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シンガポール

現地法人等の形態

現地法人等の形態

現地法人

現地法人にも、会社法上はいくつかの種類がある。もっとも一般的なものがプライベート・カンパニー(Private Company Limited by Shares)で、ほとんどの日系企業はこれに該当する。なお、プライベート・カンパニーのうち一定の要件を満たす法人は、エグゼンプト・プライベート・カンパニー(Exempt Private Company Limited by Shares)と呼ばれ、一定のコンプライアンス免除が認められる。いわゆる株式会社を会社法に沿って大別すると以下の四つに区分できる。

a. 私的会社(Private Company Limited by Shares)
日系企業の進出形態として最も一般的なビジネス形態である。株主が 50 人以下で株式譲渡に制限がある。日本の親会社が株主となる場合には、下記 b. 私的免除会社ではなく、これに該当することになる。

b.私的免除会社(Exempt Private Company Limited by Shares)
私的会社のうち、株主が 20 人以下の個人のみである会社または政府系企業で、大臣が官報において、私的免除会社であることを宣言した会社である。日本人オーナーが、個人出資でシンガポールに進出した際には、これに該当する場合が多い。私的会社と異なり、債務超過の状態でなければ、決算書の登記が不要である。会社の取締役に対する金銭の貸付も認められる。
さらに、上記の a.と b. の会社で、日本の親会社を含むグループとして下記の条件のうち、二つ以上を満たす場合、会計監査人による法定監査が免除される。

  • ・年間売上高が 1,000 万シンガポール・ドル(以下、S ドル)以下
  • ・年度末時点において総資産が 1,000 万 S ドル 以下
  • ・年度末時点において総従業員数が 50 人以下

c. 公開会社(Public Company Limited by Shares)
株式の譲渡制限がなく、株式の公募やシンガポール証券取引所に上場することができる。

d. その他
会社法上は、無限責任株式会社(Unlimited Company)という株主が無限の責任を負うビジネス形態などの法人形態もあるが、日系企業進出にあたっては一般的でない。

一般的なシンガポールの現地法人設立は、上記 a.または b.のいずれかに分類されることになる。

支店

外国法人のシンガポール支店は、シンガポール内では、独立した法人とはみなされず、外国法人とみなされる。よって、設立や設立後の登記事務にあたって、本店の情報が必要となる。シンガポールでは、現地法人の方が好まれる傾向にあるが、支店を選択するケースもある。

駐在員事務所

駐在員事務所は特定の業種に係るものを除き、EnterpriseSG の管轄である。業務範囲は市場調査や進出にあたっての規制調査、展示会への出展などに限られているが、駐在員事務所を設置することによって、就労ビザを取得することができ、事務所や社宅の契約も締結することができるようになる。また、本社で行っている事業が、投資業、法務、人材紹介などの場合には、原則として駐在員事務所が設置できないため、注意が必要である。
なお、駐在員事務所では認められない業務の具体例は以下のとおりである。

  • • 販売契約の締結や事業活動
  • • 事務所等の賃貸
  • • 事業活動に伴う契約締結や、請求書・領収書発行の本社代理
  • • 報酬を受けるようなサービス提供やコンサルティング業務
  • • 本社の販売代理業務やそのコーディネート
  • • 広告活動のような販売促進に係る契約締結
  • • 品質管理のための技術提供やコンサルティング業務 など
    加えて、駐在員事務所の設立を申請する会社は、以下の要件を満たす必要がある。
  • (1) 売上高が 255 万米ドル超
  • (2) 会社設立後 3 年以上が経過
  • (3) 駐在員事務所のスタッフは 5 人未満

駐在員事務所は、シンガポールでの現地法人または支店設置の準備段階と位置付けられているため、長期の存続は想定されておらず、通常 1 年間のみ存続が承認され、更新は可能であるものの、原則として最長 3 年で現地法人または支店の設置か撤退の判断を求められる。

なお、駐在員事務所は、収益活動を営まないので、法人税、GST 等に関する申告・納付義務は発生しない。ただし、駐在員・従業員の個人所得税の申告は必要である。

個人事業体

1人の個人または法人により所有・登録された法人格を持たない事業体をいい、その所有者は経営上の損失、その他のリスクについて法律上の全責任を負う。個人事業体の登録を行えるのは、シンガポール国籍を持つ個人、または永住権保持者、エントレパスを保有する外国人、シンガポールで登記された法人に限定される。外国企業または外国人が個人事業体を直接登録することはできない。個人事業体設立を希望する外国人は、本人が海外在住の期間中、シンガポール居住者を代表者として任命しなければならない。個人事業体の運営は事業登録法で規制されている。

パートナーシップ

2人以上20人以下の個人または法人により所有・登録された法人格を持たない事業体をいい、その所有者は経営上の損失、その他のリスクについて法律上の全責任を負う。パートナーシップの登録を行えるのは、シンガポール国籍を持つ個人、または永住権保持者、エントレパスを保有する外国人、シンガポールで登記された法人に限定される。パートナーシップ設立を希望する外国人は、1人以上のシンガポール居住共同経営者を配置しなければならない。共同経営者が全員外国人の場合、シンガポール居住者を代表者として任命しなければならない。パートナーシップの運営は事業登録法で規制されている。

リミテッド・パートナーシップ(LP)

無限責任を持つ少なくとも1人のジェネラル・パートナーと有限責任を持つ少なくとも1人のリミテッド・パートナーから構成され、パートナーと切り離された法人格を持たない。外国企業または外国人はLPのジェネラル・パートナーまたはリミテッド・パートナーとなりえるが、すべてのジェネラル・パートナーが外国企業または外国人となる場合はシンガポールに居住する自然人の業務執行者を最低1人任命しなければならない。LPは実質的に一般的な合資会社であるが、受動的投資家(passive investors)は有限責任パートナーとなり、経営に関与することは認められない。LPは、米国や英国で一般的な事業体ストラクチャーで、ほとんどの専門家集団に利用できる仕組みとなるが、プライベートエクイティ・ファンドや投資分野で最も活用されている。LPの運営は2009年5月に施行されたリミテッド・パートナーシップ法(Limited Partnership Act)で規制されている。LP は会社名の許可を受け、ACRA に登記しなければならない。名前の許可料は15Sドル、1年間の登記料は100Sドル、3年間の登記料は160Sドルである。

有限責任パートナーシップ(LLP)

LLPは、パートナーと切り離された法人格を有するという点で従来のパートナーシップとは異なる。LLPは、シンガポールに居住する自然人の業務執行者を最低1人、パートナーを最低2人必要とする。シンガポール国籍を持つ個人、または永住権保持者、外国企業を含む法人、他のLLPがLLPのパートナーとなることができる。LLPの運営は有限責任パートナーシップ法(LLP Act)で規制されている。

LLPは会社名の許可を受けACRAに登記しなければならない。登記申請料は名前の許可料15Sドルを含めて115Sドルである。

ビジネストラスト

ビジネストラストとは、企業と信託の両方の要素から成る複合型の事業形態であり、原則として信託証書により設立される。事業資産の法律上の所有権は受託者にあり、言い換えると、ビジネストラストのユニットの法律上の所有者がビジネストラストの資産の受益権を有することになる。ビジネストラストでは、受託者は受益者のために事業を管理する。ビジネストラストの運営はビジネストラスト法で規制され、シンガポール通貨金融庁(MAS)が所轄当局となっている。

出資比率

国家の安全にかかわる特定の部門を除き、外国資本による全額出資が原則認められている。

出典

〔出資比率〕

日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る シンガポール 外資に関する規制」(2023年10月31日)


〔その他〕

日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る シンガポール 外国企業の会社設立手続き・必要書類」(2023年12月15日)

日本貿易振興機構(JETRO)「外国企業の会社設立・清算手続きの概要」(2018年9月)

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