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インドネシアの土地法制は、土地の自由保有権という概念を認めていない。その代わりに、土地に関する多様な権利が様々な名称の基に細かく定められている。土地に関する権利には、所有権、事業者権、建設権、利用権、区分所有権、開発権などがある。外国人投資家にとって重要な権利として、国内投資家と同様に事業者権(HGU:Hak Guna Usaha)、建設権(HGB:Hak Guna Bangunan)、利用権(HP:Hak Pakai)の 3 つがある。これら権利は特定の方法での土地の使用を認めるものである。その違いは、主に有効期間、利用の性格、抵当方法(資産または担保としての利用に関する)、権利所有の証明方式の違いにある。インドネシアの土地法制は、慣習法(adat)と法令が交錯する複雑な分野であり、また土地の登記がなされておらず権利関係が不明確な土地も多い。不動産に関する権利を取得する前には慎重な検討が必要である。
事業者権は、プランテーションや漁業、牧畜を含む農業目的で国有地を使用する権利である。この権利の期間は法律で最大 35 年まで認められているが、土地の使用管理が適切に行われている場合は最大 25 年延長することが可能である。当該延長期間満了時には、更に最大 35 年間延長することができる。この権利はインドネシア人、または外国投資(PMA)企業を含めたインドネシア内の法人に与えられる。
建設権は、土地の上に建物を建てて所有する権利である。この権利は、インドネシア人またはインドネシア内の PMA 企業を含めた法人に対して最大 30 年間与えられ、最大で 20 年延長することができる。当該延長期間満了時には、更に最大 30 年間延長することができる。また、抵当に入れることや他人に譲渡することもできる。
地上利用権は、特定の目的のために土地を利用する権利で、25 年の期限で与えられる。更に、当該の土地が特定の(通常の)目的に使用されている限り、最大 20 年の延長が可能である。当該延長期間満了時には、更に最大 25 年間延長することができる。この権利は、抵当に入れることも でき、政府の認可を得て他人に譲渡することもできる。
外国人は、インドネシアにおいて居住用に、利用権が付された土地の上に建てられた住宅、または建設権や利用権が付された土地の上に建つコンドミニアムのユニットを保有することができる。居住許可(ItasまたはItap)がなくとも、ビザやパスポートがあれば保有可能。
ただし、住宅は、法令により高級住宅に分類されるものでなくてはならず、原則、外国人1人/1世帯につき1区画の土地に限られ、その広さも2,000平方メートルまでに制限されている。
地域の指定、土地の指定、土地使用権の承認、建設許可の発給、公害関係法規に基づく許可は、各州投資調整局(BKPMD:Badan Koordinasi Penanaman Modal Daerah)で行われる。
自由貿易地域など保税が認められた地域に立地する企業は、当該管理庁または管理会社を通じて土地の利用に関する手続きを行う。
登記制度はあるが、日本と異なり、一般には公開されていないため、登記上の権利者に対して開示を要求することになる。土地の登記簿は、管轄の土地局において作成・管理されている。なお、登記簿の登記内容を記載した土地権利証はインドネシア語であるため、翻訳が必要となる。特に地方においては、 アダット(慣習法上の土地)と呼ばれる、未登記の土地が多く存在する。未登記の土地については、実務上、その土地の固定資産税に相当する税金を支払っていることを証する書面(Girikと呼ばれる)を確認することにより、間接的にその土地の権利を確認する方法がとられる。一般的に登記に要する期間は比較的長く、 また未登記のままの土地が特に郊外や地方において多く存在することから、土地の権利関係の調査は慎重に行う必要がある。
※譲渡税、取得税の支払いは同時に行える
不動産鑑定士は、財務省Ministry of Finance(Kementerian Keuangan)に認可される国家資格である。鑑定基準を決定する機関のインドネシア職業鑑定士協会(MAPPI:Masyarakat Profesi Penilai Indonesia)が鑑定評価基準SPI(Standar Penilaian Indonesia)を発行している。
MAPPIの会員となっている鑑定士数は約3,500人。
インドネシアの鑑定業界では、国際的企業からの評価などグローバル化に対する意識が強く、早くから積極的に国際評価基準(IVS:International Valuation Standards)を参照してインドネシア評価基準(SPI:Standard Penilaian Indonesia)を作成(改訂)している。一方でインドネシアの土地制度にはアダットと呼ばれる慣習法に基づく種々の権利が一部地域に現存しており個別性が非常に強い。従って、この様なローカルな事情・状況を組み入れてSPIが作成されているので、IVSとは完全に一致はしていない。
不動産事業そのものに対する免許等はないが、扱う不動産や業種によっては、必要となる免許がある。主なライセンスは以下の通り。
〔土地・不動産の所有権〕
国際協力銀行(JBIC)「インドネシアの投資環境/2023年2月」
〔土地・不動産の所有権、土地・不動産の登記〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る インドネシア 外資に関する規制」
日本貿易振興機構(JETRO)「ビジネス法規ガイドブック(インドネシア)2015年2月」
World Bank「Doing Business」
〔土地・不動産の登記〕
法務省「インドネシアにおける強制執行、民事保全 及び担保権実行の法制度と運用の実情に関する調査研究」(2012年3月)(p.31)
〔不動産の鑑定評価〕
日本不動産鑑定士協会連合会「各国の国際評価基準(IVS)導入状況」
〔不動産事業を行う際の免許制度〕
森・濱田松本法律事務所「アジア不動産法制」(2018年)
野村総合研究所調べ
不動産購入者を保護する制度として消費者保護法や業者に対する倫理綱領等が存在する。
インドネシアの消費者保護法(1999年第8号)は、消費者契約に関連する事項に加え、不当景品・不当表示規制および製造物責任などを規定する消費者の利益保護を目的とした総合的な法律である。本法の規制の対象となる「事業者」は、インドネシア国内において事業を行う個人、法人およびその他の団体である。また、規制の対象は商品およびサービスであるが、「商品」には、有体物・無体物、動産・不動産および消費財・耐久財の区別を問わず消費者が使用しうるあらゆる物が含まれる。
また、中古住宅に対するインスペクションは一般的であり、契約によっては交渉の余地があるが、基本的に費用は買い手が支払う。
不動産の瑕疵に関しては、購入する物件の状態を精査確認するのは買主の責任であるため、契約締結後に見つかった物件の欠陥については、たとえ買主が申し立てやそれらを根拠に契約を破棄する法的権利を持っていたとしても、それらを行使することは現実には非常に困難である。
住宅不足および質的改善に対する政策「百万戸住宅供給プログラム(program sejuta rumah)」の概要
国家戦略計画 2014-2019 の結果を受けて新たに国家戦略計画2020-2024 が制定された(2020年大統領令 18 号)。
2020 年 4 月の大統領令第 18 号(PERATURAN PRESIDEN NOMOR 18 TAHUN 2020)で2021-2024 の新たな国家中期開発計画が交付され、百万戸住宅供給計画も「公共事業省と住宅戦略計画/大臣令 2020 年第 23 号」更新され新たな目標が設定された。
尚 本計画(2020-2024)は前計画(2015-2019)の政策によって一定の成果を上げたことにより基本的な政策を受け継いでおり、大きな戦略変更は行われていない。同計画では 2024 年までに 500 万⼾を追加、居住不適格住宅を 100 万⼾改善する⽬標を掲げている。住宅ローンの⼀部を政府が負担する補助⾦制度(FLPP)の適⽤条件を、最⼤⽉収400 万ルピア(約3万円)から 700 万ルピアに引き上げた。さらに、最低賃⾦を超える収⼊がある全ての労働者には、低所得者向け住宅ローンの原資となる住宅購⼊基⾦(Tapera)への加⼊を義務付けた。
一般的な契約期間は住居で1年、事務所で2年となっている。通常賃料は前払いである。契約終了時に貸主の合意があれば借主は契約期間の延長が可能であるが、貸主が拒否することも可能である。契約期間中に借主は契約を解除することができるが、賃料は前払いであるため放棄しなければならない。
〔消費者保護〕
日本貿易振興機構(JETRO)「ビジネス法規ガイドブック(インドネシア)」(2015年2月)
〔不動産行政の方向性〕
国土交通省「インドネシア共和国における低所得者層を主体とした住宅の耐震化技術(安全性)および普及に関する事業環境整備」(2023年3月)
〔不動産金融〕
国際協力機構(JICA)「インドネシア共和国 日本のプレハブ技術を活用した低所得者向け耐震住宅案件化調査」(2022年2月)
〔消費者保護、不動産行政の方向性、不動産金融、不動産のリース〕
NNA調べ(2016年8月)業界関係者へのヒアリング
2017年大統領令第50号(インドネシア商業省広報部)
低所得層向け住宅の建設計画・経済政策パッケージ13弾
個人向け住宅ローン
住宅ローン規制緩和・中銀令『2016年第18/16号』
土地・建物の所有権の売却等があった場合、売主に対して取引価格の2.5%の源泉分離課税が課される。取引価格の5%の土地建物所有権取得税が購入者に課される。
土地・建物税:政府発表の土地の標準価格(NJOP)に応じて課税基準額が決まる。
納税額=課税基準額×0.5%
1982年に、日本は租税条約を締結。
不動産所得(譲渡所得を除く)は、不動産の所在地においても課税され、インドネシアに所有する不動産から賃貸収入を得る場合、インドネシアで課税される。
〔不動産取得に関する税制〕
経済産業省「中堅・中小企業向け『進出先国税制及び税務ガバナンスに係る情報提供セミナー』」(2023年1月)
〔不動産取得に関する税制、不動産保有に関する税制〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る インドネシア 税制」 (2023年7月21日)
外国資本企業(外国資本が外国投資法に基づき設立した株式会社)は、インドネシアの不動産法制上、原則として内国法人と同様の扱いが保証されており、外国資本企業による土地に関する権利の取得については、外国投資の促進の観点から国が一定の便宜を供与する旨規定している(投資法(2007年法第25号)第21条)。
一方、駐在員事務所は、固有の法人格を有さないため内国法人と同様の扱いを受けることができず、取得しうる不動産に関する権利は外国資本企業に比べて非常に限定されている。
また、1996年6月17日付政令第41号により、インドネシアに居住する外国人に居住用住宅の保有が認められることとなった。ただし、使用権が付された土地に限られる。大統領令2015年第103号にて土地の使用権は30年、引き続きインドネシアに居住する限り更新は20年と変更された。なお、インドネシアでの居住を中止する場合、1年以内に権利譲渡しなければならない。
2018年7月1日付労働大臣規定2018年第10号にて、インドネシアで雇用される外国人労働者は次の要件を満たすことが義務付けられている。
・就労予定の役職要件に応じた学歴を有していること
・就労予定の役職に従った、少なくとも5年間の就業経験を有すること
・インドネシア人労働者、特に外国人の後継となるインドネシア人に専門知識の移転をする準備があること
・納税者番号(NPWP)を有すること(就労期間が6カ月を超える外国人労働者)
・暫定居住許可(ITAS)を有すること
参照 建設業に関する外資規制等
土地所有権は、インドネシア国民(個人)にのみ認められている。法人は所有権に代わる権利を得た上で、工場を建てるなどして操業することができる。
外国人は、インドネシアにおいて居住用に、利用権が付された土地の上に建てられた住宅、または建設権や利用権が付された土地の上に建つコンドミニアムのユニットを保有することができる。居住許可(ItasまたはItap)がなくとも、ビザやパスポートがあれば保有可能。
ただし、住宅は、法令により高級住宅に分類されるものでなくてはならず、原則、外国人1人/1世帯につき1区画の土地に限られ、その広さも2,000平方メートルまでに制限されている。
また、外国人が購入できる住宅・コンドミニアムは新築でも中古でもよいが、最低価格が規制されており、各州で定められる。
購入された住宅やコンドミニアムのユニットは、他者への譲渡したり、借入の担保とすることができ、また当該外国人が死亡した場合、条件を満たした相続人による相続も可能である。
〔2022年11月1日付国土空間配置省/国土庁土地権利決定登録総局文書2022年第1号(No.HR.01/1963/XI/2022)〕
〔外資に関する優遇措置もしくは規制、外国人による不動産の取引について〕
日本貿易振興機構(JETRO)「外国企業の土地所有の可否」(2023年7月21日)
〔外国人による不動産の取引について〕
政令(2015年第103号)
農地・土地計画相令『16年第29号』(インドネシア語)
(調査実施時期:2022年11月1日~2023年1月6日)
〔主要都市等におけるマーケット情報〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 投資コスト比較」
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