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居住用不動産法(Residential Property Act、2010年改正法)
シンガポールにおいて、不動産とは土地及び建物を指す(居住用不動産法(Residential Property Act: Chapter 274 of Singapore))。建物は、原則として土地の一部と考えられ、独立して取引の対象とすることはできない。
ただし、コンドミニアムの各ユニットに関する空間所有権は、土地と分離して取引の対象とすることができる。不動産権には、Fee Simple, Life Estate, Estate in Perpetuity, Leasehold Estateの四種あり、個人や企業が取得するのは基本的にLeasehold Estateとなる。これは、契約に基づき賃料を支払うことを条件に、一定期間排他的に利用及び占有する権利であり、その中にも4つの種類が存在する。
国有地法は土地に対する自由保有権の設定を原則禁止しており、個人あるいは国以外の団体に対し、国有地の土地所有権を譲渡することは一定の場合にしか認めていない。また、一般的に外国人に対しては土地の所有権を制限している。
こうした制度の結果、土地所有権の数は年々減少している。これに対し、賃料を受け取る代わりに一定の期間、土地の排他的な利用と占有を認めるリースホールドの場合、国は国有地を長期リースすることができると規定されており、国家によるこの形態が一般的となっている。
Land Title Act3を根拠法として、土地に関する取引は登記によって有効となり、登記された所有者のみが真の所有者である。権利者には登記簿の内容に基づき権利証(Certificate of Title)が発行される。土地の90%以上が登記されているとされる。
シンガポールの登記制度は、Torrens System という、IT 技術を活用しGISを利用したシステムであり、登記に公信性を認める制度となっている。
土地取引の売主も買主も、弁護士が全ての法的処理業務を行うことが一般的であり、そのため登記の実務者は弁護士となる。
シンガポールの不動産鑑定士は、Singapore Institute of Surveyors and Valuers(SISV)が基準の作成、審査を行い、資格取得者は同団体に帰属する(現在、約1,700人)。
貸付等に際しては銀行指定の不動産鑑定士が評価を行う。シンガポールでは売買事例が公表されているために取引事例比較法を用いて評価を行うことが多い。
不動産仲介を行おうとする者は、Estate Agents Act, 2010に基づき、政府機関であるCouncil for Estate Agencies(CEA)によって免許を与えられる。また、不動産仲介業務に従事する個人をセールスパーソン(Salesperson)と称する。セールスパーソンがが営業するためには、Real Estate Salesperson 試験に合格し、業者免許をCEAによって与えられた業者で働いていることをCEAに登録しなけばならない。なお、同時に2社以上の業者に所属することはできない。
セールスパーソンは、日本の宅地建物取引主任者に相当するが日本と異なる点は下記の通り。
また、「住宅開発業者(監督および免許)に関する法律」(Housing Developers (Control and Licensing) Act)によれば、4ユニット以上の住宅開発を行うものは、法人・個人を問わず、Housing Developer's Licence を取得する必要がある。
土地・不動産の所有権, 土地・不動産の登記
不動産証券化協会「アジア諸国の不動産法制の基礎・シンガポール」(2012年5月)
Singapore Statutes Online「 Residential Property Act 」
Singapore Statutes Online「Land Titles Act 」
不動産の鑑定評価
国土交通省 土地総合情報ライブラリー「 地価公示のあり方に関する検討会 参考資料 」(2013年4月)(p.16)
Singapore Institute of Surveyors and Valuers(SISV)
不動産事業を行う際の免許制度
CEA「Estate Agents and Salespersons」
URA「FAQs on Housing Developer's Licence」
Singapore Statutes Online「Housing Developers (Control and Licensing) Act 」
不動産を取引する際、特に住宅については、CEAが定めている使用義務がある書式が8つある(Prescribed Estate Agency Agreement)。
政府公社供給マンション(HDB)の中古販売の際、HDFに売買を届け出る前にFlat Inspectionという検査を受けないといけない。しかしこの検査は許可を得ないリフォームがなされていないかを確認する検査で、住宅の現在の性能についての検査とは異なる。住宅の性能検査を行う会社は存在しているが、必ずしも一般化していないようである。
取引時に売主は物件について買主に聞かれれば答える義務はあるが、聞かれなければ説明義務はない。取引後に瑕疵が見つかった場合一般的には買主責任。
公的なものとしては、Central Provident Fund(CPF)から住宅購入資金の借入を行える制度がある。
政府公社供給マンション(HDB)の初回取得時のみ、公的な借入制度が利用できる。民間金融機関としては商業銀行、ファイナンス・カンパニーがある。民間金融機関は、シンガポール在住の外国人が投資用のコンドミニアムを購入する際に利用される場合が多い。
また、シンガポールで高騰し続ける不動産市場を冷却するため、シンガポール金融管理庁(MAS)より、不動産ローン審査の新規制「総融資額比率(TDSR)」が2013年に導入され、月のローン返済額が月収の6割を超えないよう上限を設けている。2016年9月には、住宅ローンの借り換えは原則的に適用除外となった。
居住目的ではない不動産投資のローン借り換えについて、2017年6月末までに申請したケースに関しては、借り手が債務削減を約束することを条件にTDSRが適用除外となっている。2016年9月の規制改定に伴い、借り手が最長3年にわたってローン残高の3%以上を返済することを求めるという規定を付け加えた。
また、金融管理庁(MAS)2017年3月にモーゲージ・エクイティ・ウィズドローアル(MEW=住宅資産価格の上昇分を担保に資金を借りること)の利用者で、住宅ローンの融資比率(LTV=融資時点の価格に対するローン貸出額の比率)が5割未満の場合はTDSRを適用しないことを決定した。
さらに、不動産市場の過熱を抑え、価格を経済の基礎的条件にのっとったものにすべく、追加購入者のLTV引き上げを2018年7月6日から開始した。
2020年1月現在、シンガポールの住宅ローンの平均金利は約2.2%。
一般的に不動産のリース期間は、住居2年、事務所3年、店舗5年である。契約終了時に貸主の同意があれば、その期間を延長することができる。一方、特約がない限り、借主から期間延長の申し出を貸主は拒否することができる。また契約期間中にその契約を解除することは、貸主、借主双方ともできず、ペナルティ支払うこととなる。
また、シンガポールの公団住宅HDBについては、これまで外国人が賃貸契約できるのは1年半までであったが、2019年1月1日より最長2年間に延長された。契約最短期間については半年間となっている。 シンガポール人とマレーシア人の賃貸可能期間は3年間と変更はない。公団住宅以外の個人住宅については、契約期間の制限は設けられていない。
シンガポールでは、標準的なリース期間は1年以上で、更新のオプションがある場合とない場合がある。契約更新は通常初年から更に1、2年。更新オプションをつける場合、賃借人は通常、更新の意思を2~3ヶ月前に通知することを要求する。1年未満の賃貸契約の締結は困難な場合が多い。
不動産金融(住宅ローンの実態、ローン審査、担保評価)
不動産のリース(期間、延長・解除の是非)
THE STRAITSTIMES「Non-Malaysian foreigners can rent HDB flats for longer period from Jan 1」
不動産賃貸の印紙税は、2014年税制改正において、2014年2月22日以降、平均年間賃貸料(AAR)に契約年数を乗じた金額(ただし、契約年数が4年を越える場合には4年として計算)の0.4%に変更された。
シンガポール政府は、住宅不動産市場の過熱防止と投機抑止に向けて、住宅・住宅用土地の取得後3年以内の短期売却者に課す印紙税(SSD)を2010年2月に導入した。次いで、2011年1月には住宅投機抑止策の追加措置として、4年以内の住宅短期転売に課す印紙税の税率を最大16%に引き上げるとともに、民間金融機関が個人・企業に提供する住宅ローンの上限を引き下げる追加措置を直ちに実施した。
2017年3月、金融管理庁(MAS)の住宅に関する税制を一部改定によりSSDの税率が引き下げられ、従来の税率は、取得後1年未満の取引で売却価格または市場価格の16%、1~2年で同12%、2~3年で8%、3~4年で4%となっていたが、改定後は1年未満で12%、1~2年で8%、2~3年で4%となり、3年を超えると課税されない。
シンガポール国内の住宅用不動産の取得者は、加算印紙税(Additional Buyer Stamp Duty)を支払う。通常の不動産取得者印紙税(Buyer's Stamp Duty)である最大3%に加えて、別途加算印紙税も支払わなければならなくなり、外国人の取得には10%、シンガポール国内に住宅物件を保有する永住権取得者(PR)に3%、2物件以上を保有するシンガポール人に3%が課税される。
不動産市場の過熱を抑え、価格を経済の基礎的条件にのっとったものにすべく、追加購入者印紙税(ABSD)の税率の引き上げを2018年7月6日から開始した。 シンガポール国民および永住権(PR)保持者が、1軒目の住まいを購入する際には、税率に変更はなく、それぞれ、0%と5%のままで、その他すべての個人に対しては、ABSDは5ポイント引き上げ、企業を含む法人に対しては、10ポイント引き上げられた。 さらに、デベロッパーが住宅開発のためにレジデンシャル物件を購入する際には、5%の追加ABSDが課される。
不動産税の税率は住宅用不動産には累進税率が適用され、その他の不動産(住宅用土地、商業用・産業用不動産)には年間評価額(土地の場合には土地評価額の5%、建物(商業用・工業用を含むが、ホテル・港湾・製油所・発電所等は除く)の場合には年間賃貸料に相当)の10%が適用される。内国歳入庁(IRAS)には「e-Valuation List」という有料サービスがあり、土地または建物など不動産の当年または過去の年間評価額をサーチすることができるようになっている。
住宅用不動産の累進税率は、所有者自身が居住している場合と所有者自身が居住していない場合により異なる。
2015年1月1日から所有者自身が居住していない住宅用不動産の累進税率は、10%(年間評価額の最初の3万Sドル分に適用)から20%(年間評価額の9万Sドル超に適用)となっている。また、所有者自身が居住する住宅用不動産の累進税率は、2015年1月1日から、0%(年間評価額の最初の8,000Sドル分に適用)から16%(年間評価額の13万Sドル超に適用)となっている。
2016年10月31日時点、日本を含む世界76カ国・地域と包括的または部分的な二国間租税防止条約(DTA)を締結。
不動産取得に関する税制、不動産保有に関する税制
日本貿易振興機構(JETRO)「シンガポール 税制概要」
金融管理庁(MAS)「Measures Relating to Residential Property」 「Raising Additional Buyer's Stamp Duty Rates and Tightening Loan-to-Value Limits to Promote a Stable and Sustainable Property Market」
外国人による土地付き住宅と更地の所有を制限する居住用不動産法は2011年1月に大幅に改正された。
この改正では、外国人株主や取締役がいる住宅不動産開発会社が期限内に開発・分譲を終えられない場合には、遅延金を課す仕組みを設けたほか、同法の規定に違反する外国人による住宅不動産売買に対する罰金の上限を5,000Sドルから、20万Sドルに大幅に引き上げた。
このほか、戸建て住宅・宅地を相続で取得した外国人がそれらの不動産を手放す猶予期間を10年から5年に短縮。
シンガポール国籍の離脱者と永住権返上の外国人には、国籍離脱・永住権返上から2年以内に所有している戸建て住宅・宅地を売却するよう義務付けることなどが盛り込まれた。
外国資本による事業所有に関して、国家の安全保障にかかわる公益事業、メディア関係等の一定の分野を除いて制限はない。
不動産業では、内外資を問わず、下記のライセンスが必要とされている。
シンガポールの就業規制の管理当局は人材省(MOM:Ministry of Manpower)である。
シンガポール政府は、2013年1月の人口白書において、シンガポール人を中心とする労働力基盤の確立を目指して「Strong Singaporean Core」の指針を打ち出した。かかる指針は、国内総労働力の3分の2をシンガポール人(および補足的に永住権保持者) 労働者により構成することを目標に掲げるものである。また、科学技術やITの導入によって、これまで外国人労働者に依存していた業務を減らし、作業を効率化することも推奨している。 このような政府の方針に基づき、外国人の就労ビザ取得の要件が段階的に引き上げられており、発給審査も複数の追加書類提出などにより長期化する傾向にあるなど、外国人がシンガポールで就業するための規制がより厳格化されている点は留意が必要である。
原則として、シンガポールで就労する外国人は全員、労働許可証または雇用許可書を申請しなければならない。
シンガポールの就業規制の管理当局は人材省(MOM:Ministry of Manpower)である。
人材省は、外国の人材に対して門戸を開放すべきだが、労働力に占める外国人の割合は全体の3分の1を超えないようにすべきという基本政策に基づき、2011年より外国人労働者の削減を狙いとする外国人雇用のルール厳格化が進められている。
外国人による不動産、特に住宅用不動産の所有に関しては、1973年に施行された居住用不動産法に基づき、国土庁(SLA)による一定の制限が設けられている。
原則として、法務大臣から適用免除または許可を受けていない外国人(シンガポール国籍者、シンガポール法人、シンガポール有限責任パートナーシップ(LLP)、シンガポール社団法人以外の個人または法人)がシンガポール国内において次の物件を所有することは認められない。
これらの制限付き不動産の所有を希望する外国人はSLAにオンライン申請することができる。
法務大臣の許可なく外国人の所有が認められる不動産は、以下のように限定されている。
外資に関する優遇措置もしくは規制
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る シンガポール 外資に関する規制」
Urban Redevelopment Authority(URA)が定期的にマーケット情報を公開。各アセットの賃料・価格変動率や供給量等は四半期ごとに無償公開。住宅取引事例については有償公開している。
ジュロン工業団地 141~494米ドル/m2
ベドック工業団地 628米ドル/m2
ジュロン工業団地 0.73~2.16米ドル/m2月
ベドック工業団地 2.96米ドル/m2月
63~100米ドル/m2月
(立地:ラッフルズプレイス、タンジョンパガー、シェントンウェイ、ダウンタウン、マリーナエリア、税・管理費別)
シンガポール 1,976~7,685米ドル/月
(調査実施時期:2020年11月2日~2021年1月8日)登録利用者向けサービスとしてSTARS 検索システム(STARS eLodgment)と、一般市民向けのウェブポータルシステムとして 総合土地情報サービス(INLIS)がある。
主要都市などにおけるマーケット情報
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 投資コスト比較」
取引履歴・物件情報などのデータベース化
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