市民協働による樹木管理DX
実施事業者 | 東邦レオ株式会社/Pacific Spatial Solutions 株式会社/株式会社バイオーム |
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実施協力 | 宮城県仙台市 |
実施場所 | 榴岡公園(0.112km2) |
実施予定 | 2023年4月〜2024年1月 |

市民協働により樹木データを収集し、データベースを構築。樹木の環境価値を明らかにし、都市緑化や脱炭素まちづくりを推進する。
実証実験の概要
人口減少や少子高齢化が進む中で、地方公共団体によるインフラ管理の分野では、コストや人手を抑えた効率的な管理業務の実現が課題となっている。都市公園や街路等における樹木管理業務においては、旧来の紙ベースの管理手法からデータベースを活用したデジタル管理手法に移行する地方公共団体も現れつつあるが、そもそもの管理台帳が存在しない、最小限の情報しか把握していないといった課題があり、樹木情報のデータベース化作業そのものを如何に効率的に実施するかが問題となる。
今回の実証実験では、市民参加型で都市公園内の樹木に関する情報や写真を登録できるスマートフォン向けアプリを開発する。さらに、3D都市モデル(LOD2植生モデル)を基とした樹木管理用データベースシステムを開発し、スマホ向けアプリと連携させることで、市民参加によって樹木情報を取得・更新し、樹木管理に役立てることが出来る仕組みを構築する。これにより、行政と市民の協働によって都市内の豊富な樹木情報を大規模に取得する手法を確立し、樹木管理のDXを実現する。

実現したい価値・目指す世界
都市公園や街路等における樹木管理業務では、日々の点検や積算業務において樹木規格や腐朽菌発生といった情報を記録・共有・管理することが求められているが、多くの地方公共団体では紙ベースの管理が行われており、最新情報の把握や情報更新の効率化が課題となっている。また、グローバルな先進事例をみると、都市内の樹木情報を収集し、CO2吸収量に代表される生態系サービスの定量評価など、都市緑化やカーボンニュートラルの観点から樹木情報を活用する動きが広がっている。このため、豊富な樹木情報を収集し、データベース化することは、インフラ管理の効率化のみならず、都市内の樹木の付加価値を高めることにもつながることが期待されている。
他方、現存する樹木の情報を収集・データ化し、網羅的なデータベースを構築するコストは大きくなりがちであり、地方公共団体における導入は広がっていない。特に位置や樹高などの基礎的な情報に加え、健康状態や周辺の生態などの樹木の付加的な情報を収集しようとする場合はコストが問題となるため、如何にデータ収集を効率的に行うかが課題となる。
今回の実証実験では、3D都市モデル(LOD2植生モデル)に対し面的に測量した樹木の位置、樹高、直径、枝下高さ等の樹木の基礎的な情報を属性情報として付与することで、樹木情報を一元化する。これを基にリレーショナルデータベースと管理用アプリを開発することで、行政職員が管理業務で利用可能な管理台帳システムを構築する。
さらに、樹木の環境価値を評価するための付加的な情報を収集するため、都市公園内の樹木に関する情報や写真を登録できるスマートフォン向けアプリを開発する。このアプリを用いて市民協働型のデータ収集ワークショップを開催することで、LiDAR等の測量では分からない種名判定や腐朽菌発生といった樹木の詳細な生体情報を取得する仕組みを構築する。
スマホ向けアプリから取得された付加的な情報はデータベースシステムに蓄積され、これを利用したCO2吸収量や樹冠雨水遮断量等の環境価値のシミュレーションを行うことが可能となる。
本システムの導入によって、地方公共団体の樹木データベース構築を促進し、樹木管理の効率化を図るとともに、付加的な情報を大規模に取得する仕組みを確立することで、樹木管理に新たな価値をもたらすことを目指す。


