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PLATEAU AWARD 2023開幕!審査員が語る受賞のためのポイントとは

「PLATEAU AWARD 2023」説明会レポート

国土交通省による2023年度のProject PLATEAU開発コンテスト「PLATEAU AWARD 2023」の募集が始まった。その応募に向けた説明会が、2023年7月5日にオンラインにて開催され、PLATEAUの概要、評価のポイントなどが紹介されたほか、審査員を交えたクロストークが行われた。

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大内 孝子(Ouchi Takako)
編集:
北島 幹雄(Kitashima Mikio)/ASCII STARTUP
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国土交通省が推進する3D都市モデルのプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」は、データの整備だけでなく、ハッカソンなど関連イベントが多数行われていることもその特徴のひとつ。今年も、全国各地で、さまざまな形で“作る”人たちとの交流が計画されているが、その集大成として行われるのが「PLATEAU AWARD」だ。賞金総額は200万円。応募は、2023年6月16日(金)から2023年11月30日(木)の23時59分まで。最終審査会は2024年2月24日(土)開催予定となっている。

今回の説明会は、PLATEAUの最新情報を知りたい、「PLATEAU AWARD」への応募を検討している、PLATEAUの技術的な解説を知りたい、という人に向け行われたものだ。技術的な面だけでなく、前回の審査員や受賞者が登壇し、話が聞ける機会ともなった。

まず国土交通省 IT戦略企画調整官 内山裕弥氏より、Project PLATEAUについて、および「PLATEAU AWARD」の位置づけについて解説があった。

国土交通省 総合政策局/都市局 IT戦略企画調整官 内山裕弥氏

PLATEAUの目指すもの

2023年度のPLATEAU関連のさまざまなイベントは「PLATEAU NEXT」という枠組みの中で行われる。その集大成が「PLATEAU AWARD 2023」で、そこに向けて、すでに各地でHack Challengeなどの開発イベントが始まっている。「PLATEAU NEXT」の目標は、オープンデータとして提供している3D都市モデルPLATEAUをできるだけ多くの、いろいろな人に使ってもらい、さまざまなイノベーションを起こしてほしいというところにある。内山氏は、次のようにそのねらいを語る。

「Project PLATEAUでは、現実の都市に存在する建物、道路、信号機や手すりといった設備、それから目に見えないような都市計画、災害リスクなどありとあらゆる都市を構成する情報を3次元の地理空間データとして標準化し、オープンデータとして提供するということをやっています。もちろん、データがあるだけではあまり意味がないので、自治体や企業と一緒に、実際にPLATEAUデータを使ったさまざまなソリューション開発というのも並行して行っています。

さらに言うと、それを我々官庁や一部の企業だけが使えるという形ではなく、誰でもさわれる状態にして、みなさんに使っていただき、いろいろな技術的な手法とかアイデアを出してもらいたいというところです。

要は、地理空間情報を活用するナレッジを集め、共有して、我々自身、みなさん、あるいはさまざまな企業で社会実装していくことでデジタルツインを世の中に実現していこう、新しい価値を生み出していこうということです」(内山氏)

「PLATEAU NEXT」

国土交通省ではPLATEAUとして3D都市モデルを整備するだけではなく、PLATEAUを扱うための技術的なナレッジ、ツールおよびチュートリアル、ノウハウ、ユースケースの蓄積・公開を行っている。

たとえば「Learning」では、UnityやUnreal Engineといったゲームエンジン、CLIP STUDIO PAINTやTouchDesignerなどの制作支援ツールでの使い方や、あるいはVR/ARアプリを作りたい、clusterやVRChatなどVRプラットフォームにインポートする手順であったり、さまざまな技術分野でPLATEAUを扱うためのテクニカルレポートやチュートリアルが準備されている。

また、3D都市モデルをブラウザからプレビューする「PLATEAU VIEW」、PLATEAUをゲームエンジンで扱うための「PLATEAU SDK」など、より容易にPLATEAUデータを扱うためのツールを開発し、オープンソースとしてリリースしている。

Project PLATEAU公式GitHubアカウントには、「PLATEAU VIEW」、「PLATEAU SDK」のほか、PLATEAUを扱うためのソフトウェアやPLATEAUを使ったソフトウェアなどさまざまなものがOSSで公開されている。

現在、公開されているのは全国130都市。今年度は、新規の70都市が整備中となる。

すでに130都市をカバー、今後も整備が進められている

「PLATEAU AWARD 2022」の振り返り

昨年の「PLATEAU AWARD 2022」では全70作品の応募があり、非常にレベルの高い闘いが繰り広げられた。当初の予定では一次選考10作品のところ、17作品が最終審査に進んだ。

審査の結果、昨年度のグランプリ受賞は、北海道の学生チーム「シマエナガ」の『snow city』。実在の街をスノードームで楽しむという作品だ。実在の街の3D都市モデルを使って生成した街をスノードームの中に入れて鑑賞したり、将来的には、スノードームを手元で楽しめるように3Dプリンターと連携することも考えているという。

システムとしての完成度の高さ、映像、音といったUI/UXの作り込みの高さが評価された。また、観光と組み合わせた展開が容易に想像できるという点が大きく評価された形だ。

『snow city』

このグランプリ受賞作品もそうだが、AR/VR対戦ゲームや映像作品といったエンタメ系の作品から、PLATEAUデータを使ったツール、あるいはPLATEAUを使うためのツールなど、さまざまな作品があった。詳しくは「PLATEAU AWARD 2022」開催レポート(リンク:milt ASCII)を参照してもらいたい。

今回の説明会では、「PLATEAU AWARD 2022」入賞作品のうち、CityGMLに属性情報を付加するWebアプリ『情報加算器』の米田将氏(HollowByte合同会社)、PLATEAUの空間情報を使って街から音楽が聞こえるようなシミュレーション『PLATONE プラトーン』のORSHOLITS Alex氏、銭 イーエン氏が登場し、制作の動機などを話してくれた。

『情報加算器』

「『情報加算器』が何かというと、アプリ上にPLATEAUのCityGMLのデータを読み込んで、そこに追加したい情報を選択して追加することができるというものになります。バックエンドでプログラムが動いていて、他の受賞作品と比べると一見地味な感じにはなっています。なぜ作ったのかというと、PLATEAUのハッカソンに参加してその中でいろいろ話をしていると、初心者の方でプログラミングができないため何をしたらいいかわからないと言われることが多い。そういう人でもPLATEAUのデータを簡単にさわれるようにできないかということで作ったものです」(米田氏)

『情報加算器』

米田氏はその後も、さまざまなオープンデータを一元化して扱えるよう開発を続けている。プラットフォーム化して、それぞれ必要なコードをみんなが書いて、共有する世界を目指すという。

『PLATONEプラトーン』

「私たちの作品『プラトーン』は簡単に言うと、音のARみたいなもので、Unreal Engineの中で3D Tilesを使ってシミュレーションをしています。自作のハードウェアでユーザーの位置と方位をリアルタイムで取得し、そのリアルタイムデータをストリーミングして、没入感のある音響体験をできるようにしました。

ユーザーの位置と方位をその場で取得して、その周りの3D Tilesのデータを使って音のシミュレーションを行い、リアルタイムで精製した音響をユーザーに返すことにこだわりました。特に大変だったのは低遅延のネットワークを作ることです。リアルタイムでPLATEAUのデータを使うためにはネットワークのラグを解決しなければならず、そこが一番、苦戦したポイントです。

ハードはAlexさんが作っています。これは進化版で、ひとつ前のバージョンはもっと大きくて重かったです。最近はこの後継も作っています」(銭氏)

『PLATONE プラトーン』

今年はPLATEAUのイベントにまだ参加する予定はないということだが、後継のハードが気になるところだ。

「PLATEAU AWARD 2023」の募集要項

「PLATEAU AWARD 2023」の募集要項は次のとおりだ。

「PLATEAU AWARD 2023」募集要項

(1)3D都市モデルの活用
(2)アイデア
(3)UI・UX・デザイン
(4)技術力
(5)実用性

の5つの観点から評価する。なお、応募にあたって、PLATEAUが提供する3D都市モデルを利用したものであれば作品のジャンルは問わない。また、すでに事業化されているソフトウェアから、個人のアイデアやハッカソンなどから生まれたプロトタイプまで、作品の熟度も問わない。

応募形態は個人、チーム、組織(会社)、いずれも可(ちなみに昨年度は個人が4割、グループが4割、企業が2割)。締め切りは2023年11月30日、最終審査が2024年2月24日というタイムスケジュールになっている。

審査員が語る「PLATEAU AWARD」のポイント

ここからは審査員を務める川田十夢氏(開発者/AR三兄弟 長男)が加わり、内山氏、遠藤諭氏(株式会社角川アスキー総合研究所主席研究員)によるクロストークの模様をお伝えしよう。

国土交通省 総合政策局/都市局 IT戦略企画調整官 内山裕弥氏(左上)、株式会社角川アスキー総合研究所主席研究員 遠藤諭氏(右上)、開発者 / AR三兄弟 長男 川田十夢氏(中央下)

遠藤:川田さん、今回「どんなコンテストになるといいかな」みたいな、何か期待するところはありますか?

川田:本当に出そろってきたなという印象はありますね。PLATEAU自体が充実してきたのもありますが、Unityとかで普通に使いやすい環境が出てきたので。去年の傾向としてはイマジナリというか、いかにも地図情報というものではないところから受賞作品が生まれたりしていて、結構面白いところだなと感じています。

遠藤:内山さんはどうですか? 去年は癒し系でしたが、今年はどんな作品が出てくるのか、期待するところなどをお願いします。

内山いままで見たことのないものが見たいですね。PLATEAUの取り組みもかなり一般的になってきて、最初は3D都市モデルを表示するだけで「すごい」となっていたのが、最近では普通になってきた。今は、それをどう使うかというフェーズに入ってきている。そうするとどうしてもソリューションが似通ってくるというところがあるのですが、4年目にして「見たことがない」みたいな驚きや、そういうプロダクトが出てくると、ポイントが高いと思います。

遠藤:そういう突飛なものが意外に堅実なものに応用できるというのは、この世界によくあることですよね。広がることはすごく意味があります。

川田:空間のあり方が年々変わってきているなと思います。PLATEAUに限らず、ですが。現実空間の捉え方がコロナ禍以降変わって、わざわざその場所にいくということにかなり敷居が上がっている。リアルと配信のハイブリッドが普通になってきている中で、より現実空間とのからみが求められるようになっています。実際、普通に開発をしている中で、これは確かに実空間を絡ませないとできないということを求められますね。

PLATEAUは非常に純度の高い位置情報だったり、本当にデータとしてピュアなものだと思いますが、例えば、観光の目的に使ってみたらどうかとか、より実経済と結びついたアイデアが出てきてもいいのかなとは思いますね。

内山:それは重要ですよね。デジタルだけで閉じているとそれだけの話になってしまうので。現実空間にどうインタラクションするか、PLATEAUを政策的に推進する上でも重要なポイントだと思っています。

遠藤:実際、世の中にあるのは地図ではなくて現実の世界なので、それがそのままひもづくというのはすごく意味がありますよね。

川田:昨年のグランプリ受賞作品『snow city』はまさにそれで、観光とお土産物とひもづく可能性があるわけで、非常にわかりやすいケースだと思います。3Dプリンターなどの現代の技術とひもづくことで、オンデマンドでその人だけの思い出を持ち帰れたりする。かつて僕らは北海道旅行に行ったら、北海道の形をしたキーホルダーが欲しかったわけですよ。あの感覚の現代版ですよね。技術が進んで位置情報とかいろいろ使えるようになってきて、3Dプリントもできるようになったということが揃って、「じゃあ、今持ち帰りたいものはなんだろう」というところから、いろいろなアイデアが考えられそうですよね。

内山:『snow city』はそういう意味でよかったですよね。身近な感じ。デジタルツイン、都市というと非常に大きな話になりがちですけど、実際は『snow city』みたいなものが欲しいのではないかな。

川田:技術者が技術の世界で考えてしまうけれど、これを観光とか商店街とか、そういう一般の人がさわる出力先みたいなものがあるとまた広がると思います。

遠藤:ほかにこれまで印象に残った作品、ハッカソンでもかなりの数のいろいろなアプローチがありましたが、特に印象に残ったものはありますか?

内山:特にこの作品が、という話ではないですが、6月の「ルーキーハッカソン(「PLATEAU Hack Challenge 2023 for ルーキー」)」でUnreal Engineを使っている方が多くて、いろいろなプラットホームに広がってきたなと思いました。それだけUnreal Engineのナレッジが増えてきたということだろうなと。ルーキーハッカソンの優勝は、スパイダーマンの東京版という感じの作品で、完成度が高かったですね。Unreal Engineの豊かな表現力を使うと爽快な操作性などが比較的容易に実現できるので、ゲームとしての見栄えが違ってきますよね。

遠藤:なるほど。また今年は変わってきている。

内山:そうですね。ゲームエンジン以外にも、いろいろなプラットフォームや開発環境の中で試してもらえたらいいかなと思います。

遠藤Unreal Engineでほとんど現実と見分けがつかないような世界が作れたり、日本にいない人が日本の風景を作れたり、いろいろな事例が出てきておもしろいですよね。

遠藤:最後に、応募するにあたって気をつけたほうが良い点、これは言っておきたいとかありましたらお願いします。

内山:はい。重要なことは締切が11月30日で、それまでに完成させなきゃいけないと思いがちですが、11月30日に出すのはデモ動画でいい、その時点では完成していなくてもいいんです。動画と資料を出しておいて、「12月の審査当日までにがんばる」というのでも全然ありです。そういうふうに自分を追い込んでいくというやり方もある。「諦めないで出してもらいたい」ということを言っておきたいです。

川田ガチ勢も面白系も同じ土俵には乗りますが、僕らはフェアに審査しますので、どちらのタイプの方も臆することなく安心して応募してください。特に面白系がガチ勢を見ると、「これはかなわないかも」と思ってしまうかもしれませんが、技術的にしっかりしていなくても技術はあとからついてきます。まず、こういうのってどうだろうとアイデアから入るのも大事だと思います。

内山:それは本当に大事ですね。前述の評価ポイントは全部フラットで、10点満点ずつという感じです。技術力だけが高くてもグランプリではない。アイデアがすごくいいとか、UXがきちんと設計されているとか、そういう点も評価しています。面白ネタ、大歓迎です。

川田:あと、PLATEAUの場合、応募者も審査員も技術的な相互扶助がすごく盛んに行われているので、「これはできないかもしれない」というものでもいいから、まずは出してほしいですよね。

内山いろいろなイベントに参加してもらって、参加者同士、あるいはメンター、審査員と議論していく中でどんどんブラッシュアップされていく。実際、昨年もそういう作品がありました。

遠藤:ハッカソンの参加者からエントリーしていただくのも大いにありだと思います。コンテストといっても、採用されて企業の製品に使われるといった商用のコンペではないので、アイディアとか、どこか光る部分があればそこを大きく評価したいというところもあります。

内山:もちろん、この「PLATEAU AWARD」に作品を出してもらってもいいのですが、ぜひ、みなさん、ハッカソンも参加してもらって、仲間を見つけたり、新しい知識を得たりしてもらいたいなと思っています。みなさん、お待ちしています。

PLATEAUのエキスパートたちが作品制作に必要な用語や技術を解説

後半の技術解説パートでは、株式会社ホロラボの於保俊氏から「PLATEAUが提供する3D都市モデルデータ全般の説明」、株式会社MIERUNE Engineering Managerの西尾悟氏から「Web GISおよびPLATEAUのGISでの使用方法」について解説があった。また「PLATEAU SDK」については、実際に開発にあたっている株式会社シナスタジアの鈴木智貴氏が、その概要と使い方を解説した。

株式会社ホロラボ 於保俊氏

 於保氏は、PLATEAUを扱うに当たっての基本的な説明を行った。その中で於保氏は,
「現実のありとあらゆる情報が地理情報になり得る。この地理情報を介して、現実の世界とコンピューターの世界をつなげている。ここがPLATEAU活用のポイントになる」と説明した。

このほかに、地理情報に必要な座標、形状や範囲をあらわすジオメトリ、住所や階数などの属性情報について説明したほか、高さの扱い方、地理情報を正しく扱うコツなども紹介した。

株式会社MIERUNE Engineering Manager 西尾悟氏

西尾氏は、まずGIS(Geographic Information System)について言及。GISは「位置情報」とそれに付随する属性情報を持つ「地理空間情報」を扱うシステムのことで、地図といろいろなデータを重ねることでさまざまな表示や分析、検討を行うことができると説明した。

また、現在はオープンデータのほか、有償無償で多様なソフトウェアも公開されているため、非常に使いやすくなっていると語り、代表的なオープンデータやオープンソースのツール、Webブラウザで閲覧できるWebGISについて具体例を挙げて紹介した。さらに、オープンソースのGISソフトウェア「QGIS」でのPLATEAUの使い方を解説した。

株式会社シナスタジア 鈴木智貴氏

鈴木氏は「PLATEAU SDK」について紹介。「『PLATEAU SDK for Unity』と『PLATEAU SDK for Unreal』のふたつがあり、どちらもオープンソースのツールキットで、都市シミュレーションや実在都市を舞台にしたゲーム作りなどに利用できる。3Dモデルの形状に加えて、属性データも利用可能。Windows、macOSのどちらもサポートしている」と概要を説明した。

そして、「PLATEAU SDK」の使い方とできることについて、実際の利用シーンを想定して画面を共有しながら紹介。3D都市モデルのインポートの仕方や範囲の選択・設定の仕方、エクスポートの機能、3D都市モデル調整機能、属性取得機能など、実演やサンプルも交えながら具体的に解説した。

どの解説も、PLATEAUを使う前に押さえておきたい知識や、いざ使ってみる際に必ず参考になる貴重なものだ。ぜひ動画を参照し、PLATEAUにチャレンジしてほしい。

「PLATEAU AWARD2023」説明会アーカイブ動画