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子どもたちの自由な発想が満載!「PLATEAU × マインクラフト」で新しい新宿を作る

「PLATEAU Kids Challenge ~日本の街をマインクラフトで遊んでみよう!~」レポート

「PLATEAUの3D都市モデルとマインクラフトを使って、自分たちで"街"を作って遊んでみる」、そんなオリジナルのワークショップイベント「PLATEAU Kids Challenge ~日本の街をマインクラフトで遊んでみよう!~」が、2023年8月21日に開催された。

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大内孝子(Ouchi Takako)
編集:
北島幹雄(Kitashima Mikio)/ASCII STARTUP
撮影:
曽根田元(Gen Soneda)
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新宿がこんな街だったらどうだろう!

当日、新宿の会場には小学4年生から中学3年生まで約40名が集まった。子どもたちにはゲーム「マインクラフト」で使える西新宿周辺エリアのワールドデータが配布され、チームに分かれて「新しい新宿」をテーマに街づくりを体験した。

ワークショップでは、インプットからアイデア出し、「マインクラフト」で作る作業、発表用の資料を作るところまでを、1日で行う。チームごとに「互いに新宿がこんな街だったらいいだろう」、「何があったら楽しめるか」、あるいは「便利か」などアイデアを出し合い、街の機能とその実現に必要なものをチームで考え、分担して「マインクラフト」の中に作っていく。1日で発表まで行うため、タイトなスケジュールだったが、すべてのチームが発表までたどり着いた。

アイデアの参考として、東北工業大学の小野桂介氏は自身が進める防災教育コンテンツ「キッズ向けぼうさいMAP」について解説した
小野研究室のメンバーが「マインクラフト」を活用して作成した「HAZARD MAP FOR KIDS」も会場に掲示された
株式会社MIERUNEのユエン パクヒン氏は、実際にどのような形で今回の変換を行ったかを解説
パクヒン氏が紹介したデータ変換の手順

チームとしての発表ではあるが、一人ひとりが順番に、自分がつくったところやがんばったところを説明していく流れで行われた。進行は講師も務めたSAIL -School of Voyager-の石井龍生氏。講評は、株式会社MIERUNEの古川泰人氏、大成建設株式会社の村上拓也氏、国土交通省の内山裕弥氏が務めた。

SAIL -School of Voyager- 代表 石井龍生氏
株式会社MIERUNE 取締役 古川泰人氏
一般社団法人新宿副都心エリア環境改善委員会スマートシティTFリーダー(所属:大成建設株式会社)村上拓也氏
国土交通省 総合政策局/都市局 IT戦略企画調整官 内山裕弥氏

今回のワークショップで配布された「マインクラフト」で使える西新宿周辺エリアのワールドデータは、Project PLATEAU公式GitHubアカウント内で、PLATEAUの3D都市モデルを「マインクラフト」に取り込み可能なデータ形式に変換するためのツール「plateau2minecraft」とあわせて、一般にも公開されている。

配布された西新宿周辺エリアのワールドデータのサンプルと実際の東京都庁(出典:https://www.yokoso.metro.tokyo.lg.jp/kengaku/index.html
ワークショップでの制作の舞台となったのは、新宿駅から都庁周辺のエリア
建物や公園など、オープンスペースの可能性が広がるエリアとなっている
(出典:https://www.mlit.go.jp/toshi/machi/content/001378960.pdf

制作の舞台となるエリアは、新宿駅から西新宿の都庁の一帯。テーマとして掲げられたのは「西新宿のオープンスペースを活用した、新たなまちづくりを考えよう」というもの。再開発にあたって実際に課題として検討されている、地下からビルも含めた広大な空間について、いまある空間・建物を生かすオープンスペースをより使いこなすアイデアが子どもたちに求められた。

Minecraftカップ協力のもと、各チームは製作面でのサポートも受けつつ準備を進めた

どんな街ができあがったのか、さっそく各チームの力作を見ていこう。

夢の学校 ~バンジージャンプ付きの学校~

「夢の学校 ~バンジージャンプ付きの学校~」制作チーム

都庁の裏の公園(新宿中央公園)には、バンジージャンプ付きの学校が作られた。最初はバンジージャンプを作るか学校を作るかで意見が分かれていたが、「一緒にしよう」ということになったという。生徒が学校として使うほか、プールの授業や自由時間にバンジージャンプができる。また、土日や祝日は学校の生徒以外もバンジージャンプができるという。

夢の学校 ~バンジージャンプ付きの学校~
学校の内装:村人をボートに入れるところ
学校の校舎:自分が通っている小学校をモデルに本物の学校に見えるように
学校の校庭:サッカーゴールと整地、大変だったのは整地と遊具のアイデアを出すこと
プール:滝シャワー、プールに線と排水溝をつけた

バンジージャンプか学校かで意見が分かれたときに「じゃあ一緒にしよう」となったと聞き、「その解決策はとてもいいね」と古川氏。また、学校がとてもいい感じの仕上がりだと述べた。

アスレチック&お化け屋敷&迷路&温泉の都庁

「アスレチック&お化け屋敷&迷路&温泉の都庁」制作チーム

次は、アスレチック&お化け屋敷&迷路&温泉が楽しめる都庁だ。いろいろな人が楽しめるように都庁を大胆にアレンジ。アスレチックは大きく分けて、パーゴルフのパートと、ブロックを置いて進んでいくパート、戦って進んでいくパートの3つがあり、一番難しいのが一本橋で、バランスを崩したら落ちてしまう。

アスレチック&お化け屋敷&迷路&温泉の都庁
アスレチック後の落下地点に温泉
都庁の上のゴール地点

村上氏は、東京のシンボル、新宿都庁を大々的に変えるという点が「非常にいい」とコメント。都庁は仕事をする場所という印象が強いので、こういった遊びの要素、温泉のような癒やしの要素を入れたのがよいと評価した。

町のジェットコースター

「町のジェットコースター」制作チーム

続いて、町を楽しくするために、町全体をジェットコースターにした作品。都庁から三角ビル→パークハイアット→三角ビル→コクーンタワー→新宿駅西口という経路をジェットコースターでつなぎ、都庁から新宿駅西口まで早くかつ楽しく移動できる。

町のジェットコースター。なかなかの迫力だ
都庁から三角ビルまで
三角ビルからパークハイアットまで
パークハイアットから三角ビルまで
三角ビルからコクーンタワーまで
コクーンタワーから新宿駅西口まで

内山氏は、都市の交通インフラとして空中を結ぶという発想は現実にもあり(横浜市の都市型循環式ロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」など)、「街づくりとしてよい観点をとらえている」と述べた。

天空道路とモノレール

「天空道路とモノレール」制作チーム

こちらは、通勤ラッシュが苦手な人、ショートカットしたい人が利用できるように、東京都庁とその近くのビルをつなぐ天空道路とモノレールを作った。時間切れで全部をつなぐことはできなかったが、景色を楽しめるように車両の窓を大きく工夫したり、暗い中でライトを使って光るようにするなど、作り込んでいることがわかる。

天空道路とモノレール
ビルとビルの間をつなぐ天空道路
工夫した点
だれがどんなときに利用するか

古川氏は、地面より空の移動のほうが景色などを楽しめるし、「遊び心がすばらしい」と述べた。また、イラストを用いるなど発表資料をしっかり作っている点にも言及があった。

パークハイアット公園

「パークハイアット公園」制作チーム

次の作品は、パークハイアットに地下公園、アスレチック、屋上公園を作ったというもの。普通の公園ではなく、何か新しいものにしたかったという。屋上にはバンジージャンプが設置され、飛び降りるとトランポリンになっている。半地下公園、屋上公園と複数の公園を作ろうと考えたのは、緑を増やすことでSDGsの観点でも有効だと考えたからだ。幅広い年齢層の人のいこいの場所として考えた。観光客が訪れたときも楽しめる。

パークハイアット公園:フットサルができる芝生やバンジージャンプスタート台
半地下公園
パークハイアットアスレチック
屋上公園

村上氏は、樹木がたくさんあったり、フットサルができるよう芝生が敷き詰められていたり、「公園を利用する人をイメージしてさまざまなアクティビティが織り交ぜてあるところがすごくよい」と述べた。

夏祭り

「夏祭り」制作チーム

夏祭りを楽しめるように、都庁と道路、広いスペースを使って“縁日”的なアクティビティを設置した。駄菓子屋や自動販売機、食べ物の屋台、射的や金魚すくいなど、大人でも子どもでも楽しめるようにしている。アスレチックやボーリング、花火もある。アスレチックパートはブロックを飛んで移動したり、なかなかハードな内容になっている。

アスレチック部分
駄菓子屋、自動販売機
お祭りの屋台
ボーリング

内山氏は、夏祭りや屋台を出すなど非常に良いアイデアだと語る。屋上や道路、この空間をもっと楽しく使えるのではないかというところはまだまだありそう。そういう意味で「ポテンシャルが高いテーマだ」とした。

動物図書カフェ ~にぎやかな楽しい三角ビルの地下~

「動物図書カフェ ~にぎやかな楽しい三角ビルの地下~」制作チーム

三角ビルの中に作られた動物図書カフェ。子どもからお年寄りまで、休日や平日にも利用できるよう、花火が楽しめるカフェ、水族館付き図書館、動物園などが併設されている。

花火が楽しめるカフェ
水族館付き図書館
図書館
カフェ
動物園

古川氏は図書館と動物園を組み合わせるアイデアなど、「実現できそうなことがたくさんある」と述べた。

以上で7チームすべての発表が終了。子どもたちはPLATEAUと「マインクラフト」を使って、それぞれが思い描く街づくりに挑戦した。

最後にまとめとして石井氏は、「今回PLATEAUを使って、いろんなアイデアが生まれてきた。アイデア次第、使い方次第で、社会をもっと便利に、よりよくしていけるのではないか。そうして未来を作っていくのは私たち自身、みなさん自身だ」と締めくくった。