
国土交通省では、技術のトップランナーを中核とした海事産業の集約・連携強化を図るための技術開発支援事業を実施しています。
近年、欧州では、造船業はクルーズ船や特殊船等の高付加価値型造船業として生き残り、一部は世界的に存在感を有している一方、システムインテグレータと呼ばれる複雑化、高度化する船舶システム全体をインテグレーション(システムが所要の機能を発揮するように全体を設計し、設備・機器等を統合すること)する企業が、企業買収を重ねる中で台頭しつつあります。
今後、船舶の付加価値がそのようなシステムインテグレータに集中していく可能性も想定されており、個々の技術、機器では強い競争力を有する我が国海事産業としては、このような産業構造の変化や、ソフトウェア、データ解析技術等が重要性を増す技術潮流に適確に対応して自己変革し、新たな付加価値を取り込んでいくことが、今後のさらなる成長のために急務の課題となります。
こうした背景において、新型コロナウイルス感染症対策及びアフターコロナ時代を見据え、デジタルトランスフォーメーション(DX)や2050年カーボンニュートラルの実現といった海事分野における喫緊の課題を解決するためには、船舶の安全性向上、船員の労働負担軽減、船内労働環境の密の低減、温暖化ガス(GHG)排出削減等の効果が期待される自動運航船、ゼロエミッション船等の次世代技術の開発を支援することで、世界でも強い競争力を有する日本版システムインテグレータを育成する必要があると考えております。
本支援事業は、上記のような技術開発案件について、技術開発に要する経費を補助することにより、当該技術開発の促進及び技術のトップランナーを中核としたシステムインテグレータの育成を図り、もって造船・舶用等の集約・連携を加速することで、我が国海事産業の構造転換を進め、技術力の強化と船舶輸送能力の確保を図ることを目的としています。(※ 本制度による支援は終了しました。)

目的達成につながるものとして、下表に記載する「自動運航船」、「ゼロエミッション船」及び「内航近代化」の3テーマについて、次の要件を満たす技術開発を対象としています。
[1] 選択したテーマにおいて世界をリードできるコアシステムの開発を行い、開発したコアシステムは、国内だけでなく外国への販売・サービス展開を行うことを目指した技術開発であること。
[2] 技術開発を通じ、開発したコアシステムの販売やサービス展開を担うシステムインテグレータを実現する事業であること。
補助対象となる3テーマの概要
| テーマ | 概要 |
| 自動運航船 | 交通政策審議会海事分科会海事イノベーション部会報告書(平成30年6月1日)の「自動運航船の実用化に向けたロードマップ」に記載する2025年までの実用化を目標とする「フェーズII自動運航船」に関する技術開発を対象としています。 技術開発は、国土交通省が定める自動運航船の安全設計ガイドライン(令和2年12月7日)を十分考慮していただいています。 ○ 国土交通省:自動運航船の実用化へ向けた取組 (自動運航船の実用化に向けたロードマップなど) https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr7_000041.html ○ 国土交通省:自動運航船の安全設計ガイドライン https://www.mlit.go.jp/report/press/kaiji06_hh_000233.html |
| ゼロエミッション船 | 国土交通省が関係機関等と連携し策定した「国際海運のゼロエミッションに向けたロードマップ」(令和2年3月)に記載する外航ゼロエミッション船(水素燃料船、アンモニア燃料船など)に関する技術開発を補助の対象としています。 ○ 国土交通省:国際海運のゼロエミッションに向けたロードマップ https://www.mlit.go.jp/maritime/GHG_roadmap.html |
| 内航近代化 | 内航海運において、海難事故の約8割を占めるヒューマンエラーの低減、内航船員の長時間労働や時間外労働の軽減等を実現するため、船員の労働環境の改善と内航船の安全性向上の実現に資する技術開発(例:労働負荷の高い係船作業や荷役業務の支援システムの開発等)を対象としています。 |
以下をご確認ください。
令和3年度から令和5年度にかけて支援いたしました、「海事産業集約連携促進技術開発支援事業(トップランナー補助金)」の各事業の成果の概要です。
令和6年10月28日に本事業の成果報告会をWeb形式で開催いたしました。
プレス発表資料及び当日の事業者発表資料は以下をご確認ください。