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中国では土地の私有が認められておらず、土地はすべて国有または集団所有である。都市部の土地および法律で国有と定められている農村および郊外の土地は国有であり、その他の土地は集団所有である。外商投資企業および中国国内資本の企業を含むあらゆる企業ならびに経済組織は土地の所有権を有しない。中国政府は土地の開発利用を厳格にコントロールしている。国が土地利用の全体計画を立て、土地の用途を決め、土地を農用地、建設用地および未利用地に分ける。外商投資企業は中国における投資プロジェクトを通じて国有土地の開発権、使用権を取得することができる。ただし、原則として集団所有土地の開発権と使用権を取得することはできない。
外商投資企業が国有土地使用権を取得する方法は大きく分けて3つある。一つ目は、土地使用権を直接取得する方法である。外商投資企業は直接国から土地の払下を受け、払下土地使用権を取得することができる。二つ目は土地を賃借する方法である。外商投資企業は国から土地を賃借することができる。三つ目は合弁会社を設立する時に中国側出資者の現物出資により取得する方法である。なお、無償割当土地使用権の現物出資はさまざまなリスクが伴うため避けるべきである。
土地使用権の最長年限は土地の用途により、居住用地70年、工業用地50年、教育・科学技術・文化・衛生・体育用地50年、商業・旅行・娯楽用地40年、総合またはその他の用地50年とされている。実際の使用年限は最高年限の範囲内で土地使用権払下の当事者間の協議により確定する。
国土資源部が「土地登記弁法」(国土資源部第40号令、2007年12月30日公布)を制定して、2008年2月1日から施行している。この法律は、国家土地管理局が1989年に通達として公布した「土地登記規則」を物権法の不動産登記関連規定に基づき修正・補充したものである。
土地登記弁法は、全10章78条からなり、土地登記の概念、原則、効力、類型、内容、手続、土地登記簿の記載項目等について規定しているが、主要内容は以下の通りである。
(1) 土地登記の効力
前述した物権法の土地登記物権公示の趣旨を確認的に規定している。従前の土地登記は行政管理の手段に過ぎない面があったが、土地登記弁法は、「土地の登記は土地所有権の公示行為であり、申請に基づき実施しなければならない」と規定し、合法的に土地を譲渡する際には登記しなければ法的効力を有しない旨規定している。ただし、相続や贈与の場合には、登記せずとも効力を発すると規定している。しかし、再譲渡する場合には登記を行う必要がある。
(2) 土地登記の分類
土地の登記は、総登記、初回登記、変更登記、取消登記及びその他の登記に分けられる。これらのうち、その他の登記には、訂正登記、異議登記、仮登記、差押登記が含まれる。従前の登記類型に加えて、土地登記弁法により、仮登記、差押登記、及び地役権等用益物権の登記が新たに追加された。
(3) 土地登記の手続
物権法の規定に基づき、当事者が登記申請を行う際には、権利帰属証明、不動産境界、面積等の必要資料を提出しなければならない。
また、申請者が提出する地籍調査表、地図及び境界座標は、資格のある専門技術業者に委託して、地籍調査報告を入手することができると規定している。
1986 年に「土地管理法」が公表されてから土地の所有権と使用権が分離され、土地の払い下げによる評価の需要が高まった。そのため、1993 年に土地管理局が「土地評価師資格試験暫定実行方法」を制定した。その後、「都市土地評価規程」、「都市土地等級分類規程」、「農業用地分類規程」、「農業用地等級規程」、「農業用地評価規程」及び「土地評価報告書標準形式」、「都市地価監視技術仕様」などの土地評価基準に関連する規程が施行された。また、1994 年の住宅金融制度が創設されてから房地産(建物)の評価が急増したため、住都市農村建設部が 1995 年に「房地産(建物)評価師執業資格制度暫定実行規程」を制定し、1999 年に「房地産評価規範」を施行した。現在、土地資源部、住宅都市農村建設部などの資産評価の関係管理部門は今までそれぞれが公表した評価基準などを「資産評価法」に照らし合わせて内容の修正を行っている。また、同法の規程に従って職業の行為と道徳における基準である「執業準則」なども制定しなければならない。
中国においては、資産評価業界がIVSを既に業務に導入している。依頼者が国際企業である場合など、「資産評価報告書」の成果物の前言に、「国際評価基準に基づいた評価を行った旨」の内容が記述される場合がある。中国国内の資産評価基準は、原則としてIVSに集約されたところの評価経験を十分に取り入れて、国内基準の内容を向上させるべきであるという方針がとられている。
すべての受験生が上記について学習し、国家試験に臨むので、資産評価師の知識としてIVSは普遍的に普及されており、定着しているといえよう。
都市部の低所得者向けの住宅制度や、都市管理、建設の標準システム化などを所掌。
法律の制定、実施、監督管理等を担当。
宅地建物取引主任者に相当する国家資格として、不動産経紀人就業資格がある。業務の範囲は、売買、賃貸、交換等の不動産取引における代理、仲介、コンサルティング等であり、不動産経紀人協理(アシスタント)および高級不動産経紀人は、年一回資格試験が実施される。不動産取引事務所には不動産経紀人と不動産経紀人協理(アシスタント)がいなければならない。不動産資格試験はニーズによって回数が決められ、行われる。
不動産取引業務の規定は下記の通り。
中国で不動産取引業務の許可を得ることができるのは、「独立した法人資格のある団体」である。これに該当するものは、公司(有限公司(株主は50人まで)、株式有限公司(有限公司より大規模)、LLP(リミテドパートナーシップ企業)、個人単独資本がある。
関連法律
人力資源・社会保障部、住房和城郷建設部「『不動産経紀専門業者職業資格制度暫定規定』及び『不動産経紀専門業者職業資格試験の実施弁法』に関する通知」
不動産取引事業者は、営業許可証を受領した日から30日以内に、所在地の直轄市、市、県の人民政府建設(不動産)主管部門に届け出を行う(弁法第11条)。その後、直轄市、市、県の人民政府の建設(不動産)主管部門は、不動産取引事業者とその従たる事務所の名称、住所、法定代表者(執行パートナーを含む)または責任者、登録資本金、不動産取引従業者の登録事項を社会に対して公示しなければならない(弁法第12条)。
不動産の開発・分譲は、都市不動産管理法に基づき、「不動産開発経営会社」としての許認可を政府から取得しなければならないとされており、設立要件等は不動産取引業務とは別体系となっている。毎年監査制度があり、協会に所要書類を提出し、監査を受ける必要がある。無免許で不動産開発や仲介業を営んでいる者は、経営活動の停止や所得の没収、罰金が科される。
実際には事者に免許制度に対する意識が低いため、無免許での不動産仲介業務も散見される。
〔土地・不動産の所有権〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 中国 外資に関する規制」(2024年10月11日)
〔土地・不動産の登記〕
一般財団法人 不動産適正取引推進機構「中国の不動産に関する法制度と市場」
〔不動産の鑑定評価〕
一般財団法人 日本不動産研究所「中国資産評価業界初の基本法である「資産評価法」の立法の背景」
公益財団法人 日本不動産鑑定士協会連合会「各国の国際評価基準(IVS)導入状況」
〔不動産事業を行う際の免許制度〕
不動産適正取引推進機構 RETIO NO.82「中国の不動産仲介制度の概要」(2011年7月)
住房和城郷建設部「不動産仲立管理弁法(房地産経紀管理弁法)」
委託者との不動産取引サービス契約不動産取引事業者は、委託を受けて不動産情報を提供し、現地で物件を見て、契約書を代理作成するなどの取引サービスを行なう場合、委託者との間に書面で不動産取引サービス契約を締結しなければならない(弁法第16条)。そして、不動産取引サービス契約は下記の内容を含まなければならないとされている。
また、建設(不動産)主管部門または不動産取引業界団体は不動産取引サービス契約見本文書を制定し、当事者の利用に供することができる。
不動産取引事業者と委託者が不動産の売却、賃貸に関する取引サービス契約を締結する場合、売却、賃貸を委託された不動産及びその権利証書、委託者の身分証明書等の関連資料を実際に確認し、併せて不動産の状況についての説明書を作成しなければならない。委託者の書面による同意を得たのち、初めて当該不動産の物件情報を対外的に公表することができる。不動産取引事業者と委託者が、不動産購入、賃借に関する取引サービス契約を締結る際には、委託者の身分証明等の関連資料を確認しなければならない(弁法第22条)。
不動産取引事業者と不動産取引従業者は価格が高騰したという情報をねつ造し散布し、不動産開発経営会社と通謀して売り惜しみ行為、転売ころがし市場価格を操作すること。取引当事者に対して真実の不動産取引情報を隠蔽し、低価格で買い取り高額で売る(貸す)ことにより差額を略取すること。ごまかし、詐欺、脅迫、賄賂など不正な手段により客を誘引し、消費者を騙す取引や強制的な取引行為委託者の個人情報や商業秘密を漏出させ不正に使用して、不当な利益を得ること。これらは禁止行為として法律で定められている。
今般の弁法制定が、詐欺行為や購入代金の持ち逃げ等の取り締まりを主眼としていることから、様々な禁止規定を細かく設けているのは当然であるが、さらに、欧米では既に導入している一種のエスクロー制度を取り入れ、消費者保護を図ろうとしている。
中国では不動産分野、国内市場の需要低迷による国内経済の低迷を打開するため、不動産の購入条件の緩和や金利の引き下げ、中央地方政府が設備の更新および消費財の買い替えを推進している。
(2024年)
中国の広東省広州市政府と深セン市住宅建設局はそれぞれ9月29日、「不動産市場の平穏かつ健康的な発展に係る措置を調整するための通知」(穗府弁函〔2024〕65号)、「不動産市場の平穏かつ健康的な発展に係る措置を更なる最適化するための通知」(深建字〔2024〕284号)を発表した。両通知は住宅購入戸数や購入資格の制限を解除または緩和するもので、広州市が9月30日、深セン市が10月1日から施行した。
広州市の場合、これまで同市以外の戸籍を持つ世帯が購入制限区域(広州市内の越秀区、海珠区、茘湾区、天河区、南沙区、白雲区、)内に住宅を購入するには、住宅購入日前の連続する6カ月間に同市で個人所得税または社会保険を納付した証明書を提出する必要があった。また、購入可能な戸数も2人以上の世帯ならば2軒、単身世帯は1軒に制限していた。通知施行後は同市の戸籍や同居家族の有無にかかわらず、同市内全域で購入資格の審査を受けずに住宅を購入できる。購入戸数の制限も撤廃した。
深セン市の場合、これまで同市以外の戸籍を持つ世帯が同市内で住宅を購入するには、同市の個人所得税または社会保険料の納付期間が3年以上という条件を満たす必要があった。また、購入可能な戸数も1軒に制限していた。通知施行後は、住宅購入日前の連続する1年間に同市で個人所得税または社会保険を納付した証明書を提出できる場合、購入制限区域内(福田区、羅湖区、南山区、宝安区の新安街道・西郷街道)で1軒の住宅購入が可能となり、制限区域以外の地域ならば、証明書を提出する必要がなくなった。
さらに、中国人民銀行(中央銀行)広東省分行は9月30日、同日から広州市など広東省内の20都市で住宅ローンを組む世帯に対し、2軒目の購入時の最低頭金比率を1軒目と同様の15%に引き下げることを発表した。
定期借家契約(書面によらない口頭契約も多い)
3ヵ月~1年
再契約
契約期間をもって終了
〔不動産を取引する際の制度・消費者保護(インスペクション、瑕疵対応、その他)〕
一般財団法人 不動産適正取引推進機構「中国の不動産に関する法制度と市場」
〔不動産行政の方向性〕
日本貿易推進機構「中国の消費者心理はいつ回復するか」
日本貿易推進機構「広州市と深セン市、住宅購入制限を解除または緩和」
〔不動産のリース〕
公益社団法人日本不動産学会「各国の賃貸事情」
税率3~5%
売買契約の場合は代金の0.03%、不動産リース契約はリース金額の 0.1%、ファイナンスリースはリース料の0.005%、建設工事契約は、代金の0.03%を支払う。「印紙税法」上、課税地が明確に定められた。納税者が組織単位である場合は、その設立地の所轄税務当局に印紙税を申告・納付する。
建築サービス、不動産の販売、不動産のリース、土地使用権の譲渡を行う組織および個人は、増値税の納税者となり、本条例に従って税率9%の増値税を納付しなければならない。
特定の不動産譲渡、特定の土地使用権の譲渡、特定の不動産リースは、税率9%の増値税を納付しなければならない。
地方税の一つである。0.6~30元/㎡あたりの課税を受ける。
日中租税条約において不動産所得、役務提供などを規定(源泉税率は親子会社間の配当が10%、一般配当が10%、利子が10%、使用料が10%)。
租税条約は、国家間における国際的二重課税の防止や租税回避の防止などを主な目的として締結され、原則として国内法に優先する。現在、中国は50余りの国と租税条約を締結している。また、香港との間にも租税条約と同様の二重課税防止規定がある。
日本と中国との間では、1983年9月6日にOECDモデル租税条約の内容に準拠した「所得に対する租税に関する二重課税の回避および脱税防止のための日本国政府と中華人民共和国政府との協定」(1984年6月26日発効)が締結されている。
〔不動産取得に関する税制〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る中国税制」
〔不動産譲渡に関する税制〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る中国税制」
〔不動産保有に関する税制〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る中国税制」
中国では土地の私有が認められておらず、土地はすべて国有または集団所有である。都市部の土地および法律で国有と定められている農村および郊外の土地は国有であり、その他の土地は集団所有である。外商投資企業および中国国内資本の企業を含むあらゆる企業ならびに経済組織は土地の所有権を有しない。中国政府は土地の開発利用を厳格にコントロールしている。国が土地利用の全体計画を立て、土地の用途を決め、土地を農用地、建設用地および未利用地に分ける。外商投資企業は中国における投資プロジェクトを通じて国有土地の開発権、使用権を取得することができる。ただし、原則として集団所有土地の開発権と使用権を取得することはできない。2020年1月1日より正式に発効する『中華人民共和国土地管理法』(2019年修正版)に基づき、従来認められていなかった国有地以外の土地の開発権、使用権の取得につき、以下が認められることになった。集団経営性建設用地について、計画に合致し、登記され、かつ集団経済組織によって構成される村民会議の三分の二以上のメンバーもしくは村民代表の三分の二以上の同意を得られた場合、その土地は譲渡や賃貸等の方法で集団経済組織以外の企業や個人に交付されることが認められるようになる。さらに、集団経営性建設用地の使用権を取得後、再譲渡、交換、担保としての提供等も認められる。
国有土地使用権は大きく①有償土地使用権と②無償割当土地使用権に分けられる。有償土地使用権とは、国が土地使用権を有償で払い下げ、その土地使用権の代金を支払った者に一定の期間に限り土地の使用を認める制度に基づき取得される土地使用権を指す。無償割当土地使用権とは、使用者が無償で取得する土地使用権を指す。有償土地使用権については、譲渡、賃貸、抵当権の設定が認められるが、無償割当土地使用権については、原則としていずれも認められない。また、原則として外商投資企業は無償割当土地使用権を取得することはできない。
「不動産市場の外資参入および管理の規範化に関する意見」において、国外機構および個人が中国国内において私用でない不動産を投資購入する場合、商業拠点の設置の原則に従い、外国投資家による不動産投資の関連規定に基づいて、外商投資企業の設立を申請しなければならない。
「外国投資家の不動産業への直接投資の審査認可および監督管理のさらなる強化、規範化に関する通知」は、外国投資家が投資して不動産会社を設立する場合、まず土地使用権、不動産建築物の所有権を取得するか、または土地管理部門、土地開発業者/不動産建築物の所有者と、土地使用権もしくは不動産の払い下げ/購入の予約に関する協議書を締結しなければならないことを定めた。外国投資者は、その投資する業種の中国政府業種主管部門に当該業種への投資にかかわる特別法の提供を請求するとよい。
非居住者(外国の法人、自然人、経済組織等)は、中国の土地の所有権、開発権を取得することはできず、土地使用権のみを単独で取得することもできない。
ただし、非居住者は中国国内の建物不動産(私用)を購入することにより当該不動産の占有範囲の土地使用権を取得することが可能。
外商投資企業は中国の土地の所有権を取得することはできず、中国に合弁、合作または独資による事業主体を設立する方式によって国有土地の開発権および使用権を取得しなければならない。
〔外資に関する優遇措置もしくは規制、外資参入の許認可制度、外国人による不動産の取引について〕
日本貿易振興機構(JETRO)「中国 外資に関する規制」
〔外国人による不動産の取引について〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 中国 外資に関する規制」(2024年10月11日)
(2023年9月)
〔主要都市等におけるマーケット情報〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 投資コスト比較」
〔取引履歴・物件情報などのデータベース化〕
PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)
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