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米政府は、一般的に、外国による対内直接投資(FDI)を歓迎し、公平に扱うという姿勢である。ただし、国家安全保障の観点から、財務省が所管する対米外国投資委員会(CFIUS)が、国内資本の買収案件を審査する。
米国は、外国からの対内直接投資(FDI)を歓迎するとともに、外国投資家を公正かつ同等に扱う。ただし、いわゆるエクソン・フロリオ修正条項に基づいて、国家安全保障上懸念のある国内資本の買収案件を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)を政権内に持ち、大統領の判断で、案件を拒否することも可能である。CFIUSは、省庁横断で構成される。
大統領に対して、米国の安全保障を害する恐れのある取引を停止または禁止するために、適切な措置を適切な時期に取る権限を与える条項(U.S.C. App. 2170(d)(1))。また、大統領による事実認定および決定内容については、司法審査の対象とならないことも規定している(U.S.C. App. 2170(e))。
案件の提出は、基本的には当事者間の任意となっている。第1段階レビュー(45営業日以内)と、必要に応じて第2段階精査(45営業日以内、さらに15営業日の延長の可能性あり)の手続きを経る。最終的に、大統領の判断で、投資案件を差し止める場合もある。
2018年8月、トランプ大統領の署名により「2018年外国投資リスク審査現代化法(Foreign Investment Risk Review Modernization Act:FIRRMA)」が成立した。FIRRMAは、審査対象の拡大を中心にCFIUSの権限を強化する内容となっている。
財務省は、2018年9月にFIRRMAの規則案を公表した。その後パブリックコメント期間などを経て、2020年1月13日には最終規則を公表、2020年2月13日に施行された。最終規則では、米国での事業内容に応じてCFIUSによる審査対象とする取引を従来の外国人による支配的な投資のみならず、非支配的な投資にも拡大すると同時に、一定の条件を満たす不動産取引も審査の対象としている。財務省は2020年5月に、申告が義務化される場合の判断基準を従来の産業分野(北米産業分類システム(NAICS)上で指定された27分野)に基づくのではなく、投資対象の重要技術を米国外に輸出等する場合に米政府の許可が必要かどうかに変更する案を公表し、パブリックコメントに基づき、これをおおむね踏襲する形で9月15日に最終規則を公表、10月15日に施行した。
バイデン政権は2022年9月にCFIUSが重点的にフォローすべき分野・要因を示す大統領令を発表、国内サプライチェーンの強靭(きょうじん)性、マイクロエレクトロニクス、人工知能(AI)、バイオ技術・製造、量子コンピューティング、先端エネルギー、気候適応技術など安全保障に影響を与える分野、サイバーセキュリティー上のリスク、米国人の機微なデータに対するリスクなどを挙げた。10月には財務省がCFIUSによる執行と罰則に関するガイドラインを発表した。法令義務違反になり得る行為として[1]申告または届け出が義務の取引について適時の提出がされなかった場合、[2]CFIUSと合意したリスク軽減措置などに違反した場合、[3]非公式なやり取りを含めてCFIUSに提出した情報に虚偽や不備などがあった場合などを挙げた。罰則のプロセスについては[1]CFIUSは当事者に書面で罰則の通知を行い、[2]当事者は受理から15営業日以内(CFIUSと合意すれば延期可能)に、CFIUSに再検討の申請を提出することが可能、[3]CFIUSは受理から15営業日以内(当事者と合意すれば延期可能)に最終の罰則通知を発行、[4]再検討の申請が期限内に受理されなければ、期限の経過後に最終の罰則通知を発行するという流れとなっている。
※このほか、バイデン大統領が2021年6月3日に発令した、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく大統領令により、監視技術分野を含む軍事産業に関わる特定の中国企業に対する米国人による証券投資が禁じられている。
航空、通信、海運、発電、銀行、保険、不動産、地下資源、国防の9つの産業分野に対しては、外国からの対米投資に関する連邦規制が適用されることがある。
Foreign Investment in the United States:Major Federal Statutory Restrictions
出所:Congressional Research Service
財務省外国資産管理局(Office of Foreign Assets Control:OFAC)は、外国籍の個人・企業の所有する米国内資産に関する規制を統括している。
業種別規制内容について:財務省 ""OFAC Information for Industry Groups""
また、OFACは、米政府による外国に対する経済制裁の実施権限を有し、近年の制裁対象国と制裁内容の骨子を公表している。対象国は、キューバ、イラン、イラク、北朝鮮、スーダン、シリア、ジンバブエ、ベラルーシ、イエメン、ソマリア、リビア、コンゴ民主共和国、ロシア、ベネズエラ、レバノンなど。
さらに、国レベルではなく、個人や組織にも制裁を課す制裁対象分野およびその内容も公表されている。違法ダイヤモンド取引、麻薬、核拡散、テロリズム行為が対象。
〔規制業種・禁止業種〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る アメリカ 外資に関する規制」(2023年12月28日)
建設業の営業許可に関する事項は各州の所管となっている。ライセンスの必要な州、登録のみ必要な州、ライセンスも登録も必要としない州等がある。また、郡や市のライセンスや登録が必要な場合もある。
制度概要
州の Contractors State License Board (CSLB) のライセンスを取得する必要がある。
ライセンス取得時には、必要な経験を積んだ者が qualifying individual として試験に合格しなければならない。
Contractors State License Board (CSLB)
Department of Consumer Affairs
制度概要
州の Contractors License Board のライセンスを取得する必要がある。
Responsible Manageing Employee (RME) として指名された者が試験に合格しなければならない。
Hawaii Revised Statutes Chapter 444
Hawaii Administrative Rules Chapter 77
Contractors Licensing Board
Department of Commerce and Consumer Affairs
海外建設工事ライブラリ(アメリカ合衆国)
連邦政府調達は、Federal Acquisition Regulation(FAR)に規定されている。
FARでは、下記の入札方式が定められている。
州政府の調達は、各州においてそれぞれ規定されている。
国土交通省国土技術政策総合研究所「海外における公共調達」
FARにおいて、下記の保証が定義されている。
ミラー法(Miller Act)により、連邦政府の10万ドル以上のすべての建設工事に履行ボンドが必要であるとされている。また、2.6万ドル以上の工事に支払いボンドが義務付けられている。
国土交通省国土技術政策総合研究所「海外における公共調達」
National Association of Surety Bond Producers「Miller Act」
アメリカは連邦共和制の国であり、国(連邦政府)は国防や外交等を分担するだけで、州政府が基本的には行政の単位となっている。建築家についての法律も各州の法律により規定されている。主要な欧米諸国でこのような連邦制度をとっているのは他にドイツである。各州ごとの制度の違いはコラム欄に示すようになっている。
しかし、州ごとに建築家の規定する法律が異なっているが、共通点も多く、アメリカで建築家の資格を得るためには、基本的には、建築教育、建築実務、建築家登録試験の三つの条件を満足しなければならない。
公益財団法人「建築技術教育普及センター」
駐在して就労するためには、就労目的に応じたビザを取得する必要があるものの、外国人に対する就業上の規制はない。
駐在の形態によって、ビザの種類と有効期限が異なる。また、ビザの取得についても、申請方法や審査方法、期間が異なるため、留意が必要。ビザや移民関連の行政は、2001年の米国同時多発テロ後の政府再編によって、国土安全保障省(DHS)の傘下に「米市民権・移民局(U.S. Citizenship and Immigration Services:USCIS)」(旧移民帰化局:Immigration and Naturalization Service)として組み込まれた。
外国人が米国内で就業するためには、就業ビザが必要。米国に進出した日系企業では、主として、E-1(条約貿易業者)/E-2(条約投資家)、L-1(同系列企業内転勤者)、H-1Bビザ(短期就労専門家)の非移民ビザを活用している。
なお、2019年5月31日から、ビザ申請者に対して、SNSアカウント情報の提出を義務付けた。 ※2023年12月現在、在日米国大使館・領事館は、新型コロナウイルスの影響による面接予約などの制限を解除している。ただし、在福岡米国領事館は2023年4月20日をもって非移民ビザサービスの提供を終了しているので注意が必要。
連邦レベル、州レベル、いずれも現地人の雇用義務はない。ただし、現地人との雇用契約で注意すべき点がある。
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 米国 外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」(2024年1月2日)
アメリカ合衆国では建築規制の権限は各州にあるとされており、連邦政府は基本的に建築規制に関与していない。また、市等の自治体に対して建築規制の権限を委譲している州も多い。従って、制度及び技術的基準は、州及び都市ごとに異なっている。
一般社団法人建築・住宅国際機構「海外の建築規制」
9,518(2020年)、10,143(2021年)、10,901(2022年)
(Value Added by Economic Activity, at current prices - US Dollars)
94,2615 (2024年第1四半期速報値)
Bureau of Labor Statistics「Industries at a Glance Construction: NAICS23」
831.0万人(2024年10月)
Bureau of Labor Statistics「Industries at a Glance Construction: NAICS23」
〔道路〕
Federal Highway Administration「Highway Statistics 2022」
〔鉄道、電力、上下水道〕
World bank「World development indicator」
成熟した先進国においても、高度な技術を有する我が国インフラシステムへのニーズは高い。
米国はシェール革命により、石油・天然ガス等のエネルギー鉱物資源の輸出国に転換する一方、継続的な資源開発に必要な投資が世界的に大幅に低下しており、資源開発投資を促進することが重要。トランプ政権におけるインフラ整備の政策的位置づけは高く、民間のイニシアチブを活用した超電導リニア・新幹線プロジェクトの戦略的重要性を引き続き訴えていくことが必要。
発電(原子力、再生可能エネルギー等)、省エネルギー、超電導リニア(北東回廊)、高速鉄道、都市鉄道、医療分野、スマートシティ等の我が国が強みを発揮できる分野でのインフラ輸出を促進し、将来は成功モデルを他地域にも展開。そのため、あらゆる機会をとらえた首脳・閣僚レベルを始めとする働きかけを実施。
米国では、平成 29 年 10 月に米国運輸省と交通インフラ分野での協力覚書に署名。これに基づき、平成 30 年1月に、ワシントン D.C.において、第1回日米インフラフォーラムを開催。その後、具体的なインフラプロジェクトの実施を担う米国の各州と連携してインフラフォーラムを開催することとし、同年 11 月に第2回をインディアナ州において、令和2年2月に第3回をテキサス州において開催。具体的な案件形成の促進を図るため、インフラ分野における知見を共有するとともに、ブース出展等の機会を通じた日米インフラ関連企業のマッチングの場を提供。
エネルギー分野においては、日米経済対話の枠組の下、民生用原子力、CCUSを含む高効率低排出石炭技術、天然ガス、エネルギーインフラ等における協力を推進。
経協インフラ戦略会議「インフラシステム輸出戦略(令和2年度改訂版)」
海外建設協会調べ(2024年12月)
PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)
PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)
PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)
PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)
IFC「Doing Business」
アメリカ合衆国よりランクが低い国の割合(2023年)
World Bank「Worldwide governance Indicators」
2022年度予算:歳入4.2兆ドル、歳出6.0兆ドル、1.8兆ドルの財政赤字。第二次世界大戦以降の予算教書で最大の歳出水準。
注:2021年度(2020年10月~2021年9月):歳入3.6兆ドル、歳出7.2兆ドル、3.7兆ドルの財政赤字。
本教書の提言によると、今後10年間は毎年1兆ドル強の財政赤字となり、連邦政府債務のGDP比は2021年度に過去最大の109.7%、2031年度には117%まで膨らむ見通し。
法人税や個人所得税の最高税率引上げ等の税制改革により、米国雇用計画及び米国家族計画による歳出を15年かけて賄うとし、10年後までに財政赤字削減、その後の10年間で財政赤字を2兆ドル以上削減し、財政健全化に向かう予測。
実質成長率は、2021年5.2%、2022年4.3%、その後2031年にかけて2.0%まで逓減する見込み。
本予算教書では、既に発表済みの「米国雇用計画」(3/31)及び「米国家族計画」(4/28)を補完する形で、国力の基盤への再投資として経済機会拡大、教育改善、気候変動対策、強固な国防体制、世界における米国の立場の回復に向けた予算措置を求める旨説明。
(注)米国では、議会に予算編成権があり、また、行政府には法案提出権がないため、議会が歳入、歳出に関する予算関連法案を独自に作成して審議する。したがって、通常予算教書は議会に対する大統領の提案にとどまり、何ら拘束性を有していない。
外務省「アメリカ合衆国2022年度予算教書」
ネバダ州のラスベガスとカリフォルニア州の(ロサンゼルス近郊の)ランチョクカモンガを結ぶ高速鉄道に30億ドルの資金が充てられる。
2021年11月に成立したインフラ投資雇用法を根拠としたものである。
鉛製の水道管の交換プロジェクトやPFAS対策に係る連邦支援、下水処理施設の建設や廃水処理システムの構築などを行う州に向けた融資を行う。
日本貿易振興機構(JETRO)「主要旅客鉄道プロジェクト」
日本貿易振興機構(JETRO)「水インフラプロジェクト」
ワシントンDC~ボルティモア間(約60km)に超電導リニア技術を導入する高速鉄道計画。将来は、ニューヨークまでの延伸を目指す。
テキサス州ダラス~ヒューストン間(約 385km)を新幹線技術の活用を前提として整備する高速鉄道計画。
サンフランシスコ~アナハイム間等(約 840km)を結ぶ高速鉄道計画。
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