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第1回高級事務レベル会合~概要

参加代表は、「アジア太平洋地域インフラ担当大臣会合」(以下、「本会議」という。)の運営について、次のとおりとすることで一致した。

1.1 メンバーシップ

 1) 参加国・地域
  本会議の参加国・地域は、アジア太平洋地域の以下の20の国・地域とし、当該国・地域のインフラ整備担当の行政機関を参加機関とする。

オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、コロンビア、香港、インドネシア、日本、マレイシア、メキシコ、ニュージーランド、 パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、韓国、シンガポール、タイ、米国、ヴィエトナム

 2)新規参加
  会議は、大臣会合において全ての出席国・地域の賛同を得ることを条件として、アジア太平洋地域の新たな参加国・地域を受け入れることができる。

 3)オブザーバー参加
  本会議の開催国・地域は、大臣会合の議題に応じ、アジア太平洋地域内または同地域に隣接する国、国際機関、インフラ整備に関連する他の機関をオブザーバーとして招くことができる。開催国・地域は、事前にオブザーバーの出席について、参加国・地域に協議するものとする。

1.2 会議の開催

 1)大臣会合
  参加国・地域のインフラ整備を担当する閣僚レベルの会議を、2年~3年ごとに開催する。

 2)高級事務レベル会合
  大臣会合の開催準備など、大臣会合を補完するための高級事務レベル会合を、大臣会合の間に必要に応じ(例えば年1回)開催する。同会合の参加者のレ ベルは、同 会合における検討内容に応じ、開催国・地域が他の参加国・地域と調整を行うものとする。

1.3 議題

 本会議では、インフラ整備、住宅整備、都市開発等の幅広いテーマを扱うものとする。各回の大臣会合の議題については、原則として、高級事務レベル会合に おいて決定されるが、特別な場合には、参加国・地域と協議のうえ、同会議開催国・地域が議題を追加することができる。

1.4 連絡組織

 開催国・地域に設置される事務局とは別に、当分の間、参加国・地域の間の連絡等を行うための連絡組織を日本に置く。


2.討議された諸課題

 今回の高級事務レベル会合の参加代表は、次のような課題について発表及び議論を行い、今後の本会議で議論すべき具体的な課題についての整理を行った。

2.1 インフラ整備の促進方策(官民パートナーシップの推進)

 民間活力を活用したインフラの整備は、昨年の大臣会合でも参加各国・地域から多くの発言があったテーマであるが、本高級事務レベル会合においても、ほとんどの参加国・地域から意見の発表が行われた課題となった。
 現在、BOT方式等の民間活力を活用したインフラ整備事業は、電力事業や有料道路などでみられるが、参加国・地域の個々の経済、社会情勢によって普及の度合が異なる状況にある。
 この民活インフラ整備事業を成功に導くためには留意すべき事項があるものの、多くの参加国・地域がインフラ整備手法として大きな期待を持っていることが明らかとなった。すなわち、既に多くの事例を持つ国・地域は、特別の法律の制定、様々な支援策の実施等を行ってきていることが報告された。一方、経験の浅い国・地域からは、他の参加国・地域の経験や制度を参考にしたいとの意向表明があった。また、多くの参加代表から、従来、インフラ整備事業を行ってきた公営企業の民営化に積極的に取り組んできたとの報告があった。
 さらに、開発途上国のインフラ整備を支援する立場からも支援策が発表され、アジア太平洋地域内において、各国・地域の協力のもと、民活インフラ整備を協力して推進する方向で意向が一致した。
 民間企業は、総じて民活インフラ整備に関心が高いが、当該国事業を所管する政府の適切な関与が必要との意見を持つことも紹介された。
このように、民活インフラ整備の推進のために必要な官民パートナーシップについて、その推進の重要性を多くの参加代表が指摘し、今後とも各国・地域は、官民の対話の場を大臣会合、高級事務レベル会合において継続して持っていくよう努めることで意見の一致をみた。

2.2 インフラ各分野の諸課題への取組み

 今回の高級事務レベル会合の2番目の討議課題とした「インフラ各分野の諸課題への取組み」においては、昨年の大臣会合で扱うことが決められたインフラ整備、住宅整備、都市開発等の幅広いテーマについて、各国・地域の現状や今後の計画の紹介が行われた。各国・地域の社会経済の持続的発展に関し、適切なインフラの整備・管理の重要性と、各々の知識・経験の共有の意義が強調された。また、議論の中で、多くの参加代表は、以下の事項について関心が高いことが明らかとなった。

 1)道路・交通分野
  • 財政制約の中での道路整備や維持管理のための民活資金の活用を含めた財源確保
  • 道路環境問題の解決方策
 2)水分野
  • 水資源の不足及び水資源偏在や水質汚濁への対処
  • 低コスト下水処理
 3)都市・住宅分野
  • 低コストな公的住宅の供給
  • 民間資金・活力を利用した住宅の供給・整備
  • 都市における地震対策の取組み
 4)防災分野
  • 効率的な消火活動のための施策
  • 大規模災害に対する各国・地域協力
 以上のうち、特に、道路・交通分野については、官民パートナーシップの活用を 含め、財源確保方策の検討が重要課題であるとの意見を持つ国が多かった。

2.3 地域的・国際的問題への対応の推進

 1)国際インフラ
  地理的位置、整備資金負担及び受益が複数の国にわたる国際インフラは、その幅広いメリットのために整備を推進する必要性が指摘され、その例示としてアジアハイウェイの整備、メコン川流域開発等があげられた。さらに、その整備推進のためには、国際機関及び関係各国・地域の国際的協力の官民を含めた枠組みづくりが不可欠であるとの意見が出された。

 2)環境問題への取組み
  持続可能な開発のためには、インフラ整備においても環境問題への取組みが重要であることが多くの代表から指摘された。また、昨年の大臣会合で日本から環境の分析手法の一つとして提案した広域地理情報システム(地球地図)について、具体的な整備イメージを示すデモンストレーションが行われた。

2.4 相互協力の推進

 1)インフラ整備に関する国際情報データベースの構築
  昨年の大臣会合で合意された標記データベース構築の第一歩として、事務局が各国・地域の協力を得てこれまでに「各国のインフラ整備状況等の便覧」をとりまとめてきたが、本会合でこの便覧が配布された。今後、さらなるデータベースの発展のため、これまでの作業を継続し必要な情報の更新も行うとともに、民活インフラの整備の推進について有益な情報や各国・地域の研究機関に関する情報をさらに充実するなど、データベースの拡充を図ることで参加代表は一致した。
  また、既に収集された情報や今後収集する情報のうち、当該国・地域の了解を得られたものは、参加国・地域の共有財産として、民間セクターへも含め幅広く公開するとの提案も、参加代表の賛同を得た。さらに、個々のデータベースをリンクさ せべきとの提案もあった。
  なお、当面、本便覧の更新、改善の連絡調整については、本高級事務レベル会合で設置が決まった「連絡組織」の業務の一つとすることとされた。

 2)研究機関交流
  昨年の大臣会合の議長声明に盛り込まれた域内の研究機関交流については、インフラ整備に関する研究機関による定期会合の開催、建設経済研究機関の交流の拡充等の提案があった。
  域内のインフラ整備、住宅整備、都市開発の推進のためには、これらを技術面、分析面から支える研究機関の役割は重要であり、相互交流によりその研究成果をより高いものとするために、交流の促進を支援していくことで参加代表は一致した。  3)その他
  インフラ整備、住宅整備、都市開発を支える国内・地域内の建設産業の育成の重要性が指摘され、建設産業育成に係る相互協力を進めるべきとの意見が出された。
  また、相互協力の推進に当たっては、各国・地域の人材交流の推進が欠かせないとの指摘もあり、今後、域内でのそのための具体的な枠組み作りへの期待が表明された。さらに、専門的技術移転のための訓練プログラムの創設の提案もあった。


3.今後の本会議での議題案

 本高級事務レベル会合での議論を踏まえ、今後の本会議で議論すべき議題案につ いて、以下のように整理を行った。

 1) インフラ整備における官民パートナーシップの推進
 2) インフラ整備の財源の確保
 3) インフラ整備と環境との調和
 4) 地球的、広域的環境問題への対応
 5) 水資源の不足及び偏在への対処
 6) 低コストな下水処理
 7) 低コストな公共住宅供給
 8) 渋滞対策を含む交通問題への対応
 9) 都市における地震対策、大規模災害に対する各国・地域協力等の防災対策の推進
 10)国際インフラの整備による広域輸送の円滑化や資源の有効活用
 11)インフラ整備に関する国際情報データベースの構築
 12)建設産業育成のための相互協力の推進
 13)研究交流、人材交流の推進

 これらの課題に関する議論の方法としては、各国・地域がそれぞれの成功例や困難に直面した事例を持ち寄り、経験や技術・ノウハウを共有することが有意義であるとされた。
 今回の高級事務レベル会合の参加各代表は、今後の大臣会合の開催国・地域が、上記の課題について十分考慮したうえで、議題の選定を行うよう期待する。


4.次回大臣会合の開催

 チリより、アジア太平洋地域への強い関りを踏まえ、他に開催国がなければ、次回大臣会合の開催を前向きに検討するとの意向の表明があった。ただし、現段階では、開催に係わる財政面の問題をサンチアゴにおいて省庁間で協議しているため、チリは、なお回答しうる状況にない。しかし、チリ代表は、開催国となる可能性についてできるだけ早く回答すると表明した。開催国となることが決まった場合、次回大臣会合は、1997年6月または7月頃に開催される見込みである。これを受けて、今回の高級事務レベル会合に参加した他の代表は、チリが来年の大臣会合の開催国となることへの支持を明らかにした。その後、大臣からの正式な書簡を示しつつ、ペルーは、1997年の次回大臣会合を開催したいとの公式の提案を行った。
 同会合は、チリとペルーの努力に対し感謝の意を表するとともに、いずれの候補地についても歓迎するとの意向を示した。第1回大臣会合の開催国としての日本が、次回大臣会合開催国の最終決定に向けて両国間の調整役となることが合意された。さらに、日本は、その結果について参加国・地域に対し連絡を行うこととされた。


5.記録の作成

 本高級事務レベル会合における各国・地域の発表内容及び議論は、今後の本会議の基礎となるものであるので、より詳細な記録を事務局において作成し、各国・地域に送付するものとする。

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