- アジア・中東
- 北米・中南米
- 欧州・アフリカ・大洋州
マレーシアの土地は、基本的に州の管轄下にある。土地の所有は、州当局の認可を得て登記を行う。すべての土地は、永久使用権付の土地(自由保有権、Freehold Land)とリース権付の土地(借地保有権、Leasehold Land)に分かれている。リース権は 99 年以下と定められており、30 年、60 年、99 年などがある。工業団地では 60 年となっている例が多い。
どちらの土地であっても、売買が可能である。
土地は使用目的が定められているため、用途以外での使用はできない。使用目的は変更可能な場合があるが、相当な時間を要する。住居用地は外国人の個人名による登記が可能。
不動産登記には印紙税がかかる。マレーシアでは外国人による不動産の取得を積極的に受け入れているため、諸経費が低く抑えられているのが特徴である。
1965 年国家土地法(National Land Code 1965)11 によってマレーシアの土地所有権が規定さている。マレーシアの土地制度は州に属する土地が、私人に譲与(alienation)され、その土地を私人間で取引するという制度から成り立っている。土地所有権を含む個人の財産権保有の権利は、連邦憲法 13 条によって保障されている。
マレーシアの各州が私人に土地を譲与する際に、終局権原(Final title)として付与される場合と、制限付き権原(Qualified title)として付与される場合がある。その違いは、土地の最終的な地積調査(survey)を経ているかどうかであって、権利の無いように差異はない。また、州からの土地の譲与に際して、永久的な権利として、あるいは期限付き借地権として譲与される。
マレーシアでは州政府がプランテーション事業の目的のために当時のプランテーション事業者に譲渡した土地が、不動産開発業者によって主に「フリーホールド(永久所有権)」の土地として開発されており、それ以外は州政府より土地を一定期間借り受ける「リースホールド(期限付き借地権)」として開発されている。それぞれ次のように定義されている。
商業用地や工業用地、農業用地の登記にあたっては、現地法人の名義で行う必要がある。いずれの場合も、手続きは弁護士が土地の売買契約書作成や見直し、土地の名義変更手続などを行う。弁護士の費用は、2005 年弁護士報酬令(Solicitors’ Remuneration Order 2005)によって取引価格に基づいて算定され、売り手か買い手のどちらか一方より徴収する。また、不動産登記には印紙税がかかる。
マレーシアのイギリスにならったトレンスシステムでは、土地取引14は登記によって有効となり、登記されない土地取引は効力を有しない。つまり、売買契約を締結しても、登記されるまでは所有権は売主から買主に移転しない。登記は不動産の譲渡要件となっている。しかし、売買契約を締結しても、売主が第3者に、その不動産を売却して登記をすませてしまうと第3者が所有者となってしまう。そこで、このようなトラブルを回避するため、私的予告(private caveat)の制度がある。買主の弁護士が、土地の売買契約を締結する際、売主の土地について私的予告を提出しておくことにより、売主が買主の権利を侵害するような取引を防ぐことができる。
不動産鑑定士は国家資格。財務省の権限下にある鑑定委員会(Board of Valuers, Appraisers and Estate Agents)に登録されている。
一般に、不動産鑑定士は、通常の土地取引には関与せず、大規模な土地取引に関与している。ただし、土地を担保等に供する場合など、銀行が土地取引にかかわる場合に、銀行が不動産鑑定士に土地の鑑定評価を依頼することはある。
マレーシアでは The Board of Valuers,Appraisers & Estate Agents Malaysiaにより不動産取引業の免許が交付されている。これは Valuers, Appraisers and Estate Agent Act 1981 を根拠法としている。この法律にしたがって不動産取引業者(Estate agent)の免許を取得するには、業者は The Board of Valuers, Appraisers & Estate Agents Malaysia による専門的知識の試験に合格するなどの方法がある。また、この免許は毎年更新する必要があり、更新時に10 時間の講習を受講しなければならない。マレーシアでは無免許で不動産業を営んでいる者に対して、禁固ないし罰金刑を課すことがある。
〔不動産関連法・制度の現状. 土地・不動産の登記〕
JBIC 国際協力銀行「第13章 用地取得」
〔土地・不動産の所有権〕
国土交通省「アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務」
〔土地・不動産の登記〕
JBIC 国際協力銀行「第13章 用地取得」
国土交通省「アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務」
〔不動産の鑑定評価〕
The Board of Valuers, Appraisers, Estate Agents and Property Managers
国土交通省「アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務」
〔不動産事業を行う際の免許制度〕
マレーシアにおいて不動産売買時には以下の情報がやり取りされる。一般に不動産業者は仲介のみを行い、契約書作成や登記は弁護士が行う。
マレーシアには、NAPIC(National Property Information Centre)と呼ばれる不動産取引に関するデータベースが存在する。これのデータベースは、 Jabatan Penilaian & Perkhidmatan Hartaによって管理されており、会員のみが閲覧可能である。
ネゴシエーターは法律や規則で明確に認められていないセールスマンですが、委員会によって非公式に、不動産業者の直接の指示と監督の下で不動産仲介業務に従事するアシスタントとして認められています。したがって、ネゴシエーターは不動産仲介会社から独立して行動する権限を与えられておらず、疑問がある場合は委員会または関係する不動産仲介会社に確認することを勧める。ネゴシエーターは、一度に 1 つの不動産業者のためにフルタイムでのみ働くことができる。
住宅購入者保護を目的とした住宅開発業者法が制定されている。この法律によれば、買主が建物の引き渡しを受けてから 12 ヶ月の間に現れた欠陥につき、買主の通知から 30 日以外に売主はその欠陥を修繕しなければならず、修繕しない場合は、買主は売主に対して損害賠償請求できることとされている。
マレーシアはマレーシア・マイ・セカンド・ホーム・プログラム(MM2H)を政府主導の下、推進している。同プログラムは長期滞在ビザを発給することで、マレーシアでの長期滞在が可能となる。そのため、外国人にとって人気のロングステイ先となっている。このビザは数次入国社交訪問パス(Multiple-Entry Social Visit Pass)で、有効期間は 10 年間、更新も可能である。リタイア後のロングステイのために利用されることが多いが、このビザ自体は国籍や宗教、性別、年齢に関係なく申請することが可能である。50 歳以上の人が申請する場合、35 万リンギ(約 1,100 万円)以上の現預金や有価証券等を保有しており、かつ毎月 1 万リンギ以上の国外収入があることを示すことが申請条件となっている。申請者は配偶者や 21 歳未満の子女、60 歳以上の両親の帯同が許可される。このビザを取得すると、住宅取得に関して EPU のガイドラインは適用されない。また、自家用車の無税通関などのインセンティブも享受できる。
マレーシアでは、多くの銀行や金融機関が住宅ローンを提供しており、金利は通常、固定金利と変動金利を選ぶことができる。金利は経済状況や中央銀行(Bank Negara Malaysia)の政策に影響されることがある。
外国人がマレーシアの不動産に投資することは可能だが、最低購入価格や特定の地域での制限など、いくつかの規制がある。
一部の銀行や金融機関は、外国人向けにローンや資金を提供するプランが用意されている。
期間は一般的に1~10年とされている。賃貸契約の解除については、比較的容易に売却や譲渡が行えて、中断や終了しやすい。
〔不動産を取引する際の制度〕
Board of Valuers, Appraisers And Estate Agents
国土交通省「アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務」
〔消費者保護の規則〕
国土交通省「アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務」
〔不動産行政の方向性〕
JBIC 国際協力銀行「第13章 用地取得」
〔不動産金融〕
PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)
〔不動産のリース〕
PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)
土地、営業権、売掛金などの資産譲渡にかかわる文書
2022年1月1日以降の外国人・外国法人に対する税率は次のとおり。
買い手は売り手に支払う譲渡対価の3%を保留(源泉徴収)し、譲渡日から60日以内に税務当局へ納付することとなっている。売り手がPR(永住権)を持たない外国人または外国法人の場合、この保留率は7%。また、マレーシアの内国法人、信託、社団が取得日より3年以内に譲渡する場合、5%となる。
土地に関する固定資産税としてクイットレント(Quit Rent)がある。これは連邦法として規定されるが、地方行政府が査定し徴収している。税率は、土地の使用法及び面積による。
次に、建物に関する固定資産税として評価税(Assessment Tax)がある。これは地方税として課され、課税標準は当該不動産の評価額(年間賃料相当額)となり、税率は評価額の35%を上限とする。例えば、1OO㎡の物件で、クイットレント及び評価税をあわせて、年間日本円で1.4~2.7万円程度とされる。
日本・マレーシア二重課税防止条約(JMDTA)の下、日本の居住者がマレーシアから得る所得に関しては、次の条件を享受する。
利子:マレーシアの所得税法上の源泉徴収税率は15%だが、JMDTAに基づき、10%に引き下げられる。
配当:マレーシアの所得税法に基づき、マレーシアの居住会社から支払われる配当には、源泉徴収税が課せられない。
「アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務」
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る マレーシア 税制」(2023年12月15日)
不動産の取得に関しては、首相府傘下の経済企画庁(Economic Planning Unit:EPU)が2014年3月にガイドラインを発行している。なお、2022年12月23日、経済企画庁(EPU)は解散し、EPUの役割と責任は経済省(Ministry of Economy)に引き継がれている。
EPUの承認と取得条件を満たす必要がある不動産取得(居住用物件以外)
価値が2,000万リンギット以上の不動産を直接取得し、その結果ブミプトラ関係者および/または政府機関が保有する不動産の所有権が希釈化する場合。
非ブミプトラ(外国人含む)の株式取得を通じた不動産の間接的取得によって、非ブミプトラが資産総額の50%超を所有し、その結果ブミプトラ関係者および/または政府機関の所有する会社の支配が変化。かつ不動産の価値が従来より高くなり、2,000万リンギットを超える場合。
また、会社の条件として、最低30%のブミプトラ資本が求められる。さらに、マレーシア人が50%超所有する現地会社は10万リンギット、外国人や外国企業が50%超所有する現地会社は25万リンギットが最低払込資金として必要。
製造会社による工業用地の取得や「マレーシア・マイ・セカンドホームプログラム」の下での滞在者用住居に対しては、EPUガイドラインの規定が免除されている。
土地取得にかかる申請先は土地登記局を含む各州の当局であるが、EPUガイドラインが適用される場合は、EPUにも申請しなければならない。
商用ユニットの取得では、下記の場合、EPUへの申請は不要だが、州政府または他の所轄官庁の許可は必要としている。
外国人または外資50%超の現地法人による100万リンギット以上の不動産取得。
100万リンギット以上か5エーカー以上の面積の物件で、商業規模での農業、アグロツーリズム、輸出用の農業、農業関連の工業活動が行われる農業用地の取得。
外国関係者による100万リンギット以上の居住用物件の取得については、外国人または外資50%超の現地法人による取得が可能であり、EPUの承認は不要だが、州政府による認可は必要。
なお、外資50%超の現地法人が従業員寮の物件を取得する際は、最低取得額が1戸当たり10万リンギットとなる。
マレーシア国内の土地は州によって管轄されており、土地・不動産を所有するためには、州当局の認可を得て土地の登記を行う必要がある。住宅に関しては、外国人個人による登記も認められているが、商業物件、工業用地、農業用地については、現地法人を設立して登記しなければならない。
現在の国内取引・生活費省(Ministry of Domestic Trade and Cost of Living)の前身である国内取引・協同組合・消費者省(Ministry of Domestic Trade, Co-operatives & Consumerism:MDTCC)は、2010年5月12日、政府の資本規制緩和策を反映した「流通取引・サービスへの外国資本参入に関するガイドライン(Guidelines on Foreign Participation in the Distributive Trade Services Malaysia、MDTCCガイドライン)」を発行した。
その後、2020年2月にガイドラインの改訂版が発行され、コンビニエンスストアの外資参入禁止が緩和された。同ガイドラインが適用される流通業の範囲は広く、販売会社やサービス業が広くカバーされる。2020年2月の改訂ガイドラインによれば、外資の参入については、a.資本規制が設けられていない(つまり、100%外資による参入が可能である)業種、b.外資の参入が可能だが、資本規制がある業種、c.外資が参入できない業種、の3カテゴリーに分かれる。
2021年1月1日より、外国人の雇用パス申請および外国人労働者の就労許可申請に先立ち、マレーシア人が当該ポストに応募する機会を広く提供するために、政府の求人サイトであるMYFutureJobsポータルにおいて広告を掲載する必要がある。従来30日間と定められていた掲載期間は、2023年6月以降14日間に短縮された。ただし、以下のいずれかに該当する場合は、広告が免除される。
上級職(CEOやCFOなどのC-suite)やキーポスト、月給1万5,000リンギット以上、雇用主が駐在員事務所や地域事務所の場合、投資家、株主、オーナー、企業グループ内の異動、出向、貿易協定に基づく異動、雇用主が国際機関の場合
出向が免除要件に該当するため、現地採用ではない日本人駐在員の雇用パスの取得の場合は、広告が免除される。
マレーシアにおける外国人向けの就労ビザには、駐在員のための長期滞在・就労のための雇用パス(Employment Pass)、機械設置や研修などを目的とする短期就労のためのプロフェッショナル・ビジット・パス(Professional Visit Pass)などがある。
マレーシア政府は、すべての企業に対し、従業員の民族構成比が、マレーシア社会全体の構成比を反映したものとなるよう努力することを求めている。
あらゆる職種において、マレーシア人が訓練を受けて雇用されること、そして企業内の従業員構成比がマレーシア社会全体の民族構成比を反映していることが、マレーシア政府の希望である。1955年雇用法(Employment Act 1955)では、外国人労働者の雇用を目的として、マレーシア人従業員の雇用契約を解除することが禁止されている。また、従業員数を削減する場合は、マレーシア人従業員を解雇する前に、同程度の能力を有するすべての外国人労働者を解雇するよう要請している。
雇用法は、西マレーシアにおける雇用に関するすべての事項を規定し、雇用主と雇用契約を締結している労働者に適用される。コモン・ローは、従業員および雇用主双方の基本的な義務を定めているが、従業員の雇用条件については、従業員と雇用主間の同意に委ねられている。
なお、2012年に改正された雇用法では、セクシャルハラスメントに関する規定が導入され、2012年4月1日より施行されている。
2022年5月10日に、2022年改正雇用法(Employment(Amendment)Act2022)が公布され、2023年1月1日から施行された。主な改正点としては、月の一部のみ勤務する労働者の給与の計算方法明記、外国人労働者雇用の事前承認および外国人労働者の解雇時の労働局長への通告制度の導入、労働時間の短縮(週48時間から45時間)、強制労働・差別・セクハラに対する厳格化、妊娠中の女性従業員に対する解雇の制限、産休期間の延長(60日間から98日間)や既婚男性の育休取得(7日間)、労働者の申請によるフレックス制の導入、雇用における差別に関する紛争の処理規定などが挙げられる。
雇用法の改正に伴い公布された雇用法第一附則改正令(EMPLOYMENT (AMENDMENT OF FIRST SCHEDULE) ORDER 2022)に基づき、改正雇用法および雇用法の規定は賃金にかかわらず、全労働者に適用されることとなった。ただし、月給4,000リンギットを超える労働者には残業代に関する規定および解雇・退職時の給付に関する規定は適用されない。
商用ユニットの取得では、下記の場合、EPUへの申請は不要だが、州政府または他の所轄官庁の許可は必要としている。
外国人または外資50%超の現地法人による100万リンギット以上の不動産取得。
100万リンギ以上か5エーカー以上の面積の物件で、商業規模での農業、アグロツーリズム、輸出用の農業、農業関連の工業活動が行われる農業用地の取得。
外国関係者による100万リンギット以上の居住用物件の取得については、外国人または外資50%超の現地法人による取得が可能であり、EPUの承認は不要だが、州政府による認可は必要。
なお、外資50%超の現地法人が従業員寮の物件を取得する際は、最低取得額が1戸当たり10万リンギットとなる。
〔外資参入の許認可制度〕
日本貿易振興機構(JETRO)「マレーシア 外資に関する規制」(2023年12月15日)
〔就労ビザ、長期滞在について〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る マレーシア 外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」(2023年12月15日)
14.00米ドル/㎡月
20.23米ドル/㎡月
〔主要都市等におけるマーケット情報〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 投資コスト比較」
PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)
※データベースについては、関係機関等から収集した情報を掲載しており、必ずしも正確性または完全性を保証するものではありません。掲載情報の詳細については、出典元にお問い合わせいただくようお願いいたします(掲載情報以外の内容については、国土交通省としてお答えできません)。また、閲覧者が当データベースの情報を用いて行う一切の行為について、国土交通省として何ら責任を負うものではありません。