uc23-02

精緻な土砂災害シミュレーション

実施事業者株式会社ウエスコ/株式会社構造計画研究所
実施予定2023年10月〜12月
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3D都市モデルを活用し、家屋の倒壊判定等を加味した精緻な土石流シミュレータを開発。建物損壊リスクを考慮した精緻な避難計画を立案する。

実証実験の概要

現在運用されている土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域(以下「土砂災害警戒区域等」とする)のハザード情報は、地形から力学的に推定される最大範囲を網羅するものとなっているが、地域によっては居住エリアの大半が土砂災害警戒区域等に指定されることで、実効的な避難場所の選定が困難になるケースがある。また、一般的には土石流に起因する土砂災害警戒区域等は地形条件から定められているが、土石流等が家屋に衝突し、家屋を流出・半壊状態とさせたことによって生じたエネルギー変化や流動方向に対する変化の影響が評価されておらず、実態に即した土石流の氾濫範囲となっていない。

今回の実証実験では、3D都市モデルを活用し、家屋の倒壊状況等を加味した精緻な土石流の流体数値シミュレータを開発する。さらに、シミュレーション結果から土砂災害警戒区域等のエリア内のリスク分布を三次元表現する可視化システムをあわせて開発することで、行政の避難所選定を支援し、避難計画の高度化を目指す。

家屋倒壊/非倒壊を加味した土石流シミュレーションの結果表示イメージ

実現したい価値・目指す世界

近年、記録的短時間大雨情報が頻繁に配信されており、日本各地が土砂災害の危険にさらされている。これに合わせて、全国的に土砂災害警戒区域等の指定範囲が拡大されている。しかし、土砂災害警戒区域等は地形から力学的に推定される最大範囲を網羅するものであるため、特に中山間地では、土石流警戒区域等が幾重にも重なり、避難計画立案自体が困難な状況も発生している。また、一般に公表される土砂災害警戒区域等は二次元的な範囲を示すものであり、土石流等の挙動、建物の影響などの実態が予想しにくいといった課題もある。

今回の実証実験では、建築物の位置や形状の情報に加え、属性情報(用途や構造種別等)を保持した3D都市モデル(建築物モデル)を用いることで、土石流等が家屋に衝突した際のエネルギー変化や流動方向に対する変化の影響を考慮することができる土石流シミュレータを開発する。シミュレータは、無償で利用可能な流体シミュレーションプラットフォームである「iRIC」を用い、既存のソルバーを改良するかたちで開発する。
これまで困難だった家屋の倒壊等の影響を加味した精緻な土石流シミュレーションを行うことで、土石流の氾濫範囲を緻密に解析し、比較的リスクが低い地点等を工学的根拠に基づいて示すことができる。これにより、土砂災害警戒区域等が重なるように指定されている地域などにおいて、より実効性のある一次避難場所を設定することや、避難ルートを精緻にすることなど、避難計画を高度化していくことを目指す。
また、シミュレーション結果はWebGISを用いて三次元的に可視化することで、行政関係者間の合意形成の迅速化を実現する。

将来的には、VR等のデバイス活用も視野に入れ、住民への的確かつリアルな情報提供による意識啓発や、これを活用した避難訓練への寄与も志向する。

備前市実施箇所の画像(2D)