環境

平成30年度全国多自然川づくり会議 開催記録

  • 日時:平成30年12月17日(月)・18日(火)
  • 会場:さいたま新都心合同庁舎2号館5階会議室
  • 参加者:約140名(主に国、都道府県、政令市の河川担当者)
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全国多自然川づくり会議は、多自然川づくりに対する知見の蓄積や意識の向上を目的とし、

平成15年頃から国・都道府県・政令市の河川担当者を対象として毎年開催しています。

12月17日、18日の二日間に渡って、さいたま新都心合同庁舎2号館5階会議室において、

「平成30年度全国多自然川づくり会議」を開催しました。

1日目:12月17日(月)

勉強会
 4名の講師の方から多自然川づくりに関する解説や技術的なポイントについて講義を頂きました。
分科会発表・討議
 9つの地方ブロック会議(計109事例)において選ばれた28事例の発表を行いました。

2日目:12月18日(火)

基調講演「現場知と科学知が支えてきた多自然川づくり~次の10年に向けて~」
 岐阜大学流域圏科学研究センター 原田守啓准教授からご講演を頂きました。
全体発表
 28事例から選ばれた代表4事例について、発表及び討議を行いました。
 また、代表4事例について、表彰を行いました。

地方ブロック会議概要

 【平成30年度】計109事例
 【平成29年度】計111事例
 【平成28年度】計116事例
 【平成27年度】計117事例
 【平成26年度】計108事例

勉強会①

多自然川づくりの基本

国⼟交通省 ⽔管理・国⼟保全局 河川環境課 課⻑補佐  福田勝之

 「河川環境とは何か?」、「多自然川づくりに至るまでの経緯や考え方」の両者のつながりという観点でご講演いただきました。河川環境とは自然環境と生活環境に切り分けて考えることでより理解が深まるという説明や、改修は河川環境を改善するチャンスであることから、自然環境および生活環境をより良くできないか考えることの重要性、また人も生物も集まる環境を整備することによって、最終的には水遊びや水災害に対する理解につながっていくことについてご説明がありました。

多自然川づくりの基本 勉強会風景

美しい山河を守る災害復旧基本方針の改訂について

国土交通省 水管理・国土保全局 防災課 災害査定官  齋藤 充

 平成30年6月に改訂された「美しい山河を守る災害復旧基本方針」の変更内容についてご講演いただきました。「美しい山河を守る災害復旧基本方針」の策定から改訂に至るまでの経緯についてお話があり、平成30年改訂のポイントのなかでも、特に改良復旧への対応に関する内容として「河道計画の考え方」を取り入れられたという点を中心にご説明いただきました。

美しい山河を守る災害復旧基本方針の改訂について 勉強会風景

勉強会②

河川における環境の評価方法について

国立研究開発法人 土木研究所 ⽔環境研究グループ 河川生態チーム 上席研究員  中村 圭吾

 「実践的な河川環境管理」についてご講演いただきました。環境目標の設定がなくとも、「現況の環境を保全するとともに、できる限り向上させる」という基本的な考え方で試行されている本手法について、評価手法の考え方・具体の方法についてご説明いただきました。また、定量的な状況把握のもと、河川改修・自然再生・維持管理などあらゆる場面で、環境改善を図ることの重要性についてお話がありました。

河川における環境の評価方法について

大河川における多自然川づくりQ&A集について

公益財団法人リバーフロント研究所 主席研究員  宮本 健也

 現在検討を実施している多自然川づくりに関する技術資料である「大河川における多自然川づくりーQ&A形式で理解を深めるー」ついてご講演いただきました。大河川における多自然川づくりQ&A集の作成経緯、資料のポイントや資料の見方・活用場面等についてお話があり、いくつかの具体的なQuestionについてご説明いただきました。

大河川における多自然川づくりQ&A集について 勉強会風景

分科会発表・討議

第1分科会:河川改修事業における工夫事例

  • (1) コアジサシ人工営巣地の経緯について
    関東地方整備局 利根川下流河川事務所  椎名 壮
    事例概要・発表資料(重要種の位置情報を含むため非掲載) 
  • (2) 二級河川滝川における多自然川づくりの取組
    千葉県 安房土木事務所  三塚 隆弘
    事例概要 発表資料
  • (3) 計画段階から河畔林の密度管理を考慮した川づくり:代表事例
    北海道 釧路総合振興局釧路建設管理部 中標津出張所  石上 康平
    事例概要 発表資料
  • (4) 女鳥羽川改修工事における取り組みについて(松本城下町湧水群への影響に配慮した事例)
    長野県 松本建設事務所 奈良井川改良事務所  菅原 知加子
    事例概要 発表資料
  • (5) 未来へつなぐ ~治水機能の維持と多自然川づくり~
    静岡県 交通基盤部 富士土木事務所  鈴木 康平
    事例概要 発表資料
  • (6) 弘見川で実施した川づくりの追跡調査について
    高知県 土木部  三好 貴文
    事例概要 発表資料
  • (7) 藻器堀川における多自然川づくりの取り組みについて
    熊本市 東部土木センター  前田 裕
    事例概要 発表資料

第2分科会:自然再生事業における工夫事例

  • (1) 砂州内蛇行導水水路形成による砂礫河原の再生
    北陸地方整備局 阿賀野川河川事務所  瀬川 莉子
    事例概要 発表資料
  • (2) 阿賀川における礫河原再生による事業効果:代表事例
    北陸地方整備局 阿賀川河川事務所  渡邉 あゆみ
    事例概要 発表資料
  • (3) 乙津川河口域における干潟環境の復元への取組
    九州地方整備局 大分河川国道事務所  山本 貴之
    事例概要 発表資料
  • (4) 15年目を向かえた中海・宍道湖の浅場整備~適合的管理の成果~
    中国地方整備局 出雲河川事務所  中園 翔
    事例概要 発表資料
  • (5) 重信川自然再生事業(中間報告)
    四国地方整備局 松山河川国道事務所  北岡 泰地
    事例概要 発表資料
  • (6) 赤川における樹木再繁茂対策について
    東北地方整備局 酒田河川国道事務所  目黒 浩輝
    事例概要 発表資料
  • (7) 大和川ヒキノカサ発見!~大阪府で唯一自生するヒキノカサの保全とモニタリングについて~
    近畿地方整備局 大和川河川事務所  柳 咲貴
    事例概要 発表資料

第3分科会:災害復旧事業・総合土砂等における工夫事例

  • (1) 斉内川関連事業における多自然川づくり
    秋田県 仙北地域振興局  大橋 俊夫
    事例概要 発表資料(重要種の位置情報を含むため非掲載) 
  • (2) 川原川総合流域防災事業による「復興かわづくり」
    岩手県 大船渡土木センター  片山 直
    事例概要 発表資料
  • (3) 那賀川の土砂還元による河川環境の改善効果(中間報告)
    四国地方整備局 那賀川河川事務所  青木 朋也
    事例概要 発表資料
  • (4) 舞手川河口閉塞対策及び砂浜浸食対策
    大分県 中津土木事務所  田代 真士
    事例概要 発表資料
  • (5) 耳川水系総合土砂管理計画を通じた川づくり:代表事例
    宮崎県 日向土木事務所  中野 道成、九州電力 耳川水力整備事務所  梶原 慎介
    事例概要 発表資料
  • (6) 小渋ダム土砂バイパストンネルのモニタリング調査(中間報告)
    中部地方整備局 天竜川ダム統合管理事務所  石田 勝志
    事例概要 発表資料
  • (7) 江の川上流部におけるオオカナダモ類対策について
    中国地方整備局 三次河川国道事務所  内田 敦久
    事例概要 発表資料

第4分科会:多様な主体との地域連携・協働による多自然川づくりの事例

  • (1) しべちゃ水辺の楽校活用促進に向けた取組について
    北海道開発局 釧路開発建設部 釧路河川事務所  萬谷 太雅
    事例概要 発表資料
  • (2) 豊平川におけるサケ産卵環境改善の取り組み
    北海道開発局 札幌開発建設部 札幌河川事務所  佐藤 裕介
    事例概要 発表資料
  • (3) 久知川におけるホタル復活の取組(バーブ工の設置):代表事例
    新潟県 佐渡地域振興局地域整備部  岩﨑 敏
    事例概要 発表資料
  • (4) 住民主導による河川伝統工法を用いた河川環境保全・再生の取り組み
    近畿地方整備局 淀川河川事務所  犬丸 潤
    事例概要 発表資料
  • (5) 大阪ふれあいの水辺(自然再生ゾーン)~地域と連携したエコアップ~
    大阪府 西大阪治水事務所  山﨑 誠
    事例概要 発表資料
  • (6) 美歎川ふるさとまちづくり支援事業
    鳥取県 鳥取県土整備事務所  岩佐 誠一郎
    事例概要 発表資料
  • (7) 清流の国ぎふ 水みちの連続性確保に向けた取り組みについて~河川環境と農村環境の生態系ネットワークの再生)
    岐阜県 県土整備部河川課  中内 惇夫
    事例概要 発表資料

基調講演

現場知と科学知が支えてきた多自然川づくり~次の10年に向けて~

岐阜大学流域圏科学研究センター 准教授 原田守啓

河川環境に関わるこれまでの議論の振り返りと、今後次の10年に向けてどのような取り組みを行っていくべきかについてお話いただきました。多自然川づくりに正解はなく、水系・地域によって、河川特性、河川管理に投入できるリソースも異なることから、多自然川づくりの「いい現場」の知見を共有し、各々の地域でも適用できる内容を取り入れていくというサイクルが、全国の多自然川づくりの技術をボトムアップされるというお話がありました。また、「小さな自然再生」によって地域が川づくりに参画する機会を増加させることについてお話があり、会場からは大河川へのバーブ工の適用可能性について質問がありました。

現場知と科学知が支えてきた多自然川づくり~次の10年に向けて~ 基調講演風景

全体発表

コメンテータ

  • 岐阜大学流域圏科学研究センター 准教授  原田 守啓
  • (株)吉村伸⼀流域計画室 代表  吉村伸一
  • NPO 全国⽔環境交流会代表理事⼭道省三
  • 国立研究開発法人 土木研究所 自然共生研究センター センター長/
      国立研究開発法人 土木研究所 水環境研究グループ 河川生態チーム 上席研究員  中村圭吾

選出された代表事例

第1分科会

  • 『計画段階から河畔林の密度管理を考慮した川づくり』  事例概要  発表資料
  • 北海道 釧路総合振興局釧路建設管理部 中標津出張所  石上 康平

選出理由
 非常に定量的に目標を設定しながら河畔林の管理を実施していること、樹木数の管理にあたって、モニタリングをしながら順応的な管理していく考え方が明確に示されていた。今年度は災害が多かったこともあり、樹木伐採に関する事例は、河川管理者にとっても関心が高まっていることから代表事例に選出した。
全体発表においてコメンテータより
・粗度管理を時間軸まで考慮した考え方でやっているのは素晴らしく、全国の直轄河川でも参考にしていただきたいと思う事例である。
・治水と環境の両立について、ここまでなかなか丁寧にしている事例はないので、大変感心した。ぜひ実際のデータで検証して、技術報告等をしていただきたい。
・高水敷の水深によって、河畔林を残せるか残せないかを評価しており、この水深であればどの程度河畔林を残すことができるかを整理されているのが重要。

『計画段階から河畔林の密度管理を考慮した川づくり』 選出風景

第2分科会

  • 『阿賀川における礫河原再生による事業効果』  事例概要  発表資料
  • 北陸地方整備局 阿賀川河川事務所  渡邉 あゆみ

選出理由
 水衝部の課題解消とあわせて、礫河原の再生をするという目的が明確であった。砂州の切り下げの際に自然の営力を最大限使って効果を得ようと工夫されていた点に加えて、洪水中・洪水後の河床変動の状況を確認しながら再樹林化を防ぐための管理ルールも決めており、持続性という観点においても良い事例である。
全体発表においてコメンテータより
・かなりきめ細かくモニタリングされているので、何が起こっているかはきちんと把握されていると思うが、これが中長期的に安定した形になるかまだ見えない段階だと思う。
・阿賀川のような川では、切り下げした直後にかなり川が動き回る状況になるので、なかなか難しいと思うが、引き続き頑張っていただきたい。
・切り下げ深さと河原が増えた出水との関係性をもう少し追跡できればさらに面白いのではないか。

『阿賀川における礫河原再生による事業効果』 選出風景

第3分科会

  • 『耳川水系総合土砂管理計画を通じた川づくり』  事例概要  発表資料
  • 宮崎県 日向土木事務所  中野 道成(代理発表 宮崎県 河川課  田中 聖二)
  • 九州電力 耳川水力整備事務所  梶原 慎介

選出理由
 都道府県で総合土砂管理計画を策定している事例は貴重であり、既存の発電ダムを切り下げてダムの通砂運用している先進的な事例である。様々な関係機関(県・市町村、電力会社、森林組合、内水面組合等)が協力し合って総合土砂に取り組んでおり、計画策定から流域住民の方々も主体的に参加されている点も良い事例である。
全体発表においてコメンテータより
・日本でここまでモニタリング調査をしっかりやっているのを初めて見たなというぐらい、事業を実施したことによって河川環境にどう影響があったのかというのを徹底的に科学的に検証可能な調査をされていて、素晴らしい事例。
・土砂管理にかかわる様々な関係者をつないだ仕組みをつくって、それぞれが役割を果たしていくというのは、大変苦労されたと思う。
・住民参加での生物モニタリング調査によって、住民にとってダム管理者の存在が身近になってきたのだと思う。今後も継続していくことで、地元、ダム管理者、県、河川管理者等の関係が非常に密になってくる。

『耳川水系総合土砂管理計画を通じた川づくり』 選出風景
『耳川水系総合土砂管理計画を通じた川づくり』 選出風景

第4分科会

  • 『久知川におけるホタル復活の取組(バーブ工の設置)』  事例概要  発表資料
  • 新潟県 佐渡地域振興局地域整備部  岩﨑 敏

選出理由
 事業にあたって、河川管理者の考えを地域に押しつけて説得するというプロセスではなく、地域の方々に考えていただいてそれを河川管理者がサポートするという地域主導の進め方をしている良い事例である。
全体発表においてコメンテータより
・生き物と子供たちとの結びつき、川との結びつきというのは、山村地域と交流のツールとして非常に重要。
・バーブ工設置作業は中学生が行っており、子どもたちにとっては1時間程度の作業時間だと楽しい思い出となりちょうど良いのだと感じた。
・だんだんバーブ工の周りに土砂がうまいこと堆積していくと、かなり長持ちする状態になってくるのではないか。

『久知川におけるホタル復活の取組(バーブ工の設置)』 選出風景

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