インドネシア(Indonesia)

国勢概要

国名 インドネシア共和国
Republic of Indonesia
国土面積 約189万km² (日本の約5倍)
人口 約2.55億人(2015年:インドネシア政府統計)
人口密度 135人/km²
都市人口比率 53.7% (2015年)
GDP(名目)
(単位:億ドル)
5,102(2008年)、5,396(2009年)
7,551(2010年)、8,930(2011年)
9,179(2012年)、9,105(2013年)
8,885(2014年)、8,619(2015年)
(世銀統計)
一人当たり
GDP(名目)
(単位:ドル)
2,349.8(2009年)、2,977.0(2010年)
3,498.2(2011年)、3,562.9(2012年)
3,666.8(2013年)、3,531.9(2014年)
3,374.5(2015年)、3,605.1(2015年)
(インドネシア政府統計)
産業別
就業人口比率
第一次産業13.7%
第二次産業40.3%
第三次産業46% (2016年推計)
経済成長率
(実質)
6.4%(2010年)、6.2%(2011年)
6.0%(2012年)、5.8%(2013年)
5.6%(2014年)、4.8%(2015年)
5.0%(2016年)(インドネシア政府統計)

(情報更新:2017年3月)

概況

インドネシアは、17,500以上の島で構成される島嶼国家である。人の居住する島々の数は6,000前後で、それらの面積の合計は約70万平方キロ(陸地総面積の38%)である。

インドネシアは、中国、インド、アメリカ合衆国に次ぐ世界第4位の人口規模を有する。

広い国土に300以上の民族が居住する一方、全人口の70%近くは、国土の6%にすぎないジャワ島に居住している。

経済活動は、西部インドネシア(スマトラ、ジャワ、バリ)が国家経済の約82-83%を占め、東部インドネシアとの開発格差の存在が明らかである。また、ジャワ島とその他の地域(「ジャワと非ジャワ」)の開発格差も存在する。

地方ブロック図

地方ブロック図

資料:高橋彰(2000)「最新 地図で知る東南・南アジア」平凡社

国及び地方の関係と計画体系

インドネシアの地方政府は州(34、特別州等を含む)、市(都市部自治体、93)・県(農村部自治体、416)の3層構造である(いずれも2015年6月時点)。

各政府は、国家開発計画体系法(法律2004年第25号)に基づく社会経済開発計画と空間計画法(法律2007年第26号)に基づく空間計画を策定する権限を有し、これらの計画を中心として開発を進めている。

社会経済計画体系

社会経済計画体系

資料:国家開発計画システム法を元に作成

空間計画体系

空間計画体系

資料:空間計画法を元に作成

国土政策に関わる政府機関等

計画名又は行政分野 担当機関 ホームページ
社会経済計画 計画作成:国家開発計画庁
予算作成:財務省
http://www.bappenas.go.id
http://www.depkeu.go.id/Ind/
国家空間計画 計画策定:土地及び空間計画省
計画実施:公共事業及び公共住宅省ほか
http://www.bpn.go.id
http://www.pu.go.id

国土政策に関わる主要な施策

国家レベルの開発計画(社会経済計画)の制度概要

インドネシアの国家レベルの開発計画(社会・経済開発計画)は、国家開発体系法(法律2004年第32号)に基づき、20年計画である国家長期開発計画と五ヵ年計画である国家中期開発計画及び実施計画(年次計画)によって構成され、これらの開発計画は、国家開発企画庁(BAPPENAS)がとりまとめ役となるが、国家中期開発計画には、大統領の政治的コミットメントとしての意味もある。

長期開発計画は、20年間にわたる開発ビジョンとミッション、戦略等の政策の方向性を示す役割をもつ。中期開発計画は、長期開発計画との整合性に配慮しつつ、大統領がその施政方針に従って、国家開発戦略、マクロ経済フレーム、及び5年間の優先的取組施策を示すものであり、就任後遅くとも3ヶ月のうちに策定するとされている(なお、大統領は直接選挙によって選ばれ、1期5年、再選1回である)。なお、現行の長期計画(法律2007年第17号)は、「自律的、進歩的、公平で繁栄あるインドネシア」をビジョンとした2005-2025年にわたる計画である。

2014年10月に就任したジョコ・ウィドド大統領の下で策定された新たな国家中期開発計画(計画期間2015〜19年)は、現行の長期計画の第3期にあたるもので、「自律的かつゴトンロヨン(注:「相互扶助」の意)の精神に則った独立国家インドネシアの実現」をビジョンとして、政策の柱に、人間開発・社会開発、経済開発と格差の是正、環境への配慮を打ち出すなど持続可能な開発を意識した内容である。また、開発の推進にあたり、「Quick Wins」と名付けられた開発成果の「見える化」を進めるとした。

国家レベルの空間計画の制度概要

法律1992年第24号(空間計画法)の成立により、インドネシアの空間計画に初めて法的根拠が与えられたが、地方分権化や都市化の進行等を背景として同法は2007年改変された(法律2007年第26号)。同法の改変では、急速に進む都市化への対応は最重要課題とされており、同法では、特に市の空間計画において、(県の空間計画では必須とされていない)交通計画や緑地計画、インフォーマルセクターに係る情報を盛り込むと共に、公園や緑道、墓地等の緑地に当該市域の30%を充てるという数値目標も示されている。また、ジャカルタやスラバヤ等の大都市では都市圏空間計画の策定も進められている。

国家空間計画(法律2008年第26号)として制定された現行の国家空間計画は20ヵ年であり、5年毎に見直しがなされる。策定機関は国家空間計画調整委員会(経済担当調整相が委員長)であり、その事務局は国家開発企画庁(BAPPENAS)に置かれ(BAPPENAS長官が事務局長)、公共事業省空間計画局が委員会の実務を担った。

国家空間計画に含まれる内容は、国家空間計画の目標を達成するための効果的かつ効率的な計画プロセスに向けた指針となるものである。戦略開発フレームは、国家の土地戦略を構築するために存在し、群島国家としての空間活用に安全性、採算性、持続性を実現し、国家としての一体感と安定を確保しようとするものであり、例えば、都市開発においては、各都市が、国家中心都市、広域中心都市、地域中心都市及び国家戦略中心都市に分類され、国家中心都市には「輸出入の中心または地域の国際的玄関口である、または、そのようになり得る都市的地域」、「工業及びサービス業の国家的または複数の州の中心である、またはそのようになり得る都市的地域」、「国家的または複数の州の交通上の結節点である、またはそのようになり得る都市的地域」等とその分類基準と果たすべき役割が示されている。

ジャカルタ都市圏の計画的整備

ジャカルタ都市圏(ジャボデタベックジュール)における都市圏レベルでの開発の必要性は1950年代後半より議論されてきた。1975年に「ジャボタベック都市圏開発のための地方準備局」が設置、翌1976年に「ジャボタベック地域の開発に関する大統領令」が出されるとその動きは本格化し、地方分権化を経て、2006年には都市圏全ての地方政府によって「ジャボデタベックジュール開発計画局」が設立される等、都市圏レベルでの一体的な開発を進めるための枠組みが整えられている。

また、改変された空間計画法の下、2008年、都市圏全域を対象としたジャボデタベックジュール空間計画(大統領令2008年第54号)が策定された。同計画の計画期間は20年(2008〜27年)、5年に一度改訂、さらに、都市圏内の州政府及び市・県政府は、都市圏空間計画を参照しつつ、その施行の時より遅くとも2年のうちに州空間計画及び県・市空間計画を策定するとされている。

この都市圏空間計画は、経済開発と環境保全の両立を目標とし、その戦略として、「一体の計画地域として都市圏内で統合的な開発を促進すること」、「持続可能な環境容量を勘案しつつ、水及び土壌を保護し、地下水、地表水の利用を確保し、かつ、洪水を克服するような開発を促進すること」、「公共の福祉や持続可能な開発を勘案しつつ、地域の特性を活かした生産的、効果的かつ効率的な地域経済開発を促進すること」の3点をあげており、空間構造(国家空間計画に基づく空間体系やインフラネットワーク等)及び空間配置(土地利用等を示している。都市圏構造は、ジャカルタを中心として、ボゴール、デポック、タンゲラン、ブカシといった衛星都市を配する構造は従来の計画を踏襲しつつも、さらにジャカルタ中心部より20〜30キロ圏に「第二ジャカルタ外環状高速」を整備し、それに沿って、スルポン、チネレ、チマンギス、チレウンシ、セトゥ、タンブンといった「郊外副都心」の開発を進めるとしており、さらに、このような都市構造を実現する上で、交通システムはその枢要を成すこととなり、既存鉄道やBRT(Bus Rapid Transit)、MRT等の都市交通網の拡充・整備も強調されている。また、環境保全の観点からは都市圏の水源地であるボゴール県南部の保全等が示されている。

但し、この都市圏空間計画には都市圏全体開発の指針となることが期待されてはいるが、地方分権化に伴って地方政府(特に市、県)には大幅な権限が与えられたため、政府間の利害調整が課題となっている。

ジャボデタベックジュール空間計画

ジャボデタベックジュール空間計画

資料:公共事業省空間計画局

その他空間開発上、影響が大きい施策の例

新省庁「土地及び空間計画省」の設置

空間計画の強化に向けて「土地及び空間計画省(Ministry of Land and Spatial Planning)」が設置された(2015年)。同省は、土地登記などを所掌してきた国家土地庁(National Land Agency)に、これまで空間計画を所掌してきた公共事業省の関連部局が統合されて設置されたもので、地方分権化に伴い地方政府の権限が拡大したことから、地方政府の計画策定能力の向上や計画の策定や実施などに関する地方政府間の利害調整をはじめとして空間計画に係る事務を一手に担うこととなる(但し、実施は公共事業及び公共住宅省をはじめとする各省庁)。例えば上述のジャカルタ都市圏空間計画も同省の下で検討されている。

「スラムなき都市」の全国的展開

第3回国連人間居住会議(HABITAT III)の準備会合のホスト国インドネシアでは、近年、スラムの改善に向けた全国的政策が打ち出されている。2010年に「スラムなき都市」が政策目標として掲げられると、2011年には「住居及び住宅地区法」の改変によってスラムを含む住宅問題における政府の役割の重要性が明記され、2015年には、公共事業省は「スラムなき都市プログラム」を推進すべく、として、2019年までに、100%の人々の水道へのアクセス、0%の都市スラム地区、100%の人々の衛生施設へのアクセス、そして、100%の自治体における建造物建築条例の整備という目標を掲げ、これを受けて国家開発計画庁は「インドネシア・スラム削減政策及び行動計画(SAPOLA)」を策定し、「0%の都市スラム地区」に向けた具体的な道程を示した。HABITAT III会合を経てこうした一連の動きは実務レベルでも本格的に展開しているようである。

(情報更新:2017年5月)