j079-Interview

「PLATEAUで映像制作はどう変わる?PLATEAUの可能性と課題を探る」

近年、映像制作において都市のリアルな再現はますます重要になっています。その中で、PLATEAUは、クリエイターにとって新たな可能性をもたらしました。今回、「ゴジラVSガイガンレクス」「ゴジラVSメガロ」などの作品でPLATEAUを活用し、映像のリアリティを高めた上西監督に、実際の活用事例やその利便性、さらに今後の可能性について伺いました。

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  • 上西琢也
    上西琢也
    株式会社白組 / CGディレクター

映像作品の絵力に貢献できるPLATEAU

——監督は今までPLATEAUのデータをどのような作品で活用されてきましたか?

上西ゴジラVSガイガンレクス」と「ゴジラVSメガロ」でPLATEAUを活用しました。背景として利用し、リアルな都市空間を再現するのに非常に役立ちました。

両方とも年に1回東宝さん主催でやっている、ゴジラ・フェスというイベントで上映させていただきました。「ゴジラVSメガロ」はGEMSTONE CREATIVE LABELからオムニバス形式で劇場公開もされた(『GEMNIBUS vol.1』)ので、PLATEAUを使った作品が劇場公開もされた、ということになりますね。

「ゴジラVSガイガンレクス」©TOHO CO., LTD.
「ゴジラVSメガロ」©TOHO CO., LTD.

——具体的にはどのように活用されたのでしょうか?

上西 町並みの広範囲の背景を作るために使いました。特に遠景や空撮のシーンでは、PLATEAUのデータをそのまま活用できたのが大きなメリットでした。近景はテクスチャの解像度の問題で別の手法を併用しましたが、遠景に関してはPLATEAUのデータをそのまま使うことでリアリティのある都市空間を表現できました。

「ゴジラVSガイガンレクス」より、PLATEAUが用いられている1シーン ©TOHO CO., LTD.

上からの絵をつくる場合、街並みを碁盤の目で構成した方がコスト上も効率的ですし、つくりやすいです。ただ、碁盤の目過ぎて、これは東京じゃないよねっていうのが一瞬でわかってしまいます。そこで、そのままPLATEAUのデータが使えると、現実にある街のレイアウトなのでやはり説得力が全然違います。

PLATEAUがもたらした制作効率の向上とコスト削減

——映像制作では都市の3Dデータ作成に多くの時間とコストがかかりますが、PLATEAUの導入で変わった点はありますか?

上西 『シン・ゴジラ』では航空スキャンデータを使用しましたが、低予算の作品では同じ手法は難しいです。しかし、PLATEAUのおかげで背景制作の手間を大幅に削減できました。

——具体的にどれくらいの時間削減ができたのでしょうか?

上西 以前なら町並みの構築に数ヶ月かかるところが、PLATEAUを使うことで1週間以内に準備できるようになりました。プレビズ(事前ビジュアルチェック)でも役立ち、距離感やレイアウトの確認が容易になりましたね。

——コスト面での変化はありましたか?

上西 街並みの3Dモデルをゼロから制作するには、莫大な費用がかかります。しかし、PLATEAUを活用すればそのコストを大幅に抑えられます。特に小規模なプロジェクトでは、PLATEAUの導入が制作の幅を広げることに直結します。予算で諦めなければいけなかったところが、『シン・ゴジラ』のような予算の作品と同じワークフローで進められるのがとてもいいですね。これまでは予算の制約で諦めていた都市の表現が、PLATEAUを使えば可能になります。

また、PLATEAUの立ち位置がとても助かりました。データは国が提供しているので、商業利用する際の権利関係もクリアです。これが非常に大きなメリットですね。たとえば、Googleマップや他の3D都市データは利用規約が厳しく、商業作品に自由に使うのが難しい場合があります。その点、PLATEAUはクレジットを出すだけで無料で使えるなんて、こんな夢見たいなことはあるのかと(笑)

映像業界からみたPLATEAUの課題とこれから

——PLATEAUを使用してみて、課題や改善点はありますか?

上西 SDKが進化していますが、UnityやUnreal Engineを使っている人のものになってしまうので、ハードルの高さは感じます。これはわがままな要望になってしまいますが、Unityのアプリとして、ゲームのように簡単に扱えるようになると嬉しいですね。

——SDKの扱いについて、どのように改善すればより広く使われるようになると思いますか?

上西 PLATEAUのホームページから、SDKのページにいっても何ができるのかがすぐわからないので、どういうツールで何ができるのかわかると嬉しいですね。

——PLATEAUの認知度についてはいかがですか?

上西 まだ映像業界では十分に広まっていないように感じます。特に予算の大きい作品ではカスタムデータの利用が主流なので、PLATEAUの導入機会が少ないのが現状です。もっと使い方がわかりやすいプロモーションが必要だと感じますね。

——今後、PLATEAUを用いた新たな活用方法は何か考えられますか?

上西 現時点のPLATEAUは遠景や空撮はそのまま使えるレベルなので、例えば飛行機同士の空中戦シーンとか。空撮っぽいことをできる利点は、PLATEAUにとってかなり強いと思います。

——PLATEAUの今後の発展について期待することはありますか?

上西 PLATEAUも都市部や繁華街のデータは充実していると思うんですが、日本の田んぼがあるようなデータがあると嬉しいですね。そういうロケーションのデータはあまりなくて、そういうデータがほしいとなると自分でつくる以外選択肢がないんですね。日本のそういう風景がPLATEAUの高精細なデータで使えるといいです。