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ユースケース開発ガイド – 自治体編|03. PLATEAUを有効に活用した3つの事例

PLATEAUを活用して、具体的にどのような取り組みが行われているかを紹介します。より良い土地開発のために、申請フローを最適化した事例、3D都市モデルならではの精緻さで、温暖化対策を推進した事例、地域振興のためのシティプロモーション事例について見ていきましょう。

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PLATEAUを有効に活用した3つの事例

ここまで、PLATEAUの概要と、PLATEAUを活用したサービスをつくる場合に必要なステップについて説明してきました。ここからは、具体的にどのような取り組みがなされているのかを紹介します。

実証事例 01. 茅野市
より良い土地開発のために、申請フローを最適化実験の概要

人・モノ・データPLATEAU、都市計画、災害リスク、さまざまな行政情報
アイデア3D都市モデルに行政情報を集約し、土地開発の申請システムに利用
短期的な目的開発事業者の申請を軽くする / 承認者の事務作業を軽くする
中期的な目的適切な土地利用を進める
長期的な目的開発制度そのものの最適化

茅野市では、土地開発の申請・許可に関わる手続きが煩雑で、人的・時間的なコストを多く必要とするという問題を抱えていました。

3D都市モデル上に集約されたデータベース

PLATEAUの3D都市モデルは、さまざまな空間情報を統合するフォーマットとして機能します。そこで、土地開発の申請をする際に開発事業者・行政が必要とするデータをここに集約しました。これまでは、「その開発が適正かどうか」を判断するために個別の資料を調査する必要がありましたが、3D都市モデル上に集約されたことで、申請時に必要な情報収集が効率化されたのです。

開発の目的:「申請を忌避する流れ」をDXで解決する

これまで、土地開発の申請には時間と手間がかかるため、「申請が必要な規模の開発を避ける」という状況が見られました。また、行政サイドにおいても、申請内容の審査は複雑で、属人的な作業でした。茅野市は、こうした背景のなか、あるべき都市の姿を実現するための開発推進が阻まれていくことに課題を感じ、開発許可のフローをDXにより効率化することにしました。

サービスの利用者:開発事業者と行政、双方の工数を削減

従来、開発許可の申請は「何をどこで調べたら良いのかわからない」状態から始まり、事業者の大きな負担となっていました。
情報を3D都市モデルに一元化することで、事業者側と行政側の双方が開発許可手続きを素早く処理できるようになります。また、行政側では、事務作業が効率化されることで、都市政策の観点から開発の妥当性を吟味することができるようになります。

目指すもの:自動化された申請・許可のフロー

茅野市が最終的に目指すのは、「開発事業者がウェブから開発許可を申請し、システムの支援によって許可の是非が半自動的に判断できる」という状況です。今回のサービスは、これを実現していくためのツールとして機能するでしょう。土地開発に関わるフローが効率化することで、サステナブルなまちづくりの観点から土地政策を推進していくことができます。

事例 02. 加賀市
3D都市モデルならではの精緻さで、温暖化対策を推進

人・モノ・データPLATEAU、日射量データ
アイデア太陽光パネルを設置した場合のシミュレーション
短期的な目的再生エネルギーを活用した都市計画
中期的な目的再生エネルギー発電設備の導入を推進
長期的な目的地域の脱炭素を実現

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることで、「排出を全体としてゼロ」にすることを目指す計画です。加賀市では、地域全体での温暖化対策を推進するため、2019年より、まちづくりの計画を見直す取り組みを行ってきました。脱炭素まちづくりを実現する一つの手段として、太陽光発電パネルの導入がありますが、その際には日射量が十分に得られる屋根を選定し、効率よく設置することが必要です。

屋根の傾きや面積から行う精緻なシミュレーション

PLATEAUの3D都市モデルは、建物の屋根面積、傾き、隣接建物との位置関係を保持しています。加賀市の3D都市モデルを活用し、日射量などのデータを利用してシミュレーションすることで、「都市全体の規模で屋根に太陽光発電パネルを設置した場合、どの程度の発電が見込まれるか」を推計することができるようになります。また、パネルは光を強く反射するため、隣接する建物に反射光が及ばないかを事前に確認することが望ましいです。こうした懸念にも、「設置した場合にどう反射するか」をシミュレーションすることで対応できるようになります。

開発の体制:課をまたいだ意見交換でユーザー目線のサービスを目指す

カーボンニュートラルなまちづくりに活用できる3D都市モデルを用意するために、中心となった窓口は、加賀市のスマートシティ課でした。また、環境課の人々も連携し、課題の抽出やユーザー目線での検証を行いました。

現状と目標:土台から実用への移行期

現在、3D都市モデルを活用した脱炭素まちづくりを進める加賀市の取り組みは、「土台ができた」状態です。より汎用的で、行政職員でも使いやすいシミュレータを開発していくことで、日常的な政策立案において使えるツールになっていきます。今後は、行政職員の利用を想定したデザインや、指定したエリアのポテンシャルを個別に計算できる機能、災害リスク評価など、実用に最適化した開発を進めていきます。

事例 03. 鉾田市
地域振興のためのシティプロモーション

人・モノ・データPLATEAU、土地の名産物、観光名所
アイデア車で散策できる3D都市ゲーム
短期的な目的市外・県外の人々への認知拡大
中期的な目的地域活性化、観光振興
長期的な目的将来の移住者を増加させる

鉾田市は、野菜の出荷額が全国1位であるなど、秀でた資産を持つ土地です。しかしながら、県外・市外の人々からの認知が低いという課題を抱えていました。柔和な気候を活かした農業の発展、鹿島灘、北浦、涸沼をはじめとした豊かな自然環境は非常に価値のあるものですが、こうした土地の魅力が十分に伝わっていない状況です。

3D都市モデル上でバーチャルな観光を実現

鉾田市は、3D都市空間を散策できるアプリケーションを開発することで、サイバースペースでの「鉾田市観光」を実現し、実際の土地の魅力をより多くの人々に届けようとしています。ルートは5種類あり、ユーザーは車で鉾田市内を移動しながら、観光地や主要施設をめぐることができます。また、体験時には「カーレースモード」と「観光モード」のうちから、好きなモードを選択可能です。カーレースモードの場合は高速で、観光モードの際はゆっくりと景色を楽しみながら、鉾田市を散策できます。

サービスができるまで:領域を超えた連携で、話題性を獲得する

PLATEAUを利用することが決まった際、最初に集められたのは、鉾田市の庁内で働く若い職員でした。「話題性」が重要であった鉾田市にとって、ほかの地域では取り組まないような面白い事例をつくる必要がありました。そこで、従来の様式にとらわれない自由な観点から、さまざまなアイデアを出してもらいました。
こうして集められたアイデアのいくつかを持って、国土交通省と話し合いながら、サービスの形が固まっていきました。庁内にDX人材がいなかったため、開発は委託で進めています。市の予算を獲得する際は、サービスを制作した場合の効果や、今後の展開計画、具体的なビジュアルのイメージを提示しながら説明しました。

目指すもの:アプリケーションをきっかけとした地域振興

PLATEAUはデジタルデータですが、その存在の目的は、人間や自然などが関わる現実の空間をよりよくしていくことにあります。鉾田市が目指すものも、最終的には現実空間での人口流入・観光振興です。アプリケーションを通じたバーチャルな鉾田市観光をきっかけとして、市外・県外の人々が鉾田市に足を運ぶようになるために。PR施策やまちづくりそのものの革新など、多角的な視点で地域を盛り上げていきます。