2013年10月、3年間の策定期間を経て全国国土計画要綱2011-2030 がとりまとめられ、承認のため国務院に提出された。

土地利用計画体系は、土地利用総合計画(マスタープラン)、分野別土地利用計画、土地利用詳細計画で構成される。国や広域地方レベルの計画に相当するものは、全国及び各省域を対象として策定される土地利用総合計画(マスタープラン)であり、これらは土地管理法に基づく法定計画である。2007年10月に第3期土地利用総合計画が策定された。土地利用総合計画は、土地資源の総合的な配置、土地資源の開発・利用・整備・保護に関する戦略的計画である。下位の行政体におけるマスタープランは、上位のそれに従う旨、土地管理法に規定されている。

都市農村計画の体系において、国や広域地方レベルの計画に相当するものは、全国及び各省域を対象として策定される都市システム計画である。これらは都市農村計画法に基づく法定計画である。都市システム計画は一定地域(全国、各省域)の発展に係る計画である。都市部の発展が地域全体の発展に大きく影響することから、都市システム計画は、地域の経済社会の発展と対応する都市部の発展と配置を目的としている。全国都市システム計画は、省域都市システム計画と都市計画(都市マスタープラン)の策定を指導するものと位置づけられている。

大都市圏計画の制度概要

2014年4月までに53の戦略的地域計画が国によって承認された。中国の三大都市圏は北京・天津・河北地域、長江デルタ地域、珠江地域である。国民経済・社会発展第十三次五ヶ年計画においては、第九編第38章に「京津冀の協調開発の推進」が位置づけられている。

国家発展改革委員会は、2004年、北京・天津・河北大都市圏計画策定の準備作業を開始した。この計画は2010年に承認を得るため国務院に提出され、2015年に承認され、実行に移されている。

長江デルタ計画については、2004年に取り掛かり、2年間の事前調査と4年間の策定作業ののち、2010年5月、国務院が正式に承認し、実行に移されている。

珠江デルタ計画が対象とするのは一省のみである(広東省)。広東省と住宅・都市農村建設部の協力によってこの珠江デルタ改革・開発計画要綱が完成し、2008年12月に承認された。2014年5月に開かれた「珠江デルタ『九ヵ年長期』作業促進委員会」において広東省は、「世界レベルの都市クラスターとしての珠江デルタ開発を目指すために、我々は珠江デルタ全体に係る計画を実行しなければならない」と発表した。2014年7月、珠江デルタ改革・開発計画要綱に改善を加えた珠江デルタ全体計画の策定が公式に開始された。

その他空間開発上、影響が大きい施策の例

国家新型城鎮化計画

2013年12月に開催された中央農村工作会議において、三農問題の重視、食料安全保障の確保(18億ムー(約120万km²)の耕地最低ラインの堅守)等と合わせて、農村の近代化、新しいタイプの都市化の方針が打ち出された。 この施策は、農業の近代化を急ぎ、国の食料安全保障の確保と農民の所得増を促進するものである。

「都市化を積極的かつ適切、着実に推進し、2020年までに都市に移転して常住している約1億の農業移転人口の都市定着、約1億人の都市部低所得者向け住宅区と都市の中の村(鎮)の改造、中・西部地区の約1億人の都市化の問題を解決し、新しいタイプの都市化と農業近代化が互いに補い合うものにし、特色を際立たせて新農村の建設を推進し、広範な農民大衆がより良い生活を送れるよう努力しなければならない。」(人民日報2013年12月25日)

また、都市化が著しい成果を収めている一方で、出稼ぎ農民(農民工)と都市住民からなる二重構造が形成されるなど、多くの問題が蓄積され、露呈し始めている。これを背景に、インフラなど、ハード面の建設を強調する従来の進め方を改めて、制度など、ソフト面の建設を中心とする「新型都市化」へと転換する必要性が広く認識されるようになった。それを目指すための政府方針を盛り込んだ「国家新型都市化計画(2014-2020年)」が、中共中央・国務院により2014年3月に発表された。

この「計画」では、「新型都市化」の推進を謳っており、その際の基本方針として次の五つを挙げている。

  • ①人間本位、公平な利益分配
  • ②都市化、農業現代化、情報化、工業化の歩調の取れた発展、都市と農村の一体化
  • ③配置の最適化、集約化、効率化
  • ④エコ文明、グリーン・低炭素社会の推進
  • ⑤文化の伝承、都市個性の発揮

資料:「新型都市化」関志雄 RIETI独立行政法人経済産業研究所 2014年7月11日掲載

「国家新型都市化計画」で打ち出されたこれらの方向は、第十三次国民経済・社会発展五ヵ年計画第八編「新型都市化の推進」に組み込まれ、引き継がれた。

一帯一路(One Belt and One Road)

一帯一路とは、シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロードの略称である。習近平国家主席は、2013年9月の中央アジア・東南アジア諸国訪問時、シルクロード経済ベルトおよび21世紀海上シルクロードをともに構築するという戦略的構想を打ち出した。

一帯一路戦略が目指すのは、主に地上・海上の開発と交通インフラ建設を通じて相互連絡的な国際的経済システムを構築することである。この戦略の鍵として協働が求められるのは、政治、設備、貿易、資金、士気、などの連携と伝達であろう。

シルクロード経済ベルト戦略には東南アジア経済と北東アジア経済の統合が含まれている。両経済が最終的に一つになってヨーロッパに向かい、これがユーラシア大陸における経済的統合を促すことが期待されている。一方、21世紀海上シルクロード戦略は、ヨーロッパ、アジア、アフリカ大陸を海上でつなぎ、シルクロード経済ベルト戦略とともに海上・陸上で閉じた循環を構築することを目指している。

60近い国々の人口40億人に対して広大なコミュニケーション・協調メカニズムを築き上げることによって、中国は、外部資源を得るとともに国内の商品、資本、支援技術を外部へと流していくことができる。2015年1月までに一帯一路戦略に対する60か国の協力的参加があった。

2015年2月、「一帯一路構築促進会議」が北京で開かれ、一帯一路戦略を推し進めるため次期に行う主要活動・業務の手順が宣言された。また、一帯一路計画は既に承認されており公表までそう長くはないかもしれないという話があった。28省の三分の二以上(2015年2月5日までに各地における両会議を開催済みの省)は国レベルの一帯一路戦略に従うべく、各省において関連計画を策定中である。

第十三次国民経済・社会発展五ヵ年計画においては、第四編第51章において、一帯一路計画の推進を記述している。

(情報更新:2016年3月)