ツバサノシゴトで使われている道具を紹介します。小さなものから大きなものまで、ときには自ら飛行機も飛ばして、ソラの安全を守っています。

MCA無線

MCA無線

読み方:えむしーえー

 管制官はパイロットと無線を使用して交信していますが、空港内を走行する車両は航空無線を搭載していない場合もあります。そういった車両と連絡を取るための無線機器がMCAです。管制塔にいる管制官が、地上にいる工事車両や航空灯火をメンテナンスする車両、バードパトロール車両(航空機と鳥が衝突しないよう鳥群の動きを監視する役目)に対して、滑走路や誘導路への進入許可をおこなう際に使用します。空港を走行する車両との連絡調整に重要な役目を果たしています。

正式名:

マルチチャンネルアクセスシステム

ヘッドセット

ヘッドセット

 航空管制官が航空機と無線通信でコミュニケーションをとる際に使用する道具で、マイク付きのヘッドホン。PTTスイッチがついていることと片耳タイプなことが特徴です。PTTとは「Push To Talk」の略で、スイッチを押した時だけ音声が発信されます。片耳タイプになっているのは、イヤホンからの無線通信だけでなく、周囲の航空管制官の会話も聞き取る必要があるためです。イヤホン部分は一般のカナル型イヤホンより装着性や密閉性がよい仕様となっています。

ライトガン

ライトガン

 タワーに常備されており、航空機と無線通信ができない場合に、航空機等に向けて照射し、必要な信号を送ることで指示を伝えるものです。赤、緑、白の3色の灯光により信号を発する灯火であり、例えば、「緑の不動光」は「離陸支障なし」、「赤の不動光」は「停止せよ」という意味です。また、閃光(点滅)の場合や、緑と赤の交互閃光などそれぞれ意味が異なります。ライトガンによる指示に対し、パイロットは主翼や方向舵を動かして応答します。照準器がついているので、対象となる航空機だけに向けて照射することで正しく指示を出せます。

正式名:

指向信号灯

点検用車両

点検用車両

 点検用車両は航空機から見えやすい黄色に塗装され、車体上部には青色の回転灯が備え付けられています。
 また、夜間でも路面を見やすくするライトや管制塔との無線通信機器、航空機を先導する案内表示板や滑走路面の滑りやすさを測定する専用機器なども搭載されています。

SFT(Surface Friction Tester:連続式摩擦係数測定計) AFM2(Airfield Friction Meter:滑走路摩擦係数測定計)

SFT(Surface Friction Tester:連続式摩擦係数測定計) AFM2(Airfield Friction Meter:滑走路摩擦係数測定計)

 SFT(写真左側)、AFM2(写真右側)はいずれも路面の摩擦係数(滑りやすさ)を測定するための機器です。主に冬期の積雪、凍結時に使用されています。

案内表示板

案内表示板

 空港内の航空機や作業車両に対して、メッセージを電光掲示することができます。
 メッセージは「点検中」「FOLLOW ME(航空機の誘導時)」「事故(空港内の車両事故発生による交通規制時)」等様々あり、用途に応じて掲示しています。

鳥類防除

鳥類防除

 航空機と鳥の衝突(バードストライク)が発生すると、運航の安全に大きな影響を及ぼす可能性があります。
 バードストライクを防ぐため、空港ではバードパトロールが定期巡回し、車両上部のスピーカーからの大音響や煙火、爆音機などを使用して鳥を追い払います。

煙火

煙火

 打ち上げ花火の様な材料です。円筒状の花火を専用の台から発射させ、発射後おおよそ3秒後に炸裂音及び閃光を発生させます。

爆音器

爆音器

 プロパンガスをタイマーで制御しながら、一定間隔で爆発させる機器です。
 同じ場所・間隔で使用を続けた場合は鳥が慣れる可能性があるため、時々設置場所を移動させたり爆発の間隔を変更する等、工夫しながら使用しています。

セオドライト

セオドライト

 セオドライトは、水平面、垂直面における角度を測定するための精密光学計器です。飛行検査ではILS進入の検査を行う際に用いられ、地上に配置された無線技術士は滑走路の端っこから、空に向かってセオドライトを正しい方位または進入角に向けて設置し、望遠鏡のようにのぞき込んでスタンバイします。ILS信号を受信して飛行する飛行検査機が視界に飛び込んできたら、上空の飛行検査機と無線でコミュニケ-ションを取り合いながら、誤差を計測していきます。視程など天候に影響されるため、現在ではGPSを利用した検査方法に置き換わりつつあります。

航空機牽引車(ト-イングトラクタ-)

航空機牽引車(ト-イングトラクタ-)

 空港で航空機が出発する際の光景を思い浮かべると、どの航空機も大きな車両と頑丈そうな棒に繋がれ、大勢の人に囲まれながらゆっくりとしたスピ-ドで後ろへ押されて、空港旅客タ-ミナルから離れていきます。なぜなら、航空機はクルマや電車と違って自分で後ろに下がることが苦手なのです。そのため、航空機を移動させる特殊な車両が必要で、「航空機牽引車(ト-イングトラクタ-)」といいます。飛行検査センタ-には、空港でよく見かけるメジャ-な「車両タイプ」とマイナ-な「電動リモ-トタイプ」の2種類のト-イングトラクタ-があり、格納庫から空港駐機場(エプロン)まで飛行検査機(ドクターホワイト)を移動しています。

航空機牽引車(車両タイプ)

航空機牽引車(車両タイプ)

 専用の道具(ト-イングバ-)を使用して牽引車と航空機の前脚を接続し、操縦者が牽引車に直接乗り込んで牽引移動を行います。ハンドルを切る方向と航空機の動く方向は運転の仕方(前進、後進)によって変わるため、運転して航空機を移動させるためには、熟練した技量と経験が必要となります。

航空機牽引車(電動リモ-トタイプ)

航空機牽引車(電動リモ-トタイプ)

 ラジコンのようなリモートコントローラーを用いて、航空機の前脚前輪を抱え上げた状態で牽引移動を行います。操縦者は航空機の周囲360°あらゆる角度での操作が可能で、従来の車両タイプによる航空機移動に比べ、操縦者自身が行う危険監視の視野が広く、電動のためECOで静か等の利点があります。

飛行検査機

飛行検査機

 月曜から金曜まで日本のどこかの空港を「チェックスター」のコールサインで飛んでいるのが飛行検査機。あまり目立たない航空機ですが、胴体をよ-く見るとアンテナがたくさんあって、機内に入ると大きなディスプレイとキーボードがお出迎え。これで目には見えない電波を飛びながら解析します。今活躍しているのは米国テキストロン社のC700(1機)とCJ4(5機)。以前は国産のYS-11やMU-2なども活躍していて、遠くても見つけやすいように機首や垂直尾翼が蛍光カラーでした。空港へ行った際は飛んでいる飛行機に目を向けてみてください。滑走路の上を着陸するでもなく飛びぬけていく飛行機に出会えるかもしれません。

テキストロン・アビエ-ション式 700型機

テキストロン・アビエ-ション式 700型機(通称:C700)

 令和4年から運航を開始した一番新しい飛行検査機で検査時のコ-ルサインは「チェックスタ-7」。全長:22.29m、全幅:20.99m、全高:5.91mで2つのタ-ボファンエンジンを装備した小型ジェット機。525C型機と比べると一回り大きく航続距離も2倍近くあります。先進的な検査機材と長い航続距離を活かして、より安全で効率的な検査を実現します。

テキストロン・アビエ-ション式 525C型機

テキストロン・アビエ-ション式 525C型機(通称:CJ4)

 平成27と29年から運航を開始した飛行検査機で検査時のコ-ルサインは「チェックスタ-8~12」。全長:16.26m、全幅:15.49m、全高:4.67mで2つのタ-ボファンエンジンを装備した小型ジェット機。これまでの機体と比較してかなりコンパクトですが、高高度~低高度まであらゆる飛行検査業務をこなす優秀な機体です。

測定器

測定器

 測定器は、無線施設が正常な状態かを確認(点検)するために使用する道具です。航空管制技術官は様々な測定器を使いこなし、無線施設が正常かどうか、異常がある場合は何が悪いのかを調べています。