社会資本整備

3. 戦略的・計画的な社会資本整備とは?

 

社会資本の整備効果は、「フロー効果」と「ストック効果」とに分けられます。フロー効果とは、公共投資により、生産、雇用および所得等の経済活動が派生的に創出され、経済全体が拡大する短期的な需要創出効果のことをいいます。公共投資額から中間投入額を除いた付加価値額とその派生効果が直接GDPに反映されます。ストック効果とは、社会資本が整備され、それらが機能することによって継続的に得られる効果のことをいいます。例えば、経済活動における効率性・生産性の向上が図られたり、国民生活における衛生環境の改善、防災力の向上、快適性やゆとりが創出されたりする効果などが当てはまります。GDPを直接的・間接的に押し上げる効果のほか、快適性、ゆとりなど金銭価値で測れない効果もあります。

 

景気が長期低迷していた時期等に、景気刺激対策としての公共投資がさかんに行われた時期はありますが、近年では、規模ありきではなく、ストック効果を発揮する観点から、中長期的・安定的な公共投資を着実に行っていくことがより重視されています。

 
<社会資本への投資がGDPに与える経済効果イメージ※1(2021年度/令和3年度)
社会資本への投資がGDPに与える経済効果イメージ
 

インフラのストック効果とフロー効果.pdf

インフラストック効果とは | インフラのストック効果 (mlit.go.jp)
 

 

公共投資の水準がどのように推移してきたかは、国民経済計算における「一般政府の総固定資本形成」という指標を確認することで把握できます。

 

我が国の公共投資は、戦災復興、高度成長に伴うインフラ需要の増大、日米貿易摩擦に伴う内需拡大政策等により1990年代までは一貫して増加してきましたが、90年代後半から2012年までの間、公共投資の水準は大きく低下してきました(2013年以降は、防災・減災、国土強靱化やインフラ老朽化対策などを進める観点から増加に転じています)。一方で、G7諸国は、我が国よりも早い段階から社会資本整備を行ってきて、インフラが概成しているという印象がありますが、さらなる成長を実現するため、近年、公共投資を積極的に拡大してきています。

 

<公共投資水準の国際比較 ~固定資本形成(一般政府)の経年比較~>
公共投資水準の国際比較 ~固定資本形成(一般政府)の経年比較~
 

G7各国における社会資本整備計画等の概要.pdf

 

公共投資を行うことにより、投資に伴う付加価値とその乗数効果が直接GDPに計上されるとともに、形成された社会資本のストック効果を通じて生産性向上等のメリットが長期間発揮され、民間投資を誘発することが期待されますので、経済成長や国際競争力の強化の観点からも、真に必要な公共投資は着実に行っていく必要があります。

 

 

政府においては、近年の自然災害の激甚化・頻発化に対応して、線状降水帯や台風の予測精度を高め、事前公表する取組、河川の底にたまった土砂を掘削して河道を広げる対策(河道掘削)、利水ダムも含めて降雨前に計画的にダムを事前放流して水位を下げ貯水能力を高める対策など、ハード・ソフトを組み合わせた対策を講じることにより、近年の災害による被害を大幅に軽減できています。

 
<防災・減災、国土強靱化の取組の効果>
防災・減災、国土強靱化の取組みの成果
 

また、物流の効率化・最適化や訪日外国人観光客等の旅行需要を見据えた高速道路等の幹線道路ネットワーク、港湾、空港の整備、市街地の治水安全度を高める放水路や調整池等の整備、公園・緑地の整備等により、産業立地や関係人口が増加するなど、地域経済の活性化に大きく寄与するとともに、サプライチェーンの最適化・高度化、国民生活の質や安全の向上にも大きく貢献しています。

 
<社会資本整備による経済活性化効果の例➀>
社会資本整備による経済活性化効果の例➀
 
<社会資本整備による経済活性化効果の例➁>
社会資本整備による経済活性化効果の例➁
 

さらに昨今、為替動向、国際情勢の緊迫化、感染症等によるリスクの顕在化の影響もあり、企業の国内投資回帰の動きが出始めており、民間投資と相乗効果をもたらし、我が国の国際競争力を取り戻すような社会資本整備の必要性も増しています。

 
<半導体企業や製造業の国内投資回帰の動きとインフラ整備状況(九州地方)>
半導体企業や製造業の国内投資回帰の動きとインフラ整備状況(九州地方)
 

このようなストック効果が最大限発揮されるよう、我が国の経済を支える基盤であるインフラについて戦略的かつ計画的な整備を進めることにより、経済成長の実現を図り、国際競争力を再び強化していくことが重要となります。

 

 

少子高齢化が進み、若年層が急速に減少する中、現場で働く労働力の不足が懸念されています。作業の自動化・自律化技術の開発・社会実装を推進し、現場の飛躍的な生産性向上と働き方改革を進めています。

 
<インフラDXによる自動化・効率化の推進>
インフラDXによる自動化・効率化の推進
 

スマートフォンの普及に加えて、AI、5G、クラウド、自動運転技術等に至る革新的な技術の開発・社会実装等の進歩が進んでいます。こうしたデジタル技術を駆使して、浸水リスクや降雨時の洪水予測、交通障害などの国民生活に直結するリスク情報をきめ細やかに分かりやすく提供したり、公共が保有するインフラデータをオープン化したりすることで、インフラや公共サービスを変革していきます。

 

<デジタル技術を活用したインフラサービスの高度化>
デジタル技術を活用したインフラサービスの高度化
 

技術調査:インフラ分野のDX - 国土交通省 (mlit.go.jp)
 

空港、鉄道、道路、ダム、下水道、港湾等のインフラ空間は、重要な創エネ空間となります。2050年カーボンニュートラルを含むグリーン社会の実現に向け、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や、水素等の受入環境整備等を図るカーボンニュートラルポートの形成、洋上風力発電導入、インフラを活用した再エネの導入・利用拡大を通じて、社会資本整備分野における脱炭素化を加速します。また、暮らしの潤いや生物多様性等に資するグリーンインフラの推進、健全な水循環の維持等のための汚水処理施設整備の促進などを行っています。

 

<インフラ分野のGX(グリーン・トランスフォーメーション)>
インフラ分野のGX(グリーン・トランスフォーメーション)
 

環境:グリーンインフラポータルサイト - 国土交通省 (mlit.go.jp)
 

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