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- 北米・中南米
- 欧州・アフリカ・大洋州
アメリカにおける不動産取引は、州ごとに異なる法律や規制が存在するため、購入や売却を検討する際には、その州特有の手続きを確認することが重要である。
不動産は土地の資源と同様に土地とその建物で構成された財産で、土地と独立した不動産とはみなされない。土地を賃貸借して、借主が建物を所有する場合、コンドミニアムにおける個々の単位空間等は例外として取引が認められる。土地に対する権利は、権能の束(Bundle of Rights)として認識されている。土地の売買には取引の許可は不要。
不動産に関する権利は、下記に分けられる。
将来において当該不動産を使用・収益する権利
FIRRMAの施行により、外国人が空港や港湾また米軍施設に近接する土地等の取得などを行う場合は、条件によっては制限の対象になり得る。
登記制度は土地に関するもののみであり、下記のように二点ある。
●売主から買主に対して物権移転の意思をもって交付されるディード(deed=不動産物権譲渡証書)と呼ばれる書面を登録所へ提出し,その謄本が年代順に編綴される。
●不動産の買おうとする者は,売買契約締結後,売主から「権原要約書(abstract of title)」を受取り,これを手掛かりに売主が真の所有者であるかなどの「権原調査」を行う。権原調査は通常は専門の弁護士や権原保険会社によって行われる。登録簿については,人名別検索簿(譲渡人検索簿及び譲受人検索簿)によって検索して調査する。
●権原調査にもかかわらず発見することのできなかった瑕疵のために権原保険制度が充実している。
●自分の土地をトレンス・システムによって規律されることを望む者が,登記申請訴訟を提起し,権原調査官の実質的審査によって所有者の申請に間違いないことが確認されると,裁判所から登記官に対し登記命令が発せられ,これにより創設登記がされる。
●創設登記の際に,登記官は同じ証書を2通作成し,一通(正本)は登記簿を構成し,もう一通(副本)が所有者に手渡される。その後,当該土地を譲り受ける者は,その副本と譲渡証書を登記所に提示することを要する。
アメリカでは、Valuation業務は、不動産鑑定士の独占業務ではないが、鑑定士が行うValuaionは、Appraisal Practiceとして、USPAP (The Uniform Standards of Professional Appraisal Practice)に従う義務がある。
アメリカのUSPAPとIVSの関係は1984年に最初に合意された国際基準はUKとUSの基準をベースとしたものであり、USPAPには、RICSがIVSの基準をRed Bookの中に採用したような方法は採用していないが、IVSC(前身のTIAVSC)の設立時から、USPAPとIVSの調和に取り組んでおり、基本的なコンフリクトはない。
The Appraisal Institute(AI)のメンバーは、国内ではUSPAPに従い実務を行い、国外ではIVSと適用できるその国の基準に従い行わなければならない。
USPAPとIVSは詳細な違いはあるが、一番の違いは、会計基準との関連である。IVSは各基準においてThe International Accounting Standardsとの関連を述べているが、USPAPにはそのようなリンクはない。
政府の担当官庁はHUD (US Department of Housing and Urban Development)、不動産関係法はほとんどが州法管轄。
不動産業に従事する者全員が、各州でライセンスを取得する必要がある。
また、入会を認められた不動産仲介人のみ、全米リアルター協会(NAR:National Association of Realtors)のRealtorと称することができる。
Multiple Listing Service (MLS)の会員業者である場合、MLSへの登録が義務付けられている。MLSで共通契約書様式の変更や法令改正等の情報、トレーニング開催情報、各種統計情報等を入手する。
必ず不動産会社と所属契約を結び、トレーニング・賠償保険・マーケティング・リーガルサポート等の支援を受けながら業務を遂行する。
各州の不動産ライセンスの質の確保・教育・資格試験の運用サポートを行う専門協会。各州のライセンス課と契約を締結し、不動産ライセンスの試験問題を作成。
〔不動産の関連法〕
PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)
〔土地・不動産の所有権〕
United States Government Publishing Office「H.R5841 An Act」
〔土地・不動産の登記制度〕
法務省HP「我が国と諸外国の不動産登記制度における登記の真正担保のための方策について」
〔不動産の鑑定評価〕
〔不動産事業を行う際の免許制度〕
MLSは、地域で売買される不動産物件情報を集約したデータベースを元に、不動産事業者にさまざまなサービスを提供している。その中でも一番大きな役割を果たしているのが、MLSリスティングシステムと呼ばれる不動産物件情報の検索システムである。不動産業者はエージェント単位でひとりひとりがMLSの会員となり、発行されるユーザアカウントを使ってMLSリスティングシステムにログインして、物件の売り情報、買い情報のマッチングを元に不動産の売買業務を行う。MLSに登録される物件情報は、リスティングシステムを通じてすべての会員がアクセス可能なことから、エージェントはこのサービスを利用して、自分が活動している地域で売りに出されている物件を、買い手が希望する条件に応じて、網羅性のあるデータベースの中から探して提案することができる。
MLSでは、不動産取引がすべての会員にとってフェアに行えるようにするために、物件掲載情報の記載方法、情報の取扱い方、成約時のステータスの速やかな変更など、数々のルールが決められており、会員はこれらのルールに厳粛に従うことが活動の条件となっている。ルール違反が発生するとMLSは会員に対して、勧告・罰金などのペナルティを課すのみならず、最悪の場合はメンバーから除外する措置を行う。これはエージェントにとって、営業上の死活問題である。このことにより、地域の不動産業者間でルールを守り、物件を持ち合い(MLSに隠すことなく登録する)、公平で効率的な不動産仲介業務を行うことが可能となっている。
エスクロー制度が適応される。金融法では、エスクローについて次の規定があり、動産不動産不問である。
●カリフォルニア州民法第1057条
一定の条件が成立した場合に、はじめて相手方に渡すという合意のもとに第三者に引き渡される証書をエスクローという。
●カリフォルニア州金融法第17003条
不動産、動産を問わず、売買、移転、抵当設定又は賃貸の目的で、契約書、金銭、権利証、その他関係書類を第三者に寄託し、一定の条件成就後、第三者をして、寄託した金銭又は証書類等を取引の相手方に引き渡す一連の行為をエスクローという。
買主は媒介業者から必要な調査(inspection)を推奨される。調査項目は多岐にわたり、物理的性質の他法規制等も含む。日本の、業者の調査・重説義務対象と、瑕疵担保責任の双方に該当する。買主が瑕疵を発見した場合、contingencyにより解除可能である。アメリカの住宅は長寿命で、カリフォルニア州以外は地震もない。とはいえ、欠陥住宅はある。腐食等の瑕疵のある住宅も市場に平然と登場する。それでも期間内に瑕疵が発見できなければ、解除できない。
米国財務省は11月1日、米軍施設などに隣接する不動産の取引に関して、対米外国投資委員会(CFIUS)の審査対象を拡大する最終規則を発表した。対象となる米軍施設は60以上で、30州にわたる。近く官報で正式に公示し、公示から30日後に発効する。財務省は7月に、規則制定案公告(NPRM)を発表していた。
CFIUSは、外国から米国への投資が安全保障に脅威をもたらすかどうかを審査する省庁横断の委員会だ。外国人による米国企業の合併や取得、買収を審査対象とし、安全保障上の脅威があると認定した場合、最終的に米国大統領に対して取引阻止を勧告する権限を有する。2018年に成立した外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)に基づき、外国人による特定の米軍事施設などに隣接する不動産の購入や賃貸、譲与などの取引にも審査対象を拡大した。
今回発表された最終規則は、NPRMからほぼ変更されていない。新たに追加される施設は59のままで、財務省が発表した主な変更点も、ほぼNPRMと同じ内容になっている。
商業銀行、貯蓄貸付組合(S&L)、モーゲージバンク等、民間の金融機関が実施。特に重要な役割を果たしているのが連邦住宅抵当公庫と連邦住宅金融抵当金庫であり、両社は10兆ドルの残高規模のある住宅ローン市場の約半分、6億ドルの資金を供給してきた。市場のセグメントとしては、低所得者層には連邦政府機関であるFHAの融資保険等が付保されたローン、中低所得者はGSEの買い取り基準に合致したローン(コンフォーミングローン)、高額所得者は民間金融機関のローン(ジャンボローン)といった分類がされてきた。FHAローンの多くは証券化され、同じく連邦政府機関であるジニーメイの連邦政府保証のついたMBSとして投資家に販売されていた。
下記3点が審査の基準となる。
①クレジットスコア:個人信用情報機関/信用調査会社
②返済負担率:年収(税込み)に対する年間返済額の割合
③融資比率:住宅価格に対する融資額の割合
ノンリコースローン(非遡及型ローン)が主流。ローンなどの返済についての原資となる範囲を物件に限定した融資となる。万が一、ローン返済が困難になった場合、担保(責任財産)となっている物件を売却し、債務が残ったとしてもそれ以上の責任を負わない。
リース期間は、日本では2年前後の短期とされるのが一般的であるが、ニューヨークでは、オフィス物件であれば3~10年、リテール物件では5~15年の長期とされるのが通常である。そこで、テナントとしては、将来の事業計画やコストを考慮した上で、リース期間を検討する必要がある。なお、リテール物件は、オフィス物件に比べてリース期間が長期のものとなる傾向にあり、最低でも、7~10年程度となるのが一般である。これは、レストランや店舗として利用するような場合、テナント側の初期投資費は相当なものとなるため、リース期間が長期でも不当ではないとの考えに基づいているといえる。
日本では、借地借家法によって一定の場合、テナント側の更新権が当然に認められることがあるが、米国では、更新条項がない限りテナント側にそのような権限は認められない。その意味で、米国での商業賃貸は日本の定期賃貸借に相当するといえる。更新条項がない場合、契約期間満了後、同じ物件を引き続きリースするには、あらためて貸主と契約交渉することになる。新しい契約であるので、賃料を含め、既存の契約と同様の条件でリースできる保証はなく、賃料の大幅な引き上げを要求される可能性もある。契約期間満了後、引き続き同じ物件をリースする可能性があれば、更新後の賃料についても規定した更新条項を、契約書に盛り込むことを勧める。
〔不動産を取引する際の制度〕
一般社団法人 日米不動産協力機構(JARECO)「米国不動産業における MLS と不動産テックの最新動向」
〔消費者保護〕
一般財団法人 不動産適正取引推進機構「エスクローに関連すること」
〔不動産行政の方向性〕
JETRO「米財務省、米軍施設に隣接する不動産取引のCFIUS審査対象を拡大する最終規則を発表」
〔不動産金融〕
International Monetary Fund「Global Financial Stability Report」
〔不動産のリース期間〕
日本貿易振興機構(JETRO)「米国における事業進出マニュアル - 商業不動産賃貸」(2021年1月)
個人が不動産(個人向け住宅)を売却することで生じる売却益(または譲渡益)には、売主の国籍にかかわらず連邦の所得税がかかる。不動産売却益にはほとんどの場合、州政府や地方自治体の所得税もかかるが、各州、各郡、各市によって税制および税法が異なる。
連邦税の場合、不動産売却益にかかる税金は所有期間により税率が異なり、Long-term(所有期間1年超の譲渡)の場合は譲渡所得に対して0-20%の税率、Short-term(所有期間1年以内の譲渡)の場合は譲渡所得に対して10-37%の税率で課税されます。
固定資産税の主な対象は、不動産や動産、無体財産に分類される。不動産はすべての州で課税(税率はさまざま)されるが、動産と無体財産については州によって大きく異なり、機械や装置、線路などに課税する州もあれば、動産や公益施設には課税しない州もある。固定資産税は、市場価値に税率を掛けて四半期ごとに徴収される場合が多い。
日米両国政府は2019年8月、日米租税条約の改正議定書を発効させるための批准書を交換した。
日米租税条約の下、米国外の親会社などへの支払いに対しては、次の軽減税率が適用される。
持株割合50%以上:免税
持株割合10%以上50%未満:5%
ポートフォリオ配当:10%
〔不動産取得に関する税制〕
Internal Revenue Service(米国国税庁)
〔不動産保有に関する税制、その他税制(租税条約等)〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る アメリカ 税制」(2024年1月2日)
外資に対する奨励業種なし。米政府は、一般的に、外国による対内直接投資(FDI)を歓迎し、公平に扱うという姿勢である。ただし、国家安全保障の観点から、財務省が所管する対米外国投資委員会(CFIUS)が、国内資本の買収案件を審査する。
・分野別の投資規制
航空、通信、海運、発電、銀行、保険、不動産、地下資源、国防の9つの産業分野に対しては、外国からの対米投資に関する連邦規制が適用されることがある。
駐在して就労するためには就労目的に応じたビザを取得する必要があるが、外国人に対する就業上の規制はない。
駐在の形態によってビザの種類と有効期限が異なる。また、ビザの取得についても申請方法や審査方法、期間が異なることに留意する必要がある。
外国企業(外国人)の不動産取得は、米国内での営業あるいは「恒久的施設」の取得とみなされ、税制面で不利になる可能性が高い。通常は、米国内に事業目的に沿った現地法人を設立し、そこを通して不動産投資、不動産の取得・賃貸を行う。
土地を含めた不動産への投資を事業の目的とする場合(例えば、不動産シンジケートやパートナーシップへの投資、米国内の事務所ビル、ホテル・リゾート、ゴルフ場などを買収しその賃貸料や売却利益を得ることを目的とした事業の場合)は、その所有割合に応じて、外国の投資家が得た損益を、毎年米国の当局に税務申告する必要がある。
また、米国内で一定の事業を行うために外国人(法人または個人)が土地を取得した場合に、その土地の一部あるいは全部を売却または賃貸することによって所得が発生する場合は、税務申告の義務がある。
〔外資に関する優遇措置もしくは規制〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る アメリカ 外資に関する規制」(2023年12月28日)
〔就労ビザ、長期滞在について〕
日本貿易振興機構(JETRO)「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」(2024年10月15日)
〔外国人による不動産の取引について〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る アメリカ 外資に関する規制」(2023年12月28日)
ニューヨーク
0.69~679.54米ドル
ニューヨーク
3.89~416.67米ドル/月
(最安値)280 Mamaroneck Ave White Plains, New York
(最高値)284 9th St Brooklyn, New York
1ft2=0.09m2で換算
税・諸経費別
バンクーバー都心物件例
マンハッタン地区の平均(2024年2月時点)
集合住宅
地域で売買される不動産物件情報を集約したデータベースを元に、不動産事業者にさまざまなサービスを提供している。その中でも一番大きな役割を果たしているのが、MLS リスティングシステムと呼ばれる不動産物件情報の検索システムである。不動産業者はエージェント単位でひとりひとりが MLS の会員となり、発行されるユーザアカウントを使って MLS リスティングシステムにログインして、物件の売り情報、買い情報のマッチングを元に不動産の売買業務を行う。
〔主要都市などにおけるマーケット情報〕
日本貿易振興機構(JETRO)「投資コスト比較」(2024年11月)
〔取引履歴・物件情報などのデータベース化〕
一般社団法人 日米不動産協力機構(JARECO)「米国不動産業における MLS と不動産テックの最新動向」
PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)
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