- アジア・中東
- 北米・中南米
- 欧州・アフリカ・大洋州
中国の全ての土地が国家所有又は農民の集団所有に属するとされている。土地管理法第8条では、「都市の中心区域の土地は、国の所有に属する。農村の土地及び都市の郊外地区の土地は、法律の規定により国の所有に属する場合を除き、農民集団所有に属する。宅地、自留地及び自留山は農民集団所有に属する」と規定している。そのため、土地については、国家による所有及び農民による集団所有を並存させた制度を採用している。
土地に関する権利としては、土地使用権が認められている。土地登記弁法によると、農業用途以外の建築物の敷地となりうる土地の使用権は下記に分けられる。
建物は土地の一部として扱われ、別個の不動産としては扱われない。土地が賃貸、譲渡、担保設定等により処分される場合には、その土地上の建物も土地に従う。建物のみを土地と分離して保有や処分、担保設定をすることはできない。建物は完全所有権が認められ、建物登記弁法に諸規定が定められている。
2015年3月より不動産登記暫行条例が実施され、統一登記制度となった。国務院国土資源主管部門が全国不動産登記業務を指導、監督し、県級以上の人民政府の不動産登記機構で登記が行われる。
土地登記簿の内容は、下記を明記しなければならない。
不動産登記制度は不動産関連物権の設立、変更、譲渡及び消滅の発効要件。
物件法第9条において、「不動産物権の設定、変更、譲渡及び消滅は、法に基づく登記を経て、効力が生ずる。登記を経なければ、効力は生じない。」と規定されている。
物権法第15条で、「当事者間で不動産物権の設立、変更、譲渡及び消滅に関連する契約を締結した場合、法律に別段規定がある場合、若しくは契約書に別途約定のある場合を除き、契約が成立した時から効力を生じる。」と規定されている。
不動産登記暫行条例第27条において、権利者、利害関係者は不動産登記資料を紹介、複製できるとされている。
不動産登記暫行条例では、登記情報を共有するため、不動産登記情報管理基礎プラットフォームを構築しなければならないとされており、国土資源部により構築が進められている。プラットフォームの基本的な方向性として、行政部門間の情報共有だけでなく、社会公衆(権利者、利害関係者)の利用も想定されている。
不動産鑑定は買主あるいは売主のどちらか、あるいは双方が行う場合もある。不動産鑑定士資格として、「不動産評価師」がある。専門的に土地・建物の複合不動産を評価する国家資格。
中華人民共和国城市房地産管理法(2007年修正)により、不動産鑑定業者を含む不動産仲介サービス機構の成立のためには、以下の条件が必要とされている。
宅地建物取引主任者に相当する国家資格として、不動産経紀人就業資格がある。業務の範囲は、売買、賃貸、交換等の不動産取引における代理、仲介、コンサルティング等であり、 不動産経紀人協理(アシスタント)および高級不動産経紀人は、年一回資格試験が実施される。不動産取引事務所には不動産経紀人と不動産経紀人協理(アシスタント)がいなければならない。 不動産資格試験は年2回行われる。
不動産取引業務の規定は下記の通り。
中国で不動産取引業務の許可を得ることができるのは、「独立した法人資格のある団体」である。これに該当するものは、公司(有限公司(株主は50人まで)、株式有限公司(有限公司より大規模)、LLP(リミテドパートナーシップ企業)、個人単独資本がある。
人力資源・社会保障部、住房和城郷建設部「『不動産経紀専門業者職業資格制度暫定規定』及び『不動産経紀専門業者職業資格試験の実施弁法』に関する通知」
不動産取引事業者は、営業許可証を受領した日から30日以内に、所在地の直轄市、市、県の人民政府建設(不動産)主管部門に届け出を行う(弁法第11条)。その後、直轄市、市、県の人民政府の建設(不動産)主管部門は、不動産取引事業者とその従たる事務所の名称、住所、法定代表者(執行パートナーを含む)または責任者、登録資本金、不動産取引従業者の登録事項を社会に対して公示しなければならない(弁法第12条)。
不動産の開発・分譲は、都市不動産管理法に基づき、「不動産開発経営会社」としての許認可を政府から取得しなければならないとされており、設立要件等は不動産取引業務とは別体系となっている。毎年監査制度があり、協会に所要書類を提出し、監査を受ける必要がある。無免許で不動産開発や仲介業を営んでいる者は、経営活動の停止や所得の没収、罰金が科される。
実際には事者に免許制度に対する意識が低いため、無免許での不動産仲介業務も散見される
土地・不動産の所有権
土地総合研究所「土地総合研究 2011年冬号」
土地・不動産の所有権
日本貿易振興機構(JETRO)「知っておこう中国の土地使用権」(2008年4月)
日本貿易振興機構(JETRO)「中国 ビジネス関連法 物権法」
国際協力銀行「JBIC中国レポート 2015年8/9月号」
土地・不動産の登記
日本不動産鑑定士協会連合会「アジアの不動産諸事情の調査結果」(2013年3月)
不動産の鑑定評価
国土交通省「不動産鑑定評価基準の国際化に関する検討業務に係る調査報告書」(2011年3月)
公的土地制度・評価制度
国土交通省「地価公示のあり方に関する検討会 報告書の概要」
不動産事業を行う際の免許制度
不動産適正取引推進機構 RETIO NO.82「中国の不動産仲介制度の概要」(2011年7月)
住房和城郷建設部「不動産仲立管理弁法(房地産経紀管理弁法)」
不動産取引事業者は、不動産取引サービス契約を締結するまでの間に、委託者に対して不動産取引サービス契約、不動産売買契約、不動産賃貸借契約に関する内容を説明し、併せて以下の事項を書面で告知しなければならない。
不動産の賃貸借建物の賃貸を行なう際、貸出人と賃借人は、賃貸期限、賃貸の用途、賃貸価格、修繕責任等の条項および双方の其の他の権利義務について約定した賃貸契約書に調印しなければならない。併せて建物管理部門に登録しなければならない。
不動産開発プロジェクトのと商品住宅の販売の価格は、当事者が協議して定める。国家の優遇政策に適応する居民住宅の価格は、政府の指導価格又は政府が定める価格を実行。
住宅制度改革
住宅金融制度の整備が進められている。住宅金融制度の整備の主な内容は国、地方政府による住宅公積金制度の実施である。住宅公積金制度は、都市戸籍を持つ住民を対象に持家化を促進することが目的で、住宅購入資金を加入者が同制度を利用して貯蓄することをサポートしている。
「棚戸区」と呼ばれる都市部のバラック地区の再開発を加速する意見書(中国国務院2015年6月発表)により、2015年から17年までの3年間に、バラック地区の1,800万戸、農村で倒壊の危険がある住宅1,060万戸の合計2,860万戸の再開発を行う目標を掲げた。国民の生活に直結するインフラ建設の拡大で景気を下支えするとともに、住宅難にある中・低所得者層の生活環境を改善し、社会の安定を確保する狙いがある。
賃貸住宅の供給需要を緩和するため、北京市、上海市、南京市、杭州市等13ヵ都市で集団建設用地を利用して賃貸住宅を建設する試験を行う。2020年末までに、試験結果を報告する。
不動産を取引する際の制度(不動産取引事業者)
住房和城郷建設部「不動産仲立管理弁法(房地産経紀管理弁法)」
「Measures for the Administration of Real Estate Brokerage」
「Regulations on the Administration of Urban Real Estate Development and Operation」
不動産を取引する際の制度(不動産売買の慣行等)
国務院「都市不動産開発経営管理条例」
消費者保護(インスペクション、瑕疵対応、その他)
最高人民法院「都市建築賃貸契約紛争の裁判案件に関する法律応用の若干問題の法解釈」
最高人民法院「最高人民法院による不動産販売契約紛争の裁判案件に関する法律応用の若干問題の法解釈」
不動産行政の方向性
国務院「国務院による都市部のバラック地区と農村部の危険家屋の再開発及びインフラ施設の建設を加速する意見書」
住房和城郷建設部「集団建設用地を利用して賃貸住宅を建設する試験方案」
不動産の売買、土地使用権の譲渡-税率3~5%(取引時課税)
売買契約の場合は取引額の0.5%、不動産リース契約はリース金額の 1%、融資契約の場合は融資額の0.05%を支払う。契約者双方に課税。
建築サービス、不動産の販売、不動産のリース、土地使用権の譲渡-税率5~9%(譲渡時課税)
1.5%~5%
国有土地使用権及び建築物、付属物を譲渡し、収入を得ようとする企業や個人に対し課税されるキャピタルゲイン課税。譲渡額から取得原価、法定控除項目等を控除しキャピタルゲインに課税される。30~60%の超過累進税率が適用される。
不動産の販売、リースによる利益に対して所得税が課税される。
また、2019年1月1日より改正された所得税法により、給与等所得に関する税率の変更、基礎控除額の増額、専用付加費用控除の新設等が実施された。
売買契約の場合は取引額の0.5‰、不動産リース契約はリース金額の 1‰、融資契約の場合は融資額の0.05‰を支払う。契約者双方に課税。
房産税は建物を対象とする税であり、建物の課税標準残価または建物の賃料収入に応じて、所有権者に対して課税される。房産税は内資(中国国内資本)企業、個人に適用される。税率は賃貸収入の12%、所有の場合は1.2%である。外資企業に対しては、房産税は課されないが、同様の税として城市房地産税が課される。
農村以外で、土地使用権を持つ企業あるいは個人は使用している面積に対し、0.6~30元/㎡あたりの課税を毎年受ける。地方によって規定が異なり、個人の住宅に対しては免除している地方もある。
日中租税条約において不動産所得、役務提供などを規定(源泉税率は親子会社間の配当が10%、一般配当が10%、利子が10%、使用料が10%)。日本の居住者が中国国内にある不動産を直接使用するか、 もしくは貸与するなどにより得る所得に対しては、中国で課税される。この場合、居住者が個人である場合は個人所得税が、居住者が企業である場合は企業所得税が課される。
不動産取得・譲渡に関する税制
不動産流通近代化センター「 不動産コンサルティングに関わる海外調査報告書Ⅱ 各国の不動産市場・制度・不動産業(03 各国の不動産関連制度 04 不動産関連業の動向) 」(2013年3月)
財政部、税務総局「営業税から増値税へ全面展開の試点の通知」
税務総局「納税者の不動産譲渡に係る増値税の徴収、管理暫定弁法」
税務総局「不動産開発企業が販売する自社開発した不動産プロジェクトの増値税課税管理暫定弁法」
税務総局「納税者が提供する不動産オペレーティングリースサービスの増値税課税管理暫定弁法」
税務総局「営業税から増値税への徴収改定試行の過渡的政策に関する規定」
中国政府網「全国人民代表大会常務委員会の『中華人民共和国個人所得税法』改正に関する決定」(2011年)
税務総局「個人の住宅販売による所得に対する個人所得税の徴収問題に関する通知」
税務総局「中華人民共和国企業所得税法」
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る中国税制」
不動産保有に関する税制
日本貿易振興機構(JETRO)「 国税・地方税分類表 」
その他税制(租税条約等)
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る中国税制」
独立行政法人労働政策研究・研修機構「個人所得税法の改正」
外商投資産業指導目録(2017年改訂)で外商投資を制限する産業の目録から下記の項目が削除された。
外商投資企業は土地使用権を取得する際に土地用途の厳格な制限を受けるため、原則的には、法に基づき大規模土地開発経営権を取得した外商投資企業を除き、 外商投資企業は通常その取得した土地使用権を第三者に譲渡または賃貸することはできず、自ら使用するしかない。
外国投資者による不動産業への投資に関するその他の規制(商業拠点設置の原則、プロジェクト会社原則など)は依然として有効。
「不動産市場の外資参入および管理の規範化に関する意見」において、国外機構および個人が中国国内において私用でない不動産を投資購入する場合、商業拠点の設置の原則に従い、外国投資家による不動産投資の関連規定に基づいて、外商投資企業の設立を申請しなければならない。
「外国投資家の不動産業への直接投資の審査認可および監督管理のさらなる強化、規範化に関する通知(2015改訂)」は、外国投資家が投資して不動産会社を設立する場合、まず土地使用権、不動産建築物の所有権を取得するか、または土地管理部門、土地開発業者/不動産建築物の所有者と、土地使用権もしくは不動産の払い下げ/購入の予約に関する協議書を締結しなければならないことを定めた。
外国投資者は、その投資する業種の中国政府業種主管部門に、当該業種への投資にかかわる特別法の提供を請求するとよい。
非居住者(外国の法人、自然人、経済組織等)は、中国の土地の所有権、開発権を取得することはできず、土地使用権のみを単独で取得することもできない。
ただし、非居住者は中国国内の建物不動産(私用)を購入することにより当該不動産の占有範囲の土地使用権を取得することが可能。
外商投資企業は中国の土地の所有権を取得することはできず、中国に合弁、合作または独資による事業主体を設立する方式によって国有土地の開発権および使用権を取得しなければならない。
外資に関する優遇措置もしくは規制
日本不動産鑑定士協会連合会「アジアの不動産諸事情の調査結果」(2013年3月)
外資に関する優遇措置もしくは規制
National Association of Realtors「 China Market Situation 」
中国「外商投資産業指導目録(2017年改訂)」の概要と特徴(2017年7月)
外資参入の許認可制度
不動産適正取引推進機構 RETIO NO.82「 中国の不動産仲介制度の概要 」(2011年7月)
商務部「外国投資家の不動産業への直接投資の審査認可および監督管理のさらなる強化、規範化に関する通知」
商務部「一部の規定および規範性文書の改正に関する決定」(商務部令2015年第2号)
外国人による不動産の取引について
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 中国 外資に関する規制 外国企業の土地所有の可否 詳細」
(2019年11月~2020年1月)
県級以上の人民政府の建設(不動産)を管理する行政部門は、下記を公示しなければならない(弁法第31条)。
住宅の新規分譲については、オンライン上で分譲住宅予約販売許可証に関する情報、販売中住戸の住戸別の詳細情報、住戸の予約済・契約済の状態等が公開され、消費者が必要な情報をネット上で確認しながら購入できる仕組みが普及している。
不動産取引量、取引価格などについて、多くの都市がHPで無料で公開している。データベースは民間データプロバイダにより有料で提供されている。
物件情報についてはChina Index Academy(CIA)がデータベースとして利用されている。
主要都市等におけるマーケット情報
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 投資コスト比較」
NNA調べ(2017年9月)
※当データベースについては、細心の注意を払って情報収集をしておりますが、必ずしも正確性または完全性を保証するものではありません。国土交通省は、閲覧者が当データベースの情報を用いて行う一切の行為について何ら責任を負うものではありません。