uc20-016

プローブパーソン調査を活用したスマート・プランニング

実施事業者株式会社三菱総合研究所
実施場所静岡県沼津市 沼津駅周辺
実施期間-
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プローブパーソン調査を用いて駅前空間の人の流れを俯瞰で可視化。歩行者目線を重視した駅前空間の再編が人々の回遊行動にどのような影響を与えるのかを検証する。

実証実験の概要

駅前空間は、これまでの自動車や鉄道の交通結節点としての役割に加え、歩行者の回遊性向上や都市の顔としての魅力発信など、歩行者目線での価値を提供することが重要となっている。今回の実証実験では、沼津駅周辺で構築した3D都市モデルにプローブパーソン調査の結果を重ね合わせることで駅前空間の人の流れを可視化する技術検証を行った。

実現したい価値・目指す世界

沼津市の中心市街地は、今後本格的に事業展開を迎える連続立体交差事業をはじめとする沼津駅周辺総合整備事業により、南北交通環境が劇的に改善し、駅周辺の回遊性の向上が図られるとともに、鉄道施設跡地や高架下空間が新たに誕生し、これらを活用した新たな拠点が整備されるなど、中心市街地に極めて大きなインパクトを与えることとなる。

これらを契機として、沼津駅周辺を車中心からヒト中心の魅力ある場へと再生し、多くの市民や来街者が集い、交流し、住まい、回遊する都市の顔として再構築していくために、沼津駅周辺総合整備事業の本格展開と併せて実施すべき、まちづくりの施策の方向性を示した「沼津市中心市街地まちづくり戦略」を策定したところである。

今回の実証実験では、本戦略に基づき、沼津駅周辺で構築した3D都市モデルにプローブパーソン調査の結果を重ね合わせることで駅前空間の人の流れを俯瞰で可視化し、回遊行動を明らかにする。さらに、これを活用して歩行者目線を重視した駅前空間の再編により、人々の回遊行動にどのような影響を与えるのかを検証する。将来的には歩行回遊行動シミュレーションモデルと連携した駅周辺の公共空間再編への活用も期待されている。

沼津駅周辺(実証対象エリア)
沼津駅周辺(鳥瞰)

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

沼津市では、沼津駅周辺(駅まち環状)エリア内の歩行者の回遊行動実態(移動経路、移動目的、滞在時間等)を明らかにするため、2020年9月28日から10月9日までスマートフォンアプリを活用した人や車の移動状況調査であるプローブパーソン調査を実施し、その結果を移動手段別(徒歩、自転車、自動車、鉄道、その他)に分類・整理している。

今回の実証実験では、この調査データを沼津駅周辺で構築した3D都市モデルに重ね合わせることで、駅前空間の人の流れを可視化する技術検証を行った。

検証で得られたデータ・結果・課題

今回の実証実験では、単なる人の移動の可視化だけではなく、3D都市モデルに重畳することにより、エリアの特性等を踏まえた現状の移動傾向の分析を実施することが可能となった。

歩行者の移動に着目すると、駅南側の南北方向の流れが強い傾向にある一方、東西方向の移動が少ない傾向が見られた。

また、駅南北間の移動にあたっては、駅東西に配置された鉄道ガードを通るために大きく迂回しなくてはならない現状も把握することができた。

さらに詳しくみると、駅南側で滞留していることが多く、逆に駅北側では南側から移動してくる人も含めて滞留していないこともわかる。これは駅南側にショッピングモールや商店が多数存在していることから、人々が買物、飲食等で滞在している時間が長いことが原因と推定されるなどが考えられる。

今後、エリアのポテンシャルを最大限に活かすため、連続立体交差事業をはじめとする沼津駅周辺総合整備事業により南北市街地の分断を解消するとともに、沼津駅周辺の公共空間を車中心からヒト中心の空間に再編することなどにより東西方向の移動を誘発し、回遊性を高める対応策が有効であることを可視化することができた。

一方、今後の課題としては、移動手段だけでなく、移動目的(買物、飲食、通勤・通学等)も分類し可視化する手法の研究が挙げられる。移動の目的によって、人々の回遊行動は異なる傾向を示すことが想定されることから、これらを可視化することで、よりきめ細やかな施策検討への活用が期待できる。

沼津駅周辺(PP調査重畳結果)
沼津駅周辺(PP調査重畳結果)
沼津駅周辺(PP調査重畳結果)
沼津駅周辺(PP調査重畳結果)

今後の展望

沼津市の中心市街地である沼津駅周辺は、今後連続立体交差事業が本格的に展開されていくなど、沼津駅周辺総合整備事業により南北交通環境が劇的に改善し、駅周辺の回遊性の向上が図られる予定である。また、鉄道施設跡地や高架下空間が新たに誕生し、これらを活用した新たな拠点が整備されるなど、まちの様相は大きく変わっていく。

これを契機として、沼津駅周辺を車中心からヒト中心の魅力ある場へと再生し、多くの市民や来街者が集い、交流し、住まい、回遊する都市の顔として再構築していくこととしている。

今回の実証実験により、駅南北間の分断状況が明らかになるとともに、エリア内の歩行者の回遊行動実態が明らかになった。この結果を踏まえ、今後、沼津駅周辺の魅力向上策の具体化への活用や、回遊性向上に資する施策の検討、回遊行動シミュレーションモデルと連携した公共空間再編への活用が期待される。

また、今回得られた知見を展開していくことにより、プローブパーソン調査を活用したスマート・プランニングの一手法として、3D都市モデルの活用を全国に広げていくことを目指す。