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地下埋設物データを活用した都市開発のDX

実施事業者エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社/株式会社日建設計/株式会社日建設計総合研究所
実施協力インフラ情報提供:東日本電信電話株式会社/東京電力パワーグリッド株式会社/東京都水道局/東京都下水道局/東京熱供給株式会社/丸の内熱供給株式会社 実証実験支援:株式会社NTTファシリティーズ
実施場所丸の内エリア/品川駅港南口エリア
実施期間2023年9月〜11月
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地下インフラ情報を3D都市モデルに統合し、建設協議やインフラ管理に活用するシステムを開発。都市開発や維持管理業務を効率化する地下埋設物データの活用を推進する。

実証実験の概要

電力やガス、下水道などの地下埋設物に関する三次元的な情報は、多岐にわたる官民の地下インフラ事業者がそれぞれ保有しており、その仕様や規格もバラバラであったことから、これらを一元的に扱うことは困難だった。これまで、都市開発を行う際などには、開発事業者と地下インフラ事業者がそれぞれ個別に調整しながら情報収集し、地下埋設物の
敷設状況などを確認しながら建設設計を行う進めていく必要があった。地下埋設物に関するデータ仕様が異なり、事業者によっては紙媒体で情報提供されることもあるため、開発事業者にとっては、図面情報を統合することや、深さの把握が難しいことなどから、協議のやり直しや掘削調査の手戻り等が発生し、大きな負担となっていた。

今回の実証実験では、多くの地下インフラ事業者の協力のもと、地下埋設物に関する各種情報を収集し、これを3D都市モデル(地下埋設物モデル)の標準仕様に従ってデータ化する手法を開発することで、各地下埋設物情報を三次元GISデータとして整備する。さらに、標準化されたデータを活用し、開発による影響確認やBIMモデルとの統合設計が可能なシステムを開発することで、都市開発や地下インフラの維持管理業務の効率化を目指す。

実現したい価値・目指す世界

都市部における大規模再開発では、調査・設計段階において、設計事業者やインフラ事業者に代表される様々なステークホルダーが協議を重ね、合意形成をすることが重要である。特に地下埋設物においては、ステークホルダーが多岐に亘り、その調査や調整に時間を要する。加えて、インプット情報となる図面が紙であったり、高さ情報がない、情報の
正確性が低い等のケースも多いことから、認識共有が極めて難しく、掘削後に図面と埋設物に相違が判明して建設設計の手戻りが発生するなどしている。複雑な地下埋設物情報の正確性を担保しながら各社の地下埋設物情報を統合的にデータ化・可視化できれば、設計事業者とインフラ事業者の双方にとって業務負荷を大きく軽減することができる。

今回の実証実験では、電力・ガス・上水道・下水道・通信・熱供給の各インフラ事業者から地下埋設物のデータ提供を受け、これを基にデータクレンジングや三次元情報の付与、位置補正等をおこなうことで、3D都市モデル(地下埋設物モデル)を整備する。国際標準規格であるCityGML形式によってデータ構造や仕様、品質、規格等が標準化されているPLATEAUの地下埋設物モデルとして各地下埋設物データを再構築することで、地下インフラ事業者や都市開発事業者など、様々なステークホルダーが共通して扱えるデータになる。また、このデータ再構築手法を方法論として確立することで、全国的な三次元地下埋設物モデルのデータ整備を拡大していくことが可能となる。
さらに、作成した地下埋設物モデルを用いて、3DWebGISエンジンとデータベースを統合した管理、可視化、活用システムを開発する。このシステムでは、掘削情報の入力による地下埋設物の三次元的な影響判定や、BIMソフト上での地下埋設物モデルの利用、システムへのBIMモデルのインポートと共有等を可能とする。これにより、開発事業者がBIMソフト上で地下埋設物の位置情報を把握しながら設計を行うことや、作成したBIMモデルを用いて開発事業者と地下インフラ事業者が設計協議を行うことができるようになる。

本システムを開発することで、地上構造物と地下埋設物を統合した都市デジタルツインデータを都市開発や地下埋設物の維持管理等に利用可能とし、都市における複合的な建設や設計業務の品質向上、効率化を目指す。

2Dマップ(大丸有)
2Dマップ(品川)
3Dマップ(大丸有)
3Dマップ(品川)

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

本事業では、①既存のインフラ事業者が保有する設備図面/データから地下埋設物モデルを作成する手法の確立と、②地下埋設物モデルのユースケースとして建設計画への影響確認やBIMモデルとの統合が可能な「建設設計支援システム」を開発した。

①の地下埋設物モデルを作成する手法として、インフラ事業者の原典資料に応じた「空間属性の作成方法」及び「主題属性の付与方法」、並びに「位置の高精度化手法」のプロセスを確立した。

まず初めに、水道、下水道、電力、ガス、通信、熱供給、共同溝の各地下インフラ事業者が保有する様々な形式の設備図面・データから、各形式に適した手法で地下埋設物モデルの構築や後続工程に必要な要素を抽出してGISデータに統一する。具体的には、各地下インフラ事業者から受領した設備図面/データについて、データ形式や線・面形状といったベクトルデータの保存状態に基づいて、「GISデータ」、「CADデータ」、「独自形式データ」、「図面」の4つに分類し、それぞれの情報を整理・統一したGISデータに変換する。

「GISデータ」は、設備が埋設されている現場の地理座標を基に、距離や面積を線や面形状としてGISアプリケーション上で再現可能なフォーマットのデータ(シェープファイル等)である。GISデータについては、空間参照系を実証に適した「日本測地系2011/ 平面直角座標系第Ⅸ系」に変換する。このため、この空間参照系と異なるGISデータについては、旧日本測地系のデータが含まれたことからESRI社のArcGIS Proの座標参照系の変換機能を使い、空間参照系を統一する。
なお、GISデータに「旗上げ」(※)と呼ばれる情報が含まれている場合、旗上げの中の地下埋設物の設備情報を作業者が目視で読み取り、GISデータに属性情報として個別に登録する必要がある。「旗上げ」は、事業者内で運用されていたシステムにその情報を記録するための機能がなく、図面内にベクトルデータとして保存された設備情報をいう。各事業者においては文字や数値の読み取りや図示内容から設備状態を認識できる状態であるが、事業者間あるいは部署間等で読み取り方や図示方法等の仕様が統一されていないためデータ活用を妨げる要因の一つである。

「CADデータ」は、設備が埋設されている現場の相対的な距離や面積を図面上の線や面形状としてCAD等の製図・設計アプリケーション上で再現可能なフォーマットのデータ(dwgやdxf等)である。CADデータの利用には、まず必要なデータ抽出を行う。具体的には、CADデータに含まれている地物(地下埋設物以外も含む)から、管路、マンホール及び道路縁などの地下埋設物モデルに必要な地物を抽出する。次に、必要な地物を抽出したCADデータに対し、GIS(ArcGIS Pro)を使い三次元を含む幾何計算処理(拡大・縮小・回転・移動・変形)を通じて機械的に地理座標を付与することで、位置合わせ及びGISデータ変換を行う。地理座標の付与には、背景地図(基盤地図情報等)の道路の隅切り等の明瞭な位置と、CADデータに含まれる管路の土被り(地表面からの深さ)の情報等を使用する。なお、CADデータに「旗上げ」が含まれている場合、旗上げの中の地下埋設物の設備情報を作業者が目視で読み取り、GISデータに属性情報として登録する。

「独自形式データ」は、「GISデータ」、「CADデータ」以外のデータ形式であり、埋設物の相対的な距離や面積を汎用的なアプリケーション上で図面上の線や面形状として再現可能なデータ(特定のソフトウェア内部で使用されるDATファイル)である。独自形式データの利用には、まずDATファイルに記録されている地物の座標情報を特定・抽出し、OGC(Open Geospatial Consortium)が策定した幾何形状を表現するためのマークアップ言語であるWell-Known Text形式に整形する。また、管径や深さ等の属性情報と地物IDをCSV形式のデータで作成する。GIS(QGIS)を使い幾何形状と属性情報を結合し、GISデータ(シェープファイル)に変換する。その後、変換したGISデータと位置基準とする背景地図を重畳表示し、データの位置を検証する。位置が正しくないと判断した場合は、座標単位の変換や三次元を含む大規模な幾何計算処理を通じて、背景地図に収録されている地物(地下埋設物以外も含む)と同じ地物を、変換したGISデータの中から作業者が目視で読み取り、該当する地物との位置合わせ作業を行う。

「図面」は、前述のデータ形式以外のデータ(PDF・相対的な距離や面積がないデータ・紙等)である。図面はラスタデータに変換する。その後、位置基準とする背景地図に収録されている地物(地下埋設物以外も含む)と同じものを図面上から探し出し、GIS(QGIS)を用いてマップデジタイズ(ジオリファレンス及びGISデータ作成)を行った上で、その成果をGISデータとして保存する。なお、図面に「旗上げ」が含まれている場合、旗上げの中の地下埋設物の設備情報を作業者が目視で読み取り、GISデータに属性情報として登録する。

以上により、全てのデータをGISデータに変換した後、地下埋設物モデルとしての情報に欠損値がある場合、各地下インフラ事業者・有識者へのヒアリングや同じ設備図面/データ内に存在する同種の設備の情報を基に参考値を設定し、欠損値を補完する。
これらの作業を通じ、各地下インフラ事業者が保有するデータ又は図面から、それぞれの情報を整理・統一した地図情報レベル2500相当の位置正確度をもつ地下埋設のGISデータ(シェープファイル)が完成する。

これらの作業によって各地下インフラ事業者が保有するバラバラの施設情報を統合し、エヌ・ティ・ティ・インフラネット保有の変換ツールを使用してCityGML形式の3D都市モデル(地下埋設物モデルLOD1-2)を作成した。そのうえで、再構成された地下埋設物モデルに地図情報レベル500の位置正確度を付与するための位置補正作業を実施した。具体的には、エヌ・ティ・ティ・インフラネットが保有する「高精度3D骨格空間情報(地図情報レベル500)」に収録されているマンホールや道路境界を位置基準に、地下埋設物モデルに対して三次元を含む大規模な幾何計算処理を行うことで位置合わせを行う。このため、再構成された地下埋設物モデルを「高精度3D骨格空間情報」と位置を合わせるためのGCP(Ground Control Point)を設定し、アフィン変換による幾何補正を実施した。これにより、建設設計におけるBIMと統合可能な地下埋設物モデル(地図情報レベル500相当)が完成する。
なお、作成した地下埋設物モデルの位置精度の検証は、非開削探査装置である「iエスパー・R」を用いて評価した。「iエスパー・R」は、地中に電磁波を発射し反射波形を解析することで、地下埋設物の位置を非開削で特定している。
今回の実証実験では、大手町・丸の内・有楽町エリア(東京都千代田区・中央区周辺の1.21k㎡)を対象に、「熱供給管」、「洞道」、「水道管」、「下水道管」、「ガス管」、「通信ケーブル」、「電力ケーブル」、「マンホール/ハンドホール」及び「ノードとなる設備(水道における弁栓類、ガスにおけるガバナ・バブル)」を作成した。また、品川駅港南口エリア(東京都港区・品川区周辺の1.09k㎡)を対象に、「水道管」、「下水道管」、「ガス管」、「通信ケーブル」、「電力ケーブル」、「マンホール/ハンドホール」及び「ノードとなる設備(水道における弁栓類、ガスにおけるガバナ・バブル)」を作成した。

以上により作成した地下埋設物モデルを用いた建設計画への影響確認やBIMモデルとの統合が可能な「建設設計支援システム」を開発した。このシステムは、「3D表示・計測機能及びダウンロード機能」、「影響判定機能」及びこれらの機能を統合的に使用する「協議支援機能」からなる。
「3D表示・計測機能及びダウンロード機能」は、オープンソースの3D地理空間可視化プラットフォームであるCesium上で3D tiles形式の地下埋設物モデルの表示・計測を行う。また、地下埋設物モデルのダウンロードはBIMアプリケーション(RhinocerosやAutodesk Revitなど)で読み込み可能なOBJ形式に変換し出力する。
「影響判定機能」は、プログラミング言語Pythonによる数値計算用のライブラリ(Numpy)を使って実装し、3D都市モデル(地下埋設物モデル)と地下構造物等の設計データ間の最小の距離(離隔距離)を計測し、接触判定を行う。
「協議支援機能」は、これらの機能を統合的に使い、地下埋設物事業者、建設設計者及び建設事業者がWebブラウザ上に統合表示される建築物や地下埋設物の3D都市モデルと建設設計データ(IFC2xEdition3のBIMモデル)を閲覧しながら、複雑な地下空間の状況(既存の地下埋設物と開発計画の関係)を直観的に把握することができる。その結果、関係者間の建設協議の理解度が向上し、開発計画の合意形成の時間短縮・効率化を実現する。

建設計画への影響確認とは、建設設計者/建設事業者は、計画する地下構造物が既設の地下埋設物に及ぼす影響について確認するプロセスである。影響があると判定された場合は、既設の地下埋設物の移設・防護に関する計画案を策定し、関係者間で計画を調整し、全員の合意を得る必要がある。建設設計の規模が大きくなるほど、関係者が増えるため、建設設計の内容をWebブラウザ上で直接操作することで、理解度・確認精度の向上につながる。
そこで、「建設設計支援システム」に取り込んだBIMモデル(地下構造物)の地下最深部を起点とする仰角45度の線で構成される面からの距離が一定の範囲内である地下埋設物モデル(LOD2)を対象に、三次元での最近傍距離計算を一定間隔で行い、仰角45度の線で構成される面と干渉する地下埋設物モデルが検知した場合、影響ありと判定するアルゴリズムを開発した。
このアルゴリズムを地下埋設物の照会及び関係者間の協議を支援するためのシステムであるエヌ・ティ・ティ・インフラネットの「立会受付Webシステム」に追加実装することで、従来の二次元の影響判定から3D都市モデルによる三次元での影響判定を実現した。「建設設計支援システム」における建設計画への影響確認の利用フローは次のとおりである。

建設計画への影響確認の業務フロー図

具体的には、建設設計事業者の設備データの照会/収集にかかる時間を短縮するため、アカウントを持つ関係事業者のみにアクセスを制限することでセキュリティを担保した当該システム上で、地下埋設物モデルの3D閲覧と地下埋設物モデルをOBJ形式(座標系は平面直角座標系)に変換したデータのダウンロードが可能な機能を実装した。その際、3D都市モデルは3DTiles形式へ変換し、3D-GISエンジンであるCesiumJSを「立会受付Webシステム」へ組み込むことで3D閲覧を可能とした。また、ダウンロードする地下埋設物のデータ形式は、建設設計事業者のBIMアプリケーションとの親和性からOBJ形式を採用し、国土基本図郭(レベル500)を基本単位とする出力や、CityGML形式にはない頂点法線ベクトルに関する情報の追加、OBJファイル内で地物形状単位でのグループ化(1つの地物形状(LOD2)が1つのグループとなる)等の機能を実装している。

加えて、建設設計事業者からの設計BIMのアップロード及び地下埋設物モデルと統合した状態での閲覧機能を追加することで、計画する地下構造物が既設の地下埋設物に及ぼす影響に関する関係者間協議の時間を短縮した。また、アップロードするファイルについてはIFC2x3形式のBIMモデルを含むZIPファイル形式を採用しており、IfcOpenShellを用いることでOBJ形式を経由して3DTiles形式への自動変換を可能とした。

本システムの効果については、建設設計事業者の既存業務フローと本事業で開発したシステムを用いた業務フローの業務時間の比較及び関係者へのヒアリングを通じて評価を行った。その際、地下構造物図面の作成、地下埋設物への影響判定、地下埋設物の移設・防護計画案の検討、地下構造物の計画変更及び関係者協議等の個別の場面を想定した上で、3D都市モデルによる地下空間の視覚的理解度の向上や、業務フローの改善効果、関係者間の合意形成の円滑化等について有用性を確認した。

実設備データのダウンロード範囲を選択
埋設物の有無を自動判定
影響判定結果を表示
ダウンロード設備データをRevitで表示
BIMをアップロードし表示
埋設物状況を確認

検証で得られたデータ・結果・課題

本システムの有用性検証として、大手町・丸の内・有楽町エリア及び品川駅港南口エリアを対象に、デベロッパー、建設設計事業者及び地下埋設物事業者等の関係者にヒアリング及びアンケート調査を実施した。
本検証では、今回開発した建設設計支援システム上に、計画地下構造物と地下埋設物との正確な位置関係を共有し、影響判定結果を確認するための環境を用意し、3D都市モデル(地下埋設物モデル)を利用した「地下埋設物3D表示・計測機能及びデータダウンロード機能」、「影響判定機能」及び「関係者合意形成支援機能」の3つの機能を対象として、都市再開発に向けた建設計画の構想段階における地下空間の視覚的理解度の向上や業務フローの改善、関係者間の合意形成の円滑化につながるかという観点から評価を行った。
アンケート調査の結果、いずれの機能についても80%以上のポジティブな回答を得ることができ、3D都市モデル(地下埋設物モデル)及び建設設計支援システムの有用性を確認することができた。特に、3D都市モデル(地下埋設物モデル)による地下埋設物の位置関係の容易な把握、地下埋設物の影響判定機能による地下構造物計画の検討精度の向上、関係者間の事前協議における合意形成に要する時間短縮の可能性を、今回の実証実験を通じて体感いただくことができた。また、ヒアリングを通じて、地下埋設物事業者が保有する設備情報の収集や統合に多大な労力が必要となる現状や2次元の資料による合意形成の難しさといった課題を、改めて確認することができた。

その一方で、このシステムの有用性を確かなものにするために、3D都市モデル(地下埋設物モデル)の網羅的な整備、地下通路、地下街及び地下鉄等のその他の地下構造物のデータ拡充の要望があった。また、土質情報、競合する工事情報や地下埋設物の更新計画などの統合的な把握・管理を期待するコメントもあった。さらに、本システムを活用した業務フローを運用していくにあたり、秘匿性の高い地下埋設物の情報について、各地下埋設物事業者等の関係者間や異なるシステム間で共用するためのルールや、それらのデータを持続的に整備・更新する仕組みの必要性についての指摘があった。

また、想定していたユースケース以外にも、地下埋設物・地下街・トンネルなどの複数の地物を組み合わせた地下の空き空間の活用検討などへの展開可能性についてもコメントがあった。

実証実験の様子①
実証実験の様子②

参加ユーザーからのコメント

・他の事業者との協議に時間がかかり、3Dで見えるのは有用に思う。施工スペース確保の際に、3D都市モデルの確認によって地下のスペースの活用可能性の検討などができれば発展性を感じる。ただし、秘匿性が高い情報なので取扱いの取り決めが必要になると思う。3D都市モデル整備の労力については課題に感じる。
・地下埋設管への問い合わせが多く、完全に正確でなくても再開発事業者が確認するのに役立つと感じる。問い合わせ対応への労力が軽減されると意味がある。
・地下埋設物だけでなく、地下構造物等も確認できると有用に感じる。埋設管の維持管理にすぐに使えそうに思え、都市の再開発の情報を合わせて統合できるとよいのではないか。
・地下構造物を守る立場として、開発事業の際の埋設照会や掘削時の立会コストの削減につながると思う。掘削時の利用だけでなく、洞道等の空き空間の共同利用検討にも使えるかと思う。見える化できるのであれば是非協力したい。
・工事で通信線を破損してしまうと影響が大きくリスクが高いので、システム上での表現の工夫や情報量の更なる追加があるとありがたい。埋設管の更新をシステム側にどう反映していくかは今後整理が必要と感じた。
・地下埋設物の情報収集に時間を要しており、その手間がなくなると非常にありがたい。また計画に際してある程度の見通しを最初につけられると有用であると感じた。地下埋設物以外の地下道、地下街など漏れなく入力され、精度が高められることを今後期待する。
・敷設年、更新時期などの属性情報があるとよいと感じた。現状の再現だけでなく、更新の計画もあるとよい。
・このシステムがスケールしていくとよい。地下の混み合った空間で、埋設物や構造物の離隔をどれだけ取れるかが重要である。秘匿情報であるものの、限定された関係者での利用や他のシステムとデータを共有することを許容し、エリアならではの検討に活かす等の使い方ができるとよい。

今後の展望

今回の実証実験で開発した、3D都市モデル(地下埋設物モデル)を基盤とした建設設計支援システムの実用化に向け、データ・システム・運用のそれぞれについて改良・課題解決を進める必要がある。

データ面については、地下埋設物事業者が保有する様々な形式の設備図面・データを効率的に3D都市モデル(地下埋設物モデル)へ変換する手法の改良と、掘削工事の際の写真や点群データ等を活用したデータの整備・更新手法の開発が求められる。また、今年度は3Dモデル化の対象とはなっていない街灯ケーブル、信号ケーブル等のモデルの拡充や、地下埋設物の移設・更新計画等の属性情報についてもニーズがある。

システム面では、地下埋設物及び構造物の三次元表示機能の改良、特に掘削工事による破損被害の影響が大きい通信線等への注意を促すようなシステム上での表現の工夫を検討する必要がある。
運用面では、秘匿性の高い地下埋設物情報を、デベロッパー、建設設計事業者及び地下埋設物事業者等の関係者間で適切に共用するための仕組み作りや、水道管の維持管理システム等の異なるシステム間でのデータ共用ルールの策定などを検討すべきである。

これらの改善を通じて、都市再開発計画時や地下埋設物の照会調査におけるコストの削減、建設協議における理解度の向上、建設計画の手戻りの防止を実現することにより、地下埋設物に関する新規計画、移設・更新工事、維持管理の一層の効率化を目指す。
さらに、3D都市モデルを活用し、建築物・トンネル・地下埋設物・地下街などの複数の地物を組み合わせた地下の空き空間の活用の効率化を図りたい。