建設産業・不動産業

定期借地権の解説

3.定期借地権の活用

(1) 一般定期借地権

 もっとも活用されており、戸建住宅やマンションの居住用等に活用されている。
 一般定期借地権の活用は、平成5年から郊外型の定期借地権戸建分譲事業が三大都市圏を中心に開始され、バブルによる地価高騰の中、年収の5倍以内で実現する低廉な住宅取得システムとして脚光を浴びた。定期借地権分譲マンションもすぐに事業化された。
 定期借地権戸建分譲事業は、その後、地価の安い地方都市にも普及し始め、住宅地の中にコモンスペースを配置する等、魅力ある住環境づくりの試みが数多く事業化された。定期借地権戸建分譲事業は、当初は安さが魅力として受入れられたが、単に安さだけではなく、定期借地権住宅だからこそ実現できるという良質な住環境供給への期待が高まり、定期借地権分譲マンションにおいても、専有面積の大きな住戸がリーズナブルな価格で供給される質的なメリットに対する評価が高まった。
 平成14年の独立行政法人都市再生機構の「民間供給支援型賃貸住宅制度」により、定期借地権の活用に新しい事業内容が登場した。この制度は、都市再生機構が保有する土地を民間事業者に定期借地権で貸付け、事業者が良質な賃貸住宅を建設供給するもので、平成15年以降1,200戸、1,280戸、2,066戸、1,499戸、3,190戸、5,203戸と、定期借地権を活用した都市部での賃貸住宅が拡大した要因になっている。
 定期借地権住宅は、当初の戸建やマンションのように、実際の住宅購入者が建物を所有する形態から、定期借地権を活用した都心立地の賃貸マンションとして、事業者による収益物件として運用される新たな形態が登場したことになる。土地を購入しない分事業費が圧縮できることから、収益物件としての運用利回りも高くなる。定期借地権の準共有持分を信託受益権で不動産投資法人が購入するなど、不動産証券化の世界からも注目されるようになった。
 自治体遊休地での戦略的な活用も検討され始め、都市再開発分野でも利用され始めている。東京都港区の都営団地の再開発「南青山一丁目プロジェクト」、郊外型の宅地再開発「東村山都営団地での戸建定期借地権分譲」が実施されるなど、公有地での事業が確実に多くなっている。
 高松市丸亀町商店街再開発では、複数の地権者の土地を定期借地権で土地利用権として集約して、合同化した再開発ビルが建設されるなど、中心市街地活性化のジャンルでも活用する動きも出てきている。

(2) 事業用定期借地権

 以前は借地権の期間が20年と短かったことから、ロードサイド店舗としての活用が中心的で、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、ファミリーレストラン、ガソリンスタンド、パチンコ店、ゲームセンター、レンタルビデオショップ、大型書店、紳士服チェーン店舗など、建築コストもあまり掛けない軽微な店舗構成から、比較的短い事業期間で投下資本を回収する事業者の店舗展開に活用された。
 地主としても、一般定期借地権のように長期間の拘束を受けないこともあり、また事業者から得られる地代もかなりの水準が期待できることから、事業リスクの少ない土地活用として認められている。ただ、用途地域の規制や幹線道路沿いなどの立地条件など、事業者が事業適地として判断することが前提となるので、限定的な立地条件での活用になる。
 公有地や企業保有地での事業用定期借地権の活用も多く、アウトレットモール系などの大規模商業施設での活用が多くなされている。
 最近は、高齢化社会に対応して、医療・福祉・介護施設での定期借地権の活用も増えており、デイサービスセンターやデイサービスセンターと診療所等の複合施設等、一定の条件のもとで活用されている。

(3) 建物譲渡特約付借地権

 活用されている事例は一番少ないと思われるが、「つくば方式」として知られるスケルトン・インフィルの定期借地権マンションなどがあげられる。一般定期借地権60年の契約に30年経過後の時点での建物譲渡特約を組入れ、建物譲渡後も借地人は借家人として居住を継続できる事業方式で、実質的には「60年間のスケルトン利用権」として、良質住宅を安価に供給しつつ、将来の建替時の合意形成も容易になる点が評価されている。

(4) 定期借地権住宅の普及の状況

平成21年「全国定期借地権付住宅の供給実績調査」によれば、

[1]全国の定期借地権付住宅は累計で70,492戸
 定期借地権付住宅の供給は平成5年から始まり、平成20年までの供給戸数は、70,492戸である。内訳は、一戸建住宅が35,826戸で、マンションは(分譲及び賃貸)が34,666戸である。

[2]平成20年に供給された定期借地権付住宅は6,373戸
 定期借地権付住宅の供給は昨年久しぶりに5,000戸台に回復したが、今年は更に6,373戸まで戸数を伸ばし定期借地権制度が創設されて以来最多となった。
 内訳は、持家が1,170戸、賃貸が5,203戸である。持家では一戸建て住宅が268戸、分譲マンションが902戸、賃貸住宅では公的主体によるものが2,825戸、民間事業者によるものが2,378戸となっている。(公的主体による定期借地権付賃貸住宅は全て(独)都市再生機構の民間供給支援型賃貸住宅制度によるものである。)

[3]公的主体による定期借地権付住宅は累計で18,156戸
 公的主体による定期借地権付住宅の供給は平成6年から始まり、平成20年までの供給戸数は、18,156戸である。また、平成20年に供給された公的主体による定期借地権付住宅の供給戸数は、2,828戸である。

定期借地件付住宅供給の推移

※借地借家法の定期借地権にかかる法解釈などにつきましては、制度所管官庁の法務省までお問い合わせいただきますようお願いいたします(令和5年7月5日注記)。

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